崩壊した世界で刑部姫とこの先生きのこるにはどうしたらいいですか?
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コラボ章-様々なサーヴァントとマスター…そして性癖。-
三・笠・到・着
前書き
おまたせしました。クソ作者です。
いやーついにこの最新話を書くことができて嬉しいです。
ハーメルンにて一度消去し、二度目は強引に打ち切りみたいな終わらせ方をし、三度目でこうしてここまで書けました。
甲板に上がると、そこには二隻の船があった。
「サーヴァント達を船に!早くしないとこの船は沈むぞ!!」
1つはバーソロミューの船。
生存者を乗せていくが全て女性のサーヴァント。
マスターや男性のサーヴァントはパリスを除き全員が始末されてしまっていた。
「アンタらはこっちに乗りな!」
もう1つはドレイク船長の船。
俺達マスターはこちらに乗り込むよう指示された。
「間一髪だったな…探偵さん。」
「まぁ…はい。」
ドレイク船長の船に乗り込み、まず一番最初に話しかけてきたのは広海さんだった。
「そういや広海さんはどうしてここに?デートの途中だったじゃないですか。」
「探偵さんがあぶないって知って、俺もマリーもじっとしてられなかったんだ。それに…。」
広海さんがバーソロミューの船に乗って助けに来てくれたが、理由はもう一つあった。
「いきなり連絡が来て、呼び戻されることになったんだ。」
「え。」
なんでも自分が住んでるホテルタウン『オーシャン・ビヨンド』の偉い人から連絡が来て、戻らないといけなくなったらしい。
「それと探偵さん。あまり気にとめるなよ。」
「…。」
肩に手をポンと置かれ、励まされる。
「ええ、わかってます。」
「今回は誰のせいでもない。悪いのは葛城財団だ。だからそんな顔はしない方がいい。間違いなく気にするのは…他でもない君のサーヴァントなんだからな。」
「…。」
本当に、誰のせいでもないんだろうか。
ともかく今はおっきーを休ませてやらなきゃならない。
「部屋はどこでも好きなとこを使っていいからね。彼女をゆっくり休ませてやりな。」
ドレイク船長にそう言われ、俺は船内に入る。
あの光景、おっきーが苦しみだしたあの光景は当分忘れられないだろう。
もし誰も助けに来なかったとしたら、おっきーもあんな風になっていたんだ。
俺というマスターを捨て、葛城財団の代表を心酔していただろう。
身震いがする。
寒いからじゃない。怖いからだ。
「…」
「…」
船内に入っていく俺の後ろ姿をじっと見つめていた、四人のサーヴァントとマスター達。
「気にとめない方がいいとはいったけど…。」
「あの様子だと間違いなく気にしてるナ。」
俺の様子を見て舞さんやマリーは終始心配そうな顔をしていた。
「おっきー…大丈夫かしら…?」
「大魔女特性のワクチンを打ったんだ。絶対に大丈夫だよ。」
この偽装船を通して、彼ら全員は葛城財団のやり方を目の当たりにした。
そして許すわけにはいかない。絶対にこの崩壊した世界に栄えてはいけないということを再認識したのだ。
「ところでまりいのますたあ殿。」
「はい?」
「急用で横浜に戻るそうじゃないか。」
「まぁ、そうだけど。」
いつまでも悲しい話をしているわけにもいかない。
そう思ったのだろうか北斎は話題を変えてきた。
「おれ達もちょいと約束があって横浜の図書館に行くことになってナ。途中までご一緒してもいいかい?」
「横浜の図書館…ああ、紫式部の!」
北斎のマスターである彼女もよく知らないが、なんでも舞さんに会うまで同行してもらった中、ある約束をしたのだという。
「お栄ちゃん、なんの約束したの?」
「ン?もしマイが見つかったら、お前さんがたの専属絵師になってやるって言ったのサ。途中まで送り届けてくれた礼にナ。」
「えぇ!?」
「それとその船旅の間に、まりい王妃でも描かせてもらうとするしよう。何か注文はあるかい?まりいのますたあ殿。」
紫式部にサラッとものすごい約束をしていたことが判明し、舞さんは驚く。
そしてそんなことも気にせず、北斎はまた別の約束である、マリー・アントワネットのご尊顔を描かせてもらうのであった。
⚫
…。
身体が重い。
まるで沼の中にいるみたいに、這い上がろうとしてもどんどん沈みこんでいく。
何か汚いものの中に、ゆっくりゆっくりと…。
違う、沈み込んでるんじゃない。
これは…姫がその汚いものに染まっていってるんだ。
足先から膝、
膝からもも、そしてお腹へと、
汚いものはどんどん身体を侵食してく。
自分の身体なのに、自分のものじゃなくなっていく。
まるで、自分が何者でもない新しい自分に生まれ変わってくみたいだ。
だけどそれは、気持ちのいいものじゃない。
きたなくなる。どんどんきたなくなる。
そして、姫からマスターの記憶…まーちゃんの思い出がどんどん塗り潰されていく。
まーちゃんが、新しい何かに上書きされていく。
これは…だれ?
