『外伝:赤』崩壊した世界で大剣豪とイチャコラしながら旅をする
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格好-いいか、わるいか-
「ころしてやる!!ころしてやるんだあああああ!!!!」
響くのは叫び声に近い殺すという呪詛。
突然やってきた大量の何かは、私と大和くんを見るなり殺すと言いながら襲いかかってきた。
隊員達は彼女達をゾンビ兵と言った、
両手を伸ばし、こちらに掴みかかろうとする様はまさにそれ。
「このっ!多いなぁ!」
しかしスピードもパワーもない為、簡単に斬り捨てられるが何分数が多いったらありゃしない。
こうなると大和くんの方が気になるけど、生憎今回ばかりは自分を気にした方がいいみたい。
無数に迫り来るゾンビ兵を相手にしながら
「…。」
「さっすが円卓最強…やっぱ、疾い…!!」
ランスロットを相手にしなきゃならない。
神経を限界まで張り詰め、常に周囲と前方に気を付けつつ立ち回らなければならない。
「相変わらず喋らないのね…!」
「…。」
「それともあれ?産廃に話す舌なんて持ってませんってこと?」
「…。」
ランスロットは相変わらず喋らない。
無言で剣をうちあわせ、時々敵味方判別せず襲いかかるゾンビ兵をノールックで斬り捨てる。
そのときだ。
「…!!」
爆発音。
これは大和くんの方だと思いほぼ反射的に目を向ける。
幸い、大和くんは無事。
爆発に巻き込まれたのは…相手。大和くんとは何かしらの因縁があるあのうるさい男、山本だ。
「…。」
でも、問題はそこじゃない。
何が爆発した?
【産廃の自爆特攻。役立たずでもせめて最期くらい華々しく飾らせてやろうと思ってね。私の粋な計らいだよ。】
「…!」
輸送車に取り付けられたスピーカーから、置鮎の声が聞こえた。
「最低ね…。」
それしか言葉が出なかった。
安全な輸送車の中で大方お茶でも嗜んでるのだろう。
そうしながら高みの見物をし、彼はサーヴァントを特攻兵器に変えた。
「人から大事なものを取り上げて、挙句の果てには使い捨ての兵器扱い。あなた、本当に人間?」
【ああ、少なくとも産廃を愛でる狂人共よりかはかなりマトモだと自負しているよ。】
「…ッ!」
刀を握る手に自然と力がこもる。
【いつまでも産廃をそこら辺にのさばらせておくのも良くないだろう?だから掃除をしているんだ。これはエゴじゃない。慈善活動だ。】
「んなわけ…あるもんですか!!」
慈善という言葉とは無縁の葛城財団が何を言うか。
そう思い、輸送車ごと叩き斬ってやろうとしたがやはりランスロットが立ちはだかる。
「あなたも何か言ったら!?あんなマスターをどう思ってるの!?」
「…。」
【セイバー。産廃に耳を貸すな、言葉を返すな。耳と舌が腐り落ちてしまうぞ。】
「アンタは喋るな!!!ランスロットに問いてるの!!」
喋らない。
ならば、無理矢理口を開かせる。
そのためには勝つしかない!!
「サーヴァントを捨て駒のように扱う外道…今すぐにでも外に引きずり出してやるわ!!!」
本数的不利をものともせず、ランスロットは相変わらず眉一つ動かさず私の攻撃を凌ぎきってみせる。
疾く、もっと疾くだ…!
でないとランスロットに一撃は浴びせられない。
「れんさまああああぁぁぁ!!!!」
「!!」
後ろからやって来たゾンビ兵をかわし、背中を蹴り飛ばしてランスロットに差し向ける。
運良く爆発を狙ったものの、ランスロットはそのまま流れるようにゾンビ兵を斬り捨てた。
「まだ…!!」
その隙を逃さない。
攻撃後ほんの少しだけある隙を狙い、刀を振るう。
狙うは首。あなたに恨みはないけれどあなたのマスターには色々あるから負けてもらわないと困る。
「…。」
「ほんっと、化け物みたいな反射神経ね。」
現実はそううまくはいかない。
凄まじい反応速度で刀を防ぎ、弾いて反撃へと転ずる。
意表をついても、何をしても、もっと疾くなろうがあちらもさらに疾くなる。
普段はやつの部下が横槍を入れまくるものの、こいつ…普通に強い。
そうしてしばらく一進一退の攻防を続けていた時だ。
「…!!」
また、爆発。
そして目に映ったのは、放物線を描きながらアスファルトに落下する、人影。
ボロボロの格好に、血にまみれ、ところどころ赤くなった真っ白だった頭部。
そして、円を描いて共に落下した、一本の紅い刀。
見間違えるはずがない…あれは…!
