IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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第二巻
【第五十二話】
――第二グラウンド――
「さて、これで諸君にもIS学園教員の実力は理解できただろう。以後は敬意を持って接するように」
ISを解除し、走って戻ると織斑先生が手を叩き、皆の意識を切り替えるよう促している。
「専用機持ちは有坂、織斑、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰だな。では大方八人~十人グループになって実習を行う。各グループリーダーは専用機持ちがやること。いいな?では分かれろ」
織斑先生が言い終わるや直ぐ様、織斑とシャルルに一気に二クラス分の女子が詰めよっていった。
「織斑君、一緒に頑張ろう!」
「わかんないところ教えて~」
「デュノア君の操縦技術を見たいなぁ」
「ね、ね、私もいいよね?同じグループに入れて!」
――あの、俺も居てるのだが。
悲しいかな、所詮は才能の差というものなのか。
軽くISから取れるシャルルのデータを見るに適性がA+――。
そして織斑がB――俺はE――。
「あ~あ、お兄ちゃん一人で可哀想だから私が入ってあげるね?」
「じゃ、私も幼なじみの情けで入ってあげるよヒルト」
「おぉ…妹と未来の優しさに感謝だな、これが」
「べ、別に優しくなんか……。ヒルトが可哀想だから仕方なくよ」
「そっか。だがありがとな?」
ポンポンと妹と未来の頭を撫でるように触ると、二人とも若干頬を赤らめた。
――てかこれじゃあグループ成り立たないよな。
セシリアも鈴音も、ボーデヴィッヒの所にも誰も行ってないし――てかボーデヴィッヒは腕組みしてつまらなさそうに見てるだけだし。
そんな風に思っていると、この状況を見かねた織斑先生は面倒くさそうに額を指で押さえながら低い声で告げた。
「この馬鹿者どもが……。出席番号順に一人ずつ各グループに入れ!順番はさっき言った通り次にもたつくようなら今日はISを背負ってグラウンド百周させるからな!飯山、お前は有坂のグループに入れ」
「はい、わかりました!」
――未来が特別扱いではなく、転校してきたばかりのため番号がまだ定まっていないための処置だな。
鶴の一声で、それまで織斑とシャルルにわらわらと群がっていた女子たちは、蜘蛛の子を散らすように移動して、各々の専用機持ちグループは二分とかからず出来上がった。
「最初からそうしろ。馬鹿者どもが」
溜め息を漏らす織斑先生、それにバレないように各班の女子はぼそぼそとお喋りをしていた。
「……あー、有坂君の班か…織斑君の班がよかったなぁ……」
「……やったぁ。織斑君と同じ班っ。名字のおかげねっ……」
「……うー、セシリアかぁ……。さっきぼろ負けしてたし。はぁ……」
「……凰さん、よろしくね。後で織斑君のお話聞かせてよっ……」
「……デュノア君!わからないことがあったら何でも聞いてね!因みに私はフリーだよ!……」
「………………」
――また好き放題言って……聞こえてるから対応に困るんだが。
そんななか、お喋りがないのがボーデヴィッヒの班。
雰囲気やオーラといった抽象的表現しか出来ないが、完全に拒む態度を示している。
流石にあそこの班が少し気の毒に感じる。
作り笑いでもいいから笑えば良いのに。
「ええと、いいですかー皆さん。これから訓練機を一班一機取りに来てください。数は『打鉄』及び『リヴァイヴ』共に三機です。好きな方を班で決めてくださいね。あ、早い者勝ちですよー」
山田先生がいつもよりしっかりしているように感じる。
――まあ先生だし、しっかりしてもらわないとな。
しかし――。
自然と山田先生の胸元に視線がいく。
あれはでかすぎだろ、一度揉んでみたいものだ――。
――てか、揉んだような気がしなくもないような?
「ヒルト、早く実習始めよう?」
「う?未来か、OK。――じゃあ、皆は俺に教わるなんて不本意だし、嫌だろうが今回は我慢してくれ。俺自身も人に教えるほど上達したとも思ってないしな」
とりあえず、納得いってはいないだろうが我慢してもらわないと仕方ない。
織斑やシャルルは女子に取り囲まれているが、此方はそんな事もないからスムーズには行くだろうが――悲しく感じる。
――そんな中、ISのオープン・チャネルが開くと。
『各班長は訓練機の装着を手伝ってあげてください。全員にやってもらうので、設定でフィッティングとパーソナライズは切ってあります。とりあえず午前中は動かすところまでやってくださいね』
――山田先生からの連絡だ、多分解らないところは無いとは思うが、何とかやってみるかな。
とりあえずISの打鉄を受け取り、両手で担ぎながら班へと戻って――。
「うわぁ、有坂君力持ち…」
「す、凄いねっ?何かビックリだよ!」
「……そうか?昔から重いものはよく持たされてたからな」
運んできた打鉄を、その場に置いて――。
「んじゃ、出席番号順にISを装着してから起動、そのあとは向こうの線まで歩行だな。それじゃ――」
俺の言葉を遮るように、隣の織斑グループから聞こえてきたのは――。
「よろしくお願いしますっ」
腰を折って深く礼をし、そのまま右手を織斑に差し出している女子――確か、相川だったか?