太っていて、清潔感の欠片もない、まるで嫌われる要素を全部混ぜ合わせたような人。
このおじさんは何?そんな不細工な顔で、姫の中を埋め尽くさないで。
会ったことも見たこともないそのおじさんは、サーヴァント達を犯している。
レイプしている、と言った方が正しいのか。
サーヴァントは皆嫌な表情で、また悲痛な叫びを上げながら犯されている。
嫌悪感を抱くこの光景。
だがそれが、次第に反対の感想に変わっていく。
姫も…恋様に滅茶苦茶に犯され、奴隷のように乱暴に扱ってほしい。
…
今、姫は何を考えた?
レン?それは誰?
どうして知らない人の名前を知っているんだろう?
いやだ。いやだ。いやだ。
まーちゃんの思い出が消えていく。
大好きだったまーちゃんが、どんどん大嫌いになっていく。
お願い、消えないで、消させないで。
姫の中からまーちゃんを消さないで。
「…!!」
気が付くと、ベッドで寝ていた。
知らない天井。知らないベッド。そして少し部屋が揺れているということは今ここは船の中だろう。
あの船には個室なんてなかった。じゃあここは?
それよりもまず、姫はどうなった?
撃たれて…霊基がどんどん何かに汚染されていくような気がして…それから…。
「起きたかよ。」
「…!」
いつもの声が聞こえ、ハッとなって顔をあげる。
ベッドのすぐ横、そこにはまーちゃんが椅子に座っていた。
「まーちゃん…。」
「うなされてたぞ…お前。」
「う、うん…、ちょっと嫌な夢見ちゃって…。」
そう言うと、まーちゃんは深刻そうな顔をしてた、
こんな顔、今まで見たことなかった。
「まーちゃんとの思い出が…全部なくなってくの。知らないおじさんで頭がいっぱいになって…まーちゃんの事が嫌いになっていく夢…。」
「…。」
ただ俯き、姫の言葉を聞いている。
「…怖かったろ。」
「うん…怖かった。」
「そっか…ごめんな。」
何を言うんだろう。そう思ったらまーちゃんは謝った。
「え!?なんで!?どうしたの!?」
「全部俺の責任だよ。お前がそうなったのも、よくよく考えればあの船が怪しかった。」
握りしめた拳が、静かに震えている。
まーちゃんは怒っているし、今悲しんでいる。
「冷静になって考えれば分かったハズだ!それなのに俺は目先の欲に目が眩んで…子安さんやアンデルセン…そしてお前も…危険な目に遇わせたんだ…!」
「…。」
怒りの矛先は誰でもない、自分自身だった。
「で、でも助かったからいいじゃん!」
「それでいいってワケじゃねーんだよ!無責任に突っ走って!お前を奪われかけたんだぞ!?」
「そう…なの?」
奪われかけた。
後から聞いた話によると、姫は洗脳弾という弾丸を撃ち込まれ葛城財団の代表のモノになりかけたらしい。
じゃああの夢は…洗脳弾によるものなんだろうか。
まーちゃんの思い出が消え、代表っていう明らかにエロ漫画のモブ汚じさんみたいな人で埋め尽くされたのは
「報酬金の事しか頭になくて…それのバチが当たったのさ、俺は。きっと舞さんや北斎が来なかったら…。」
