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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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第一巻
  【第九話】

――1組教室――


 授業が始まると、唐突に織斑先生が俺に話始めた――。


「ところで有坂、お前のISだが準備まで時間がかかるそうだ」

「え?」

「予備機がない。学園で専用機を用意しようかと思ったのだが…実は昨日お前の母親から連絡があってな、仕上がり次第学園に送るそうだ」

「母さんが?」


 専用機……専用機って俺用のISの事か?

 そんな考えを他所に、教室中がざわざわとざわめいた。


「せ、専用機!?一年の、しかもこの時期に!?」

「政府からの支援無しで専用機!?有坂くんのお母さんって…」

「あぁ~。いいなぁ……。私も早く専用機欲しいなぁ」

「親の贔屓で専用機かぁ…。やっぱり世界初の男のIS操縦者は違うなぁ…」

「だよねぇ…」


 こればかりは言い返せない、実際他人から見たら贔屓にしか見えないのだから。

 だが、それなら――認めさせればいい、次のセシリアさんとの勝負で勝てば良いのだから。

 そうすれば、皆にも認められるだろう――だが、そんな認められ方で良いのだろうか…。

 そう思っていると、織斑先生が――。


「有坂、教科書六ページ。音読しろ」

「……?」


 急に音読しろとは…まぁいいか、深く考えてもわからないしな。


「『現在、幅広く国家・企業に技術提供が行われているISですが、その中心たるコアを作る技術は一切開示されていません。現在世界中にあるIS467機、その全てのコアは篠ノ之博士が作成したもので、これらは完全なブラックボックスと化しており、未だ博士以外はコアを作れない状況にあります。しかし博士は一定数以上を作ることを拒絶しており、各国家・企業・組織・機関では、それぞれ割り振られたコアを使用して研究・開発・訓練を行っています。またコアを取引することはアラスカ条約第七項に抵触し、全ての状況下で禁止されています』……」

「つまりそういう事だ。本来なら、IS専用機は国家あるいは企業に所属する人間しか与えられない。が、有坂の場合はデータ収集を目的、それとある財団の――」

「……財団?」

「む…少し口を滑らせた……。ともかく、そういった目的としてお前の母親が開発した専用機が用意されることになった」


 財団…か、時間がある時にその財団について調べてみるか。

 多分あまりわからないかもしれないが…。

 ともかく この話は置いておくとして話を整理する。


①ISは世界に467機のみ。

②コアは篠ノ之博士以外作れない――うちのクラスにも、篠ノ之さんが居るから多分関係者だろう。

③基本贔屓で特別待遇、そしてこれから現れるかもしれない男子操縦者のデータ取りメイン。


 だと思うが――まぁ変な薬を飲まされるよりかはましだな、今の状況は。

 そんな風に考えをまとめていると、女子の一人が織斑先生に質問した。


「あの、先生。篠ノ之さんってもしかして篠ノ之博士の関係者なんでしょうか……?」


 篠ノ之って名字はそうそう無いからな、遠縁の可能性もあるが。

 篠ノ之…言いにくい。


「そうだ。篠ノ之はあいつの妹だ」


 遠縁ではなく、その博士の妹だったか。

 それよりも個人情報的にばらして良かったのか疑問だな、これが。

 確か…その篠ノ之博士は今行方不明らしいな、前にニュースでやってた気がする。

――と、織斑先生の発言でクラスがざわつき始めた。


「ええええーっ!す、すごい!このクラス有名人の身内が一人いる!」

「ねえねえっ、篠ノ之博士ってどんな人!?やっぱり天才なの!?」

「篠ノ之さんも天才だったりする!?今度ISの操縦教えてよっ」


 授業中なのに、篠ノ之さんの席の近くから俺の周りの女子までわらわらと篠ノ之さんの席へと集まる。

 妹とセシリアさん、他の真面目そうな子は黙って静観してる感じだった。


 困ってるなら助け船出すかな、余計なお世話かもしれないが。


「皆、授業――「あの人は関係ない!」――中……」


 助け船を出そうと、声を出したが、突然の大声に遮断された。

 篠ノ之さんに群がっていた女子や、静観していた妹、セシリアさんもびっくりした表情をしていて、何が起こったのか、わからない様子だった。


「……大声を出してすまない。だが、私はあの人じゃない。教えられるような事は何もない」


 そう言って、篠ノ之さんは窓の外に顔を向けてしまった。


「……彼女は彼女、姉は姉って事だろ?」

「「「えっ?」」」


 俺が急に喋ったからか、篠ノ之さんを除いた女子全員の視線が俺の方に向いた。


「……いきなりの発言悪いが、篠ノ之さんと博士を重ねても仕方ないんじゃないかな、これが。俺自身も、よく親戚や近所の人に、妹と比べられるが…俺自身…正直出来があまり良くないからな。出がらしって奴だな、ははっ」

「お兄ちゃん…」


美冬の視線を感じたが、俺は言葉を続けていく。


「……まぁだからといって妹にコンプレックスや嫉妬とかはない。代表候補生の候補に選ばれたのも家族皆で祝福するぐらいだからな、これが。――だが、やはり俺は俺、妹は妹と比べるのではなく、一個人として見られたいと常々思うんだ。――だから、話は逸れたが、篠ノ之さんに見る姉の篠ノ之博士ではなく、彼女個人を見てあげると俺は良いと思ったりするが――――」


 言葉を続けていたが、周りの女子の驚いた表情に、言葉が止まってしまった。

 と同時に、織斑先生が――。


「さて、授業を始めるぞ。山田先生、号令」

「は、はいっ!」


 話の途中だったが、そういや授業中だったな。

 助け船にもならなかったかもしれないな…後で彼女に謝っておこう。


 そんな風に思いながら、教科書を開き、ノートを開いて授業内容を書きうつしていった――。 
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