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あいつの女ということに強引にさせられて

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第4部
  4-1

 9月の中頃、稲村ミクさんから連絡が来て、心斎橋のお店まで出て行った。すると、カメラマンの人が居て

「今日 写真を撮ってくれるの 直ぐに、これに着替えて」と、黒いストレートのオーバーパンツで右太腿のところにポケットが付いているものと白いシャツカラーのブラウス。肩口がフワーっとしていて肘から先が絞ってあり、長袖の先は木製の大きなボタンで留めるようになっていた。

 着替えて、車に乗せられて、道頓掘川沿いに走って人も歩いていないようなところで、写真を撮られた。普通にして、立っていればいいよと言われていたんだけど、いざとなるとミクさんがいろんな姿勢に注文を付けてきて、何枚も取った。そして、車の中で、今度はワンピースに着替えさせられて、また、何枚も取った。そのあと、また、移動して、今度は小さな公園で、違うワンピースとかミニスカートとのものとか幾度も違う服に着替えさせられて、ヘァーウィッグも被ったりして、何枚も撮ったのだ。

 ようやく、ミクさんのお店に戻った時、もう夕方になっていた。

「今日のお礼 それと、気に入ったもの あげるから着て帰ってちょうだい 歩いてくれれば、宣伝にもなるから」と、封筒を差し出しながら、言ってきた。

 私は、どれも素敵だなと思っていたけど、今、着ている紺地で小花柄のワンピースにした。そんなに丈も長くなくて両方の腰の少し上でリボンで結んで絞るようになっている、後ろの部分もギャザーが入っていて、自分で可愛いと思ったから。すると、それに合わせてバッグとサンダルも持っていきなさいと言ってくれたのだ。

 私は、戎橋通を歩いて、デパートでお惣菜を買って帰るつもりだった。途中、何人かの視線を感じていた。そうよ、私は、モデルなのよと、可愛いでしょと、思いながら・・。あの人のマンションに行って、可愛いねと言ってもらいたかったけど、時間も遅くなっていたから、真直ぐに自分のマンションに戻った。

「うわー お姉・・・ 可愛いー きれいな洋服」と、いちごが褒めてくれた。

「うん そのまま着て帰っていいって言ってくれたから」

「へぇー いいなぁー モデルさんって」

「いちごも なんとかサイズ 合うと思うよ 貸してあげるから」

「うわー でも そんなの着て行くところないなー 慎吾君に見せたいけどなぁー 可愛いの」

「まぁ 勉強の骨休めに、デートにでも誘えばー」

「そーだね でも、デートしてくれるかなー 今 追い込み中だからね あんまり、会うのも出来ないんだー」

「そうかー あんまり、無理やりじゃぁ ダメよ ダダこねちゃー」

「うん 気晴らしにって言うよ」

「帰りに ごちそう 買ってきたからね 温めて、食べよ」

「わぁい いい匂いしてきたよ お姉ちゃん ありがとう」

 私は、いちごの喜ぶ顔を見ていると「もっと幸せにしてあげるよ 今までのぶんも」と、決心していた。
 
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