――てか相川って俺の班に入るんじゃ……まあいいか。
そんな相川の挨拶を見た織斑グループの女子は――。
「ああっ、ずるい!」
「私も!」
「第一印象から決めてました!」
――何だっけ、何かこういうのテレビで見た気もするが?
「あ、あのな?どういう状況かよくわからないんだが――」
「「「お願いしますっ!」」」
――今度は織斑の向こう側のシャルルグループの方から聞こえてきた、織斑と同じような状況になっていて、シャルルの困惑した表情が伺える。
だが――またも心地のよい頭を叩かれた音が鳴り響いた。
「「「いったああっっ!」」」
見事にハモった悲鳴、一列に並んだ女子たちの頭は非情に叩きやすかったであろう。
女子たちが頭を押さえながら顔を上げると――。
「やる気があって何よりだ。それならば私が直接見てやろう。最初は誰だ?」
「あ、いえ、その……」
「わ、私たちはデュノア君でいいかな~……なんて」
「せ、先生のお手を煩わせる訳には……」
「なに、遠慮するな。将来有望なやつらには相応の訓練が必要だろう。……ああ、出席番号順で始めるか」
――とりあえずうちの班は問題無さそうだからいけるかな?
「よし、んじゃ出席番号順でいきますか」
「はーい」
そう返事をした子は、直ぐ様外部コンソールを開き、ステータスの確認を行っている。
――手助けしなくても問題無さそうだな。
そのまま順調に装着と起動、歩行を行った彼女を見ながら思った。
――よく俺も歩けたよな、こける方が多かったが。
歩行を終え、一人目が終わると二人目なのだが――。
「有坂、これコックピットに届かないんだけど?」
「ん?おー、見事な立ちっぷりだな」
――最初の子が立ちっぱなしで装着解除した結果、立ったままの状態に。
「有坂君、どうしました?」
直ぐ様来たのは山田先生だ。
ISは解除してるが、やはり胸元が開放されたスーツのせいで、嫌でも谷間に目が――眼福です。
「えっと、ISをしゃがませるのを忘れててこの状態なんですよ」
「あー、コックピットが高い位置で固定されてしまった状態ですね。――それじゃあ仕方がないので有坂君が乗せてあげてください」
「俺が?」
「ふぇっ!?」
「あ、有坂君が乗せるの!?」
「だってそれが一番楽ですし――そういえば、有坂君は飛べませんでしたね」
おぉぅ――飛べない俺は約たたずだ…まあ仕方ないが。
「じゃあ、俺が踏み台になれば大丈夫じゃないですか?」
「うーん……そうですね。では有坂君、大変でしょうが踏み台になってあげてくださいね。何かあればお手伝いしますから。――織斑君の班も同じような事態になってますから行きますね?」
そう言い残すと、山田先生は隣の織斑グループの元へと移動した。
「……んじゃ、馬になるから踏み台にして乗って構わないぞ?」
「わかった。有坂悪いけど踏ませてもらうぞ?」
ISの前で屈んで踏み台にしやすい体勢になると――。
「有坂…、踏まれて喜ぶなよ」
「おいおい、どんな変態だよ。踏まれて喜ばねぇから早く乗れって」
――この子――栗原だっけ?
そういや男口調だよな。
ずしりと、女の子一人分の体重がかかると踏ん張るようにその場で待機――。
――てか、何で乗り移らないんだよ。
「お、おい栗原。早く乗れよ…」
「お?わりぃわりぃ。有坂の踏み台が居心地よくてな」
「だああっ!腕だって疲れるんだから早くしろって!――てかこれなら肩車のが早いっ!」
「え?――ちょ、わあっ!?」
一旦下ろした栗原を、肩車して乗せ――。
「ば、馬鹿!お、下ろせよなっ!恥ずかしいじゃないかっ!」
「やなこった。此方のが早いし」
「ば、馬鹿野郎……」
「馬鹿で構わないから、早く乗れよ」
表情が見えないが、多分怒ってるのだろうな。
「お、おぅ……」
――やっと素直に乗ったな。
ISへと乗り移った栗原の頬は、少し赤くなっているような気がした。
「じ、じゃあ歩行するからな、有坂」
「ああ、初めはゆっくり歩きなよ」
そう俺に言い、ゆっくりと歩行を始めた栗原を見ながら――。
そういや栗原の下の名前何だったかな…。
機会があれば聞いてもいいかもしれない、教えてくれたらの話だがな。
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