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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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第二巻
  【第四十六話】

――食堂――


俺たち三人が食堂へと辿り着くと――。


「ねえ、聞いた?」

「聞いた聞いた!」

「え、何の話?」

「だから、あの織斑君の話よ」

「いい話?悪い話?」

「最上級にいい話」

「聞く!」

「まあまあ落ち着きなさい。いい?絶対これは女子にしか教えちゃダメよ?女の子だけの話なんだから。実はね、今月の学年別トーナメントで――」


――毎度の光景ながら、思春期女子で埋め尽くされた食堂はかしましい。

俺と織斑、鈴音はまず奥の方で十数名がスクラムを組んでいる一団に気がついた。


「ん?なんだあそこのテーブル。えらい人だかりだな」

「トランプでもやってんじゃないの?それか占いとかさ」

「んー、普通に恋ばなじゃねぇか?中学の時、あんな感じのスクラム見た気がするし」


――にしては、盛り上がり方が異常だな。

何かの度にどよめきが起きている。


「えええっ!?そ、それ、マジで!?」

「マジで!」

「うそー!きゃー、どうしよう!」


きゃあきゃあと黄色い声が津波のように押し寄せてくる。

――気になるが、腹も減ったしそっちのが先だな。


「一夏、ヒルト」

「おう」

「やっとご飯か、腹ペコだ……」


出された料理を受けとる。

とにかく腹減ったから食わないとな。


席へと座り、がつがつと料理を口に運んでいく。

「あ、相変わらずヒルトの食欲すげぇな…」

「――見てるこっちがお腹いっぱいになるじゃない」

「ん?ほぉうふぁ?(そうか?)」


口いっぱいに頬張ってるせいか、上手く喋れない。


「――一夏ってさあ」

「ん?」

「……。やっぱりなんでもない」

「……??」


何かを言いたそうにしてから言葉を飲み込んだ鈴音。


そんな二人を不思議そうに思いながらも、俺はご飯を腹の中へと納めていく。


「「…………」」

「もぐもぐ……うめぇっ!」


二人は黙って食べるなか、俺が美味さを口にしたら――。


「プッ――あははっ♪――お茶取ってくる。二人とも番茶でいいわよね?」

「お、おう。サンキュ」

「おー、番茶MAX入れでよろしくー」


多分ついでなんだろうけど、非常にありがたい気遣いだ。

中国人とは思えん……。


「あ――――っ!織斑君だ!」

「えっ、うそ!?どこ!?」

「ねえねえ、あの噂ってほんと――もがっ!」


例の一団の中で織斑の存在に気づいた女子が此方に雪崩れ込んでくる。

――俺もいてるのに…。


「い、いや、なんでもないの。なんでもないのよ。あははは……」

「――バカ!秘密って言ったでしょうが!」

「いや、でも本人だし……」


一人が織斑の前で通せんぼ、此方からは見えているためぼそぼそとその裏で二人で喋っているのが丸見えだ。


「なあ、噂って織斑のか?」

「う、うん!?有坂君、なんのことかな!?」

「ひ、人の噂も365日って言うよね!」


――それは偉く長い噂ですな。


「な、何言ってるのよミヨは!四十九日だってば!」


――残念、それも違うんだな。


――と、織斑が口を開き――。


「何か隠してない?」


その一言に反応した三人が――。


「そんなことっ」

「あるわけっ」

「ないよ!?」


連携技を決め、即時撤退をする女子達。

この間僅か二秒。

何が起きたのかもわからず、ぽかんとしていると――。


「なに?また一夏なんかやらかしたの?それかヒルト?」


そう言いつつ、鈴音が戻ってきた。

お盆に湯飲みを二つのせ、運んでくれる。


「何で俺たちが問題児扱いなんだよ」


「いや、織斑と一緒にしないでほしいが――」

「二人とも、問題児じゃないつもりなの?」


――そう言われると。


「問題児…かなぁ?」


俺がそう言うなか、織斑は。


「ああ、お茶がうまい」

「逃げたわね」

「うわ、俺だけ認めただけかよっ」


普段男が廃るだの何だの言ってるやつのとる行動かよ。


「ふー……やっぱり食後のお茶は落ち着く落ち着く」

「……。ま、いいけどね」

「いいのかねぇ…?」


しばし食後の余韻を楽しんだ後――。


「そういえば――」


――と、口を開いた織斑の口から出た話は今日会った友達の話だった。

――事情のわからない俺にはどうでもいい内容だ。


そんな中、その友人の妹の話題に話が移ると鈴音の表情が曇り出した。


「……なに、あの子IS学園に入学するつもりなの?」

「そうらしいな」

「ふうん……」

「……織斑はもうちょい話題をどうにかしないとな」

「え?何でだ?」


不思議そうに聞き返す織斑に、俺はこう思った。


――一生わからんのだろうな、こいつは。


「――で、入学したときは俺が面倒見ることになったんだよ」

「ふーん……って、何でよ!?」



激しく手でテーブルを叩いて立ち上がる鈴音。

そりゃそうなるよなぁ…。


「あんたねぇ、いい加減女の子と軽く約束するのやめなさいよ!責任も取れないのに安請け合いして、バカじゃないの!?つうかバカよ!バカ!」


怒濤の剣幕で怒る鈴音。

何の約束かは知らんが、織斑ももうちょい自身の行動を見直さないとな。


「いや、その、だな?鈴、すまん」

「おいおい、織斑…謝るぐらいなら軽く約束なんかは――」


俺は織斑に苦言しようと話してるなか、唐突に一言――。


「あ」

「あ」

「あって何よ、あって。――あ」

「……篠ノ之?」

「……………」


現れたのは篠ノ之だった。

そういや最近、織斑と会わないようにしてたな――。


突き合うって言ってたから、決闘までは会わないようにしたかったのだろう。


「よ、よお、箒」

「な、なんだ一夏か」

「「……………」」


言葉が続かない二人に痺れを切らした鈴音が――。


「何、あんた達何かあったわけ?」

「「いや!別に何も!」」


――勘の鈍い人間でもわかるであろう同時の否定。

――決闘かと思ったが、違うのか?


「なにその『明らかに何かありました』って反応。わざとやってんの?」

「そんなわけないだろ……」


ジト目で織斑を見る鈴音、そんな鈴音に対して言い訳じみたことを言う織斑。

そんななか、篠ノ之は顔を逸らすとそのまま歩いて行ってしまった。


「あー………」

「……?どうした織斑?」

「い、いや。何でもないぜ」

「じゃ、あたしは部屋に帰るから」

「ん?おう。誘ってくれてありがとな」

「じゃあな鈴音、おやすみ」

「おやすみヒルト。……たまにはアンタから誘いなさいよ。まったく……」

「うん?」

「おぅ、次は俺から誘うよ、これが」

「ひ、ヒルト…。――や、やっぱりなんでもない。じゃあね」


鈴音はそう告げると、篠ノ之とは反対方向へと歩き出した。


「さて、俺も帰って寝るかね」

「ヒルトも戻るのか?」

「あぁ、飯も食ったしな。じゃあな織斑」


そう告げ、俺も部屋へと戻る。


この時はまだ明日の事なんかまったく知らなかった――。

男子が一人入ることと……俺の知ってる人が転校してくるなんて――。 
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