IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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第二巻
【第六十三話】
――1025室――
視線をシャルルに移すと、襟元から見える胸の谷間がちょうど見え――。
「ん?どうしたの?」
「あー……いや、何でも…」
俺がそういうと、何故かシャルルは此方の顔を覗き込むように見てくる。
表情が無防備なだけではなく、胸の谷間も無防備に見せてくるので、先程とは違って色々まずい状況になりそうだ。
「な、何でもないからとりあえず離れてくれないか?」
「?」
「お、俺としては眼福なんだが…。流石に思春期の俺に女の子の胸元の谷間は……」
そう俺が指摘すると、シャルルの頬はどんどん赤く紅潮していく。
そして、シャルルの口から驚きの言葉が出た――。
「ひ、ヒルト。胸ばっかり気にしてるけど……見たいの?」
「……え?」
「「…………」」
そのシャルルの言葉に、互いに黙ってしまった。
そして、シャルルの顔はさっきよりも真っ赤に染まっていて、妙な気まずさが漂った――。
「……シャルル」
「は、はい…」
「……仮にさ、俺が見たいって言ったら――見せてくれるのか?」
「………!?」
……俺もとんでもない発言をしたものだ。
もちろん、見れるわけない――そう思っていたのだが、シャルルは目をきゅっと瞑り、更に耳まで真っ赤に染まりながらジャージに手をかけて捲り始める――。
「……!?ストップ!シャルル!!」
「えっ……?」
慌てて捲ろうとするシャルルの両手を掴んだ。
ジャージは少し捲れあがり、シャルルの腹部を露にしていた。
「……そ、そういうことはさ。好きな人にだけ見せればいいんだし、俺なんかが言って見せるのはダメだよ。もっと自分を大切にしなよ?」
そう告げて、軽く息を吸って吐くとシャルルの顔が近くにあるのに気付き、自然と紅潮していくのを感じたその時――ドアが叩かれる音が部屋に響いた。
「「!?」」
「ヒルトさん、いらっしゃいます?夕食をまだ取られていないようですけど、体の具合でも悪いのですか?」
いきなりのノックと、セシリアの呼び声に俺とシャルルは二人揃って身をすくませた。
「ヒルトさん?入りますわよ?」
状況が非常にまずい、誰が見ても今のシャルルの姿を見て女の子とわからないやつはいないはずだし。
「……ったく、返事が無いのに入ろうとするなよセシリア…」
「ど、どうしよう?」
「……シャルル、悪いがここは隠れろ」
ぼそぼそと小声で互いにやり取りをする。
お互いかなり接近していたのだが、そんなことを気にしている場合ではなかった。
「わ、わかったよ。とりあえず身を潜めて――」
そうシャルルが言い、選んだ場所は何とクローゼットだった。
「そ、それじゃ間女じゃねえかっ。ベッドに横になって体調の悪いフリをすればいいだろっ」
「あ、ああっ、そっか!」
布団を捲り、シャルルに入るように促すと直ぐ様ベッドに入り、布団を上から掛けたその時――ドアが開く音が響いた。
「……セシリア、返事も待たずに入るのはどうかと思うが?」
「……何をしていますの?」
絵的にはベッドに飛び込んだシャルルに上から布団をかける形で俺が乗っかっている状態だ。
ドアを開けたらそこにいる住人が布団の上に覆い被さっているのだから、それは不思議――または珍妙な光景だっただろう。
それを証明するかのように明らかにセシリアは訝しげな表情をしていた。
「……シャルルが体調悪いって言うから今布団をかけてたんだよ。それ以外にどう見えるんだ?」
「……。日本では病人の上に覆い被さる治療法でもあるのかしら?わたくしには今の光景は……信じられませんが――ヒルトさんがデュノアさんを襲ってるようにしか見えないのですが…」
――だよな、下手したらBLに見えなくもない体勢だし。
「……俺が男を襲うと思うかセシリア?」
「そ、そうは思いませんが……その、体勢が……」
「……まあ勘違いしてしまう体勢だよな。――とにかく、シャルルは体調が悪いからこのまま寝てるって。だから夕食はいらないみたいだし、俺一人で行こうって話をしながら布団をかけてたんだ」
「そ、そうそう」
布団の中からくぐもったシャルルの声が聞こえるが、その声はあまり調子の悪そうな声ではなく、内心ひやひやしている。
「ご、ごほっごほっ」
更にわざとらしい咳まで出し始めた。
これは流石にセシリアも疑う――。
「あ、あら、そうですの?ではわたくしもちょうど夕食はまだですし、ご一緒しましょう。ええ、ええ、珍しい偶然もあったものです」
――いや、まずシャルルの咳の不自然さを突っ込めよ!
