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崩壊した世界で刑部姫とこの先生きのこるにはどうしたらいいですか?

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幕間
  幕間:丹下 真教

 
前書き
どうもお久しぶりです。クソ作者です。
新規のお話を書くのでマジでお久しぶりですね。
さて今回はまーちゃんやその他愉快な仲間達のお話ではなく、敵のお話。
種火の島にて戦った葛城財団技術顧問、丹下さんのお話になります。
彼も元は普通の人間であったが、何故あそこまでねじ曲がったマッドサイエンティストとなってしまったのか
世界が崩壊し、彼がどう変わっていったのかを書いていこうと思います。
それでは本編、どうぞ 

 
「やばい…やばいやばいやばい!!!」

最初は夢かと思った。
駅で半分寝ながら電車を待っている中、突然の大地震。
地震大国の日本でも中々ないとんでもない揺れだった。
ああ、また遅延だろうなとぼんやりと考えていたがそんなものではなかった。

怪物、モンスターというべきか。
自身の直後どこからともなくそんな奴らが現れ人々を襲っていく。
ああ、これは夢か。だとしたらじきに覚めるだろう。
徹夜続きでぼんやりしていた俺はそう考え、頭の中で起きろ起きろと念じた。
しかし、目は覚めない。
ようやく目の前で人が殺され、スーツに血飛沫がかかった事で俺は理解する。

これは紛れもない現実だと。

「やばいやばいやばい!!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!」

そうして、俺は一目散にその場から逃げた。
どこへ逃げる?安全な場所だ。
しかし安全な場所とは?
会社か?マンションか?実家か?

周りを見ればビルは地震により倒壊。
おそらくほかの建物も無事では無い。

でも、逃げなければならない。

「う、うわああああ!!!!!来るなあああああ!!!」

途中、人を食い殺している化け物と目が合ってしまった。
奴らは食事中のソレを投げ捨てると、群れを生して俺を追いかける。
人型ではあるが、顔は狼のようにとがっている。
狼男とでも言うのだろうか?
追いつかれれば食い殺される。
いやだ、生きたい、死にたくない。
毎日毎日惰性で研究を続けて来た味気のない日々
しかしその日々が急に恋しくなる。
やりたいことが見つからず、死んでもいいと思っていた。
だが今、こうして死に直面した時死にたくないと思い、生きるために必死に走っている。

そうして、走って走って走り続けた



「は、は、はーっ、はーっ」

何分走ったろうか?
肺が破けそうだ。
足ももう1歩も動かない。
恐る恐る後ろを向いてみれば、そこにはもう何もいなかった。

そうして安心感が溢れ、その場にどさっと座り込んでしまう。

「…これは、なんだ?なんなんだ?」

酸素供給が追いつかず、荒い息を繰り返しながら今の状況を考える。
そんな時だ


「……………?」

もう、何も見ても驚かないと思っていた。
あんな凄惨な光景を目の当たりにしたのだから。
しかし、俺は固まってしまった。
目の前の異常な光景に、
いいや、固まったと言うよりかは、釘付けにされた。

その光景とは

「オラァ、もっと締めろよマンコ!いくら強かろうがサーバントの時点で俺様には勝てやしねぇんだ!!」

全裸の中年男性が、コスプレした女性を犯していた。

さらに付近には袈裟斬りでバッサリと斬られ絶命している男の姿が。

訳が分からなかった。

そう、
この訳の分からない出会いこそ、
私、丹下真教(たんげ まさのり)と後の葛城財団代表、葛城 恋との初めての出会いだ。



「俺様の優秀な精液だ、ありがたく受け止めやがれよ…!おっ、おおおおおっ…!!!」

犯されていたコスプレイヤー。
しかし彼女は中年男性が絶頂を迎えると、糸の切れた人形のように動かなくなった。

そして、

「……。」

ずるりと挿入されていたものが引き抜かれ、コスプレイヤーはゆっくりと立ち上がる。
そして中年男性はこう言った

「さて、まずはこの世界初のマンコゲットってワケだ。知らねぇ見た目だが…おいお前、名前は?」
「…わたしは……わたしは?…ナイチ…」
「いや、いいわ。お前マンコ一号な。」

