IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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第一巻
【第三十七話】
――第三アリーナ――
「ヒルトさん、織斑さん。今日はこの辺りで終わることにしましょう」
「お、おう……」
「あぁ。……セシリア、美冬、それに篠ノ之も付き合ってくれてありがとうな」
肩で息をしている俺とは違い、セシリア、美冬は共に疲れを感じ取れない。
汗で少しばかり、額を濡らしてはいるが。
一方の織斑は、ぜぇぜぇと、息も絶え絶えに――疲労困憊に見えた。
「ふん。鍛えていないから二人ともそうなるのだ」
篠ノ之からの辛辣なコメント。
――まあ特別辛辣ではないかもしれないが、そんな彼女も汗で濡れていた。
――一応、毎朝走り込んでいるんだがな…まあ言い訳にしかならないが。
「じゃあお兄ちゃん、ピットに戻ってるからね?行こっ、セシリア、篠ノ之さん」
「わ、私は…向こうで着替える」
「……そっか。ならセシリア、行こうっ」
「わ、わかりましたから押さないでくださいなっ」
美冬は、セシリアの背中を押しながら、二人一緒に反対側のピットへと戻っていった。
「一夏、何をしている、早くピットに戻れ」
「お、おう。ヒルトも行こうぜ?」
「……もうちょいここで体を休めてからいくよ」
「そうか。なら先に着替えてるぜ」
そう告げ、織斑は美冬達とは反対側のピットへ移動した。
篠ノ之もそちらの方へいき、何やら揉めているのか織斑との会話が風に乗って聞こえた。
――内容は割りとどうでもいいので、聞かなかった事にしておく。
「ふぅ……。まだ少しアリーナ使えたよな」
ハイパーセンサーの機能の中に盛り込まれている現在の時刻を調べる。
――てか、ハイパーセンサーの使い方もったいないよな、大人しく時計を見ればいいが、腕時計が無いという悲劇。
安くてもいいから時間があれば時計を買いにいくかな。
「――時間を無駄にしたらダメだな。俺は皆より遅れてるんだ…、追い付かないと」
そう独り言を俺は言い、今日の教わった事の復習と、美冬とセシリアから見て盗めそうな技術をISの機能を使ってリプレイ映像を見つつ、基礎と応用を練習した――。
――寮の廊下――
アリーナ使用時間ギリギリまでやっていて、管理をしている先生にお叱りを受けてしまった。
――世知辛いな、普段の時もISを使えたら問題無いのだが……それはダメらしい。
寮の廊下を歩いていると、ちらほらと薄着の女の子達をちょくちょく見かける。
――薄着万歳!!
心の中グッと親指を立てる。
そして非常に目の保養に素晴らしい環境だと、俺は改めて気付かされる。
だが、さすがに直で見たら女子に非難を受けるため基本見れない。
――あぁ無情、しかし、こんな環境だと、理性を保つのが大変だ。
織斑はよくいけるな……。
――てかあいつの部屋って、まだ織斑先生と一緒なのかな?
部屋の割り振りが上手くできず、個室も調整出来なかったらしいが。
――今さら突っ込んでも仕方ないか、これを割り振りできなかった人がダメすぎる結果だしな。
部屋へと戻ると、ベッドで三角座りをしている美冬が――。
「おっそーいっ!!」
「悪い悪い、ついゆっくり風を浴びすぎたよ」
頬を膨らませて、上目で見てくる美冬に少しだけドキッとさせられながらもシャワーを浴びる準備をする。
「お兄ちゃん、何で遅かったの?どうせ女の子の薄着姿見て鼻の下を伸ばしてたんでしょ?」
「……おぉぅ、鋭いな妹よ」
「もうっ!!」
ポスン――そんな音をたてながら俺の頭に枕が投げられた。
「どうしたんだよ、不機嫌になって」
「別に……ふんだっ」
――うーん、何故か美冬の機嫌を損ねてしまったようだ。
「ん~、何で機嫌悪いんだ、美冬?」
隣へ座ると、ぷいっと横に顔を反らして。
「……だってお兄ちゃん、遅いんだもん」
「悪かったって、機嫌直せよお姫様」
「うぅ…お、お姫様じゃないもん…」
――と言いつつも、実は美冬はそう呼ばれると機嫌を治す、あくまでも俺限定であって、他の人に言われるのは嫌らしい。
「ふふ、もう遅いから美冬は寝るんだぞ?俺はシャワー浴びるから」
「はぁい…。パジャマに着替えよう」
そんな美冬の言葉を背中で聞き、俺はシャワーを浴びるため洗面所兼脱衣場へと向かった。
――五分後――
シャワーを浴び終え、前回全裸で出てそれを指摘されたのを思いだし、トランクスだけは穿いて頭を拭きながら脱衣場から出ると――。
「……今日は下は穿いてるんだ?」
「あぁ、前に美冬が指摘したからな」
「ふ、ふぅん……」
――何だ?若干残念そうな感じがするような――。
「さて、寝るか。もう寝ないと身体がもたないからな」
「そうだね。じゃあお兄ちゃん、おやすみなさい――シャツだけは着て寝ないと風邪引いちゃうからね?」
そう言い、横になった美冬は目を閉じ、眠りについた――。
「……寝るか」
シャツを着、下はジャージを穿くと、俺もベッドに横になって眠りについた。
俺たち二人が寝てる間に、織斑と凰、この二人が喧嘩をして大事になっていたとは――思いもよらなかった。
――そして、クラス対抗戦の相手が凰とも知らず――。
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