「ねぇ、まーちゃん。」
まーちゃんは気にしている。
姫を危険に晒してしまったことを。
5000万という報酬に目が眩んで、先を急ぎすぎてしまったことを…。
でも、それだけ自分を責めてるってことは、それくらい姫を大事にしてくれてるってことだ。
「なん、だよ…。」
「姫は大丈夫。だからそんなに自分を責めないで。」
寂しそうで、悲しそうなまーちゃん。
これ以上自分で自分を傷つけてほしくない。
だから、ぎゅっと抱き締めてあげる。
「…おっきー。」
「落ち込まないで。まーちゃんはいつものまーちゃんらしくしててよ。じゃないと姫も調子狂っちゃうから。ね?」
「でも俺は…あんなことしてマスター失格だ…。」
「それはもういいの。」
落ち込んでる。
今まで見たことがないくらいに。
ゲームで負け続けた時とか、早漏で先に自分だけイッちゃった時とか、そんなものとは比べ物にならないくらい落ち込んでる。
可哀想に。
「まーちゃんが姫のマスター失格かどうかは、姫が決めることでしょ?」
「それは…。」
「へーきへーき。まーちゃんは立派な姫のマスターだよ。」
ぎゅう…とまーちゃんが抱き締め返してくる。
肩が震えてる。
怖くてしょうがなかったんだ。
頑張って意地張ってたけど、やっぱりまーちゃんは
「おれ…いいのかなぁ!?おっきーのマスターで…いいのかなぁ!?」
「うん。いいんだよ。だから元気だして。いつものまーちゃんみたく、意地汚く笑ってて欲しいな。」
泣き虫で甘えん坊だ。
「けど…おれ…おれは…っ!」
「まーちゃん、痛いよ。」
失いたくない。
そんな思いが、こうやって強く強く痛いくらい抱き締めていることで嫌というほど伝わってくる。
こんなに泣いた姿を見たのは初めてだ。
けど、それだけ姫を失いたくない証拠なんだよね。
うん。わかるわかる。
だから今だけは、たくさん甘えていって欲しい。
「痛いけど、まーちゃんの気が済むまで、このままでいいよ。」
そしてまたいつも通りのまーちゃんに戻って欲しい。
夢はまだ、叶っていないのだから。
⚫
それから翌朝。
「清々しい朝だな。ところでマスター、煙草はどうした?」
「さぁ、今頃人魚姫が吸ってんじゃないの?」
昨日の雨は嘘のような快晴。アンデルセンの言う通りとても清々しい朝だった。
「禁煙か?はっ!今度は何日続くだろうな。」
「言ってろ。今度はマジだから。」
「相変わらずっすね。アンデルセンに子安さん。」
甲板に出るとちょうど二人がまた何か言い合っていた。
「探偵さん…私、何も出来ることがなくてその…」
「もうあれはいいんで。それに、おっきーも完治しましたから。」
幹部だった子安さんはあの洗脳弾に対して何も対処することが出来なかった。
でもそれは無理もない。あれは彼女がいなくなってから本格的に実装されたものなのだから。
「おはよ、探偵さん。」
「おはようございますマキ…じゃなくて舞さん。今日もお綺麗ですね。」
と、朝から舞さんに挨拶してもらった。
いやーマジで今日はイイコトあるぞー!
