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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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第一巻
  【第二十二話】

――一組教室――


 翌日の朝のSHR。

 そこでは……俺にとってはあり得ないことが起きていた。


「では、一年一組代表は有坂緋琉人くんに決定です」


 と、山田先生は嬉々として喋っていて、クラスの女子も大いに盛り上がっている。

 後、今朝から女子の反応が手のひらを返したように対応が良くなっているのは気のせいだろうか?


「……先生、少しいいですか?」


 手を上げ、山田先生に質問をする。

 その行動に、痛いほど皆からの視線が突き刺さってきた。


「はい、有坂くん」

「……えっと、確か俺の記憶が確かなら……。昨日の試合、俺が負けましたよね?――なのに、何故クラス代表になっているのか…不思議で不思議で」

「えーと、それはですね――」


 口を開き、説明しようとする山田先生を遮るように後ろから声が聞こえてきた。


「ヒルトさん、それはわたくしが辞退したからですわ」


 椅子から立ち上がると椅子が音をたてた。

 そして、何時ものように腰に手を当て、ポーズを決めるセシリア。

 最早そのポーズに突っ込まないが――何故辞退したのだろうか?

 ……と、その理由をセシリアが語り始める。


「勝負は、その……貴方は善戦しましたが、わたくしに負けましたわ。……とは言いましても、あの攻撃が当たっていましたらわたくしの負けでしたが……」


 最後の方は何やらぼそぼそと喋っていた為、殆ど聞き取れなかった。


「こほん。ですが――このままわたくしがクラス代表になるよりは、ヒルトさんにクラス代表を譲ればIS操縦の実戦事欠きませんもの」


 成る程……――ありがた迷惑だぜ、セシリア。

 クラス代表とかがらじゃないんだがなぁ、これが。

 ……と、それに賛同するかのように、クラスの女子一同が――。


「いやぁ、セシリアわかってるね!」

「そうだよねー。せっかく世界で唯一の男子がいるんだから、同じクラスになった以上持ち上げないとねー」

「私たちは貴重な経験を積める。他のクラスの子に情報が売れる。一粒で二度美味しいね、有坂くんは」


 いつの間にこんなに期待?されたのだろうか……。

 何だか、面倒な事は男子に押し付けようという気がしてならない。


「そ、それでですわね」


 コホン…と咳払いをし、自身の顎に手を当てるセシリア。

 意味はあるのだろうが、今の俺には見当もつかない。

 とりあえず、そのポーズに関してはそこに置いておこう。


「わたくしのように優秀かつエレガント、華麗にしてパーフェクトな人間がIS操縦を教えて差し上げれば、それはもうみるみるうちに成長を遂げますわよ」


 自分で優秀とか言っちゃう辺りは彼女自身、相当な自信があるのだろう。

 俺は妹の方をちらりと見ると――しょうがないなぁ…――と言った感じの表情をし、口を開いた。


「セシリアさん、お兄ちゃんにはあたしが教えるから大丈夫よ」


 と、本来ならこれから忙しくなるって言ってたが……。

 休みも使えば結構見れるかもと、昨日の夜美冬が言ってたな。

 まぁ、セシリアが教えてくれるのもありがたいと言えばありがたいが。

 馬鹿な俺にも分かりやすく言ってくれるかがわからないってのもあるしな、これが。


「あら、有坂さん。貴女はこれから代表候補生になるのに忙しくなる……と、お聞きしましたが?」

「まあそうなんだけどね、セシリアさんより妹のあたしの方がお兄ちゃんも気兼ねなく出来ると思ってね」

「き、兄妹だからって上手く教えられるとは限りませんわ!そ、それにわたくしのISランクはA+ですし――」

「あら?あたしもA+評価よ?」


 美冬はA+評価だったのか、俺は最低ランクのEだったが。

 訓練機で出した最初の格付けだから、意味はないと織斑先生及び山田先生から言われたが、流石にEは前代未聞で、本来なら入学すら出来ないレベルらしい。


「座れ、馬鹿ども」


 すたすたと歩き、セシリア、美冬の頭を軽くぱしんと叩いた織斑先生が低い声で告げた。


「お前たちのランクなどゴミだ。私からしたらどれも平等にひよっこだ。まだ殻も破れていない段階で優劣を付けようとするな」


 と、モンド・グロッソで世界を制した織斑先生からすれば、皆が卵から孵化していないようだ。

 セシリアも何か言いたそうに、表情を浮かべていたが直ぐに表情を戻し、言葉も飲み込んだようだ。


「代表候補生でも一から勉強してもらうと前に言っただろう。くだらん揉め事は十代の特権だが、生憎今は私の管轄時間だ。自重しろ」


……流石は社会人、しっかりしてるな。

 まあ当たり前なんだが。


「ではクラス代表は有坂緋琉人。依存はないな」


 織斑先生が告げると、クラス全員一丸となって返事をした。

結局俺がクラス代表か……面倒だ。


 がくっと机に突っ伏して、項垂れていると――。


「それはそうと皆さん、実は今日から新しく転校生が来ます!」


 転校生?

 まだ一週間しかたっていないのだが――。


「「「えええええっ!?」」」


 その突然の転校生紹介に、教室中一気にざわついた。

 転校生ってどうせ女の子だろうし、興味はないかな。

 否、面とかスタイルぐらいはチェックしておくかな。

 そんな風に考えつつも、ガラッ…と教室のドアが開き、目をやると――。

 髪が黒いな…そしてスタ――ん?

 軽く見ただけだが、男っぽいような――。

 そして、気づくと先程までのざわめきがぴたりと止まっていた。

 改めてちゃんと見ると、そこに立っていたのは黒髪の俺より少し身長が低めの男子生徒がいた――。 
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