あいつの女ということに強引にさせられて

　その冬の年が明けて、２日の日、私は穣一郎さんのご両親に、初めてご挨拶に伺った。ツィードの白のツーピースでネックレスは付けずに胸に色ガラスのブローチだけを飾っていた。髪の毛もヘァピンで留めるだけにしておいた。

　穣一郎さんと待ち合わせをして車で連れて行かれたのだ。市街地から少し、離れたところで、周りには、あんまり住宅も建っていないようなところ。大きなお家なのだ。

　通されたのは、応接間でソファーが並んでいた。それまで、奥のダイニングで何かを飲んでいたお父様が出てきてくれて

「やぁ　よく来てくれたね　君は、確か　すぐりさんだったよな　何度か　会社で見かけたことがある」

「はい　白河すぐりです　社長さんだった時　お見かけしました」

「うん　いや　気が利くバイトだっと覚えている」

「そんなー　私・・」

「まぁまぁ　お掛けなさい」

「失礼します」と長椅子の端っこに座ったら、隣に穣一郎さんも。奥様が紅茶を持ってきてくれたら

「まぁ　展子《のぶこ》も一緒に座んなさいよー」と、お父様は招いていた。

「お父さん、お母さん　僕が選んだのは　この娘です　結婚したいんだ」

「穣一郎　うすうす聞いていたので　会社の子だってな　だから、多分　すぐりさんを連れてくるんだろうなって思っていた　ワシもあの時、良い娘だと思っていた。だけど、若すぎるんじゃぁないか?　もう、高校は出たのか?　いゃ　ウチの会社の社員になってくれたんだったな　今　18かな?」

「はい　３月に19になります」

「そうか　ウチの会社はパートは若い人が多いからな　もしかして、そん中の誰かの奥さんを連れてきたらどうしょうかとも考えていたんだ　嫌　君で良かったよ　でも　若いんでなー」

「お父さん　今　直ぐって訳じゃぁないんだ　来年の春辺りって思っている　妹さんが来年　大学受験なんだよ　すぐりの希望で、それが終わった後ってことに・・だから、その時にはすぐりは20だよ　一番良い時だと　思う」

「けど　娘としては　一番楽しい時だぞー　遊ぶにしても・・　一番輝いている時だぞー　そんな時間を穣一郎に捧げてしまってもいいのかね　すぐりさん」

「はい　私　穣一郎さんを信頼してますから」

「わかった　でも　今は　婚約者ってことでいいんだな　穣一郎」

「あぁ　それでも良いよ　認めてもらえるんなら」

「まぁ　加賀美からも　いい妹が出来たって　喜んでいるみたいだからな　それと、穣一郎が会社のことを、いろいろとやってくれているみたいだし、反対する訳にもいかんじゃろー」

「ありがとう　お父さん」

「ただな　すぐりさんの前だけど　はっきり言おう　すぐりさんはお母さんは離婚していて、お父さんは居ないのだな　君が結婚して家を出たら、お母さんと妹さんの二人っきりになるじゃろ?　いずれ、お母さんの面倒は誰が見ることになるんじゃ　妹さんに押し付けるのか?」

「お父さん　そんなこと　関係ないじゃぁないか　すぐりに聞くのは酷だよ」

「いえ　穣一郎さん　いいんです　はっきり言います　お父様　私　穣一郎さんと一緒になったら、お母さんと縁を切るつもりです　そして、妹のいちごが大学に進んだら、独り生活をさせて、私が面倒を見ます　あの人は母親の資格ないんです」

「うっ　それは　複雑じゃぁのー　いろいろな事情があるのかー　うーん　でも、穣一郎を信頼してくれているっていうのは　うれしいんじゃがー　まぁ　今日は、夕御飯も一緒に食べて行きなさい　普段　展子とふたりじゃろー　寒々としてな　それに、こんなに可愛らしい娘が居るなんて　華やかじゃー」

「まぁー　うれしそうなお顔ね　じゃぁー　すぐりさん　準備手伝ってちょうだいな　いろいろとお話しましょ」と、お母さまがキッチンの方に誘ってくれた。

　その後、エプロンを用意してくれて、キッチンでお手伝いをしていた。

「私　こういう風に色々と教えてもらいながらお料理するのってあこがれていたんです。うれしい・・ウチのお母さんとはそんなことなかったから・・」

「そうだったの・・　私もね加賀美がお料理興味ないみたいで、あんまり、娘となんてなかったのー　あのね　すぐりさん　穣一郎と一緒じゃぁなくても、時々、お顔見せにきてちょうだいね　あなた　可愛いわね」