あいつの女ということに強引にさせられて
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親同士の顔合わせは、市内の和食料理屋さんで行うことになった。いざとなるとお母さんは渋っていたけど、仕方なかったのだろう。
当日、私は、白いワンピースで、お母さんは紺のスーツで出掛けた。向こうのお父さんはスーツだったけど、お母さんは和服姿だった。
お互い、挨拶の後、訳がわかんないんだけど白ワインで乾杯をして
「すぐりさんは、高校生の時から、ウチの会社にアルバイトに来てくれて、その時から、気立ての良い娘だと思っていました。縁あって、この穣一郎が嫁に迎えたいと言い出しましてな、ワシ等もすぐりさんのこと気にいっておりますんや そんな訳で、お母さんにも、一度 お会いしてと思いましてな」と、お父さんは、意外と私の思っていた言葉と違っていた。
「はぁ この娘はまだ高校出たてで、お嫁に行くなんてこと思ってもいませんでしたし、何にも準備もつもりもしてませんのよ まして、そちらは会社の社長様ですし、嫁として通用するかどうかー」
「お母さん すぐりさんは、今でも会社内で立派にリーダーシップをとって、皆を引っ張って行ってくれていますし、僕を助けてくれているんです。人への気づかいもしてくれているし、僕は、そんなすぐりさんとどうしても結婚したいんです。お願いします、どうか認めてください」と、穣一郎さんは、頭を下げていたので、私も併せて下げていた。
「それはわかりますけどね うちは、片親ですし、裕福じゃぁないですし、この子の妹も来年受験して大学に進学するつもりなんですよね そうなると、学費なんかも・・ 正直言って、すぐりが結婚しちゃうと経済的にも大変になるんです。それに、この子の嫁入りの準備もなんにもしてないですからね」と、お母さんは、私がもしかするとと思っていた、いやらしいことを考えていたんだ。やっぱり、言い出してきた。
「白河さん 失礼な言い方ですが 息子の結婚式の費用については、すべて、私どもで負担させていただきます。それに、息子の収入に応じたものを結納金という形で用意しております。白河さんには、ご負担をお掛けしない形でと思っております。ふたりの話を聞くと、妹さんの大学の学費、それと、寮なり下宿した際の生活費も面倒見る気だと言っております。二人で、なんとかやりくりすると・・。どうでしょうか? ここまで、決心している若いふたりを気持ちよく見守ってやるのが、親の務めだと思うんですがね」と、お父さんが、見兼ねたのか口添えしてくれた。
「はぁ そうですねー」と、お母さんも、その言葉を聞いて、揺らぎ出したみたい。
「あ母さん 僕達は 直ぐにとは、思っていないんです いちごさんの受験が終わるまで・・ 落ち着くまで 待ちますので お願いします 認めてください」と、穣一郎さんも、もう一度、頭を下げてくれていた。
結局、言い含められた形なのか、結納金の話が出たので、安心したのか、別に、反対するでもなく、その場は終わった。家に帰ってきた時、お母さんが
「すぐり 本当にあの人でいいのね お母さんも ああまで、言われたら、反対する
理由ないじゃない 式の費用 全部、見てくれるっていうし 結納金まで用意するって言うんだから・・」
やっぱり、この人は、結納金のことが気になっていたみたいなんだ。それに、いちごの学費のことまで、私達が面倒みるってことになったんだから、気が楽になったんだろう。帰り道に「いちご 頑張っているんから お肉買って帰ろうよ」と、珍しく機嫌が良かったみたい。だけど、私は、相変わらず、この人のことを冷たい眼で見ていた。
それと、私は、穣一郎さんのご両親が場合によっては、私の家のことで結婚に反対するかもって、心配していたので、ああいう風に言ってもらえて、感謝していた。
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