IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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第一巻
【第四話】
――一組教室――
二時間目が終わり、また客寄せパンダよろしく、皆の興味本意で見られるかと思いきやいきなり声をかけられ――。
「ちょっと貴方、少しよろしくて?」
「は?」
話し掛けてきた相手は外人さんだ。
ちなみに日本語を喋るのは、ISが発表されて日本語が必修科目になったためらしい、お陰で海外旅行も楽々だな、これが。
その外人さんの特徴は地毛が鮮やかな金髪、白人特有の透き通った青い瞳、そしてややその目がつり上がった状態で俺を見ていた。
僅かにロールがかった髪は高貴なオーラを出している――が、その女子の雰囲気も『いかにも』今の女子という感じに思えた。
ISが開発されてから社会は女性優遇になっている。
というか、若干いきすぎの範囲で女=偉いという構図になっている。
そして男の立場は奴隷か、労働力。
まあ面のいいアイドルやらホストならほぼ対等に扱ってくれるらしいが、それは既に差別だ――だが女子からすると差別ではなく区別らしい。
ものは言い様って事だな、これが。
そういった男は街中で擦れ違っただけの女にパシリをやらされる――。
断れば痴漢なり何なりと言われて警察に御用、理不尽に一泊泊まるはめになる。
またこれが社会問題にならず、それをアシストするコメンテーターまでいるのだからもう収拾がつかない――。
話は戻るが、いかにも現代の女子が目の前にいる。
腰に当てた手が様になっている――毎日してるのか?
「訊いてます?お返事は?」
「あ、訊いてるぞ、これが。それでどういった用件だ?」
そう俺が答えると、目の前の金髪外人女子はかなりわざとらしく声をあげた。
「まあ!なんですの、そのお返事。わたくしに話し掛けられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」
「………………」
今の世の中、ISを使える=国家軍事力、だからIS操縦者は偉いという構図になっている。
そしてIS操縦者は女性しかいない。
だからか、上から目線的な態度や女性優位という力を振りかざす女子もいるのが現状だ……。
正直、暴力にしか感じないのが厄介だな、これが。
「ごめん。俺、貴女が誰か知らないか――」
「わたくしを知らない?このセシリア・オルコットを?――」
まだ此方は言い終えてないのだが、どうやらこのセシリアさん?にとっては知らないという答えがかなり気に入らないものだったようだ。
釣り目を細めて、先ほどと同じく、いかにも男子を見下した口調で続けている。
「――イギリスの代表候補生にして、入試主席のこのわたくしを!?」
入試主席――そういや入学式で彼女が何か言ってたような気がする。
代表候補生――そういや妹もその【候補生候補】らしいが、その代表候補生とはどういうものか知らないな、訊いてみるか。
「じゃあ、質問いいかな?」
「ふん。下々のものの要求に応えるのも貴族の務めですわ。よろしくてよ」
この子、貴族の出だったのか。
まあそれは置いといて訊くかな。
本来なら妹に訊くところだが、妹は相も変わらず学園に何があるかを覚える為に休み時間をフルに使って調べているのだ。
後で訊いておこう。
「代表候補生って、何なんだ??」
がたたっ。
聞き耳を立てていたクラスの女子数名がずっこけた。
てかこけるような内容だったのか?