⚫
数分前
「なるほど。辻褄があった。」
ゾンビ兵の自爆は、地面を抉るほどの凄まじい威力だった。
そこで俺はレジスタンスの拠点で起こった悲劇を考察した。
自爆するゾンビ兵。
ビルの所々にあった爆発痕。
あれは、ゾンビ兵の襲撃にあったものだったのだ。
しかしそれよりも目の前に気にしなきゃいけないものがある。
あの爆発は音と衝撃からして凄まじいものだった。
だが、山本はほぼ無傷だ。
それどころか、気の所為か分からないが彼の筋肉が、より盛り上がっている気がする。
葛城財団の実働部隊の服。白い迷彩服が今にも敗れそうな程にパツパツなっているのだ。
「ふふふふ…これが日々の筋トレの成果だ。能力に甘えきったお前とは、鍛え方が違うんだよ!!」
そんなわけあるか。
筋トレだけで爆発に耐えられるのならもうみんなそうしてる。
何かタネがあるはず。
俺の刀も、敵の自爆も全く効かないトリックのタネがどこかにあるはずだ。
「さぁ…ぶち殺してやるぞ竜胆!!圧政者のごとく死にやがれええぇぇぇぇぇーッ!!!!!」
「!!」
地を蹴り、凄まじいスピードで接近してくる。
脚力は凄まじく、1歩踏み出す事にアスファルトを陥没させた。
「…!!」
腹部に一撃。
しかしギーンといった鈍い音を立てて刃は止まる。
「どうしたどうしたァ!?もっと打ってこい!!」
カウンターのパンチが顔面に迫る。
スピードは鈍い。避けられる。
ギリギリで避け、隙のできたやつの腕を切り落とそうとするも、やはり阻まれる。
「これも筋トレの成果か?」
「そうだと言っとるだろうがァ!!」
またパンチが来る。
斬りかかり、弾かれ、また斬りかかる。
拳と刀の応酬。
しかし俺はここで、あることに気付く。
(強く…なっている!)
パワーがどんどん強くなっていっているのだ。
余裕だったのが、どんどん押し切られていく。
「おおおおおおおお!!!!!死ねぇ!!圧政者ァ!!」
「…。」
俺が圧政者?
むしろお前の方がそうだったろうが。
と思ったが、ここで1つある推測が浮かぶ。
「ぬぅ…ぬぅぅぅぅぅん!!!!」
「お前…今度は何をされた…?」
拳を受け止めながら、尋ねる。
彼は以前、英霊の両腕を移植したと言っていた。
それがなんの腕だったのかは知らないが、今ここで確信にいたった。
「かわいそうに。」
「可哀想だと…?」
「ああ、可哀想だ。こんなチンケでクズの、現代の圧政者なんかの腕にされたんだ。怒り狂って乗っ取ろうととしてくるのも頷けるさ。」
「何をおかしな事を!!」
彼は、山本は英霊スパルタクスの腕を移植された。
そして飲まれているんだ。彼の意識に。
反逆者としての宿命か、山本のような男に従ってたまるかと反逆しているのだろう。
そして、彼が爆発を受け筋肉が増量したのも、攻撃の応酬でパワーアップしているのも気のせいじゃない。
敵から受けたダメージの一部を魔力に変え、己の力に変換する彼の宝具、『疵獣の咆吼《クライング・ウォーモンガー》』によるものだ。
「俺の中に何がいようが気にするものか!!圧政者には死を!我が愛を持って殺してやるぞ!!竜胆!!」
「…。」
人は、自分がおかしくなったことにはそう簡単に気付けないらしいな。
やつの中にスパルタクスがいることを確信し、そして宝具が発動しているのなら俺は一つの作戦を思いつく。
それが
「れんさまああああぁぁぁ!!!」
「うるさい。」
迫るゾンビ兵の頭をひっつかみ、投げつける。
されるがままのゾンビ兵は山本に投げつけられると、そのまま抱きつくようにしてつかまり、
「ぬっ!!」
爆発する。
「なんのつもりだ?たかがそんな爆発で俺は殺せんぞ?」
「ああ。そうだろうな。」
幸い、残弾はまだまだやって来てくれる。
次にやってきたゾンビ兵をかわし、足をかけてこけさせる。