彼らそうして、極めて品性のない会話をしている。
そしてコスプレイヤー…FGOのナイチンゲールのコスプレをした女性はそのまま頷き、復唱した。

「はい…私は恋様の忠実なる下僕…ナイチンゲール改め『マンコ一号』です。」
「おお、そうだ。さてマンコ一号、早速だがなんか服ねぇか
?」

全裸の中年男性はそう言い、ナイチンゲールのコスプレイヤーに服を探させる。
その時、彼は私と目が合った。

「…!!」

その時、何も言わずナイチンゲールのコスプレイヤーが俺めがけ走り出す。
その手にはピストル。逃げ出そうとした俺を組み伏せ、後頭部にそいつを押し付けた。

「どうしますかマスター。覗き見していた雑菌をどう始末いたしましょう。」
「こ、殺さないでくれぇ!!!」

彼女が引き金を引きさえすれば、俺は直ぐに死ぬ。
再び迫る死の危機、俺は情けない悲鳴を上げて叫んだ。

「頼む!!俺は研究者なんだ!!いつか世の役に立つための医療に関わる研究をしている!!きっと役に立つ!!だから…仲間にしてくれ!!同行させてくれ!!傍に置いてくれ!!きっと…きっと損はしないと思うからァ!!!」
「……無様な命乞い。なんとも哀れです。」

そういい、ナイチンゲールのコスプレイヤーは引き金に指をかけた、
しかし、

「待て。」
「……。」

中年男性が、待ったをかける。

「恋様、何故でしょうか?このような雑菌は即刻殺すべきかと」
「マンコごときが俺様に口答えすんな。令呪を以て命じる、『黙って突っ立ってろ』。」
「……っ!!」

するとどうだろうか、
彼がそう言うとナイチンゲールは俺の上から退き、命令通りその場で棒立ちになったのだ。

「ひっ…!」

しかし、目だけはきっちり俺を睨みつけている。
そうして怯えていると、全裸の中年男性が近寄ってきた。

「…名前は?」
「た、丹下です!丹下真教!27歳です!主に医療に関する研究に携わっておりました!!!」
「……」

〝医療〟
そのワードを聞いた瞬間、中年男性の眉が上がった。

「…面白ぇ、ついてこい。」

そう言うと中年男性は踵を返し、歩き出す。

「あ、あの…どこへ?」

恐る恐るついて行き、俺は彼にどこへ行くのかと問う。
すると、彼はこう言った

「どこへ?俺様の俺様だけの王国〝イブンタイ〟さ。俺様が作り上げる世界を間近で、1番に見せる権利をやるって言ってんだよ。」

この時は、わけがわからなかった。
ただこの人について行けば生きていける。死なずに済む。信念も、目的もない。
ただ生きたい為だけに俺は、

「はい……!」

彼に続いた。




数日後
俺は色々なことを理解する。
最初は理解し難いこの世界だったが、だんだんと慣れてきて目の前のことも受け入れられるようになった。

まず最初に、この世界にはサーヴァントがいる。
世界がこんな化け物だらけになってしまった神からのお情けなのだろうか、Fateでおなじみのサーヴァント達がいるのだ。
とはいっても、それは誰もが呼び出せるものではなく、FGOなるアプリをプレイしていたものが呼び出せるそうだ。
通説によれば、1番大事にしていたサーヴァントが来るそうだ。
大体は一騎だが、複数呼んでいる猛者もいる。
ちなみに私も実を言うとFGOプレイヤーなのだが、何故か来ない。
来るとしたらネロだろうと推測する。
赤も嫁も水着も皆絆礼装は貰っているしな。
何せEXTRAからプレイしているわけであって……いや、話が逸れた。

ともかく、FGOプレイヤーはマスターとなり、守られながらこの世界で安全に過ごしている。

そして、この葛城 恋という男は


「やめてくれぇ…!スカサハを…俺のスカサハを返してくれぇ!!!」

そのマスターが持つサーヴァントを奪うことが出来る。
マスターとなったものには3画の令呪が与えられることは周知の事実だろう。
だが彼にはなんと333画の令呪があり、他人のサーヴァントに行使することが可能。
人のサーヴァントの令呪で拘束し、犯す。
1画で効かないのであれば重ねがけをする。10画でも20画でも。
333画もある上、少し時間があれば回復するのだ。
だからこの人は勿体ぶらず使う。

