崩壊した世界で刑部姫とこの先生きのこるにはどうしたらいいですか?
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始まりの章-世界は終わった、しかし物語はここから始まる-
多忙探偵
後日。
ビラ配りの効果は予想以上にあった。
「あなたでしたよね?昨日ここでビラ配りをしてた、刑部姫を連れた探偵さんって。」
「え、まぁいかにも。」
寝起きの気だるさと戦いながらホテルを出ると十数人ほどの人だかり。
最初は何かと思ったが、俺を見るなり囲ってきた。
「あの…悩み事があれば聞いてくれると聞きました…!」
「探偵なんですよね?あの…頼み事があって!!」
「私たちじゃ手に負えないんです!助けてください!!」
まぁなんと全員が探偵に依頼を頼みに来た奴らだそうな。
「あーわかったわかった!俺探偵だけど聖徳太子じゃないんで!1列で1人ずつお願いします!!」
俺を見るなり殺到し、皆口々に依頼を言ってくるやつら。
まさかここまでとは俺も思ってなかったっつーの。
「おっきー、お前も手ぇ空いてんなら他の人の…」
後ろにいたおっきーに声をかけ、依頼を聞いてやってくれと頼もうとしたが、いない。
さっきまでそこにいたのに、いない。
「おい!!!!!!」
いた。
ホテルに戻って観葉植物の陰からこちらの様子を伺っている。
来いよ。
「何してんだおめーはよォ!!まーちゃんの為なら姫も頑張っちゃお♡みてーなこと言ってたろ!?」
「いやぁ人には得手不得手があると言いますか…適材適所っていうの?知らない人と話すのはまーちゃんに任せようかなーって」
「おめーもやるんだよ!!!」
それから
「探偵が畑仕事やるかフツー!?」
「だって、何でもしてくれるって書いてあったぞ?」
初仕事はまさかの農作業。
俺がかつて会ったあの静謐のハサンのマスターからの依頼だった。
「予想以上に収穫があってなぁ。もう猫の手も借りたい状況だったんだ。」
「初仕事が土にまみれるとか…これ探偵じゃなくても出来ただろ…。」
畑に関する仕事と聞き、まぁまぁ嫌な予感はしていたよ。
来てみれば案の定こうだ。
そんなわけで俺達はジャージに着替えてこいつの畑の収穫を手伝…あれ?おっきー?おっきーいなくね?アイツどこいったよ?おい。
「まーちゃん頑張ってー」
「てんめぇこの野郎!!!!!」
いた。
日陰でゲームしてやがった。
「何してんだよおめーもやるんだよ!!」
「いやーだって肉体労働は専門外というか…姫は頭使うタイプの労働専門っていうの?」
「うるせーなゴタゴタぬかすな!!」
嫌がるおっきーを引きずり出し、無理矢理手伝わせる。
そうして全ての作物の収穫が済んだのは昼過ぎであった。
「なぁ、ところでさ…」
「うん?」
と、ひと段落着いた頃、俺は一つ気になることがあった。
「この前来た時は…芽すら出てなかったよな。」
数日前。俺はここを訪れている。
その時は土は耕されていたものの種を植えたばかりで発芽はしていなかった。
なのにこれはなんだ?
