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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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第一巻
  【第三十一話】

――第一グラウンド――


「馬鹿者共が……。 誰が地上に撃墜しろと言った? グラウンドに穴を開けてどうする」

「「……すみません」」


 墜落した穴から這い出ると、俺はその場に立った。

 そして、俺は自分が墜落して出来た穴を見ると、これまた綺麗な人形に開いてるのがまた微妙な気持ちにさせた。

 そんな事を考えていると、篠ノ之が織斑の元へと近づき――。


「情けないぞ、一夏。 昨日私が教えてやっただろう」


 腕を組み、目尻を吊り上げる篠ノ之。

 一応、こっちも墜落しているのだから見るぐらいはしても良いだろうに。


「お兄ちゃん、大丈夫?」


 美冬が心配してか、此方に近づいてきた。


「あぁ、問題ないぞ。 ……グラウンドに穴を開けた以外はな」

「……うん。 体は大丈夫そうね――」


 何て、心配しながらも此方の様子を見ている美冬、そして更に俺の前に――。


「大丈夫ですか、ヒルトさん? お怪我はなくて?」

「おぅ。 怪我はしてないな。 ただ、グラウンドに穴は開いたがな、これが」

「そう。 それは何よりですわ」


 うふふと、口許に手を当て、また楽しそうに微笑むセシリア。

 それはそうと、織斑の方は、篠ノ之の小言を聞かされていた。

 内容は――いや、興味ないや。


「セシリアもお兄ちゃんに対する態度が変わったよねぇ~?」


 ――と、美冬がいたずらっ子みたいな笑みを浮かべ、セシリアを見ていた。


「そ、それは…。 く、クラスメイトとして、ヒルトさんを気遣うのは当然の事ですわ……」

「ふ~ん……?」


 ――口許に手を当てて、何だがニヤニヤしている美冬。


「~~~っ!? 美冬さんっ!!」

「あははっ♪ セシリアさん可愛いっ♪」


 何だがわからないが、俺としては二人が仲良しになったのは良いことだと思う。

 ――最初の頃と比べたら、本当に変わったよな、セシリア。



「おい、二人とも。 邪魔だ。端っこでやっていろ。 篠ノ之も邪魔だ」


「「「す、すみませんっ!」」」


 ふと気づくと、いつの間にか隣へ来ていた織斑。

 そして、そんな俺と織斑の前に、織斑先生が立った。


「有坂、織斑、武装を展開しろ。 それくらいは自在に出来るようになっただろう」

「は、はあ」

「へーい」


 織斑は曖昧な返事をし、俺は気だるそうな返事をすると織斑先生が――。


「二人とも、返事は『はい』だ」

「「は、はいっ」」


 流石に怒られてしまった。

 ……まあ、普通怒るよな、これが。


「よし。 では、二人とも始めろ」


 織斑先生に言われ、俺と織斑は互いに距離を取り、離れる。

 周りや正面に人がいないことを確認すると、天高く右腕を突きだし――開いた拳を握りしめ。


「来い……天狼っ!!」


 武器の名を呼ぶと、空に光が集まり、それが像を結ぶと形となって成立した。

 そして、その光が収まった頃には、『天狼』が空から降りてくる。

 それを手に取り、斜めに振るうと刃は空気を切り裂き、そのまま構えた。

 隣の織斑も同じく、既に武器を出していた。

 ――俺と織斑の差は、この辺りにも出ている。

 武器の名を呼んで形成するのは、初心者のやり方。

 呼ばずに心で念じられるようにならなければいけないのだが。


「二人とも遅い。 0.5秒で出せるようになれ」


――精進しないとな、俺も。

 ……でも、いつになることやら。


「セシリア、武装を展開しろ」

「はい」


 セシリアは左手を肩の高さまで上げると、そのまま降ろして真横に腕を突き出す。

 光の奔流を放出することなく、一瞬爆発的に光を放っただけだった。

 それだけで、その手には狙撃銃『スターライトmkⅢ』が握られ――。

 ゴツン――。

 そんな鈍い音が聞こえたと思ったら時既に遅く、セシリアの狙撃銃の砲身が俺の顔面に直撃していて、めり込んでいる。


「ぐぉ……いてぇ……」

「……!! ひ、ヒルトさん、大丈夫ですか!?」


 まさか顔面にめり込むほど直撃するとは思っていなかったので、セシリアも慌てて俺に声をかけてくれた。


「ら、らいじょうぶらいじょうぶ…」


 絶対防御機能はついていても、衝撃自体はくるのだから、けっこう痛い。


「オルコット、そのポーズはやめろ。 当たったのが有坂だったからいいようなものの、他の生徒に当たっていたら問題になっているぞ。 正面に展開できるようにしろ」

「は、はい。わかりました。 ――ヒルトさん、すみません……」


 ――おぉぅ、俺ならぼこぼこにされても大丈夫って……最近のニュースでの取り扱いの違いの差ぐらいに。

 ――政府の支援自体は、まだ俺にもあるのだが、やはり織斑先生の弟ということもあり、明らかに俺より破格の待遇を受けているのだ、織斑は。

 まあ別に、そんな事でどうこう思っても仕方ないのだがな、これが。


「ではセシリア、近接用の武装を展開しろ」

「あ、はっ、はいっ。 ……ヒルトさん、離れてくださいな」