……何て思うのだが、セシリアに取ってはたいした問題ではないのだろう、俺と一緒に食事をとるという事で頭がいっぱいのようだ。
「ごほっごほっ。そ、それじゃあごゆっくり」
「あぁ、部屋に鍵かけとくからな?」
「デュノアさん、御大事に。――ではヒルトさん、参りましょう」
自然な形で俺の腕を取ると、そのまま体を密着させてきた。
……何か四月にもこんなことあった気がするな。
そのままセシリアと部屋を出、ドアに鍵をかけると共に廊下を歩いて食堂に向かう階段を降りていくと――。
「あ、ヒルト。――セシリア、何をしてるの?」
階段を降りた先に未来がいた。
そして、腕を組んで階段を降りてきた俺とセシリアを見て此方に近寄って――。
「あら、未来さん。これからわたくしたち一緒に夕食ですの」
「ゆ、夕食なのはわかるけど…。だ、だからって腕を組むのと関係ないんじゃ…」
「あら、前にも言いましたがレディをエスコートするのは当然の事ですわ」
……あぁ、何だかデジャブな気がしてきた。
「……じゃあ、私もヒルトにエスコートしてもらおうかな?」
そう言い、右腕を取ると腕を絡ませてくる未来――密着しているため、胸の感触が制服越しに伝わってきた。
「……未来さん、何をしてらっしゃるのかしら?」
「セシリアと同じ事だよ?――で、でもヒルト、こんなことするからって好きとかじゃないんだからね?」
「はいはい、わかってるよ」
――しかし、広がって歩くから往来の邪魔になるだろうなぁ。
皆の邪魔にならないか心配しつつ、周りの女子の声が聞こえてくる――。
「……有坂君と腕組んでる」
「両手に花ってやつね」
「幼なじみってずるい」
「専用機持ちってずるい」
……?皆の対応がいつもと違う…。
いつもだと邪魔だの何なのって呼ばれて悲しくなるのだが……何でだ?
……まあ何にしてもこの状況っていいな、一生に一度しかなさそうな――二回目っぽい気もするが。
「あのさ、二人とも」
「ん?なぁに?」
「何ですの?」
「あまり密着すると胸が当たるぞ?てか当たってるけど」
――両サイドからボリュームのある胸のサンドイッチ状態は非常に男子としては嬉しいのだが、二人がイヤではないのかが気になってしまう。
「ふふっ。わざと当ててるって言ったら…どうする…?」
「な、なに?」
「ヒルトさん、自らの幸福を自覚していますのね。今日は特別ですわよ…?」
「え?えと…?」
二人が言い終えると、更に密着させてきて、イヤでもそちらに意識が向いてしまう。
「うっ…と、とにかく、早くご飯食べに行こうぜ。な?」
二人を促し、歩くのを再開するが歩く度に胸の柔らかい感触が当たり、変に意識してしまう。
「確か今日の焼き魚定食は鰆だったかな?ヒルトも食べない?」
そう顔を覗き込んで見てくる未来、だが俺の意識はどうしても胸に挟まれた腕にいってしまう――。
「洋定食は半熟卵のカルボナーラと聞いていますわ。ヒルトさんもどうかしら?」
セシリアも未来と同じく左側から此方を覗き込むように見てくる。
未来ほど胸は大きくは無いものの、形のいい胸を押し当てるように腕を絡ませるのだから此方にも意識が向いてしまう。
「う、うん。両方美味そうだな。だが今は両サイドの肉まんを……」
「「?」」
「な、何でもないっ」
危ない危ない…思わず願望が普通に出てしまった。
「肉まんかぁ、久しぶりに肉まんもいいかもっ」
「ですわね。一度食べてみましたがとても美味しかったですわ」
俺を挟んで肉まん談義に入る二人をよそに、俺はその二人の胸ばかり意識してしまい、早く食堂に着かないかなと思いながらも二人を連れて歩き続けた――。
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