青々と生い茂り、立派な作物がなっている。
「ああ、あれからもう芽が出てな。それからはもう早送りみたいにどんどん成長していったんだ。」
「え…怖。」
この男いわく、とんでもねぇスピードで成長し、今に至るとのこと。
ねぇ俺怖いんだけど。怖すぎてここの野菜食えねーんだけど。
「まぁ俺の推理としては、世界がこんなふうになった影響、もしくは俺と静謐ちゃんの愛のおかげかなと。」
「あー前者ですよ前者。」
「そんな即答しなくていいだろ!?」
後ろでは彼のサーヴァントである静謐のハサンが無表情ながら頬を赤らめ恥ずかしそうにしている。
まぁ幸せなこった。一生惚気けてろよ。
ちなみにお野菜は頂きました。
死ぬほど美味かったです。
⚫
「あったーー!!あったよまーちゃん!!」
「まじか!?」
ともかく依頼を受けた俺達は片っ端からどんなものでも受けていく。
次の依頼は指輪探し。
この辺りで落としたという手がかりしかないが、俺達にはそれで充分だ。
「いやーお前にかかりゃマジで楽だな。失せ物探し。」
「まぁねー。姫は何にもしてないけど。」
そう言いながら俺に駆け寄るおっきーの手のひらには、指輪を手にした兎の折り紙が。
そう、おっきーのスキル、千代紙操法からなる折り紙の式神。
そいつらに捜索させたのだ。
何十体もの式神達を落し物がありそうなポイント周辺にばら撒き、ただ待つだけ。
それだけで式神達は落し物や失くしたものを取ってきてくれる。
さらにペット探しもだ。
コウモリなんかで空から見渡せば一発。
超音波なんかで洞窟とかの暗いところで隠れていてもすぐ見つけてくれる。
「ありがとう…ありがとう…!!妻の形見なんだ…!!」
「どってことねーよ。もう次からは失くすなよ。」
待ってるだけで依頼主からは涙流しながら感謝されるし、金は貰えるし…
はっはー、楽なことこの上ねーわなぁ!!
「うわああああぁぁぁ来たぁぁぁぁぁ!!!」
話は変わり、ワイバーンから追いかけられる俺。
なんでも付近にあるワイバーンの巣を殲滅して欲しいというまぁ割と無茶苦茶な依頼を受けた。
で、奴らをおびき出すというか焚きつけるというかおとり捜査をすることになったわけで、
「おらーっ!!死にやがれー!!」
巣から出てきたワイバーン達を引き連れ、一定の場所まで走る。
そうするとトラップが発動。
網によって絡め取られ、無様に地面に落ちるワイバーン共。
そうして折り紙の式神たちと一緒に棍棒使って袋叩きにしてやった。
それから
「ありがとうございます…!よもやワイバーン達を一網打尽にするなんて…!!」
ここら辺の自警団をまとめているサーヴァント、蘭陵王から礼を言われる。
なんでもこのホテル周囲を守ることに手一杯でどうにも出来なかったらしい。
猫の手も借りたいこの状況、手を差し伸べたのはこの探偵というわけだ。
さて、依頼はこれで終わりじゃない。
「あっぶねぇ!!死ぬぞ俺!!」
ホテルからやや離れたところにある崖。
そこにしか生えないと言われる約束を取ってきて欲しいとの依頼だった。
で、命綱をおっきーに託し、今必死に薬草に手を伸ばしているのはなんと俺。
こんなのおっきーの折り紙に任せて取らせればいいじゃんと想うが、なんとこいつ、さっきのワイバーン討伐で魔力を使い果たしたとのこと。
じゃあ明日やればいいじゃん。と思うやつがいるかもしれないが明日やろうは馬鹿野郎なのだ。
薬草を届けるのは早ければ早いほどいい。その分報酬も弾むよと依頼主からは言われている。
つまり、逆に言えば日にちが経てば経つほど報酬額が減ってしまうといわけだ。
そんなのごめんだ。一日でも夢の引きこもり生活を実現させるために俺は当日届けることにした。
そんなわけで俺は今、命の危機に瀕しつつあるというわけだ。
「とれたァ!!おっきー!!引っ張ってくれ!!」
崖の底から吹き上げる突風に身体を揺られながら、なんとか俺は薬草を採取。
それからおっきーに引き上げてもらい、なんとか依頼は達成された。
されたのだが、
「いやぁありがとう!!まさか本当に持ってきてくれるとは思わなかったよ!!」
依頼主である魔法薬ショップの店主、キルケーの元へ持っていき、報酬として渡されたのは謎の鍋。
とても重い。蓋を開けてみればお粥のような何かが入っていた。
「なにこれ…?」
「何って…キュケオーンに決まってるじゃないか。ふふ!」
誇らしげに言われても困る。
あんなに命を張った対価が、この寸胴いっぱいの麦粥だァ?
