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聖国のジルフリーデ 〜勇ましき姫と気高き女騎士と、男勝りな女戦士と妖艶な女盗賊は、媚薬の罠に乱れ喘ぎよがり狂うも、心だけは屈しない〜

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過去編 孤高の戦姫は、過去を捨て前へと進む

 
前書き
・カスタムキャスト製おまけのおまけ:シャツ1枚編
 

 
「……なぜ、こんな私を助けるの」
「そりゃあ……騎士ですからね」

 大浴場を舞台にした、凄惨な凌辱劇の翌朝。

 ババルオに身体を洗われたことで、全身を侵す媚薬の粘液(ローション)が薄まっていたロザヴィーヌは、牢の中で完全に自我を取り戻すと。
 帝国軍の物量に押し切られ、囚われていた昔馴染みの上級騎士――ベルグの手引きによって。見張りの隙を突いて装備を奪還し、彼と共に脱出することに成功していた。

 の、だが。それから再び、彼女が祖国のために立ち上がることはなく――某国は間もなく滅亡し、地図にすら残らぬ()国となった。

 人面獣心のケダモノに堕ち、かつての主君を躊躇いなく犯す国民達の姿は、彼女の「誇り」をへし折るには十分過ぎたのだ。破壊と略奪の炎に飲み込まれていく故郷の姿を、目にしながらも――彼女は戦いを放棄し、去ることを選んだ。
 守るべき者達に裏切られた彼女にはもう、祖国のために戦う道を選べなくなっていたのである。

 それからベルグと袂を分かち、盗賊に身を落とした彼女は、自分から全てを奪った帝国への復讐心だけを頼りに――孤高の女義賊へと豹変し。帝国兵ばかりを狙う謎の女として、その美貌と共に噂されるようになった。

 そして、4年後。流浪の果てに聖国へと辿り着いた彼女は、そこでかつての自分を想起させる姫君との、邂逅を果たしたのである。

 ◇

 ロザヴィーヌがジルフリーデの一行(パーティ)に加わり、4人で力を合わせて帝国軍と戦うようになってから、2ヶ月が過ぎた頃。
 常駐していた帝国兵達を追い払い、大型船が停泊している港町の平和を取り戻した彼女達は――町を救った自分達を歓待する町民達の厚意に応じ、宿屋で束の間の休息を取っていた。

「……はぁっ!?」

 その夜。月明かりが差し込む窓辺のベッドで、ロザヴィーヌは汗だくになりながら目覚めていた。月光に照らされる白い裸身が、汗に濡れたその美貌を淫靡に輝かせている。
 ()の夢を鮮明に見てしまった彼女は、シーツで淫らな胸元を隠しながら、気怠げに身を起こし――かつての「敗北」と「痴態」を思い起こしていた。

「んっ、は、ぁあ……ったく、最悪。今になって昔のこと、思い出しちゃうなんて……」

 屈辱と凌辱に塗れた過去は、今も悪夢となってロザヴィーヌの肢体を苛んでいる。桜色の乳首は興奮にそそり立ち、全身の柔肌は桃色の熱を帯び、下腹部の聖域は甘い疼きに痺れていた。
 受けた行為そのもの以上に、自分の身体がそれに感化され――受け入れようとさえしている事実こそが、彼女の自尊心を最も深く傷付けているのである。

「……っ」

 傍らに掛けていたタオルを手に取り。4年前よりもさらに艶かしく、豊満に実った肢体に滲む、汗と愛液をゆっくりと拭き取りながら。
 かつての戦姫は、「決別」の証を確かめるように――後ろ髪と、汗ばんだうなじを撫でる。故郷を捨て、王女としての誇りを置いていくと決めた時、彼女はポニーテールを切り落としていたのだ。

 あれからロザヴィーヌは、自分しか信じない冷徹な女盗賊として生きていくはずだった。
 かつての自分を彷彿させるジルフリーデとの出会いがなければ、間違いなくそうなっていただろう。

 そして出会った頃も、彼女のことを最初は笑っていた。帝国兵には勝てても、帝国軍には絶対に勝てない。それに、民衆が自分達の献身に応えることなどないのだと。
 だが、ジルフリーデという姫君は。真摯な眼差しで、それでも戦う道を選ぶと宣言し――それを、実践し続けていた。

 それは、ロザヴィーヌが生還と引き換えに捨てた「誇り」そのものだったのだ。
 自分がとうに諦めた今でも、人々を救う道を捨てない者がいる。その姿は、一度背を向けた女盗賊には、あまりにも眩しくて。
 今さら、そんな資格などないと理解していながらも。手を伸ばさずには、いられなかった。

 そして彼女は、決意したのだ。ジルフリーデの心を折らせてはならない、自分と同じ轍を踏ませてはならない。
 彼女との出会いが「運命」だとするならば、それこそが自分の「使命」なのだと。