「あ、あ、あ……」
「『あ』?」
「あなたっ、本気でおっしゃってますの!?」
凄い剣幕だ、漫画やアニメなら血管マークがついているだろう。
とにかくそれほどまで彼女は俺に対して怒っていた。
だから正直に謝ることにした。
「悪いが、正直知らない」
「………………」
セシリアさんは怒りが一周して逆に冷静になったのか、頭が痛そうにこめかみを人差し指で押さえながら言い出した。
「信じられない。信じられませんわ。極東の島国というのは、こうまで未開の地なのかしら。常識ですわよ、常識。テレビがないのかしら……」
その発言に、流石に周りの女子も怪訝そうな表情を見せた。
何やら日本をバカにするような発言だが、さすがにテレビはあるぞ。
見るならは主に情勢とかのニュースだが。
「……まぁいいが、とりあえず代表候補生とは?」
「国家代表IS操縦者の、その候補生として選出されるエリートの事ですわ。……貴方、単語から想像したらわかるでしょう」
「成る程、確かに言われるとそうだな」
言われればわかるが…なかなか見落としやすい単語かもな、これが。
「そう!エリートなのですわ!」
びしっ!と此方に向けた人差し指が、俺の鼻に当たりそうなくらい近かった。
そんなに俺を指差すなよ…。
先端恐怖症だったらどうするんだよ。
「本来ならわたくしのような選ばれた人間とは、クラスを同じくすることだけでも奇跡……いいえ、幸運なのよ。その現実をもう少し理解していただける?」
「………そっか、ラッキーだったんだな」
「……馬鹿にしていますの?」
いやいや、そちらが幸運だと言ったじゃないか。
そんな考えをしていると目の前のセシリアさんは言葉を続け――――。
「大体、貴方ISについて何も知らないくせに、よくこの学園に入れましたわね。唯一男でISを操縦できると聞いていましたから、少しくらい知的さを感じさせるかと思っていましたけど、期待外れですわね」
「……悪かったな、知的さも無くて。それとは別に期待されても困るがな」
「ふん。まあでも?わたくしは優秀ですから、貴方のような人間にも優しくしてあげますわよ」
へぇ…イギリスではこの態度が優しさなのか。
「ISの事で解らないことがあれば、まあ……泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよくってよ。何せわたくし、入試で『唯一』教官を倒したエリート中のエリートですから」
何やら『唯一』の部分を強調されたな――てか、今――。
「入試って……確かISを動かして戦うやつの事か?」
「それ以外に入試などありませんわ」
一応筆記も存在してたが、代表候補生だから多分なかったのだろう。
「確か……そうだ。俺も倒したぞ、教官」
「は……?」
厳密には倒したというよりは俺が歩行しようとしたら前のめりで転け、突っ込んで来た教官はそのまま壁に激突して動かなくなったという。
正確には倒した訳では無いのだが。
しかし、俺が言った事は相当ショックだったのか、セシリアさんは目を見開いている。
「わ、わたくしだけと聞きましたが?」
一応妹の美冬も良い所までいったらしいが、最後は力の差でやられたらしい。
「女子では――っていう話なのかもな、これが」
まあ俺のが勝ちとして認められてない可能性もあるがな。
「つ、つまり、わたくしだけではないと……?」
「その辺りの事は詳しくは知らないけど…」
「貴方!貴方も教官を倒したって言うの!?」
「あ、あぁ。多分な」
多分としか言えない――転けて相手が自爆したのだから。
「多分!?多分ってどういう意味かしら!?」
「まぁまぁ、落ち着いて落ち着いて。な?」
「こ、これが落ち着いていられ――」
キーンコーンカーンコーン。
三時間目開始のチャイムが鳴り響く。
――正直助かったな、これが。
「っ……!また後で来ますわ!逃げないことね!よくって!?」
「わ、わかったって。あんまり怒るとシワが出来るぞ?」
「な、な、何ですって!?」
凄い剣幕に、俺は思わず――。
「な、何でもない」
それだけを言うと、怒ったセシリアさんは席へと戻っていった――。
それと同時に妹も戻っていたようで。
「お兄ちゃん、セシリアさんと何を話してたの?」
「あー、代表候補生の事とか聞いてたよ」
「そっか――って、先生来ちゃうからまた後で聞くね」
そう言うと同時に織斑先生及び山田先生が教室へと入ってきた。
そして三時間目の授業が開始するのだが――。
まさかそこで一悶着あるとは、今の俺には知るすべもなかった――。
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