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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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第二巻
  【第五十話】

――第二グラウンド――


「では、本日から格闘及び射撃を含む実戦訓練を開始する」

「「「はい!」」」


一組と二組の合同実習なので、人数はいつもの倍。

出てくる返事はいつも気合いがあるのだが、合同の為か、よりいっそう気合いが入っていた。


「くぅっ……。何かというとすぐにポンポンと人の頭を……」

「……一夏のせい一夏のせい一夏のせい……」


叩かれた場所が痛むのか、セシリアと鈴音は涙目になりながら両手で頭を押さえていた。


「大丈夫か、セシリア?」

「だ、大丈夫ではないですわ……っ」

「――だろうな、後で保健室に行くか?」

「え…!?――だ、大丈夫ですわ、ヒルトさん」


保健室……っていえばあれだよな。

キス未遂事件――セシリアも普通にしてるが、俺はたまに思い出しちゃうんだよなぁ……。

今思い出しても顔が真っ赤になりそうだ…。

――セシリアは嫌じゃなかったのか?

聞くにも聞けん内容だから真相は闇の中かな……。

――てか次同じことあったら…そのままキスしてしまうかもしれん…。


「今日は戦闘を実演してもらおう。ちょうど活力が溢れんばかりの十代女子もいることだしな。――凰!オルコット!それと有坂緋琉人!」

「えっ?――俺っ!?」

「な、なぜわたくしまで!?」


まさかのご指名、どうやら織斑先生には俺が十代女子に見えてるようだ。


「専用機持ちはすぐに始められるからだ。いいから前に出ろ」

「ヒルトさんと組めるのは嬉しいのですが、だからってどうしてわたくしが……」

「一夏のせいなのに何でアタシが……」

「おぉぅ…俺も完全なとばっちりだぜ」

「……お前ら二人、少しはやる気を出せ。――アイツ等にいいところを見せられるぞ。特にセシリア、身近でいいところをヒルトに見せられる」


……セシリアが俺にいいところを?

強いところはいつも見せられてるが。

――と、織斑先生が此方に。


「ヒルト、お前も妹や幼なじみにいいところを見せるチャンスだぞ」



――今更それを見せてもなぁ、カッコつけるためにする訳じゃないし。


あまりやる気ゲージも上がらずにいると、二人は――。


「やはりここはイギリス代表候補生、わたくしセシリア・オルコットの出番ですわね!」

「まあ、実力の違いを見せるいい機会よね!専用機持ちの!」

「おぉ…二人はやる気満々だな。まあ俺も足を引っ張らないように頑張るか」


多少はモチベ上げないとな。


「それで、相手はどちらに?ヒルトさんと組んでの鈴さんとの勝負でしょうか?」

「ふふん。二人とも返り討ちよ」

「え?セシリアと組む前提で話が進むのか?」

「慌てるなバカども。対戦相手は――」


その言葉を途切れさせるように、空から空気を裂く音が鳴り響く。


「ああああーっ!ど、どいてください~っ!」


空から聞こえる声に、上を向いたら此方に近づ――俺ぇっ!?


激しい轟音と共に、声のした飛行物体の突進を受けた俺は。ギリギリISを展開出来た――。

おかげで大怪我はしなかったが、吹き飛ばされて地面を転がった。


「おぉぅ…死ぬかと思った。流石にまだ生きてたいからな――」


そう呟き、左手を支点に立ち上がろうとする―――。


むにゅぅっ――と、何かを掴んだような感触が手のひらいっぱいに広がった。


「なんだ?この柔らかいの?」


そう呟き、再度触ってみると――。


「あ、あのう、有坂くん……ひゃんっ!」


――山田先生の声がした。

恐る恐る、掴んだ左手を見てみると――。


「そ、その、ですね。困ります……こんな場所で……。いえ!場所だけじゃなくてですね!私と有坂君は仮にも教師と生徒――」


山田先生本人だった。

いつもは大きめの服でわからなかったが、今着ているのはISスーツ、しかも胸元が大きめのオーダーメイドタイプだ。



そして、俺と山田先生の体勢だが、いつの間にか俺が山田先生を押し倒しているような形である。


――こんなおっぱい、一生に一度も揉めないよな…。

――何を思ったのか、俺はそのまま山田先生の乳房を揉んでしまう――。


「ひぁんっ…!あ、有坂くん…?あんっ…!」

「山田先生、ISスーツって案外薄いんですね?」

「え?えぇ――見た目とは違って薄いかも……あぁんっ…!」


手のひらに直接感触が伝わるし……ISスーツ、恐るべし。


「………あ」


背中に冷たい視線を複数感じる。


「ヒルトさん…。一体何をしていらっしゃるのか説明をお願いしますわ……」

「お・に・い・ちゃ・ん♪その手は何してるのかなぁ?」

「ば、バカヒルト!何してるのよっ!?」


――振り向きたくないが、声で誰が誰だかわかる。

セシリア、美冬、未来の三人だ。


他の生徒は俺の所業を見ていないので、何が起きたのかわからずにいた。


「な、何って……――スーツの肌触りチェック……って言っても信じないよな?」


恐る恐る振り向いた俺の視界に居たのは――勿論、顔は笑顔だがその瞳は絶対零度で冷たく俺を見下ろすように見ているセシリア、我が妹の美冬、そして――今日転校してきた幼なじみの未来だった。

そして、そんな俺の問いに対しての言葉は当たり前だが――。


「「「当たり前でしょうっ!!」」」


――その後、何があったのかは俺の記憶から飛んでいる。


多分――思い出さない方が幸せだということなんだな。 
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