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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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第二巻
  【第五十四話】

――購買前――


更衣室で着替えてるときに、織斑から昼は屋上で食べないかと提案されたため、俺自身も断る理由も無かったので一緒に取ることにした。


その際、美冬や未来も誘っていいと言ってたから、既にメールで連絡して先に向かわせた――。


それはそうと、俺は今購買前にいてる。

食堂で食べる予定だったから何も昼飯ないということで来てみたのだが――。


目の前に広がるのは、パンを争奪する女子たちの戦場だった。


――これじゃあキツいな…流石に女子を掻き分けて乱入も気が引けるし……。

暫く様子を見ると、主要なパンが無くなったのを機に、買えなかった女子たちはぞろぞろと退散していった――。

食堂で食べればいいような気もしなくはないんだがな。


「おばちゃん、パン何か残ってる?」

「あら有坂君、ごめんねぇ。残ってるパンっていったらコッペパンぐらいなの」


――確かに、コッペパンオンリーだ。

焼きそばパンとかカツサンドとか欲しければあの戦場をのりきらないといけないのか。


「ならコッペパンと飲み物のフルーツミックスお願いするよ」


そう告げると、おばちゃんは直ぐ様フルーツミックスとコッペパンを手渡して、此方もお釣りが出ないようにきっちりお金を渡すと購買を後にした。


シャルルは織斑が誘うって言ってたしな――このまま向かえばいいかな。


――屋上――


「……どういうことだ」

「ん?」

「おぉ、篠ノ之も誘ってたんだな」


購買でパンを購入し、屋上で食べる準備をしていると篠ノ之がやって来た。

――若干不機嫌に見えるのは気のせいじゃないだろう。

普通の高校だと、屋上は基本立ち入り禁止なのだが、ここの学園はそんなことは一切ない。


美しく配置された花壇には季節の花々が咲き誇り、欧州を思わせる石畳が落ち着いている。

それぞれ円テーブルには椅子が用意されていて、晴れた日の昼休みともなると、学園の女子たちで賑わう。

――たまに俺も昼寝をしに来たりする場所でもある。

今現在、屋上には俺たち以外には居ない。

多分シャルル目当てで学食狙ったのだろうが、普通は織斑か俺を張ればいいのに。


「天気がいいから屋上で食べるって話だっただろ?」

「そうではなくてだな……!」


篠ノ之の視線の先には、俺、シャルル、美冬、未来、セシリアに鈴音がいてる。


「せっかくの昼飯だし大勢で食った方がうまいだろ。それにシャルルは転校してきたばっかりで右も左もわからないだろうし」

「そ、それはそうだが……」

「……邪魔なら俺たち別の場所に行こうか?」

「ん?何でだ?」

「いや、明らかに篠ノ之の態度が織斑以外の俺たちが邪魔って態度にしか…」

「そうなのか、箒?」

「べ、別にそんなことは……」


……うーん、とりあえず織斑に聞かれたからそんなことはないって感じなのかな。


「まあいいや、今から他の場所とるのも大変だしな」


そう告げると、俺は未来の元に戻って――。


――話は変わるが、IS学園は全寮制なので、弁当持参したい生徒のために早朝のキッチンが使えるようになっている。

一度おにぎりを作りに行ってみたら、プロの料理人が使うような器具ばかりで色々見て回った記憶がある。

国家直轄の特別指定校だが、流石に無駄金の使いすぎにしか見えなかった。

まだまだ日本は借金あるのにな。


「はい一夏。アンタの分」


そう織斑の元に行ってタッパーを手渡した鈴音。


「おお、酢豚だ!」

「そ。今朝作ったのよ。アンタ前に食べたいって言ってたでしょ」


そう言い、織斑から視線をそらした鈴音。

照れ隠しだな。



「お兄ちゃん、実は私もお弁当にしてみたんだ」

「そうなのか?」


