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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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第一巻
  【第八話】

――1組教室――


 既に二時間目が終わり、単語以外の文がまったくわからない――。

 後、昨日と今朝にかけての女子生徒(先輩を含めた)の自己紹介もあって覚えるのが大変だ……。

 顔は見たら覚えるのだが、名前全部覚えられないのがキツいな、これが。

 それでも、同じクラスの子は徐々にだが一致し始めてる。

 まぁ一定の女子は昨日の俺の怒りで引いてた子も居たり、良く言ったっと言ってくれる子も居たりで様々な反応があった。

 でもやはり、セシリアさんとの勝負に関してはまだまだ下に見られてるのがわかる。

 悔しいが、これが世間一般の評価だろう。

 何て事を考えている間に授業は進んでいく。

 山田先生は時々詰まりながらも、俺を含めた生徒たちにISの基本知識を教えていた。


「――というわけで、ISは宇宙での作業を想定して作られているので、操縦者の全身を特殊なエネルギーバリアーで包んでいます。また、生体機能も補助する役割があり、ISは常に操縦者の肉体を安定した状態へと保ちます。これには心拍数、脈拍、呼吸量、発汗量、脳内エンドルフィン等があげられ――」

「先生、それって大丈夫なんですか?なんか、体の中を弄られてるみたいでちょっと怖いんですけども……」


 クラスメイトの一人がやや不安げな面持ちで山田先生に訪ねる。

 確かに、よくよく考えると怖いかもしれないな。


「そんなに難しく考える事はありませんよ。……そうですね、例えば皆さんはブラジャーをしていますよね」


 山田先生、少なくともここに一人、ブラジャー着けてないもとい着けない男子がいてますが……。


「あれはサポートこそすれ、それで人体に悪影響が出ると言うことはないわけです。もちろん、自分にあったサイズのものを選ばないと型崩れしてしまいますが――」


 ふと、山田先生と俺の視線が合った。

 漸く気づいてくれたのか…?

 一回きょとんとした山田先生は、数秒置いてからボッと赤くなった。


「え、えっと、いや、その、あ、有坂くんはしていませんよね。わ、わからないことですね、この例え。あは、あははは……」


 山田先生の誤魔化し笑いは、何となく教室中に微妙な雰囲気を漂わせた。

 俺もそうだが、女子の方が意識しているのか、腕組みをするフリで胸を隠そうとしていた。

 正直、思春期にそんな話題されても妄想しか出来ない。

 エロい事は考えるが、普段は出さないように気を付けないといけないな。

 そう思っていると、織斑先生が――。


「んんっ!山田先生、授業の続きを」

「は、はいっ」


 教室内の浮わついた空気を、咳払いだけでシャットアウトした織斑先生。

 そして、織斑先生に促されて、山田先生は教科書を落としそうになりながら話の続きに戻った。


「そ、それともう1つ大事なことは、ISにも意識に似たようなものがあり、お互いの対話――つ、つまり一緒に過ごした時間でわかり合うというか、ええと、操縦時間に比例して、IS側も操縦者の特性を理解しようとします」


 過ごす時間の長さによって、互いにわかりあえるということか…。

 そう考えると、ISって不思議だなと思えてしまう。


「それによって相互的に理解し、より性能を引き出せる事になるわけです。ISは道具ではなく、あくまでパートナーとして認識してください」


 山田先生が言い終わるその瞬間、すかさず、女子の一人が挙手した。


「先生ー、それって彼氏彼女のような感じですかー?」

「そっ、それは、その……どうでしょう。私には経験がないのでわかりませんが……」


 へぇ…山田先生まだ彼氏いたことないんだな。

 見た目も悪くないし、性格も悪くなさそうだし……男の人にモテそうな気もするが……。

 そんな赤面して俯く山田先生を尻目に、クラスの女子はきゃいきゃいと男女についての雑談を始めている。

 ふと、俺は視線を窓側へと向けると――窓側のポニーテールの子だけはつまらなさそうな表情をしながら空を眺めていた。

 確か、あの子はややこしい名字の子だったな。

 しのののの?しのの?

 確かそんな感じの……。


「…………」


 ふと、誰かの視線を感じたので正面を見ると、山田先生が此方をじぃーっと見ていた。


「……?山田先生、なんですか?」

「あっ、い、いえっ。何でもないですよ」


 訊かれて、山田先生は両手を振ってお茶を濁す。

 何故俺を見ていたのか、よくわからないな、これが――と。


 キーンコーンカーンコーン。


 授業終了のチャイムが鳴り響く――。


「あっ。えっと、次の時間では空中におけるIS基本制動をやりますからね」

 IS学園では実技と特別科目以外は基本担任や副担任が全部の授業を持つらしい。

 正直思うのは――大変だな、IS学園の教師になるのも――。

 さて、わからんなりにISの勉強でもする―――。

 そう思って準備をしていたら、突如女子生徒が押し寄せてきた。


「ねえねえ、有坂くんさぁ!」

「はいはーい、質問しつもーん!」

「今日のお昼ヒマ?放課後ヒマ?夜ヒマ?」


 そんな感じでいきなり俺の周囲に女子一同が群がる様に集まり、質問をしてきた。

 それも、山田先生と織斑先生が教室を出るなり女子の半数が俺の席に詰めかける。


「もう出遅れるわけにはいかないわ!」


 何に対しての出遅れかはいまいちわからんが…。


「ちょ、ちょっと…一度に訊かれても――」


 困ると続けようとしたのだが、【何故】か整理券を配っている女子を見つけた。

 しかも有料だ……勝手に商売するなよ。

 ちらっと妹に助け船出してもらおうと、隣を見ても妹は居ない――。

 理由はわからんが、多分化粧室かと思われる。

 どうするかな……質問に答えても視線が痛いし、この空間苦手になりそうだ。


「有坂くんって彼女いるの!?」


 突然の恋人が居るのか発言に驚きつつ、俺は応えようとした。


「え?えと、それは――」


 パアンッ!!

 そんな乾いた音が鳴り響くと共に静かになる教室。


「休み時間は終わりだ。散れ」


 物凄くいい音が鳴ったな。

 そういえば……確かに先ほどチャイムが鳴っていたな。

 しぶしぶと席へと戻っていく女子達。

 俺としては…助かったがな、これが。

 全く勉強出来なかったのが痛いが……。 
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