空中で一回転するというド派手な転び方をし、俺は転んだゾンビ兵に渾身の蹴りをかました。
「くぅ…!!」
山本にぶつかり、敵と勘違いし自爆する。
ダメージは入らない。
逆に、山本の筋肉はどんどん膨れ上がり、ついにはビリビリと音を立てて服がちぎれ飛んだ。
「敵に塩を送るとは…随分と余裕だなぁ!!!!」
ドスドスという重さを感じさせる足音を立て、山本が迫る。
掴みかかろうとするやつの巨腕をバック転で避け、迫るゾンビ兵を今度はメイスで野球のようにフルスイングで吹き飛ばす。
今、山本の身体は順調にデカくなりつつある。
まとも大きくなればその分目立ち、奴らの目に止まりやすくもなる。
だからここまで大きくなれば
「てき!!てき!!!!」
「れんさまのてきだ!!!!ころしてやる!!!」
奴らは続々と山本に殺到する。
どんどん爆発のダメージをくらう山本。
スパルタクスの宝具によってダメージは蓄積され、際限なくパワーアップしていく。
しかしそれにも限度はある。
「こ…これはァ!?」
「ついには自重で動けなくなったか。哀れだな。」
多大なダメージをくらい、文字通り筋肉ダルマとなった山本。
身体はそれを内包しきれなくなり、エネルギーは逃げ場所を求め体の内側を駆け巡り始める。
「今度はお前が爆発する番だ。」
スパルタクスが中にいると分かって思いついた作戦だが、うまくはいった。
アポクリファ本編でも、彼は最期に有り余ったパワーを使って大爆発を起こしている。
だから俺はそれを再現することにした。
幸い、ダメージソースは腐るほどあったのだから。
そうして、山本の爆発から逃れるためオロバスを呼ぼうとしたそのときだ
「山本隊長おおおおおおおおお!!!!!」
「…!!」
遠くから叫び声に近い声を上げ、走ってくる者がいた。
山本の部下。2名ほど。
さらにそいつらは
「えへ…えへへ!!こいつをころせば…れんさまはまた…!」
「助けに参りましたぁーッ!!!!」
ゾンビ兵を背負っている。
「死ねぇえええええ!!!竜胆大和おおおおお!!!!」
「こいつら…まさか!!」
敵味方区別なく爆殺するゾンビ兵。
同士討ちを防ぐため隊員達は避難したが、こいつらはあえて外に出た。
ゾンビ兵を背負い、自分達が特攻爆弾となって。
「…ッ!!」
咄嗟に俺は迎撃に移る。
散弾銃をかまえ、撃つ。
一人の腹に命中し、鮮血と共に内蔵が溢れ出る。
しかし、とまらない。
出てしまったそれをそのままに、スピードを緩めず突っ込んでくる。
「たかがこんな痛み…山本隊長の苦しみに比べればああああぁぁぁ!!!!!」
撃つ。
今度はもう片方の隊員に命中。
片足が粉砕され、やつは走った勢いのまま派手に転んで頭から突っ込んだ。
そして爆発。
しかし、それがいけなかった。
「うおああああぁぁぁ!!!!!」
その爆発により臓物のとび出た隊員は吹っ飛んでしまう。
俺めがけ、まっすぐに。
とっさに銃から刀に持ち替え、すぐさま斬り掛かろうとするも
「!!」
「へへ…後ろがお留守だぜ!!」
なんと、背後から忍び寄っていた隊員に羽交い締めにされたのだ。
すぐさま力づくで振り払い、迫る危機を対処しようとするが、
「死ねええええええええ!!!竜胆おおおおおおおお!!」
俺のすぐ近くまで迫った時、
やつの背中にしがみついていたゾンビ兵が、一瞬眩く光る。
「まずい…!!」
そして目の前が、真っ白な閃光に覆われ、凄まじい轟音と衝撃が俺を襲った。
⚫
「大和くん!!!」
爆発に巻き込まれたのは、大和くんだった。
すぐさま助けに向かおうとするが、やはりランスロットは許してくれない。
「邪魔だ!!」
「…。」
早くしなければ、
なんとかしないと大和くんは、やられる。
肉の塊と化した山本だったものが、にんまりと下衆な笑みを浮かべて見下ろしている。
まずい、このままじゃ本当にまずい…!!
