IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二巻
【第六十七話】
前書き
ここまでがブログにupしてた話です
ここからはまったり更新していきますのでよろしくお願いします
――第三アリーナ道中――
「ヒルト、一夏、今日も放課後特訓するよね?」
「ああ、もちろんだ」
「俺は毎日でもやらないと追い付かないからな。未来、今日使えるアリーナは?」
「ん?確か――」
「第三アリーナだ」
「「「わあっ!?」」」
「……びっくりした、篠ノ之かよ」
廊下で四人歩いていたのだが、そこにいきなり予想外の声が飛び込んできて俺以外の三人は揃って声をあげた。
そして、直ぐ様織斑の隣に並んだ篠ノ之は、眉をひそめて口を開き――。
「……そんなに驚くほどのことか。失礼だぞ」
「お、おう。すまん」
「いや、誰だって今のはびっくりするぞ篠ノ之?」
「う、うん。気配が無かったから…」
「ごめんなさい。いきなりの事でびっくりしちゃって」
「あ、いや、別に責めているわけではないが……」
折り目正しく頭を下げるシャルル。
篠ノ之もそれを見て気勢を削がれてしまい、話を逸らすように咳払いをした。
「ともかく、だ。第三アリーナへと向かうぞ。今日は使用人数が少ないと聞いている。空間が空いていれば模擬戦も出来るだろう」
「ふぅん。まあ模擬戦出来なくてもやることはいつもと変わらないからな、俺は。――それに美冬が先に行ってスタンバってると思うし」
そんな話をしながら第三アリーナに向かっていると、そこに近づくにつれ何やら慌ただしい様子が伝わってきた。
廊下を走る生徒も多数で、どうも騒ぎは第三アリーナで起こっているようだった。
「なんだ?」
「何かあったのかな?こっちで様子を見ていく?」
「……あぁ、何だか嫌な予感がするがな」
「こういう時のヒルトの勘って結構当たるよね?…嫌な予感が外れてるといいけど…」
そんな未来の頭をポンポンと撫でる俺。
それを見たシャルルの表情が一瞬暗くなった気がするが、直ぐ様観客席へのゲートを指差した。
異論は無く、篠ノ之を含めた俺たち四人は頷いた。
「誰かが模擬戦をしてるみたいだね。でもそれにしては様子が――」
そうシャルルの言葉を遮るように、爆発音が鳴り響いた。
「「「「!?」」」」
「……爆発音っ!?」
慌てて階段をかけ上がり、上空の爆発した場所に視線を向けると、その煙を切り裂くように影が飛び出してくる。
「……美冬!?セシリア!鈴音!!」
特殊なエネルギーシールドで隔離されたステージから此方に爆発や衝撃波が及ぶことはない――が、此方側からの声も三人には聞こえない。
セシリア、鈴音は苦い表情のまま視線を爆発の中心部へ、美冬は直ぐ様体勢を整えると二人が視線を向けている中心部へと近接ブレードを構えたまま突撃していった。
その爆発の中心部にいたのは漆黒のIS『シュヴァルツェア・レーゲン』を駆るラウラの姿だった。
よく見ると、突撃した美冬のISは両肩の盾を失っていて、セシリアと鈴音も美冬程ではないがISにかなりのダメージを受けていた。
二人の機体は所々損傷し、ISアーマーの一部は完全に失われている。
美冬の打鉄も右脚部装甲が失われ、剥き出しの状態になっていた。
ボーデヴィッヒも無傷ではなく、三人と比較すると装甲に傷がついているだけの軽微な損傷に見えた。
「……っ!?未来!直ぐ様ピットに向かうんだ!用意している打鉄の準備が出来次第、皆の間に入ってくれ!」
「わ、わかった!出来るだけ早く準備して止めに入るねっ!?」
未来にそう指示をすると、表情は驚いていたが直ぐ様ピットへと向かっていった――。
指示をしている間にも、アリーナでは模擬戦は続き、美冬とボーデヴィッヒは互いに一歩も引かずに接近戦をしていた。
一方の鈴音とセシリアは軽く目配せし、美冬にも合図を送ると美冬はボーデヴィッヒから離れ、間合いをとった。
その美冬の両隣から鈴音とセシリアが抜け、ボーデヴィッヒへと向かっていった。
三対一の模擬戦だが、明らかに追い込まれているのは美冬、セシリア、鈴音達だった。
「くらえっ!!」
鈴音のIS『甲龍』の両肩が開く。
そこに搭載されている第三世代型空間圧作用兵器・衝撃砲《龍咆》の最大出力攻撃だ。
当たりかたが悪ければ専用機のアーマーも破壊し、訓練機だとそのまま沈められるかもしれないその砲撃を、ボーデヴィッヒは回避行動をとろうともしなかった。
「無駄だ。このシュヴァルツェア・レーゲンの停止結界の前ではな」
右手を鈴音の方へと突き出すボーデヴィッヒ、放たれた衝撃砲による一撃が当たる――――はずが、その攻撃はいくら待っても届くことは無かった。
「くっ!まさかこうまで相性が悪いだなんて……!」