美冬の弁当を見てみると、基本だがご飯に卵焼き、タコさんウインナー等々が入っていた――。


「コホンコホン。――ヒルトさん、わたくしも今朝はたまたま偶然、何の因果か早く目が覚めまして、こういうものを用意してみましたの。よろしければおひとつどうぞ」


そう俺に言い、バスケットを開くセシリア。

その中にはサンドイッチが綺麗に並んでいる。


「おぉっ!?サンドイッチじゃん!めちゃくちゃ美味そうだなっ」

「わあっ、セシリアのサンドイッチ美味しそう♪」

「ふふ、未来さんもおひとつどうぞ」

「いいの?じゃあいただきます♪」


中にあるサンドイッチを、未来は手に取り一口食べる――。


「…………っ!?」

「どうかなさいましたか、未来さん?」

「ちょ、ちょっとお手洗いに……」


そう言い、若干駆け足気味に屋上を出た未来。

……様子が変な気がしたが?

冷や汗も出てたような…?


「――んじゃ、俺も貰うか」

「えぇ、どうぞヒルトさん」


バスケットからサンドイッチを取り、一口食べる――。


「…………サンドイッチ?」

「えぇ、サンドイッチですわ?」

「……セシリア、これどうやって作ったんだ?」

「え…と、本と同じになるように作りましたわ」


――うーん、普通は本と同じならこんな不味いサンドイッチになることなんて……てかサンドイッチ何か直ぐに作れるものなのだが。


「……わかった。セシリア、今度マンツーマンで料理を教えるよ」

「えっ!?そ、その…二人きりで教えてくださるのですかっ!?」


そう目をキラキラさせ、ぐいぐい近づいてくるセシリアに若干引きながらも――。


「あ、あぁ。セシリアの都合に合わせるから」

「わ、わかりましたわ。では…都合の良い日に連絡いたします♪」



流石にあの味では……作ってくれるのは有り難いが、食べる側としてはやはり食べれる範囲じゃないとな――。


「ええと、本当に僕が同席して良かったのかな?」


織斑の隣でシャルルがそう言う。

――シャルルはとても遠慮深い、そこはプラスでもあり、マイナスでもあると俺は思う。


――先ほど、三人目の男子争奪戦とばかりに一組には各学年の女子が大挙して押し寄せたのだが、シャルルの人柄か、或いは貴公子だからかは解らないが丁寧な対応でお引き取り願っていた。


女子一同はそのシャルルの姿にそれ以上強くアピールするのが逆に恥ずかしくなったのか、皆嬉しいような困ったような顔をして引き上げていった。

そんなシャルルの言った台詞は――。


『僕のようなもののために咲き誇る花の一時を奪うことは出来ません。こうして甘い芳香に包まれているだけで、もう既に酔ってしまいそうなのですから』


――俺には絶対に言えん台詞だ。


そして何より嫌味っぽくなく、本当にそう思っているという感じの態度が凄く、何より堂々とした雰囲気の中にある儚げな印象が、その言葉の輝きを際立たせている。

それでいて、何処か優しいというのが更に良かったのか、手を握られていた三年の先輩は失神していた。

その後は購買に行ったため解らないが、織斑が誘ったのだろう。

そのついでに鈴音も誘ったかついてきたかのどっちかだな。

セシリアは美冬と未来が誘ったと思うが。

まあ代表候補生同士で話に花が咲くといいが。


――因みに、俺と織斑は代表候補生ではない。

男なのでアラスカ協定の規則事項に触れてるのか触れてないのかが解らないので、国際間で審議してるらしいが――まあ俺は落とされて織斑が候補生になりそうだがな。

結局専用機も、サンプルのデータ収集的な意味合いもあるだろうが――俺のは母さんオリジナルのIS、資金面の援助に『F.L.A.G.』と呼ばれる財団が協力したのだろう。

――織斑は専用機貰えたのを喜んでいたが、俺自身は別に訓練機でも良かったりと思ったが……素直に母さんが用意したのを喜ぶべきだろう。


――そんなことを考えている間に、未来が帰ってきていた。

とりあえず、腹も減ったし食べるかね……。 
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