ふざけんじゃねぇ金を寄越せ金を。
ここで魔法薬ショップ開いてんだ。それなりに持ってんだろクソボケが!
なんて言ってやりたいが、ここは我慢だ我慢。
そして次の依頼。
「くらえ!ライダーキック!!」
「いっっっった!!!!」
次は別に命の危機にも遭うような危険なものでは無い。
ものでは無いのだが、肉体的にかなり堪えるものだった。
「お兄ちゃんアナザーダブルな!!」
「なにそれしらない。」
「オラァしねェ!!」
今俺がいるのは孤児院。
親を失った子供達を施設に置いているのだが、そこで頼まれたのはしばらく子供たちの面倒、および遊び相手になって欲しいとの事。
まぁ男の子は元気がありふれてるわ。
仮面ライダーごっこしようぜとか言って飛び蹴りするわ棒でぶっ叩くわもうたまったもんじゃねーっての。
「もう無理!!もう無理!!俺やられた!!悪者死んだ!!」
「わるものしんでない!!ふじみ!!いきかえった!!」
「どうして勝手に生き返らせるのおおおおお!?」
死んだふりをして逃れようとするが、勝手に不死身設定を付け足され死ねなくさせられた。
それから俺は散々悪者役をやらされ、飽きるまで遊び相手にさせられたのだった。
で、おっきーはと言うと
「ほら、ここ折るでしょ?そうしたら…」
「できた!!お姉ちゃんすごーい!!」
女の子と一緒に折り紙遊びしてましたとさ。
まーこちらとは打って変わって可愛らしいこと可愛らしいこと…。
「ねぇねぇつぎはこれおって!!」
「だめ!!これつくってもらうの!!」
「はいはい、順番ねー。」
と、折り紙の見本のページを見せておっきーに殺到する女の子達。
なんだよ…変わってくれよ。
お前そんなとこに居ないでこっちのバイオレンスな世界来てくれよ…。
「ドラゴンいっさつげき!!ファイアー!!」
「いってぇ!!!」
⚫
「もうかんべんしてくれ…。」
帰路。
アザだらけとなった俺は夕方頃、ようやく子供達という名の悪魔から開放された。
「わーすごい。男の子ってのはいつの時代も元気いっぱいだねー。」
「他人事みてーに言いやがってよぉ!!!!見て見ぬふりしてお姫様みたいに折り紙遊びしやがって!!!」
そんなキレ気味な俺に「だって姫、刑部〝姫〟だもん」と返しニヤつくおっきー。
うるせぇな、姫は姫でもてめぇ妖怪だろ。
お前本物のお姫様に会ってそんなこと言えんのかよ。
サーヴァントには皇女や王妃とか、マジモンがわんさかいるんだぞ。
「あーもう帰って寝る。指1本動かせねぇっての。」
にしても今日は散々だった。
命の危機には何度もあう、子供には殺されかける。報酬にバカみてぇな量のキュケオーン渡される。
俺、探偵としてここからやっていけんの?