さらに、この人にあるのはその令呪だけではない。

「お、おお…っ!おお…ゥ。」

サーヴァントに腰を向けさせ、犯す。
そうして数分間存分に味わった後、無遠慮に中へ出し、恍惚とした顔をうかべる彼。

するとどうだろうか

「あ、が……っ!?あ、ああああ!!!!」

サーヴァントが激しく震え出す。
頭を抱え、悶え苦しむように、

「マスター…マスター…っ!」

マスター、マスターと何度も主を呼び、手を伸ばす。
彼女のマスターはナイチンゲールに取り押さえられていたが、いつの間にか後頭部を撃ち抜かれて殺されていた。
なので、どれだけ呼ぼうが返事は無い。

「マスター…どこにいる!?マス…ター?マスターとは…一体…だ、れ…?」

やがて、伸ばしていた手がだらりと垂れ、頭もかくんと垂れた。

数秒の後、彼女はゆらりと立ち上がる。

「……」
「こいつも見たことねぇサーバントだな。おい、名前はなんて言うんだ。」
「スカ…サハ、影の国の女王…?否、私は恋様の忠実なる奴隷……。」
「ああ、そうだ。てめぇは俺様の奴隷、『マンコ十四号』だ。」

そう、令呪なんておまけだ。
この人の能力は、犯したサーヴァントを完全に自分のものへとする。
正確に言えば、彼の体液…もとい精液を体内に入れられた者は霊基を書き換えられ、彼の思うがままにされるそうだ。
先程彼が言ったように、この方法で合計14騎ものサーヴァントを我がものにしてきた。

彼自身はこれを『霊基書換』と呼んでいた

ちなみに霊基をいじって身体改造も可能。
一度に何十人も妊娠させて産ませたり、自分の糞便しか食べられないようにしたり、この前は複数のサーヴァントの口と肛門を繋げて遊んでいた。

彼はそんな猟奇的で拷問じみた事をして、手を叩いて子供のようにケタケタと笑っていた。
最初は引いていた俺だが、奴の機嫌を損ねてしまえばどうなるか分からない。
だから、一緒になって笑った。

しかし、そのうち芽生えてきた真っ黒な感情があった。
その感情とは…

「やめろ…やめろ!!やめろおおおお!!!!」
「うるせぇ黙ってろ。てめぇのマンコは俺様がもらってやる。」

その能力上、彼は人からサーヴァントを奪い、レイプする。
無論マスター達は取られまいと抵抗する。
しかしこちらは10騎以上のサーヴァントを連れ、333画の令呪持ち。
抵抗しようが全くの無駄だ。
そうして残酷にもサーヴァントは奪われ、目の前で犯されていく。
マスター達は皆虚しい叫び声を上げたり、咽び泣いたり、あるいは言葉を発さなくなる。

その瞬間、その時だ。
俺は…何か自分の奥底からふつふつと湧き上がる未知の感情を知った。
誰かのものがこいつに犯されている時、何故かとても興奮する。
下半身が熱くなる。ふと下に目をやれば勃起している。


「俺の三蔵ちゃん返してくれよ!!!」

「ジェーン…?どうして俺に銃を向けるんだ…?」

「俺が誰だかわからないって!?その汚らしいおっさんはマスターじゃない!戻って来い!!哪吒!」

「一緒に約束したじゃないか…!俺達のマハトマを見つけようって!なのに…なん、で…」

「ぐるじい…くる…しい…っ!セミラ、ミス…どうじで…!」


彼と行動していく中で、こういった光景を何度も見てきた。
マスターは皆虚しい叫び、泣き、無駄な怒りを吐き出す。
彼に犯される己のサーヴァントを見せつけられながら。
嗚呼…最高なんだ。この瞬間が。
俺はこの瞬間がたまらなく好きなんだ。
この人について行って、正解だったんだ。




