IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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第一巻
【第三話】
――一組教室――
「――であるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合は、刑法によって罰せられ――」
すらすらと手に持った教科書を読んでいく山田先生。
俺は教科書を開いてはいるのだが――。
な、なんだ?……全く単語の意味がわからない。
この学園に来るまでに、あの電話帳みたいな本を読みはしたが全くわからなかった。
ちらっと妹を見ると、山田先生の話を熱心に聞きながらノートに取っている。
妹もそういや事前学習してたな。
IS操縦者が国防力に直結する昨今、この学園は後のエリートを育てる機関だ。
更に入学試験で桁違いの倍率を勝ち上がって来た優等生でもある。
俺何かとはえらい違いだな…。
もっと努力しなければ、わからなくてもノートにとるか…。
なんて思っていると、山田先生が俺に声をかけてきた――。
「有坂くん、何かわからない所がありますか?」
俺が妹の方を向いていたのに気づいたのか、わざわざ訊いてきた山田先生。
「え、えと……」
開いている教科書に視線を落とし、軽く読むが――全くわからず。
「わからないところがあったら訊いてくださいね。何せ私は先生ですから」
そう言い胸を張る山田先生。
先生だし、訊いてみて損はないだろう、これが。
「山田先生」
「はい、有坂くん!」
山田先生のやる気に満ちた返事、だが――。
「……ほとんどわかりません」
「え……。ほ、ほとんど、ですか……?」
山田先生の顔がみるみるうちに困り顔へと変わっていく。
「え、えっと……有坂くん以外で今の段階でわからないっていう人はどれくらいいますか?」
挙手を促す山田先生――だが。
シーン……。
沈黙―――つまり俺以外の皆がわかっているということだ、これがな。
「……有坂、入学前の参考書は読んだか?」
教室の端で控えていた織斑先生が訊いてきた。
「読みましたが…正直専門用語が多――」
「成る程……なら放課後にでも誰かに教えてもらえ、いいな」
「わ、わかりました……」
ギロッと睨まれて思わず萎縮する――。
ここでも男子はやはり弱い立場か……。
「ISはその機動性、攻撃力、制圧力と過去の兵器を遥かに凌ぐ。そういった『兵器』を深く知らずに扱えば必ず事故が起こる。そうしないための基礎知識と訓練だ。理解が出来なくても覚えろ。そして守れ。規則とはそういうものだ」
確かに――そうなのだが。
望む望まざるにしろ、これが俺の運命だったのだろう――やるからにはやらねばならないかな、これが。
「え、えっと、有坂くん。わからない所は授業が終わってから放課後教えてあげますから、頑張って?ね?ねっ?」
山田先生が両手をぐっと握って詰め寄ってくる。
当たり前だが身長が俺より小さいから誰もが必然的に上目使いになる。
「は、はい。じゃあ放課後によろしくお願いします」
簡素だが、それだけを言うと俺は席に着席する。
それを見た織斑先生も、教室の端に戻っていった。
「ほ、放課後……放課後に二人きりの教師と生徒……。あっ!だ、ダメですよ、有坂くん。先生、強引にされると弱いんですから……それに私、男の人は初めてで……」
放課後に教師と生徒の二人きり――。
い、いかん…思春期の男子にそんなシチュエーショ――。
ガスッ!!
「ぎゃっ!?」
「は、はいっ!?」
「…有坂、授業中に変な声を出すな」
山田先生は驚き、織斑先生は呆れながら此方に振り向き、そのまま戻っていった。
「す、すみません……」
弁慶に蹴りを入れられた――。
犯人は隣の席の我が妹、めちゃくちゃ痛くて悶絶しそうだ――。
「山田先生、授業の続きを」
「は、はいっ!」
織斑先生の一声で慌てて教壇に戻る山田先生――だが途中で見事にこけた。
「うー、いたたた……」
大丈夫かな、山田先生……。
その後、授業が再開されたのだがやはりついていけなかった……。
先行きが不安になるな、これが。
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