「ぐ…うぅ!!」
立ち上がる大和くん。
しかし足元は覚束無い。
吐血し、刀を杖代わりにして立ち上がるのがやっとの状態だ。
しかし、大和くんがそうだとしても、敵は容赦しない。
「よくも…やってくれたなァ!!!!」
脇腹にめりこんだのは、山本の強烈なボディブロー。
ミシミシとまずい音を立て、そして大和くんはそのまま吹っ飛ばされビルの壁へと叩きつけられた。
「おいどうした?いつもの軽口は叩かないのかぁ?んん?」
重くなったその身を引きずり、ビルの壁に激突した大和くんを引き剥がす。
「あぁそうか…こんなんでは叩ける軽口も…」
「!!」
瞬間、山本は大和くんを上へと投げあげた。
第六感が告げる。
このままでは本当にヤバい。
大和くんが、死ぬ。
「叩けないもの、なァッ!」
投げ上げられ、そのまま落下。
満身創痍の大和くんは何もすることが出来ず、彼の全力のパンチをくらいさらに吹き飛んだ。
「…。」
ぶつかった建物は倒壊。
瓦礫の中で動かなくなった大和くんだが、そこへ蟻のように奴らがたかってくる。
「ころせ、ころせ。」
「れんさまのかたき。たおせばごほうび…」
「もとにもどりたい…おきにいりに、もどりたい…!」
「…っ!!」
ランスロットを強引に蹴飛ばし、駆ける。
「ぐぅッ!!」
すれ違いざまに足に切り傷を負ってしまうが、そんなことどうでもいい。
大和くんが危ない…!!
「大和くんに…私のマスターに触るなああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーッ!!!!」
迫るゾンビ兵を斬る。
斬る。斬る。斬る。
守らなきゃいけない。大和くんを。
私はサーヴァントだ。だから命を賭してでも守らなきゃいけない。
ここで私という存在が消えようとも、彼だけは…!
「ヒィィィーーーーンンンッ!!」
「!!」
そして主の危機にオロバスもやって来た。
この子も戦おうとしているが、それよりもやるべき事がある。
「逃げて、オロバス。」
「…。」
「大和くんを連れて!ここから!!はやく!!」
「…!!」
オロバスは大和くんの言うことしか聞かない。
しかし、私のことを理解してくれたのか、地面に倒れた大和くんの襟を噛み、投げると器用に背中へ乗せた。
「…。」
「…私は後から行く。あなたは主の無事を最優先にして。」
オロバスが気にして何度か振り向くけど、ここは早く逃げて欲しい。
あとは私が、全部殺る。
しかし、
「逃がすかァ!!!!俺の愛からは逃れられんぞ圧政者ァ!!!」
現実はそううまくはいかなかった。
「!!」
「オロバス!!」
山本がまさかのジャンプ。
地響きを立ててオロバスの前に着地すると、
「畜生如きが!!人間様に逆らうなよ!!!」
その腕でオロバスを殴りつけた。
吹っ飛ばされるオロバス。
弾丸などある程度の攻撃は気にしないオロバスだけど、今回ばかりは効いたらしい。
さらに、
「ははは!!骨が折れたか!!さすがは竜胆の馬!!軟弱さは主そっくりじゃないか!!!」
オロバスがたちあがるも、右前脚をかばうような動き。
あれは…折れている。
あれでは自慢の健脚は発揮できない。
ここから、逃れられない…。
「さぁて、長い間私達を苦しめてきた二人の最期は、実にあっけないものでしたね。」
ビルの上から高みの見物をしている白衣の男が、笑みを浮かべてそう言い放つ。
目の前にいるのは、筋肉が膨張して化け物のようになった山本。サーヴァントのランスロット。
そして、無数のゾンビ兵。
大和くんとオロバスを守りながら、私はこいつらを同時に相手しなくちゃならない。
「どうです?ここで負けを認めれば、あなたの命”だけ”は保証しますよ?」
「負け?認めるもんですか。」
マスターを見殺しにして、自分だけ助かる?
そんなの、死んでもゴメンだ。
「私は大和くんを守るために来たの。自分の決めた目的に背くなんてそれこそ武士の恥。いいえ、サーヴァントとして失格なの。」
状況は圧倒的に不利。
だが、やるしかない…。
大和くんは…殺させない。
「我が名はセイバー、新免武蔵守藤原玄信!!無念無双無敗の剣豪なり!!さぁ!!死にたいやつからかかって来るがいい!!!
