IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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第二巻
【第五十九話】
――第三アリーナ――
アサルトライフルを手渡され、それを見た織斑が口を開く。
「え?他のやつの装備って使えないんじゃないのか?」
「……織斑、確かに普通は使えないがこの武器の所有者――つまりシャルルが使用許諾(アンロック)すれば、シャルルが登録してある人全員が使えるんだぞ?教科書にも書いてるし」
「そうなのか?」
「そうだよ。――うん、今ヒルトと村雲・弍式に使用許諾を発行したからヒルト、試しに撃ってみて」
「了解…ふぅ…」
そういや、こんな銃器を持ったのは初めてだな…。
いつの間にかこういう事に慣れていってるな…俺。
「……シャルル、構えはこれでいいか?」
「えっと……脇を締めて。それと左腕はこっち。わかる?」
「ん……わかるよ」
軽い動きで俺の後ろに回ったシャルル。
俺との身長差はあるものの、ISの特性で浮いている事から、自由な動きでうまく俺の体を誘導する。
――不思議と、未来の教えかたに少し似てる気がした。
「火薬銃だから瞬間的に大きな反動が来るけど、殆どはISが自動で総裁するから心配しなくてもいいよ。センサー・リンクは出来てる?」
「悪い、俺のISにはセンサー・リンクは無いんだよ」
高速状態での射撃なので、ハイパーセンサーとの連携が必要になるのだが、俺のISにはターゲットサイトを含む銃撃に必要な情報を送るためのメニューがない。
――弓も基本目測で射ってるから当たったり当たらなかったりと、地味に俺自身敬遠しがちになっている。
「うーん、どんな機体でも普通は入っているんだけど……」
「無いものは仕方ないさ」
「……そうだね。じゃあ、目測でやるしかないね」
深く息を吸い、吸った息を吐く――不思議と気持ちが落ち着き。
「ふぅ…。行くぞ……」
「うん。とりあえず撃つだけでもだいぶ違うと思うよ」
そう優しい笑みを浮かべながら喋るシャルルに促され、引き金に力を込めると――。
アリーナに響く火薬の炸裂音、心臓が跳ね上がり、ドクンッドクンッと早鐘を打つように心臓が鼓動し続けた――。
「どう?」
「ん…、親父からは聞いたことがあるがやはり『速い』って感じだな…」
「そう。速いんだよ。瞬時加速も速いけど、弾丸はその面積が小さい分より速い。だから、軌道予測さえあっていれば簡単に命中させられるし、外れても牽制になる」
「なる。間合いが詰められないときは何処かしら俺がブレーキかけてるかもな、飛べないって事をおいといても」
「うん」
――完全に一方的な展開になるわけではないが、何となくセシリアや鈴音にやられる理由もわかったな。
――篠ノ之は元々剣道してるし、俺のお遊び剣術とは訳が違う。
この辺りも差があるんだろうな…。
妹や未来は前もって訓練してたし、まだまだ努力しないと……。
「あ、そのまま続けて。一マガジン使いきっていいよ」
「……了解」
アリーナ上空に現れた的に銃口を向け、引き金を引いて二発、三発と撃っていく――。
「そういえば、シャルルのISってリヴァイヴなんだよな?」
待っていて暇だったのか、織斑がシャルルのISについて聞いていた。
「うん、そうだよ。――あ、ヒルト、腕が離れてきているから、ちゃんと一回毎に脇を締めて」
「了解…。これでいいか?」
「オーケーだよ。後、なるべく銃身を移動させて視線の延長線上に置いた方がいいね」
「わかった」
シャルルから指導を受け、再度射撃を開始する。
「――で、指導中わりぃけどシャルルのIS、山田先生が操縦していたのとだいぶ違うように見えるんだが本当に同じ機体なのか?」
――山田先生の使っていたIS『ラファール・リヴァイヴ』はネイビーカラーに四枚の多方向加速推進翼(マルチ・スラスター)が特徴的なシルエットをしている。
だがシャルルのISはカラーだけでなく、全体のフォルムが違うから織斑も気になっていたのだろう。
背中に背負った一対の推進翼は中央部分から二つの翼に分かれるようになっていて、より機動性と加速性が高くなっている。
アーマー部分は山田先生のものより小さくシェイプアップされている上に、マルチウェポンラックとして大きなリアスカートがついていた。
そしてそこにも小型の推進翼が付いていて、主に姿勢制御に使用しているようだった。
そして何より違うのが肩部分のアーマーで、本来付いている四枚の物理シールド全てが取り外され、代わりに左腕にシールドと一体化した腕部装甲が付けられていて、反対側の右腕は射撃の邪魔にならないためなのか、すっきりとしたスキンアーマーだけになっている。
「ああ、僕のは専用機だからかなり弄ってあるよ。正式にはこの子の名前は『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』。基本装備を幾つか外して、その上で拡張領域を倍にしてある」
「倍!?そりゃまたすごいな……ちょっと分けて欲しいくらいだ」
「…確かに倍は凄いな。つくづくISは凄いと思わされるな、これが」
「あはは。そうだね。そんなカスタム機だから今量子変換してある装備だけでも二十くらいあるよ」
「うーん、ちょっとした火薬庫みたいだな」
「火薬庫ってよりも補給車って印象のが強い気がするがな、俺は」
――武装は全てIS専用兵装だとは思うが、内容によっては重戦車の装甲すら撃ち抜ける武装もあるだろうが……このアサルトライフルの口径を見る限りは特殊な弾薬を使ってない限りは装甲に弾かれるだろう。
アンチマテリアルライフルとか量子変換されているのだろうか?
――しかし、セシリアにしろ鈴音にしろ、基本ISの装備は五つくらい、多くて八つくらい。
――俺は刀と弓と、まだ使えない第三世代兵装のみ。
「ねえ、ちょっとアレ……」
「ウソっ、ドイツの第三世代型だ」
「まだ本国でのトライアル段階だって聞いてたけど……」
急にアリーナ内がざわつき初めて何事かと、その注目の的に視線を移すと――、
「………………」
そこにいたのは、ドイツ代表候補生ラウラ・ボーデヴィッヒだった……。
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