 やがてロザヴィーヌという女盗賊は、報酬金目当てという「建前」を条件としてジルフリーデに同行し、再び帝国軍と戦うことになった。

 最後にもう一度だけ。誰かのために戦っていた、あの頃の自分に戻りたい。やり直したい。これ以上、あんな思いを誰にもさせてはならない。

 そんな胸中を、誰にも語ることなく。孤高の戦姫は、金にがめつい妖艶な女盗賊として――今も、姫君達の支えとなり続けている。

「……」

 仲間達の武器と共に、部屋の壁に立てかけられている愛用の槍。それを一瞥するかつての戦姫は、汗を拭っていたタオルを、無意識のうちに握り締めていた。
 祖国を捨てても、誇りを捨てても、その1本だけは捨てられなかったのだ。愛する父が遺してくれた、形見だけは。

「……ジル」

 やがて、その名を呼びながら。ロザヴィーヌは自分の隣ですやすやと眠る、蒼い髪の美姫を見下ろし――その白い頬を、慈しむように撫でる。
 自分と同じように父を殺されたばかりか、残された母まで慰み者にされている彼女の心中は、察するにあまりある。一刻も早くアンジャルノンを倒し、彼女もこの国も救わねばならない。

「……大丈夫よ、ジル。絶対に、私のような思いはさせない。そのためにきっと、私とあなたは出会ったのだから」

 安らかな寝顔を前に、決意を新たにしたロザヴィーヌは――月下の夜に独り。紅い眼を静かに、そして熱く滾らせるのだった。

 そんな彼女はこの先、ジルフリーデ一行の戦力として、華々しい活躍を飾ることになるのだが。
 ついに最後まで、条件として提示していた報酬金を受け取ることは、なかったのである。

 あの日の敗北を塗り替えるほどの、勝利。それに勝る宝など、彼女の中には存在しないのだから。

 ◇

 ――その旅路が終わりを告げて。かつての戦姫が聖国から姿を消し、さらに6年後。
 某国を滅ぼしてからも、大陸各地で暴虐の限りを尽くしていた帝国貴族ババルオは。アイラックス将軍を喪い敗戦国となった王国へと、ついに触手を伸ばしたのだが。

 そこに潜伏していた「帝国勇者」によって、副官を務めていたアンジャルノン将軍と共に一蹴された挙句。バルスレイ将軍率いる帝国騎士団に捕縛され、裁判にかけられる羽目になってしまったのだという。

 だが、アンジャルノンが護送中の馬車で暴れ出し逃亡すると、それに便乗して脱走することに成功。傷だらけになりながらも辛うじて、遠方の国へと落ち延びていたのだが。

「ハッ、ハァッ、ハァッ……な、なんなんだお前は!? なぜ儂を狙う!?」
「なぜって、あなたが賞金首だからに決まってるじゃない。その首にいくら懸かってるのか、知らないのかしら」
「え……ええィッ! 女如きに捕まってたまるか! 返り討ちにして、その穴という穴を犯し尽くしてくれるわ――ッ!?」

 その先で遭遇した、見目麗しい緑髪の女槍使いによって。股間の剛剣を切り落とされた挙句、帝国騎士団へと突き出されてしまったのだ。

「――ぎ、ぃ、や、ぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁあッ! なっ、なぜだぁあぁあ! なぜ儂が、この儂が、こんな目にィイッ!」

「あなたが、弱かったから」

 それが10年越しの因縁であることを知っているのは、片方のみであり。強欲な醜男が彼女を思い出すことは、終ぞなかったのだという。

「……あなたがただひたすらに、弱かったのが悪いのよ」

 翡翠の如き輝きを放つ、艶やかな緑のロングヘアを靡かせ。扇情的な衣装を纏い、その白い肢体から男を惑わす色香を放ち。100cmを優に超える巨峰を弾ませる、眼鏡を掛けた絶世の美女。

 26歳を迎えた彼女は、槍の切っ先に残る醜男の血を払うと。のたうちまわる彼を冷酷に見下ろし、かつて突き付けられた「現実」を、送り返すのだった――。
 
 

 
後書き
 本作を最後まで読み進めて頂き、誠にありがとうございました! 作者初のR-18作品でしたが、エロに振り切って作者自身も大変楽しませて頂きました。ジルフリーデ達4人の物語は、ひとまずここでおしまいとなります。短い間の連載となりましたが、少しでも皆様に楽しんで頂けたのであれば幸いです(´-ω-`)

 R-18での次回作の予定は今のところありませんが、いずれまた、こういう方向性のお話はやってみたいなぁ……と思っております。この作品と世界観を共有しつつ、本来の主人公である「勇者」にスポットを当てている、全年齢向けの「ダタッツ剣風シリーズ」もどうぞよしなに……(^^;;

 ではではっ! いつかまた、どこかでお会いしましょう! 良いお年をっ!٩( 'ω' )و


 ……ちなみに、今回登場した上級騎士ベルグは「ダタッツ剣風 〜業火の勇者と羅刹の鎧〜」にも、冒険者として登場しておりますぞ(*´ω`*)


・カスタムキャスト製おまけ13




















・最後に
 
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