 眉を下げ、さっきの事を申し訳なく思っているらしく――。


「あ、あぁ……。 また顔面に直撃はキツいしな」


 わざとセシリアに意地悪く言ってしまった。


「も、もぅ! 言わないでくださいなっ!」


 俺はセシリアから少し離れると、それを確認したセシリアは銃器を光の粒子に変換した。

 ――『収納』と呼ぶらしい――。

 そして新たに近接用の武装を『展開』。

 ――だが、セシリアの手のひらの上の光はなかなか像を結ばず、くるくると空中をさ迷っていた。


「くっ……」

「まだか?」


 急かす織斑先生の言葉に、セシリアは――。


「す、すぐです。 ――ああ、もぅっ……!! 『インターセプター』!」


 セシリアは、武器の名前を叫んだ。

 それにより、イメージがまとまり、光は武器として構成された。

 先ほど、俺も叫んで武器を出したのだが、教科書の最初のほうに書かれている『初心者用』の手段であり、それを使わないと武装を展開出来ないというのは、代表候補生のセシリアにとっては屈辱的なことらしいのだが。

 俺としては、初心忘れるべからずだから良いと思うがな。


「……何秒かかっている。 お前は、実戦でも相手に待ってもらうのか?」

「じ、実戦では近接の間合いに入らせません! ですから、問題ありませんわ!」

「ほう。 ……有坂との対戦で初心者に懐を許していたように見えたが?」

「あ、あれは、その……」


 ごにょごにょとまごついて、セシリアの言葉は歯切れが悪かった。

 まあ、間合いを許したのはセシリア自身も俺に入られるとは思わなかっただろう。

 そんな風に頭で考えながらセシリアと織斑先生のやりとりを眺めていると、横目で睨まれ、そして次に送られてきたのは個人間秘匿通信、俗にプライベート・チャネルと呼ばれるものだ。


『あ、貴方のせいですわよ!』

『お、俺のせいかよ……』

『そ、そうですわっ! ……貴方が、わたくしに飛び込んでくるから……』


 ――だって、もう矢が尽きてたらそうするしかないじゃん。


『せ、責任をとっていただきますわ!』


『何だよ、セシリアを嫁に貰えばいいのか?』

『な……っ!?~~~~っ!!』


 プツンッ――と、音がなった気がした。

 改めてセシリアの表情を見ると怒っているのか耳まで真っ赤になっていた。

 ――返信も返せるので、返信したが、プライベート・チャネルは一方的に相手に送り付ける事も可能だ。

 使うイメージは『頭の右後ろ側で通話するイメージ』だそうだ。


「時間だな。 ……今日の授業はここまでだ。 有坂、織斑、グラウンドを片付けておけよ」

「了解~」



 自分の穴だけ埋めとけば良いだろう、織斑のは――まあ自爆だし、仕方ないだろう。


「お兄ちゃん、手伝おっか?」


 そう声をかけてきたのは我が妹の美冬、他のクラスメイトはさっさと帰っていった――と思えば、セシリアも残っていた。


「わ、わたくしもお手伝いしますわ」

「おー、助かるな。じゃあ――」


 そう俺が言いかけるのを遮るように、織斑が俺に言った。


「お、おいヒルト。 セシリアや美冬にも手伝わせるつもりか??」


 ……何故美冬を呼び捨てにする?

 ――ではなく、手伝ってもらうのに何か不都合でもあるのか?


「……肉体労働は男の仕事だろ? それを女に手伝わせてたら男が廃るぜ…?」

「……はぁ? 女性でも肉体労働してる人はいるぞ? ――それに、手伝ってくれたら早く済むし、俺は厚意に甘える――」

「ま、待てって。 だからってセシリアや美冬たちに手伝わせる理由もないだろ」


 ――何だ、何でこいつはセシリアや美冬を手伝わせるのを……。


「……織斑がどんな価値観を俺に押し付けてきても、妹やセシリアが手伝うって言うなら俺は手伝ってもらうだけだ」

「それって、男として俺はどうかと思うぜ?」


 ――どうやらこいつには話が通じないようだ、これ以上無駄な話するぐらいなら受け入れるか。


「わかったよ。 ――悪い美冬、セシリア。 せっかく手伝ってくれるって言ってくれたけど、何とかやってみるよ」


 俺がそう言うと、美冬とセシリアは互いに顔を見合せ、そして――。


「いいの、お兄ちゃん? 手伝った方が早く済むよ?」

「そうですわ、わたくしたちに遠慮なさらずに」

「……ありがとう、でも一人でやるよ。 ごめんな、美冬、セシリア」


 厚意を無下にする、俺としては非常にやりたくなかったが……。


「うーん……。 わかった、ならお兄ちゃん頑張ってね? セシリア、いこっ?」

「え、えぇ。 ではヒルトさん、後程……」


 二人はそう告げながらも、気になるのか時折此方を見ながら戻っていった。

「……とっとと埋めるか」
「ヒルト、終わったらこっちを手伝ってくれないか?」


 そんな言葉が耳に届く。

 正直、虫が良すぎると思わないのだろうか?


「……断る」

「何だよ、つれないな。二人だけの男子だし、仲良くしようぜ?」

「……したいなら、下らない自分の価値観を俺に押しつけるな」

「えっ、何だって?」

「……何でもない、二人分取ってくるから先に自分の所、埋めとけば?」

「……何を怒ってんだ、あいつ?」


 そう織斑に告げると、俺は二人分のスコップと土を取りに用具室へと向かって行った。
 
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