IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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第二巻
【第四十七話】
前書き
有坂兄妹の幼なじみ、飯山未来が転入してきます
――一組教室――
「やっぱりハヅキ社製のがいいなぁ」
「え?そう?ハヅキのってデザインだけって感じしない?」
「そのデザインがいいの!」
「私は性能的に見てミューレイのがいいかなぁ。特にスムーズモデル」
「あー、あれねー。モノはいいけど、高いじゃん」
月曜日の朝。
クラス中の女子が賑やかに談笑していた。
皆手にカタログを持ち、あれやこれやとISスーツの意見を交換している。
「そういえば有坂君や美冬ちゃん、織斑君のISスーツってどこのやつなの?見たことない型だけど」
「あー。特注品だって。男のスーツがないから、どっかのラボが作ったらしいよ。えーと、元はイングリッド社のストレートアームモデルって聞いてる」
「俺たち兄妹は、『F.L.A.G.』オリジナルカスタムモデルだな」
「うん。私のは他のISスーツに近いけど、お兄ちゃんのは更に特別製なの」
財団が用意したオリジナル物と、母さんから妹へ連絡があった。
俺に連絡ないのは勉強やISの訓練に集中させるためらしいが……。
――ISスーツというのは、IS展開時に体に着ている特殊なフィットスーツの事。
このスーツ無しでもISを動かすこと自体は可能だが、反応速度鈍ってしまうらしい。
「ISスーツは肌表面の微弱な電位差を検知することによって、操縦者の動きをダイレクトに各部位へと伝達、ISはそこで必要な動きを行います。また、このスーツは耐久性にも優れ、一般的な小口径拳銃の銃弾なら完全に受け止める事ができます。あ、衝撃は消えませんのであしからず」
――と、すらすらと説明をしながら現れたのは山田先生だった。
一般的な小口径拳銃――ニューナンブ辺りか?
45口径のガバメントは防げるのか……?
――試したいとも思わないが。
「山ちゃん詳しい!」
「一応先生ですから。……って、や、山ちゃん?」
「山ぴー見直した!」
「今日が皆さんのスーツ申し込み開始日ですからね。ちゃんと予習してきてあるんです。えへん。……って、や、山ぴー?」
入学してから二ヶ月。
山田先生には八つくらい愛称がついていた。
生徒に慕われている証拠だろう。
ちなみに織斑先生には千冬様以外はない。
理由は――『私たちに死ねって言うの?』――と、ガクガク震えながら言っていたため。
――まあ怖いわな。
「あのー、教師をあだ名で呼ぶのはちょっと……」
「えー、いいじゃんいいじゃん」
「まーやんは真面目っ子だなぁ」
「ま、まーやんって……」
「あれ?マヤマヤの方が良かった?マヤマヤ」
「そ、それもちょっと……」
「もー、じゃあ前のヤマヤに戻す?」
「あ、あれはやめてください!」
珍しく語尾を強くして山田先生が拒絶の意思を示した。
――何かしらトラウマでもあるのかな?
まあ言われたくないあだ名で呼ばないようにすればいいしな。
「と、とにかくですね。ちゃんと先生とつけてください。わかりましたか?わかりましたね?」
はーい、とクラス中から返事が来るが、言ってるだけの返事なのは明白だろう。
「諸君、おはよう」
「「「お、おはようございます!」」」
それまでざわざわとしていた教室が一瞬で礼儀正しく整列される。
一組担任の織斑千冬先生の登場だ。
「今日からは本格的な実戦訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人気を引き締めるように。各人のISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにな。忘れたものは代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう。それもないものは、まあ下着で構わんだろう」
――下着だと!?
ヤバい、そうなったら色々ヤバい、主に下半身に血液集中する意味で。
――思春期の男には刺激ある授業になってしま――。
そんなエロい事を考えていると、隣の美冬から蹴りを食らう。
「あだぁっ!?」
「有坂、静かにしろっ!」
「す、すみません……」
隣の美冬を見ると、知らん顔された。
――何でエロい事を考えてるのがバレるんだ?
――話をかえて、うちの学園指定の水着はスクール水着である。
絶滅したと思ったのだが、何故か生き延びていた。
そして体操服も何故かブルマーという――セシリアの体操着は――というより外人さんは皆平仮名で書いてる謎。
普通に英語でいいような?
そして学園指定のISスーツはタンクトップとスパッツをくっ付けた感じのシンプルなものだ。
わざわざ学園指定のものがあるのに各人で用意するかというと、ISは百人百通りの仕様へと変化するもので、早い内から自分のスタイルというのを確立するのが大事だという。
もちろん、全員が専用機をもらえる訳じゃないので個別のスーツが本当に役に立つかはわからないが、そこは花も恥じらう十代の乙女の感性を優先させてくれているんだろう。
女性はおしゃれの生き物ですからってセシリアが言ってた。
そして専用機持ちの特権、『パーソナライズ』を行うと、IS展開時にスーツも同時に展開される。
着ていた服は、一度素粒子まで分解されてISのデータ領域に格納される。
ただし、スーツを含むダイレクトフォームチェンジはエネルギーを消耗するため、緊急時以外は普通にISスーツを着て展開するのがベターだ。
「では山田先生、ホームルームを」
「は、はいっ」
連絡事項を言い終えた織斑先生が山田先生にバトンタッチする。
ちょうど眼鏡を拭いていたらしく、慌ててかけ直していた。
「ええとですね。今日はなんと転校生を紹介します!しかも三名です!」
「え……」
「「「えぇぇええっ!?」」」
いきなりの転校生紹介に一気にざわつく。
――てか織斑が四月の中頃、鈴音は隣のクラスだが四月後半に来たから今さら驚く必要もないと思うが――。
等と俺は思いながらも三度のご飯より噂が好きな十代女子、その情報網をかいくぐり、いきなり転校生が現れたのだから驚きもするのだろう。
しかも三人。
――分散させなかったのには訳があるのか?
まあ何にしても、誰か興味がわくな、これが。
そんな風に考えていると、教室のドアが開き、入って――。
「………!?」
入ってきた転校生達を見て俺の目が見開く。
だって――ここにいないはずの彼女が入って来たのだから――。
「失礼します」
「失礼しまーす」
「……………」
クラスに入ってきた三人の転校生を見て、クラスのざわめきがピタリと止まる。
――止まるのもわかる、転校生の一人が男子なのだからだ。
――だが、それ以上に驚いたのはその男子の後に入ってきた二番目の女性。
――俺たち兄妹の幼なじみ――飯山未来がそこにいたのだから…。
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