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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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第一巻
  【第十九話】

 お兄ちゃん……っ!?


 直撃した爆発の衝撃が全身の痛覚を駆け巡る――。

 そんな中…妹の声が――俺を呼ぶ声が聞こえた気がした――。


 死んだのか?

 そう思った――瞬間。


――フォーマットとフィッティングが終了しました、確認ボタンを押してください。


 一気に、意識に直接データが送られてくる。

 その膨大なデータに頭が少し混乱するが――それも一瞬の事であり、そのデータを【理解】した。

 そして、目の前にウインドウが現れ、その真ん中に『確認』ボタンが現れる。

 その『確認』ボタンを押すと――。

 更なる膨大なデータが直接脳内に流れ込んできた――。


 なんだ…?

 整理されてるのか…?

 確信はないが、感覚的にわかる――。

 キィィィンッ!!


 高周波金属音、村雲が俺に呼応する――俺に応える。

 そんな感じがした――その刹那、それは俺の全身を包んで――否、自身の身に纏われたISが光の粒子に弾けて消え、そして――形を成す。


ズゥゥゥゥンッ……!


 金属の塊がアリーナ地表へと着地、その衝撃にアリーナ全体が揺れる。

 爆発の黒煙を纏い、アリーナへと着地した金属の塊。

 その黒煙が晴れ、アリーナ地表に先程よりも洗練された漆黒の機体があった――。

「ま、まさか……一次移行!?あ、貴方、今まで初期設定だけの機体で戦っていたって言うの!?」

「あぁ、ぶっつけ本番でな、これが。――だからといって俺のピンチには変わらないがな、これがな」


 先程のウインドウに書かれていた『初期化』及び『最適化』が終わった――。

 つまり、真の意味でも村雲は俺用の専用機になったということだ。

 先程までは知らなかったが、一次移行した後の膨大なデータで知ることが出来た。

 シールドエネルギーを確認――残り僅かか…。

 次、射撃及び近接攻撃が当たれば負けるな…。

 両手に構えた天狼…、此方も機能が解放されたのか、新たに『バリアー無効化攻撃』が追加されていた。

 あくまでもシールドバリアーを無効化し、相手の絶対防御を発動させる――本体に――生身の身体にダメージが通る前には機能に制限がかかるようだ。



「セシリア……そろそろ決着つけようか?いつまでも決着つかないなんてのも、時間の無駄だろうしな」

「……っ、貴方、本当に生意気ですわっ!――これで……フィナーレですわ!!食らいなさいなっ!!」


 再装填されたミサイル型のビットが二機、セシリアの命令で此方へ加速し、飛来する。

 それを見、確認した俺は先程と同じくブースターを点火、そして跳躍した。


その加速力に、アリーナに響き渡る轟音――。

 二機のミサイル型ビットの横を村雲の加速力で突破、セシリアの眼前にまで肉薄する。


「……っ!?」


 セシリアの目が見開き、驚愕の表情になる。

 その表情を見た俺は勝利を確信し、振り上げた天狼を縦に振り下ろす――。

 刃が空気を切り裂く音を響かせたその瞬間。


「……ひっ!?」


 小さく悲鳴を上げ、その恐怖から逃れようと眼を閉じたセシリアを見て俺の頭の中に声が流れてきた。

 彼女は敵じゃない、クラスメイトで、仲間だ――。


 そんな俺の心の声がストップをかけたのか、当たる寸前に振るった天狼を無理矢理止める。

 その刃がシールドバリアーに触れるギリギリで止まったその瞬間、背後に回ったミサイル型のビット二機の直撃を受け――。


「ぐ……ぅっ…!?」


 その痛みによる衝撃に、苦痛の表情を浮かべながらアリーナへと墜落していく――。

 同時に決着を告げるブザーがアリーナ中に鳴り響いた。


『試合終了。勝者――セシリア・オルコット』


 試合が終了し、ミサイルの衝撃でアリーナ地表に墜落した俺は立ち上がり――。


「……痛てて、あーぁ、負けたか…」

「ま、待ってくださいなっ!!」


 そんな呼び止める声が聞こえて、意識をそちらに向けると、先程まで空に居たセシリアがアリーナの地上に降り立ち、腕組みしながら此方を見ていた。


「何故、あそこで刀を振るうのを止めたのですか?――わたくしに情けをかけたおつもりですかっ!?」


 徐々に表情が険しくなり、此方へと詰め寄ってくるセシリア。

 既に互いの身体が密着するぐらいまで迫ってきたセシリアに、俺は少したじろぎつつも――俺は答えた。


「……何て言うか、最初は色々俺とセシリア、互いにぶつかったりしたが――クラスメイトで仲間って事を思い出してな」

「……!?」

「――まあお前が俺の事嫌いだってのはわかってるが。だからってさ……。これから切磋琢磨する仲間に対して刀を振るって攻撃ってのも疑問に思えてな」


 アリーナ中がざわざわと騒ぐ声が聞こえる。

 互いの声はアリーナに届いてないからか、何の話をしてるかが気になっているように感じた。


「そんなわけだ。納得するかしないかはセシリア次第さ、これが。――とりあえず…セシリアとの約束は守るよ。明日から君の奴隷だ、好きに命令してくれれば何でもやるさ。……でも、今日は疲れたからな明日からで。――後…悪かったな、セシリアの母国をバカにするような事を言って。感情任せに色々言い過ぎたよ」


 頭を下げ、謝罪の言葉を告げると俺はその場を後にする。

 試合は俺の負けという結果となった――。


「……有坂さん」


 そんなセシリアの――俺の名を呼ぶ呟きが、背後から聞こえたような気がした。 
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