IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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第二巻
【第五十三話】
――栗原の歩行が終了し、三人目、四人目と順々にやっていくのだが、何故か皆立たせた状態で装着を解除し、その度に肩車をするはめに――踏み台だと届かない子が……。
「よっ……と」
「ひゃあっ!?あ、有坂君恥ずかしいから……っ」
「悪いが我慢してくれよ。飛べれば織斑みたいに運べるが――流石にあれは嫌だろ?」
「……………」
――返事がないってことは肯定だろう。
肩車し、手早くISまで移動する俺。
そしてISを背に、乗りやすく体勢を維持して乗り移るのを待つ。
――踏み台になっても肩車しても目立つからな、まあ織斑の抱っこの方に今は目がいってるが。
「――肩車だから乗りやすいとは思うが、キツいならどこを足蹴にしても構わないからな?」
「だ、大丈夫…ありがとう、有坂君」
――まあ確実に肩車ってセクハラに近いかもだから嫌われるかもな。
……背に腹は変えられん。
――上手く乗り移り、直ぐ様、装着、起動の行程に入り、直に歩行し始める。
――そういや次で最後だな。
最後は未来か…また肩車か、或いは踏み台か。
そして歩行を終えた子も、恒例と言わんばかりに立ったまま待機させた。
ここまで来ると、相当嫌われてるのか俺は?
ため息つきそうだ……。
「ふぅ…最後は未来だな。どうする?踏み台がいいか肩車――」
「わ、私は……だ、抱っこでお願いしようかな?――な、何となくだから、他意はないんだからっ」
「……抱っこって、あのお姫様抱っこの事か?」
ちょうど織斑が篠ノ之を抱っこしているのが視界に見えて――。
「うーん…まあISの推進剤にはまだ余力あるから大丈夫だが――あそこまで安定はしないぞ?」
「か、構わないからっ」
「――わかったよ、その代わりセクハラとか言うなよ?」
「言わないってば!わ、私が頼んだんだし…」
「OK、んじゃ……よっと」
「ひゃっ…!」
小さく叫んだ未来を不思議に思いながらも、抱っこして必要最小限のスラスターを起動させ、宙へ浮かび――。
「ちょいうるさいが我慢な?俺は何故か飛べないからこうやって無理やりISをスラスターで飛ばないといけなくてな」
「だ、大丈夫よ。つ、掴まってるから!」
落とさないように抱っこしたまま、コックピット付近へと移動し、近づく。
「さ、未来」
「ふぇっ!?」
「ISに移らないと、いつまでも推進剤ある訳じゃないしな」
「ご、ごめん。――ありがとう、ヒルト。抱っこしてくれて」
「気にすんなって。重くて腕がつりそうになったがな」
「うぅっ、ひどーい!そんなに重くないもんっ!」
目まぐるしく表情の変わる未来を微笑ましく思いながらも、ISへと乗り移らせ、地上へと降りて――。
「お、おい有坂!」
「うぉっ!?――な、何だよ栗原」
「だ、抱っこも有りだったのかよっ!?」
そんなことを言いながら詰め寄る栗原に焦りつつ――。
「あ、あぁ。推進剤チェックしたらまだ余裕あったからな、だから――」
「そ、そうか。――つ、次はそういう事は早く言えよな」
「あ、あぁ…。――?」
そう言って、元の場所に戻っていく栗原。
一体なんだったのか――そんなことを思いつつ、未来が歩行を始めたので俺はそれに着いていった――。
「では午前の実習はここまでだ。午後は今日使った訓練機の整備を行うので、各人格納庫で班別に集合すること。専用機持ちは訓練機と自機の両方を見るように。では解散!」
時間ギリギリとはいえ、何とか全員が起動テストを終えた一組二組合同班は、格納庫にISを移してから再びグラウンドへ。
時間一杯だったおかげで皆が全力疾走でグラウンドへ戻ったおかげでほとんどの生徒は肩で息をしていた。
そんな俺たちに、織斑先生は連絡事項を伝えると山田先生と一緒に引き上げていった。
「ん~!まぁまぁの重さだったな」
訓練機はIS専用のカートで運ぶのだが、何故か動力は付いていない。
人力という昔ながらの方法だ。
重さ的に大したこと無かったので、俺一人で押していけた。
班の皆が手伝うって言ってくれて若干驚きもしたが、運べないほど重いわけでは無かったので、先に帰らせた。
織斑の班は、俺と同じく織斑メイン――ってもやたら遅かったが。
シャルルの班は、体育会系女子が運んでいたが――。
「さて、戻りますかね。織斑、シャルル、終わったら着替えに戻るぞ」
そう二人に告げると、シャルルが口を開き――。
「え、ええっと……僕はちょっと機体の微調整をしてからいくから、二人とも先に行って着替えててよ。時間がかかるかもしれないから、待ってなくていいからね」
「そうか?なら――」
「ん?いや、別に待ってても――」
「織斑、先に行ってろってシャルルが言ってるんだから行くぞ」
織斑の首根っこを掴み、無理矢理更衣室へと連行する。
――道中――
「お、おいヒルト!何でシャルルを待たないんだよ!?」
「は?――シャルル自身が先に着替えて構わないって言ってただろ?」
「そうは言ってたけど…。待つのが友達なんじゃねえのか?」
「――はい?悪いが、シャルルの意思を尊重する方が普通だろ?一緒に着替えたくなったらそういうだろうし。無理に一緒に着替える必要ないだろ?」
――それに、何となくだがシャルルは俺たちと着替えるより一人で着替える方が好きな気がする…。
理由はわからんが――傷跡があるとか、変なところにアザがあってからかわれるのが嫌だとか――憶測でしかいえないがな。
まだ納得していない織斑を連れ、更衣室へと戻っていった――。
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