そんな不安を抱えながら、ホテルの自動ドアをくぐったその時だ。
「誰だテメェ!!うごくんじゃねぇ!!」
「は?」
出迎えてくれたのはホテルの受付さん…ではなく
「いいか!?さっさと飯と部屋とありったけの金用意しろ!!こいつの頭がふ、吹き飛ぶぞ!!!」
太った男とその男の腕に抱えられ、頭に銃を突きつけられている女子高生だった。
「え、え、なに?」
「ぼさっとすんな!!サーヴァント共々その場にしゃがみやなれ!!!」
なんか人質とってるデブの言う通りにし、おれとおっきーはその場に身をかがめた。
ねぇなに?俺疲れてんだけど。
テロに巻き込まれるとか中学生男子の妄想みてーな出来事に付き合いたくねーんだけど。
「あれどうしたんすかね。」
ともかく状況が分からない。
俺は隣にいた見知らぬ人に小声でそう話しかけた。
「部屋が空いてないからキレたんだ。いきなり天井に発砲して、もうずっと膠着状態が続いてる。」
「えぇ…」
部屋が空いてないから武力行使に出たってとこか。
てゆうかほか当たれよ。別の宿泊施設だってこっからそう遠くはないだろ。
なんて思ってたが
「満室で断られたの、ここで七件目らしい。」
あ、多分俺でもキレるわ。
どこもかしこもそりゃあ満員だろうな。それにだ、
「どいつもこいつもサーヴァント連れ歩きやがって!!おい!!追加だ!!俺にサーヴァントを寄越せ!!この人質と引き換えだ!!」
どこもかしこもサーヴァントを連れたマスターでいっぱいだ。
そして人質をとっているデブはいない。
皆にはいて、自分にはいない。
そういった事もあり相当イライラしてたんだろう。
「ともかく人質を取られている以上サーヴァントでもどうしようも出来ない。何か打開できる状況があれば…!」
「おいそこ!!何ヒソヒソ喋ってんだ!!」
「!!」
と、俺たちの方へデブが拳銃を向ける。
そうか、打開策か。
「あー、ちょっといいすか?」
「な、なんだてめぇ!!」
すっと立ち上がり、俺は両腕を上げてスタスタとやつの方へ近付く。
銃口は勿論俺に向いている。
しかし怖くあるもんかよ。今日で何回も死ぬ思いしたんだ。
感覚が麻痺してんのか知らねーけど拳銃ごときでビビんねーんだわこれが。
それにだ。
こいつに人は撃てない。
「お、おい!!それ以上近付くな!!止まれ!!」
「…。」
震える手元。
ブレる銃身。
こいつの場合、拳銃なんて今まで撃ったことがないんだろう。
だから撃てない。きっと、人を傷つける度胸なんてない。
「お望みのものは金と、部屋と、あとサーヴァントだったっけ?」
「お、おおそうだよ!!今すぐよこしやがれ!!じゃないとこの女が」
「やるよ。俺の刑部姫。」
「………え?」
男が固まる。
後ろからはおっきーのとんでもねぇ声。
「ま、まーちゃん!?マジで言ってんの!?ねぇ!!」
「ああ、マジもマジ。大マジだぜ。刑部姫程度で人の命が救えんなら安いもんだ。くれてやるよ。」
「まーちゃん!!!??!?!??!!!」
親指で後ろにいるおっきーを指し、あげるという意思を示す。
振り向いてみれば案の定そこにはなんとも言えねぇ表情のおっきーが。
しかし、
「あーはい。わかりました。姫もこんな早漏なマスターは勘弁だったからねー。」
足をパンパンとはたき、よっこいしょと立ち上がるおっきー。
「おめでとさん。これでアンタも立派なマスターだ。」
「…!」
いきなり手に入ったサーヴァントに男は驚きを隠せない。
しかし次には下卑た笑みの顔へと変わり、
「へへ…へへへ…!本当はアルトリアが欲しかったがこの際この雑魚でもいいや…!オラ!俺が新たなマスターだ!!こっち来やがれ!!」
そうやって拳銃を俺に向けたままおっきーに吠える。
いやしかしまぁなんというか馬鹿というか、
こいつは悪人にもなりきれないみたいだ。
「オラ!返してやるよ!!」
人質を解放し、背中を蹴って突き飛ばす。
本当に悪いやつなら、約束は守んないし女の子は未だに腕の中だったろう。
素直…いや、馬鹿というのだろう。
「今だおっきー!!!」
俺が咄嗟についた嘘を、完璧に信じ込んでるんだからな!!