「おはよう、探偵さん。」
「おはよう!とってもいい朝ね!」
それを聞きつけ広海さんとマリーもやってくる。
なんかもう揃いそうな勢いだな。
「探偵さん!おっきーは!?」
「あー、起こしたんだけどあと十分って爆睡してます。お越しにいってあげたらどうです?」
「そうね!」
そういい、マリーは船内へと走っていった。
頑張れよ、おっきー。
「その様子だと…立ち直れたみたいだな。」
俺を見て、残された広海さんは言う。
だってしょうがねぇもん。いつまでも落ち込んでたってさ。
それに
「ずっとうじうじしてんのも俺らしくないっておっきーに言われたんで。そりゃそうだなと思って。」
「そっか…俺もその方がいいと思うよ。」
そして今、船内からは「グッドモーニング!おっきー!」というモーニングコールと「ぎやああああああ朝日と笑顔が目にしみるうううううう!!!」という悲鳴が聞こえてきた。
「その…。」
「はい?」
「うちのマリー、迷惑かけたりしてない?」
「あ、大丈夫っす。面白いんで。」
そうして話していると、遠くの方に陸地が見えてきた。
「さて、そろそろ到着さね。」
マストにいたらしいドレイク船長が飛び降りてきて、号令をかける。
「あれが三笠だ!降りたい奴はこのまま!横浜に行きたい奴は隣のバーソロミューの船に乗りな!もたもたすんじゃないよ!!」
あれが三笠。
まず見えたのはあの三笠記念艦。
依頼主はあそこを居住区に改造していたといってたがまさかマジでそうだったとは…。
「それじゃあ探偵さん。」
「ええ、ほんとにお別れっすね。」
広海さんと握手をかわし、今度こそ本当に別れる。
「マリー!そろそろ行くぞ!」
「わかったわあなた!ほら、おっきーも早く支度して!」
マリーもおっきーをひきずって甲板に上がってきた。
「また会おう。探偵さん!」
そういい、彼はバーソロミューの船へと飛び乗っていった。
「おっきー!今度は三人でヒロインショーに!」
「諦めてなかったのぉ!?」
マリーもまた、華麗に飛び越え向こう側に移る。
おっきーにはない大した運動能力だなおい。
そして、
「それじゃあ僕らも。」
「だナ。」
舞さんと北斎の二人も、そちら側へ移る。
「マキさん、お手をどうぞ。」
「大丈夫!」
バーソロミューが優しく手を差し伸べてくれたが舞さんはそれをガン無視。
着物の裾を翻し、北斎と共に華麗に乗り移ったとさ。ざまーみろ。
「そんじゃアンタらは、三笠だね。」
残った俺達、子安さんにアンデルセンはこのままドレイク船長の船に残り、もう目と鼻の先の三笠を目指す。
「やっと人並みの暮らしが出来るのか。」
と愚痴を漏らすアンデルセン。
「まーちゃん。」
「なんだよ。」
三笠記念艦を眺めていると、おっきーが隣に寄り添ってくる。
「元気、出た?」
「当たり前だバカ。いつまでも落ち込んでたって夢は叶えられねーからな。」
「そっか。」
立ち止まっていては夢は叶えられない。
俯いていたままじゃ前は見れない。
だから立ち直って、夢に向かって前に進むしかない。
俺達には、俺達が正しいと信じる夢があるんだからな!
「待ってろよ三笠の院長!新鮮なアンデルセンをお届けしてやるからな!!!」
⚫
横須賀、三笠記念艦。
「マスター、ハインド商会の方がお見えになりました。」
セイバーのジルからそう声をかけられ、マスターと呼ばれた男はとりあえず今書いていた書類をまとめ、椅子から立ち上がる。
「ハインド商会?注文は何もしてないハズだけどな…。」
「そうですね…強いて言うなら注文の者…アンデルセンの件でのことで…。」
「アンデルセンか。思ったより早かったな…。」
そういえばアンデルセンをつれてきて欲しいと依頼していたことを思い出し、彼は甲板に出ることにした。
なにぶん最近はかなり忙しく、ついこの前のこともうっかり忘れてしまっていることが多い。
サーヴァント達からは休めと言われるが、そういうわけにもいかいのがこの男、院長なのだ。
「ジル。状況は?」
早足で歩き出す彼、この三笠の院長にジルはついていき、状況説明を始める。
「はい、周辺の住民は全て避難を完了しました。戦闘による二次災害の確率は今のところ極めて低いです。」
「そうか、良かった…。」
とあることがあり、彼は近隣の住民に避難勧告を出していた。
特にサーヴァントを持つマスターは、絶対にここにしばらくは近づかない方がいいと付け足して。
「しかし、タイミングが少々悪いですね。」
「うん。早いのは確かに助かる…でも」
ドアを開け、日がさんさんと降り注ぐ甲板へと出る院長とジル。
遠くの方からは確かに、ハインドの象徴である黄金の鹿号がやってきていた。
「少々悪いどころじゃない。最悪のタイミングだ…。」
やってくる船を見て、院長は不安な表情を浮かべながらそう呟いた。
後書き
まことに申し訳ないおしらせなのですが、
ここからしばらくエロが消えます。
R-18小説なのにね。
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