それから、

「こ、これは…!?」
「ああ、俺達の本拠地みてぇなもんだ。」

見せたいものがある、ついてこい。
そう言われ近くの海に行くと、そこには『島』があった。
いや、それは島ではなく街の一部を切り取ってそのまま海に浮かべたみたいなものだった。

「あちこち彷徨くのもめんどくせぇからな。ここは移動式の島でも作って、んで職員募集して財団として起業しようと思ってる。」

島を作った?起業する…?
意味がわからない。島なんて作れるものなのか?
しかも移動式?数日でそんな代物は出来るのか?

島に1歩踏み込む。そこは全くの無人。
人の気配もなく、建設工事の作業員も居ない。

「まぁついてこい。」

そういって彼は俺を追い抜かして行き、島の中央に位置するひときわ高いビルへと入っていった。

言われるがまま彼について行き、そうしてエレベーターで最上階へと向かう。

そこにあるのは、だだっ広い部屋と高級そうな机と椅子。
壁は一面のガラスで、存分に太陽の光が差し込んでくる。

「ふぅ。」

そうして彼は、革の椅子に腰掛けた。

「やっぱ俺様は、こういう方が性に合ってる。」

そうして彼は満足そうに微笑むと、いつの間にか高級スーツに身を包んでいた。

「そうだな。名前は葛城財団。俺様による俺様の為の巨大企業。全てのマンコをここひとつに収め、俺様だけのイブンタイを作り上げるための王国だ。」
「……。」

そうして彼は、俺を指さし役割を与えた。

「お前、医療関係で研究してたんだってな。」
「あ、はい…。」
「じゃあ決まり。お前研究者だ。助けてやった恩のため、俺様のためにサーバントについて研究してその身を捧げろ。いいな?」

それから、丹下真教の研究者としての第2の人生が始まった。



数週間後、
葛城財団の社員総数は200を越えようとしていた。
サーヴァント達に命令し、至る所に職員募集の貼り紙を貼った結果、集合場所には大量の人材が集まった。

サーヴァントを自分のものにできるなんて触れ込みが書いてありゃあ、そりゃ誰だって飛びつくってもんだ。
人間ってのは他人の持ってるもんが凄まじく羨ましくなる生物だからな。
そうして集まった者達は大きくわけて2つの部署に分けられる。

ひとつは実働部隊。
船やヘリを用い、この移動式の島から日本各地へ向かってサーヴァントを捕らえる為の部隊だ。

もうひとつが私の所属している研究所
今は子安とかいう財団の枷でしかないクソアマが技術顧問を勤めており、研究は滞っている。

俺はサーヴァントでアレコレ試してぇんだ。
それなのにやれ人権だ非人道的だの喚いてやめろってほざきやがる。
黙ってろ。サーヴァントに人権もクソもあるかよボーケ。
てめぇが天才じゃなけりゃ今頃俺は好き勝手やれたんだ。

にしても、こいつは天職だ。
なーにが人類の未来のためだァ?
クソつまんねぇ研究よりかはよっぽど楽しいぜ、サーヴァントの研究ってのはよ。

そういえばこの前、面白いモノも出来た。
サーヴァントの体内に入れば霊基をたちまち汚染する代表の精液、
そいつを薬にして飲ませちまえばいいのではと閃いたが、それはもう名案だった。


奴の精液はどれだけ経とうが絶対に腐らずその効果を発揮する。
そんでオマケにやつの1度の射精量も半端じゃない。まさに豚並だ。
だから薬の大量生産も容易に行えた。
だが、一つだけ欠点があった。

カプセルにして飲ませさえすればサーヴァントはこちらのものになる。
しかし、そこまでがあまりにも大変だった。
当然サーヴァントってのはバカみてぇに強い。
大の大人が複数人でかかろうが軽く返り討ちだ。

