IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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第二巻
【第六十八話】
――第三アリーナ観客席――
「シャルル、一夏――頼みがある――シャルルには俺が飛び出した後に援護を、一夏はセシリアと鈴音の救出を頼む…!」
「わかった…!」
「――ヒルト、やっと名前で呼んでくれたな。鈴とセシリアの事は任せてくれ!」
二人に伝え終えると再度未来にプライベート・チャネルを開き――。
『未来、一夏にセシリア達の救出任せたから未来は――』
『わかってる。美冬ちゃんは私に任せて!』
プライベート・チャネルを切ると同時に浮遊し――勢いのままラウラの元へと向かった――。
――今ならわかる、授業で習った飛行技術の事が――。
「――ラウラ・ボーデヴィッヒ!!これ以上――やらせるかよッ!!」
「ふん……。感情的で直線的、絵に描いたような愚図だな」
勢いそのまま、横一閃に振るう――だがその刃は届かずに、ぴたりと固定されたように体が止まった――。
「……成る程、通りで皆が苦戦するはずだな。体が全く動かなくなるとは……ッ!」
振り抜いた天狼もぴたりと止まり、その様子を見たラウラが――。
「……やはり貴様など敵ではないな。この私とシュヴァルツェア・レーゲンの前では、貴様も有象無象の一つでしかない。――消えろ」
「……もう勝ったつもりかよ。そんなんじゃ……痛い目見るぜッ!!」
ラウラの肩の大型カノンが接続部から回転――その砲口を俺の眼前に向けてきた――が。
『ヒルトっ!援護するよ!!』
シャルルからのプライベート・チャネルが聞こえたと同時に、両手に構えたアサルトライフル二丁による弾雨がラウラを襲う――。
「ちっ……。雑魚が――」
「そっちばかりに気を取られてると――痛い目に合うぞ、ラウラ!!」
拘束されていた力が消えると同時に、腹部装甲へ天狼を振り抜く――。
「くっ……!貴様…」
その間に、未来もピットから出撃し――瞬時加速を使用して一気に美冬の元へ駆けつけるとそのまま抱えてアリーナの端へと離脱した。
「……みぃちゃん…迷惑かけてごめん……」
「美冬ちゃん気にしないの――織斑君!セシリアと鈴さんを早く安全な所に!!」
「あ、あぁ!」
二人を抱き抱えた一夏は、瞬時加速の体勢になるが――それを止めたのは未来だった。
「織斑君!?瞬時加速はダメよっ!?二人は弱ってるんだから……っ!!」
「だ、だけど――」
「いいからっ!そんな所に居たらヒルトもデュノア君も気にして戦えないよっ!!」
急かされる様に、一夏は出来るだけ慎重に二人を未来の元へ移動した――。
「……!三人の容態はどうなんだ!?――シャルル、足止めを頼む!」
「わかったよ!僕に任せて!!」
そのままラウラの足止めをするように射撃を続けるシャルル――元々速射性の高いアサルトライフルにシャルルの異常ともいえる高速武装切り替え――ラピッド・スイッチと呼ばれる特殊技能で弾切れを起こした銃と直ぐ様入れ替え、ラウラに反撃をさせなかった。
その場をシャルルに任せた俺は、直ぐ様未来の元へと飛んで――。
「……美冬、セシリア、鈴音。意識はあるか?」
「う……。ヒルト……何とか…」
「ヒルト…さん…。無様な姿を……お見せしましたわね……」
「……お兄ちゃ…ん。……へへ…やられちゃ……た…」
「無様なもんか――。美冬も気にするな、あの停止結界がチートなだけだ。……皆の意識はあるな――三人とも目立つようなアザも無い…。シャルル、皆意識は何とかある……」
「よかった」
僅かに安堵した声で答えたシャルル。
その手にもつ銃による射撃は一切休まらず、三度目の切り替えを行う。
そして止まぬ雨の如く銃弾をラウラへと降り注いでいた――。
「面白い。世代差というものを――」
「見せつける前に……俺の相手をしてもらう!!」
上空へ急上昇、一定高度に達すると加速力をつけ一気にラウラへと間合いを詰め――。
「ふん…。停止結界の前では無意味だと言っている」
右手はシャルルの射撃を防ぐために――そして左手は此方の動きを拘束するために突き出した――。
「――っと!わざわざ網にかかるつもりはないさ!これがなぁっ!!」
停止結界に捕まる前に急停止、それと同時に村雲の第三世代型兵器のシステムを起動した――。
そして――先程装填されたままの大型カノンが此方へまたも砲口を向けてくる――。
「墜ちろ――貴様など、相手にするのも時間の無駄だ」
言うや、肩の実弾砲による射撃を俺に向けて撃ってきた――。
「ヒルト!?避けて……っ!」
未来のそんな声が俺の耳に届いてきた――。
――避ける?
避ける必要何か……無い――!!
機体周囲に浮いている【八式・天乃御柱】が鈍く光を放つ――キィン…と、高周波の音がアリーナに鳴り響くと同時に八基全ての第三世代型兵器から一斉に起動し、大型カノンの実弾をレーザー迎撃した――。
「――なっ!?」
驚愕した表情になるラウラ――前情報で……というよりも皆がただのデコイ程度にしか思われていなかった兵装が起動――更にレーザーによる実弾迎撃を行ったのだから――。
――ラウラに一瞬の隙が出来た瞬間を見逃さず、一気に間合いを詰めると天狼を構えて一気に振り下ろす――。
それに気づいたラウラは、左手を突き出そうとするが…判断が遅れたため、間に合わず――振り下ろされた天狼の一撃が入るその瞬間――アリーナに金属同士が激しくぶつかり合う音が響いた――。
「……やれやれ、これだからガキの相手は疲れる」
「千冬姉!?」
「……織斑先生」
――振り下ろされた天狼の一撃を受け止めたのは織斑先生だった。
しかもその姿は普段と同じスーツ姿で、ISの装着どころかISスーツさえ着ていなかった。
――だがその手に持っているのはIS用刀型近接ブレードであり、その長大なブレードをISの補佐無しで軽々と扱っていた。
「……模擬戦をやるのは構わん。――が、アリーナのバリアーまで破壊する事態になられては教師として黙認しかねる。この戦いの決着は学年別トーナメントでつけてもらおうか」
「……教官がそう仰るなら」
そう素直に頷いたラウラは、ISの装着状態を解除した――と同時に俺も装着を解除し、アリーナへと着地した。
「有坂、飯山、織斑、デュノア、お前たちもそれでいいな?」
「了解。何処であろうと美冬やセシリア、鈴音が受けたツケは払ってもらうだけだしな」
「私もそれで構いません」
「あ、ああ……」
そう返事したのは一夏だ。
間の抜けた返事に――。
「教師には『はい』と答えろ。馬鹿者」
「は、はい!」
「僕も…それで構いません」
返事をし直した一夏に、シャルルも追従する形で返事をした――。
その言葉を聞いて、織斑先生は改めてアリーナ内全ての生徒に向けて言葉を言い放った――。
「では、学年別トーナメントまで私闘の一切を禁止する。解散!」
そう言い放つと、織斑先生が強く手を叩きアリーナ中に強く、鋭く鳴り響いた――。
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