あいつの女ということに強引にさせられて
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第5部
5-1
秋になって、いつまでも黙っている訳にもいかず、私は、お母さんに話すことにした。お母さんが帰ってきて、ご飯を食べた後
「お母さん、私ね 結婚したい人居るの」
「えぇー あんた だって まだ・・ やっと勤めだしたのに・・」
「すぐって わけじゃぁないの 来年ね 春が過ぎたら・・」
「それだって 急よー 誰と? お母さん知ってる人?」
「今の会社の社長さんと」
「そっ そうなの もう お付き合いしているんでしょ?」
「うん 1年ぐらいになる」
「1年って あんた 会社 入ったとこじゃあない ・・・ 直ぐに お付き合い始めたの?」
「うん だんだんと・・ だから 彼が 一度 お母さんに、ご挨拶したいって・・ ねぇ 会ってくれる?」
「そんな 会うたって 結婚したいってこと?」
「うん 結婚の承諾をもらいたいって」
お母さんは、私には、結婚に賛成とも何とも返事しなかったが、何となく、機嫌が悪かった。でも、あの人は挨拶にウチに来ることになった。お母さんは、こんな狭いところなのにと言っていたが、あの人は強引にウチが良いと言っていたのだ。
「初めまして、篠原穣一郎と申します。お嬢さんとは結婚を前提にお付き合いをさせてもらっています」
「えぇ すぐりから聞いていますけど・・ 結婚たって この子 まだ お勤めして間もないですし、お嫁さんとして何にも出来ませんのよ それに、こんな子じゃぁ 社長さんのお家のほうで、なんとおしゃるかー」
「うちの 父と母には それとなく伝えてあります それに、父もすぐりさんのことは会社で知っていますし」
「あぁー そうね 高校の時 アルバイトでお世話になっているわね」
「えぇ よく働く良い娘だと言っておりました 僕も、素直でよく気のつく娘だと思って、好きになりました だから、ぜひとも結婚したいと決めたんです」
「と言われましても まだ 妹がこれから大学受験ですし・・」
「聞いています でしょうから、直ぐにじゃぁなくて、いちごさんの大学が決まってからでいいんです どうか、許してもらえないでしょうか」
「そうねー 社長さんも、ご立派な方なんですから、なんも、この子でなくっても、もっとふさわしい女の人が居るんじゃあないですか ウチはお金もありませんしー うちも すぐりに出ていかれてもねー 一度、社長さんのご両親にもお会いして・・ どう 思われているのかもお伺いしたいわ」
結局、その日は、お母さんは結婚することについて、良いとも悪いとも言わなかった。でも、あの人が言った言葉で、私の給料をあてにしていることを感じていた。
「ごめんなさい 穣一郎さん ああいう人なんです」
「いいよ 気にするなよ 父母に言うよ 一度 会ってくれって」
あの人が帰る時、私は、途中まで送って行ったが、いちごのことは、私が面倒見るって、お母さんに切り出す気がしてなかった。
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