抜群のチームワークと人外じみた執念を持つ山本部隊は別だが、他の部隊だと一騎のサーヴァントを捕まえるのにあまりにも犠牲が多すぎる。
これでは非効率だ。

だから私は効率化を目指した。
飲ませられないのなら、ぶち込めばいい。
おさめるのは薬ではなく、弾丸(タマ)にすりゃあいいんだ。

そんな時、
俺の元へ朗報が舞い込んだ。

「丹下さん!!大変です!!」
「おや、どうしました?」

1人の研究員が私の元へ慌てた様子でやってきた。
膝に手を付き、息も絶え絶えの様子で彼は掠れた声で俺に報告する。

「技術、顧問が…子安さんが脱走しました!!」
「……。」

このとき、俺はどう言った顔をしていただろうか?
いや、自分でもわかった。
無意識に口がにんまりと開いた。
目を細め、にっこりとしていた。

部下が不思議そうに「丹下さん…?」と恐る恐る尋ねていたのを覚えている。

確かにあの天才を失うのは財団の損失だろう。
しかし、ついに枷が外れた。
あとから聞いたがサーヴァントの召喚に成功し、我に返ってこの財団から脱走することを決意したらしい。
まぁやつは女だ。
ここに嫌悪感を示してたのも確かだしな。
まぁ、助かったよ。

そこから俺の快進撃は止まらなかった。

洗脳薬に変わる洗脳弾の開発に成功し、捕獲率は大幅に上がり、殉職する実働部隊も減った。

さらには財団代表に使い込まれ、〝おさがり〟のオナホとして使い込まれゴミとなったサーヴァントの再利用、自爆特攻を主とした使い捨ての兵士、通称〝ゾンビ兵〟の開発にも成功。

それとアレだ。兵力不足の解消のためゾンビ兵だけでなく、サーヴァントの手足を切ってコンパクトにし、ロボットに組み込ませた試作型の英霊兵も完成させた。
今は霊基のみを定着させた制式採用型の開発にも取り掛かっている。

さらには代表の霊基書換で妊娠が可能になったサーヴァントを改造し、大量に兵士を産ませるプラントとして生まれ変わらせる開発も同時に進行中だ。

さぁ、これからもっと忙しくなる。
でも、楽しい。とても楽しくてたまらねぇんだ。





「以上が、今回の結果となります。」

そうして俺は技術顧問となり、端末をチェックしながら代表に昨今の研究成果と進行中のプロジェクトについて話している。

「そういや、まだ見つからねぇのか?」

と、代表があることを聞いてきた。
おそらく〝アレ〟のことだろう。

「ええ、まだですね。顔写真で実働部隊全員は彼の顔と特徴は分かっておりますが、未だに手がかりはゼロです。」
「ゲロマンコは?」
「それもまだですね。この前山本さんが何騎か捕らえて来ましたがどれもマスターがおり、皆違う人間でした。」
「ちっ…。」

舌打ちする代表。
彼には、どうしても探し出したい人物がいるのだ。
それが彼の弟。
写真を見せてもらったが、血の繋がった兄弟とは思えぬほど似ていなかった。
彼は、その弟が死ぬほど憎いらしいのだ。
さらに弟にはサーヴァントがいるらしく、それに酷く固執している。
代表が言ったゲロマンコとかいう品性の欠片も無いあだ名をつけられているのは葛飾北斎というサーヴァントだ。

「まぁこれだけの隊員がいるのです。毎日全国へ飛び立っていますし見つかるのも時間の問題でしょう。」
「まぁ、そうだな。あいつは1人、ゲロマンコとは離れ離れ。あんなクソバカ知恵遅れの弟のことだ、なーんもできねぇで泣き喚いてるに決まってる。」

酷い言われっぷりだなぁ…。
そう思いながら、俺は研究成果の続きを述べようとした。
その時だ。

「うわっ!?」


ポケットにしまっていたスマホが、突然輝き出したのだ。

「な、なんだこれ…!?」

眩いばかりの光を出すスマホ。
慌てて手に取るも、画面は真っ白に輝き続けている。
眩しさのあまり、俺も代表も手で覆い隠し目を凝らしてみていたのだが、
そうして数秒、光はやんだ。

