IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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第二巻
【第四十五話】
――1025室――
学園へと戻った俺は、昼からずっとゴロゴロ寝ていた。
特訓――しようとも思ったのだが、最近ほとんど休んでないなと感じ、思いきってゴロゴロしながら寝たり、『ISジャーナル』なる本を読んだり――内容はまあ大したことがない内容だったが。
今年の注目生徒は――とかいう項目も織斑オンリーだし。
表紙の女の子出てないし――ガッカリだよ。
前に一度友達から見せてもらったときは女の子の水着とか載ってたのにな……。
本を適当に投げ捨て、カレンダーを見に行く。
今月は学年別個人トーナメントがある。
――文字通り、学年別のIS対決トーナメント戦だ。
これを一週間丸々使って行うらしい。
一週間かかる理由は、全員強制参加だからとか。
よほどの理由がない限りは参加は強制らしい。
その前までは自由参加と訊いていたのだが――。
話は戻るが、一学年はおよそ120名。
これをトーナメントでやるものだから、規模も相当なもののようだ。
一年は浅い訓練段階での先天的才能評価。
二年はそこから訓練した状態での成長能力評価。
三年は全てを含んだ実戦能力評価というふうになっている。
――特に三年生の試合は大掛かりで、IS関連の企業のスカウトマンはもちろん、各国のお偉いさんが見に来る事もあるようだ。
まあ今さら嘆いても、この学園に来たのは俺の運命って事だろうし――まだ戦うのは嫌いだけどな。
――先月のクラス対抗戦は、襲撃事件でうやむやのまま中止にされ、その件に関しては全生徒に箝口令まで敷かれた。
特に、直接戦闘に関わった俺、セシリア、鈴音は誓約書まで書かされた。
――学園の警備、強化するらしいからもう起こらないと願いたいがな。
……何かまだ起きそうな気もしないではないが。
――不意にドアがノックする音が部屋中に響いた。
「ヒルト、居てるか?」
――織斑の声だ。
「いてるぞー」
立ち上がり、ドアを開けると織斑――一人だけではなく、その後ろには鈴音がいた。
「よう、二人ともどうした?」
「ああ、今から俺たち夕飯に行くんだが――」
「そうよ、だからあたしたちが誘いに来てあげたのよ。雨の日に捨てられている犬を可哀想と思うくらいの優しさは、持ち合わせがあったからね」
「そか、ならついでに飼い主も見つけてやってくれ――っと、食堂行くか」
「ああ、行こうぜ」
「ええ」
織斑と鈴音は互いに並んで歩き、俺は後ろから追従する形でついていく。
そして、ちょうど夕飯の時間帯だからだろうか、所々ドアが開き、寮生が出てくる。
「………おぉっ」
思わず俺は小さく声をあげてしまう。
理由は簡単、出てきた女の子達の格好だ。
ラフな格好をした女子が多くて、非常に眼福だ。
下がショートパンツで上がタンクトップ、しかも下着を着けてない。
異性の目をもっと気にしてほしいと思う一方、実際はかなり嬉しいという――まさに役得。
この時だけは学園に入れてよかったと思える。
最初の頃は苦手だったが、俺もいつの間にか女子に慣れたんだな…。
「お。ひーくんと織斑君だ。やっほー」
「ええっ!?お、織斑君!?」
――悲しいかな、これが現状だ。
俺は名前すら呼ばれない…。
――それはそうと、先に見つけてやっほーと言ってくれたのは布仏本音ことのほほんさんだ。
寮に居るときはどんな時間帯でもダボダボのパジャマを着ている。
大きめのナイトキャップが直ぐにずり落ちてきては、袖の余った手で直してよろめいてるのが印象的だ。
「やー、ひーくん、おりむー」
「その愛称は決定なのか?」
「俺はどう呼ばれても構わないさ。のほほんさんに任せてるしな」
「決定なのだよー。ひーくんもこの愛称で決定ー。それよりさあ、私とかなりんと一緒に夕飯しようよ~」
のほほんさんはよく、俺の体に引っ付いてくる。
なんというか――実はのほほんさん結構胸がでかいから……やはり意識をしてしまう。
「残念、一夏とヒルトはあたしと夕飯するの」
「わー、りんりんだー。勇気が出そうだね~」
「そ、その呼び方はやめてよ!」
突然声を荒げる鈴音、のほほんさんはどこ吹く風といったところだ。
――リンリンねぇ…まあ想像つくが嫌な思いでもしたのだろう。
「とりあえず鈴音、落ち着きな。五人で食べても問題はないだろ?」
「よくないけど……いいわよ」
――どっちだよっ!
――と、心で突っ込んでおこう。
そんな心で突っ込んでいる時に、おりむーこと織斑が――。
「ところで、そのかなりんって子は何処かに行っちゃったぞ?」
「おわー。ほんとだーいないー」
ラフな格好を織斑に見られたのが恥ずかしかったのか、先ほど自分の腕で体を抱くように隠しながら廊下の先へと消えていった。
「あー……待って~」
そしてそんなのほほんさんも、とてつもなく遅い速度で走っていった。
「……………」
鈴音が織斑をジト目で見ている。
理由は想像つくが――。
「何だよ?」
「一夏さぁ、何?モテてんの?」
「はあ?何処をどう見てそう思うんだよ」
「……誰がどう見てもモテてると思うがな」
「ヒルトまで。――男がいるのが珍しいってだけだろ」
「ふーん……。ま、いいけどね。ヒルト、行こう」
そう言う鈴音は俺の腕を取ると、早足で食堂を目指した。
突然の事に、足がとられそうになったが、何とか鈴音の早足についていった――。
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