「なっ!!」
俺の声と共におっきーが折り紙の蝙蝠を飛ばす。
蝙蝠は男の手を切りつけ、奴は痛みから拳銃を落としてしまった。
「し、しまっ…」
時すでに遅し。
人質も保護され、武器も落とす。
すかさず俺は全力のスライディングをかまして拳銃をあさっての方向へと蹴飛ばした。
さて、こうなればもう…
「ひ…ひぃっ!!」
あとは他のお客様方のサーヴァントが何とかしてくれる。
今まで手が出せなかったのは人質がいたからだ。
それに例え拳銃持ってようが、英霊にとっちゃちょっと速い鉛玉が出せる程度の玩具だろうよ。
「俺だって…俺だってサーヴァントが欲しかったんだ!!なのにどうしてお前らばっかりぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
ジリジリと近付くサーヴァント達。
男は最後にそう嘆き、適度に痛めつけられ外へと放り出されたのだった。
⚫
「にしてもおっきー、良くわかったな。」
それから数時間後。
俺達はこのホテル最上階の1番イイ部屋にて寛いでいた。
なんでも騒動を解決してくれたお礼として、最上階の部屋をタダで貸してくれるとのこと。
いやーいいね。至れり尽くせりだ。
バスローブに身を包み、革のソファーでふんぞり返ってぶどうジュースを飲みながら眺める景色は最高だぜ。
ふはは下で働く愚民共よ。頑張っているかな?
「当然じゃん。だって姫はまーちゃんのサーヴァントだし?」
そんな俺の隣に座り、寄り添うのはおっきー。
やば…バスローブの破壊力すっご…。
さて、今こうして話しているのはあの時のことだ。
俺はあいつにおっきーをくれてやると言ったが、あれは勿論嘘。
ハッタリかまして隙を見せてもらおうとしたんだよ。
で、テンパってたが少し目を合わせたらおっきーはそれを超速理解。
作戦に応じてくれたわけだ。
「でもよ、早漏は言い過ぎだろ。」
「えーだって、酷いこと言った方が説得力あるんじゃないかなーって。それにまーちゃんだってこいつ程度って割と酷い言い方したじゃん。」
「それはしょうがねーだろ。」
やめろ話しながら腕を絡めるな胸を押し付けるな。
俺はもう今回ばかりはガチのマジで疲れてんだからよ。
このままではおっきーのペースに流されまた魔力供給が始まってしまう。
そんな時だ。
「お?」
突然、ドアがノック。
開けてみるとそこにはホテルの従業員がいた。
「失礼致します。」
「え、俺ルームサービスとか頼んでないんだけど。」
「いえ、宜しかったらと思い。」
そういって渡してきたのは1品の料理なのだが、
「これって…」
「紛うことなきキュケオーンだろ…。」
俺が魔法薬ショップの依頼を解決した際にもらった、あのキュケオーンであった。
「いや、俺もう食ったって。」
帰ってきてすぐに夕食で頂いてるんだ。さすがにもういらない。
食べないという意志を示して返品しようとしたがそうにもわけにもいかないらしく
「はい。実はなくならなくて…宿泊中のお客様方にご協力頂いているのです。」
「なくならない…?」
確かに俺が貰ったキュケオーンは寸胴いっぱいと大量ではあった。
だが、夕食で使い、さらには客全員に配ってしまえば無くなってもおかしくない。
だが、なくならない。
それは何故かと言えば
「寸胴におそらく魔術が施されていて、おそらく見た目以上に中に入っているか、もしくは増えている可能性が…」
「「はぁ!?!!???」」
何してんだあの大魔女…。
「ともかくご協力ください。おかわりもご自由ですので。」
「えっ、あっ!おい待て!!おい!!!いらねーって言ってんだよ!!!おい!!!!」
おかわりもできるよ!と言いルームサービスは足早に去っていった。
「…」
「…」
そうして残されたキュケオーンをただじっと見る俺達2人。
「…食う?」
「姫飽きた。もう食べたくない。」
「うるせー、食うんだよ…。」
こうして俺達はキュケオーンを流し込み、騒々しい一日目は終わりを告げた。
そして今日、ここに泊まった客は皆帰り際に、口を揃えてこう言ったのだ。
キュケオーンだけはもう勘弁してくれ、と。
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