スマホには何の異常もない。今まで通り使える。
ただ異常は、目の前にあった。

「遅れてすまぬな!余のマスターよ!」
「…!」

聞いたことのある声、
何度も何度も飽きるほどに聞いたこの声は、知っている。
スマホから顔を上げ、恐る恐る視線を目の前に移すとそこには

「なんだその顔は?まさか余の美しさに見惚れるあまり言葉を無くしてしまったか。うむ。余のマスターの特権だ!このネロ・クラウディウス!存分に見るが良い!」

通称赤セイバー、
ネロ・クラウディウスがそこにいたのだ。
その後、手の甲に走る焼けるような痛み。
見てみればそこには令呪。

そう、俺はたった今、この瞬間からマスターになったのだ。

「……。」
「む?マスター、この豚のようで芸術性の欠片も感じさせぬ不細工な男は?」

最悪のタイミングで。

「丹下。」

代表は、それだけ言った。
それだけで、俺に何をして欲しいか分かった。
せっかくのサーヴァント
唯一無二の、俺だけのサーヴァント、
そのサーヴァントは、今、

「どうしたマスター?なぜ泣いている?ははっ!ついに余の美しさに感極まって感動してしまっ」
「れ、令呪を以て、命ずる…。『ネロ、代表に股を開け』…!」

代表の所有物となる。
震える声で、涙を流し、俺はグチャグチャになった感情で吐き出すように言った。

そこから先は、どうにも覚えていない。
どんな光景だったか、どんな有様だったか、
ネロは何度もこちらに助けを求めていた気もする。
こちらに恨み言を吐いていた気もする。
何故?という顔で、憤怒の表情で、
代表に犯されながら、何か言っていたような気がする。

それから代表に中出しされたネロは静かになり、俺の事など一瞬で忘れて忠実な奴隷の一騎となった。

「いい具合のマンコだったぜ。ありがたく使っといてやるよ、丹下。」
「感謝の…極みでございます……!」

ああそうか、
こうしてサーヴァントを取られたマスターは皆、こんな気持ちなのか。

でも、待て。

「…は、はは…はははは…!」

礼をして気付いた。
いつの間にかズボンの股間の部分が濡れている。
漏らしてるんじゃない、俺は知らない間に射精してたんだ。
大事なネロをこんな薄汚ぇデブオヤジに犯されて、興奮していたんだ。

ああ、やっと気付いた。
俺は好きなんだ。
こういうのが、
そして望んでるんだ。
こういった不幸がいたるところで起きる、こいつの支配する世界が。

「はは、はは…ははっ!はははは、ははははははは!!」

狂ったように笑う俺、
いや、狂ったんじゃない、〝目覚めた〟んだ。
大好きだったサーヴァントを取られ、犯され、ここから俺は完全に吹っ切れた。





結論から話そう。
俺はあいつの作り上げた世界に、不幸だらけで俺だけが得する最高の世界に行くことは出来なかった。

あのあと、俺の研究は更なる進歩を遂げた。
財団のサーヴァント捕獲率も過去最高となり、このままうまくいけば日本は葛城財団の支配下に置かれ、全てのサーヴァントが代表の手中に収められるだろうと誰もが予測した。

俺の人生もまさに順風満帆だった。

あの、『種火の島』に行くまでは…


「…………………」

俺は今、湖の底にいる。
海?川?いや、確かに湖だった。
どれくらい前だったか、俺は『種火の島』の調査もとい葛城財団の支部を建てるよう命令を受けて直々にやってきた。

最高傑作のキメラサーヴァントを連れ、さらには最新型の英霊兵。
行く手を阻むものがいれば消し去るつもりだったし、そんじょそこらのクソサーヴァントには勝てないはずの戦力を備えて来た。
そう、勝てないはずだった。


負けたのだ。
英霊兵も、最高傑作も倒された。
相手に凄まじい強さや名のあるサーヴァントがいた訳では無い。
城に住み着いた妖怪、昔いたらしい馬鹿力女、
そして、ゴルゴーンと姉妹の関係にあたる、なんの力も無い女神。