叫び、己を鼓舞する。
こんな修羅場、その気になればやりきれる。
そうして迫るヤツらに、私は一歩踏み込んだ。
その時だった。
「ちょっと待ちな!!」
誰かの声。
その声に、全員が動きを止めた。
「一人のサーヴァントと一人のマスター相手に大勢でよってたかる…アンタら、最悪だ。最ッ悪にカッコ悪いぜ。」
「…!上だ!!あそこにいるぞ!!」
白衣の研究員の付き添いがあるビルを指す。
そこにいたのは、謎の男女二人組だ。
さっき話したのは男の方。
青と白を基調とした衣服をまとった、いかにも騎士といった男。
「そしてそこのアンタ!こんな不利な状況でよく頑張ったな。最高にカッコ良いってやつだ。」
「え…。」
「だがもう安心しろ。何せこの俺シャルルマーニュ。そして俺のマスター『紺碧の賢狼』率いる最高にカッコ良い援軍、『セイバーオブセイヴァーズ』が来たんだからな!!」
「せ、せいばーおぶ…せいばー?」
何を言っているんだこの人は、
と、思ったその時、ゾンビ兵が何者かに襲われる。
「ぎゃあああああ!!!」
「あれは…犬…?」
鎖に繋がれた犬らしき生き物が、次々とゾンビ兵を噛み殺していく。
それだけじゃない。
「ゆけ!!我が剣の元に集いし英傑達よ!!」
シャルルマーニュと名乗った男の隣にいる、紺碧の賢狼と呼ばれていたメガネの女性…鎧を着こなし中世的な格好をしているから…あの人もサーヴァントだろうか?
と、思っていると、私の目の前に大きな体躯のサーヴァントが現れる。
「サーヴァント、ガウェイン。紺碧の賢狼の名のもとに助けに参りました。」
「…ガウェイン…?」
2メートルはあろう大柄な女性。
先程の黒い犬を引き連れた彼女は自らを”ガウェイン”と名乗った。
しかし、彼は男性のはず…。
もしかしてアーサーのように性別を偽ってた?いや、そんなはずは無い。
それよりもそんなくだらないことを考えている訳では無い。
「大和くんが…!!」
「ヤマト…?それがあなたのマスターの名か。彼に関しては安心するといい。」
「…!」
振り向けばそこには馬の引く戦車。
そこに既に大和くんは乗せられており、私もその騎手に手を差し伸べられた。
「ブーディカよ。レジスタンスのサーヴァント…ではないけれど細かい話は後!さぁ、早く乗って!」
彼女の手を取り、戦車に飛び乗る。
さらにガウェインを名乗った女性はオロバスを軽々とかつぐと、周囲の犬に命令を下し、走り出した。
「賢狼さん!ご指示を!!」
「撤退だ!!今は葛城財団の殲滅よりも人命救助が優先だ!!」
賢狼と呼ばれた女性が叫び、彼らは一斉に逃げ出す。
追いかけるゾンビ兵だが、黒い犬は皆それらを食い殺していく。
それだけじゃない。
「うわぁぁぁ!!来るな!!来るなって言ってんだろぉ!!!!」
輸送車に避難していた隊員達も犬の餌食となる。
外に出たとしても、それはゾンビ兵の餌食となり、自爆される。
無数に襲い来る謎の黒い犬。
敵味方の区別ができないゾンビ兵。
それらによって、周囲は大パニックへと陥り、私達の追跡どころではなくなってしまった。
そうして…
「き、危険です丹下さん。」
「ええ、やばそうですね。」
黒い犬やゾンビ兵。
それのおかげで許容量を超えるダメージを受け続け、ついに山本の身体が限界となる。
「が、がらだが…あつい…いだい!!なんだ?…なんなんだごれ、はァ?」
ぼこぼこと膨れる身体。
各所からは魔力が溢れ出し、ついに、
「…!!」
戦車で逃げている私達。
その背後で、強烈な閃光が見えた。
「どう…なった?」
「!!」
それを、ぼんやりと眺めていると、大和くんが僅かに目を開け、尋ねた。
「大和くん!?」
「俺は…平気だ。なんてことは、ない。」
「…。」
平気なもんか。なんてことあるに決まってる。
でも、私は彼に言われた通り、聞かれたことに答えた。
「ええ、死んだ。綺麗さっぱり何も残さず、山本は死んだわ。」
「そう、か…。」
それだけ言い、大和くんは首をだらんと垂れ、意識を失った。
後書き
いきなり助けに来た謎の集団!その名も『セイバーオブセイヴァーズ』!
シャルルマーニュを連れた、『紺碧の賢狼』と名乗る女性は何者なのか!?
そもそもなぜこいつらは現れたのか!
それは次回で明らかになるよ!!
おたのしみにね!!
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