見る限りではバリアー等を展開しているようには全く見えない、だが衝撃砲が無力化されているのも事実だ――。
そして、そのまま攻撃へと転じるボーデヴィッヒ。
肩に搭載された刃が左右一対で射出、鈴音のISへと飛翔する。
その武器は本体とワイヤーで接続されているためか、複雑な軌道を描いて鈴音の迎撃射撃を潜り抜け、鈴音の右足を捕らえた。
「そうそう何度もさせるものですかっ!」
「私だって…まだまだ動けるんだからっ!!」
鈴音の援護のため、射撃を行いつつビットを射出、ボーデヴィッヒを包囲するように向かわせる。
美冬も打鉄に搭載した後付武装の大型拳銃を展開し、援護射撃を行った。
――もともと打鉄に射撃武装は無いのだが、借りるときのオプションで色々武装を付けれたり出来る。
「ふん……。理論値最大稼働のブルー・ティアーズならいざ知らず、この程度の仕上がりで第三世代型兵器とは笑わせる」
セシリア、美冬による十字砲火による射撃を交わしつつ、先ほどと同様に腕を突き出す、だが今度は左右同時であり、その交差させた腕の先では目に見えない何かに捕まれたかのようにビットと、拳銃の弾丸がその場で固定されたように止まった。
「動きが止まりましたわね!」
「貴様もな」
「――私もいるんだからっ!」
「ふん…。訓練機に遅れをとる私ではない」
セシリアの正確な射撃、だがボーデヴィッヒの肩の大型カノンの砲撃で相殺。
一方の美冬は再度近接ブレードを展開し、間合いを詰めて斬りにかかる――が。
「くっ…。動けない…っ」
「貴様は後回しだ」
動きが止まった美冬を一瞥し、意識をセシリアの方へ向けるボーデヴィッヒ。
セシリアは直ぐ様連続射撃に移行しようとするが、ボーデヴィッヒは捕まえていた鈴音をぶつけて阻害した。
「きゃああっ!」
「セシリアっ!鈴――」
「貴様は邪魔だ。早々に退場してもらおう」
再度装填された大型カノンを美冬に向けるボーデヴィッヒ。
その砲口を向けられた美冬は、何とか避けようとするがなすすべ無く、大型カノンの直撃を受け、その衝撃に地面へと叩きつけられた――。
「―――美冬……。―――ぁぁぁぁあああッッ!!!」
アリーナ観客席に響く叫びにも似た俺の声、その場にいた皆が驚き、此方を見ているがそれにも気付かずISを展開してそれを纏い、武装を展開する。
一方のボーデヴィッヒは、直ぐ様姿勢を崩したセシリアと鈴音に対して突撃を仕掛けた。
その速度は凄まじく、間合いを瞬時に詰めた。
「『瞬時加速』――!」
織斑のそんな言葉が聞こえてきた――瞬時加速、織斑がよく使う技能だ。
その瞬時加速の突撃に対応するように鈴音は双天牙月の連結を解いた。
理由は、ボーデヴィッヒが両手首に装着しているパーツ部分からプラズマ刃が展開され、左右同時の連撃で鈴音へと襲い掛かる。
「このっ……!」
前進し続けるボーデヴィッヒに対して後退で距離を置きながら鈴音は刃を幾度となく捌き、凌いだ。
アリーナの形状に合わせた機動で追い詰められないようにしている鈴音。
だがボーデヴィッヒのワイヤーブレードが鈴音へと襲い掛かる。
今度は両肩だけではなく腰部左右に取り付けられていたものを合わせて計六基。
その六基全てが複雑な三次元躍動で接近、それと同時にプラズマ手刀による攻撃。
どんなに格闘戦に慣れた相手でもそれら全てを捌くには難度が高すぎた――。
――アリーナ観客席――
「……これ以上…黙って見てられるかよ……!!」
「ヒルト!何する気だよっ!?」
「止めるな織斑!!――美冬がやられ、セシリアも鈴音も満身創痍……――友達や家族が……やられてる状況にただただ黙って静観なんて俺には出来ないんだよッ!!――このまま皆の身体に痣や傷が残ったらどうするんだっ!?誰が何と言おうが……俺はこの戦いを止める…ッ!!」
言い切るや、アリーナ観客席にある一部のバリア発生器に天狼の刃を突き立て、バリアを一部分破壊した――と同時に、未来へとプライベート・チャネルの通信を送る。
『未来!準備は出来ているか!?』
『大丈夫!いつでも止められるよ!!』
『まずは俺が先手を打つ、俺が飛び出した十秒後にピットから発進、その後美冬、セシリア、鈴音を安全な所に――』
『わかった!』
プライベート・チャネルを切り、改めて視線をアリーナに向けると――そこには既に戦えなくなっていた三人をワイヤーブレードにて捕縛、抗えない三人に対しての一方的な暴虐が始まっていた――。
苦痛に歪む三人を見た俺の頭の中が、クリアになると同時に――一気に怒りのゲージが振り切れた――その時、不意に女の子の声が聞こえてきた……。
――ヒルト……力を貸すね…?――。
――言い終わるや、足りなかったパズルのピースが埋まっていくように情報が意識に流れ込んでくると同時に、村雲の第三世代兵装の機能が開放された――。
ページ上へ戻る