最期に俺は、その女神に石にされた。
あの時石にされていなければ、俺は船の爆発に巻き込まれ死ねたかもしれない。
そっちの方が幸せだった。

何せ今の俺は石となり、動けないまま暗い湖の底にいる。
さらにあの女神のいたずらなんだろう。
俺は身体は石にされたものの、精神は生きている。
生きながらにして、死んでいる。
心までは石化されず、俺はあれから何日も何時間も何分も何秒もここでただひたすら〝いる〟

どれほど経ったか、今地上では何が起きているか、
わかる事としては少し前、湖の底からあのクソデブの顔がずらりと並んだ魔神柱みたいなものが生えてきたのを覚えてる。
あれ程のインパクトを持った化け物は、そうそう忘れられない。

「……………………」

ずっと1人、話す相手も暇を潰すものもない、
ただここにおり、ひたすらここに〝いる〟
死ねないのなら、発狂した方が楽になれる。そう思った時もあった。
しかし、できない、俺は狂えなかった。
持ち前のメンタルの強さがこんなところでいかんなく発揮されており、自分を呪った。

ああ、まだ俺の中で色々な感情が渦巻いている。
死ぬほど殺したいヤツがいる、
見たい世界がある。
せめてもの願いだ。
せめて地上の景色だけ見せてくれ。
あいつの支配する世界になったのか?
なぁどうなんだ、
誰か教えてくれ。
なぁ頼むよ。

誰か

誰か







「残念だけど、君の願った通りの世界にはなれなかったよ。」


!?


「はは、驚いたかな?それとも久しぶりに人と話すものだから話し方を忘れてしまった?ああいや失礼、君は今こうして石化しているんだったね。」


目を疑った。
だってここは湖の底だ。
何メートルの深さがあるか知らないが、生身の人間が酸素ボンベもなしに来れる場所では無い。

じゃあ目の前の男は?
この、浅黒い肌の神父であろう男は何だ?

「自己紹介がまだだったね。私の名前は……うーん、まぁ親しみを込めて『ナイ神父』とでも呼んでくれたまえ。君の上司、葛城大先生の古い友人さ。」


ナイ…神父?あのデブの友人…?
そういえば、たまにあのデブは『神父』と口にしていた。

なんでも自分はこの世界の住人ではなく、別の世界の住人であり、『神父』の力によってこの世界に来たと。
そしてこの世界を〝異聞帯〟にして欲しいと頼まれたという。

【まさかその…神父?】
「当たりだよ。丹下博士。」

ニッコリと微笑む神父。
それから彼は、俺に質問する暇も与えず

【な、なぁ、どうして俺の事を知っ】
「さぁ、上がろうか。」

俺の頭をがっちりと掴むと、どこかへと〝飛んだ〟
飛んだと言ったが、飛行では無い。
次元跳躍とでも言えばいいのか、
気がついたら俺と神父は、どこかのボロボロの廃屋の中にいたのだ

さらに、


「…!」

倒れ込む俺、
久しぶりの感覚、
そう、なんと俺の石化は

「動…ける?おれ、自由に…っ!?」

いつの間にか解除されていた。

「あんた一体なにも…」

相変わらずこちらに質問する権利はないらしい。
それから彼はもう一度、俺の頭を鷲掴みにすると、

「少し痛むよ」

そういって、グッと力を込めた。
するとどうだろうか、

「え、あ…ああ…!!なんだ!?…なんだこれは!?】

映像が、記憶が俺の頭の中へ流れ込んでくる。

これは…代表…?
あんときの三流探偵と刑部姫もいる。あの顔は…代表の弟!それに北斎もだ!!
山本がしつこく追い回してた竜胆と武蔵もいる!
4人目の紫式部を連れた金髪の男は知らないが、ともかくその4人と4騎で代表と戦っている場面が頭の中に浮かんできた。
これは…代表の部屋!?ここで戦ったのか?
お気に入りのサーヴァント達をこれでもかと投入し、代表がどれほど本気なのが窺い知れた。
しかし、代表は負けた。
徹底的に対策をされ、自慢の令呪は全く意味をなさなくなり、こいつら4人の前で代表はただの〝人間〟となった。

