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あいつの女ということに強引にさせられて

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4-11

 今年の夏休みもどこかへ泊りに行こうかと、穣一郎さんに聞かれたけど

「あのー 今年は、私 いちごをどこかへ連れて行ってあげたいの あの子 旅行なんて、ずーとしたことないのよ 修学旅行も中止になってしまったでしょ それに、勉強ばっかりで、かわいそうだから」

「そうか 君は 妹思いだね まぁ 僕達はなんとかすれば、いつでも行けるしなー わかった、今年は、いちごちゃんと行っといでよ お母さんもか?」

「ううぅーん そんな気になんない あの人は時々、誰かさんと楽しんでいるものー」

「相変わらずだね その言い方」

 いちごに話した時、すごく喜んでくれた。そして、いちごに水着を買ってあげて、お揃いのワイドパンツとフレンチ袖のブラウス、いちごはサスペンダーを付けると言っていた。お母さんに、話すと、良いわよ行ってらっしゃいよ、と、あっさりしたもんだった。多分、私達が居ないので、男を呼ぶのかも知れない。

 その日は、朝、二人でお昼のおにぎりを作って、持って出た。南大阪からジェット船に乗って淡路島に渡る予定だった。

「お姉ちゃん ウチ 船乗るのって初めてかも・・楽しみー」

 そんなことは無いのだ。まだ、お父さんが居た時、家族で伊勢の方に海水浴に連れて行ってくれたことがあった。その時、小さな島に船で渡ったのだ。いちごは、まだ、小さかったから覚えていないのだろう。だけど、その時とは変わってしまって、いちごと二人っきりなんて・・。

 お盆も過ぎていたので、幸い海水浴場が近い宿も取れたのだ。コロナのことがあって、お客さんも少ないのかも知れない。お昼前に着いて、着替えだけさせてくれて、私達は海水浴場に歩いて、松林の木陰で、持ってきたおにぎりを食べて、二人でビーチマットを膨らませていたら

「良かったら、これで膨らませてあげるよ そんなに小さいポンプじゃぁ大変だよ」と、さっきから、私達をチラチラ見ていた4人組の男の人達の一人が近寄ってきた。

「お姉ちゃん どうしょー」と、いちごが聞いてきている間に、もうその大きなポンプの先を突っ込んでいた。

「あんた等 姉妹なんか? 似ているよ 俺等 大阪から来たんだ 大学3年 みんな違う大学だけどね ふたりだけで来ているの」

「ええ 私達も大阪から 家族と来たけど、両親はホテルに居ます」と、私は、その人が黒いマスクだったし、警戒してたから、ふたりだけって言いたくなかった。

「そうなんだー でも、美人だよねー ふたりとも ねぇ 一緒に泳ごうよ せっかくなんだからー」

「なんにも せっかくじゃぁないと思うけど・・ ネ あっ 空気ありがとうございます 助かりました でも、妹とゆっくり 泳ぎたいの ごめんなさい」

「お姉ちゃん いいじゃん 多いほうが楽しいよ」と、いちごが余計なことを言ってきた。

「ほら 妹さんも こう言ってるよ 別に ナンパってんじゃぁないし 安心して」

 その言葉を聞きながら、私はなんにも言わないで、いちごの手を引いて、ビーチマットと波打ち際に向かった。

「お姉ちゃん あの人 気分悪くしたかも知れないよ 空気入れてくれたのにー」と、波に揺られながら、いちごが不満げに言ってきた。

「あのさー 何にも、知らない人じゃぁない 慣れ慣れしくさー」

「だって 誰だって、最初は知らないじゃん 親切にしてくれたのに・・」と、少し離れたとこで海に入って空のペットボトルを投げ合って、遊んでいるさっきの男の人達に向かって手を振り出したのだ。

「いちご なにを・・ あんたって子はー」

「うふっ 振りかえしてくれたよ」

「バカ あたりまえじゃあない こんなに可愛い娘なんだから・・向こうだって」

 それをきっかけに、私達が砂浜にあがって休んでいる時も、近くに寄ってきて、何かと話し掛けてきた。主に、いちごがベラベラと相手にしてしまって、私達の年とか、私が会社員で、いちごが来年大学をめざしていることとか話してしまった。だけど、その後も例のペットボトル投げに付き合わされてしまったり、いちごは、ひとりの男の子と一緒にマットを持って海に入ったりしていた。私も誘われたけど、一緒にマットに乗るのはごめんだと、ひとりで泳いでいたら、男の子達も私のまわりを泳ぐようにして、話し掛けてくる。

「すぐりちゃん すごいね 泳ぐの達者なんだ」

「えぇ まぁ 小さい頃から なんとなく」私は、すぐりちゃんとか言われて、おそらく、鳥肌が立っていたと思う。私がそっけない返事ばっかりなので、男の子達もいちごばっかり構っていた。

「俺等 これから、帰るんだよ 残念だね 仲良くなれたのに・・」

 私は、別に、仲良かったつもりはないんだけど、いちごは、別れ際に連絡先を教えていたみたい。ひとりは、いちごが受けてみようと言っていた大学の学生だったというせいもあるのだろう。

 ホテルに帰って、先にお風呂に行くと、海が見渡せる大浴場で

「お姉ちゃん おっきいね ほら、海見えるよ」と、いちごははしゃいでいた。

「いちご だいぶ 日焼けしてしまったね」

「お姉ちゃん だって 足 赤いよ」

 私達は、ラシュガード着ていたんだけど、いちごは、海に入る時には脱いでいたので、腕も脚も赤かった。ふたりとも、ホテルの浴衣に着替えて、誰に買うというあてもないまま、お土産コーナーを物色した後、夕食に・・もちろん、初めてであろう豪華なお料理を見て、いちごは、感激していた。

 夕食の後、いちごは、少し、勉強すると言ったんだけど、私は、結婚のことをいちごに打ち明けようと思っていたので

「いちご 聞いて あのね 私 結婚の約束した人と、今、お付き合いしているの」

「そうかー なんとなく お姉ちゃんに そういう人がいるような気がしてた お母さんには話したの?」

「ううん 先に いちごにと思って 結婚 直ぐってわけじゃぁないのよ いちごの大学受験が済んでから 前にも、言ったでしょ あなたは、合格したら大学の近くに一人で住んで そうしたら、私も安心してお嫁にいけるわ あんな自分勝手なお母さんといちごの二人っきりにできないわ」

「うん お姉ちゃんの言っていることもわかるけどなー」

「秋になれば お母さんにも 結婚のこと ちゃんと話すから・・ それと、いちごの大学生活は私が面倒みるってことも」

「お姉ちゃん とにかく 受かるように ウチ がんばるよ」  
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