そうして彼は…あのメアリースーを入れた擬似サーヴァントと共に、ビルの最上階からコケて落ちるというなんとも間抜けな最後を迎えたのだ。

それから魔神柱のようになり、日本全国に出現して最後の抵抗してみせたが終局特異点のごとく、マスターやサーヴァントに狩り尽くされあっけなく終わった。
そのとき本体にトドメを刺したのは、紛れもなくあの三流探偵と刑部姫だった。

その後の話もあるが、奴は完膚なきまでに敗北した。
この世にもあの世にもいない
あいつは今までの報いをどこか分からない場所で受け続けているらしい。

「……」

そうして流れ込んできた記憶で俺はだいたい理解した。
デブの計画、異聞帯の創造は失敗したこと。
葛城財団は壊滅したこと。
俺の夢見た世界は、叶わなくなったこと。

「なんだよ…バカかよ…あんだけイキッといてそのザマかよ…。」
「ああ、残念だね。惜しい人を亡くしたよ。」

彼はもう、戻ってこない。
生きてはいないが死んでもいない。
どこにでもいるがどこにもいない。
助けることは不可能。
あいつの掲げた異聞帯という目標は儚くも崩れ去ってしまったわけだ。

「で…こいつを俺に見せてどうしろってんだよ…。」

クソデブがやられたのは分かった。
財団もなくなった。
そうした事の顛末を見せ、俺に何を伝えたいのか?
感想でもお答えしろっていうのか?

「いや、ただ一番センセイの隣にいたキミには見て欲しかっただけさ。これはあくまで、前置きというやつかな?」

前置き?
そう思うと、彼は俺に手を差し伸べてきたのだ。

「作らないかい?センセイの手を借りずに自らの手で、キミが望む世界を。ありとあらゆる人間達に不幸が降り注ぐ、キミだけが得をする最高の世界を。」


言葉を失った。
こいつは何を言っているんだと思った。
だが、なぜだろうか、
俺は何処か希望を見いだし、無意識のうちにやつの手を取っていた。

「キミには、あの葛城舞と同じように『降臨者』としての素質がある。あんな場所に数ヶ月いて狂わなかったその精神力が何よりの証拠さ。」

手を引っ張られ、彼はにこにことしながら俺を立ち上がらせた。

それよりも『降臨者』?あの葛城舞と同じ?
なんだそれは…まさか俺にフォーリナーのサーヴァントに無れるっていう資格があるのか…?

「ああ、そのまさかさ。」

心を読んだかのように、神父はにんまりと笑ってそう答えた。
こちらに微笑みかけ、細くなったその目。
全てを見透かされているような気がして、怖くなるもそれはやがて心地よい感情へと変わる。

「さぁ、見せてくれ。あの豚はまるでダメだったがキミには期待できそうだ。キミの思うがままに、やりたいように、この世界をめちゃくちゃにしてくれ、人間達の醜いところが剥き出しになった、最高の異聞帯を作り上げてくれ!!」

彼の後ろから影がぬぅっと伸びる。
そこにいるのはなんとも形容しがたい〝何か〟
燃えるような三つ目が俺を見下ろす。
床から触手が這い出て、俺の足に絡み付く。
果てしない真っ黒な闇が、いつの間にか顔が無くなった神父の中に浮かぶ宇宙が、彼方の星空が俺を歓迎する。


━━━━━━━アア……



━━━━━━━━━━━━なんて、心地よいのだろうか。


そこで、
俺は意識を手放した



 
 

 
後書き
丹下、なんか胡散臭い神父に石化を解除されてなんかされましたって話でした。

まぁ読んでの通り、丹下という人間も元はマトモなFGOプレイヤーだったんですよ。
しかもEXTRAやり込んでる生粋のネロファンだったんです。

ところがまぁ成り行きできったねぇオッサンみたいな奴が次々とサーヴァントを奪っていく光景を見続けて己の内に眠る性癖に気づいてしまったというワケ。

そこからはもうぶっ壊れたと言いますか自分に正直になったと言いますか、本編の彼となります。

また、こんな感じに他のサブキャラクターや悪役に焦点を当てた幕間を書いていくと思うのでその時はまた、宜しくお願いします。

次回もお楽しみに 
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