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王道を走れば:幻想にて

作者:Duegion
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第四章、その6の3:一線 ※エロ注意

 
前書き
 やっちまったです。
 プレイ一覧:夜這い、手淫、素股、騎乗位、膣内射精 

 

 

 本降りとなった雨が、真っ暗闇に中に佇む一軒の館に打ち付けられている。窓や壁越しに天の蛮声が轟き、その度に宙を裂いて、光を照らす。一室にて睡眠に就こうとしていたアリッサは耳障りな天の響きを物ともせず、目を閉じていた。先程まで身体に残っていた火照りや、高鳴った胸の律動は一応の静けさを取り戻した。本来であればこのまま眠りに就いても全く問題無いのであるが、気掛かりな事があったために彼女は目を覚ましたままでいたのだ。
 ちらと瞳を開けて隣を見遣る。一人には大き過ぎる寝台には、彼女以外にもう一人居る筈である。だが視線を向けた場所には、誰の存在も居なかった。

「・・・・・・ケイタク殿、遅いなぁ」

 床に着いて二十分した頃合だろうか、共に寝る予定であった慧卓は、音を立てぬよう密かに部屋を後にしていたのだ。大方寝る前に厠にて用を済ませに向かったのであろうが、しかしそれにしては随分と長く感じる。体内時計で計る限り、既に寝台から抜け出して二十分は経過しようとしていた。
 彼が居なくなってからというもの、瞼が重くならないのだ。己と寝台を共にするべき人物が居ないというのは、どうにも落ち着かないというのが本音でもある。そしてなにより、先までの胸の高鳴りを起こしていた元凶とも言うべき存在が、自分勝手に居なくなって、更には眠気まで阻害してくるのは理不尽にも感じたのだ。

「・・・んしょっと・・・」

 アリッサは彼の様子が気になり、寝台から起き上がる。騎士として鍛え抜かれつつも自然と形成された美しき体躯のラインが、ほとんど透けて見えるくらい薄地の寝巻きの上に、軽く上着を纏った。燭台に火を燈してほんわかと暗闇を照らし、彼女は部屋から出て厠へと向かっていく。古めかしい木造の館の一階部分に厠があるのだ。
 館には余り人が留まっていない。精々領主とその娘と執事、或いは客人だけである。他の者は隣接した別棟に宿泊しており、アリッサが派遣した兵等もこの建物に入って、長路の労を癒しているのである。
 風も無いのに建物がぎしりと揺れるように感じるのは、きっと雷雨の勢いのためであろう。建築物としては若干不安があるが、賢人が住まう辺り、安全性は保障されているといえよう。ぎしりと小さく音が鳴る階段を、出来るだけ静かに踏みしめて降りていく。無明ゆえに手元の燭台の明かりだけが頼りであり、段差を注意深く降りていった。
 厠の前まで、館内に居る寝静まった者達を起こさぬようゆっくりと歩く。そして厠の前に立つと、アリッサの耳は聞き慣れない、くちゅくちゅという水音を聞く事になる。それはどこか切羽詰ったような、男の喘ぎの中に混じった音であった。

『はぁ・・・はぁ・・・』
「えっ・・・何?」

 アリッサは耳を欹てて意識を向ける。水音は一定の間隔、それもかなりの早さを伴って奏でられている。また男の喘ぎも、息が詰まったかのようなものであり、一縷の色気すら感じられる。

『あっ・・・・・・はぁ・・・』
(・・・えっ!?うそ、これってっ・・・!?)

 思い至る所があったか、アリッサは嫌悪するように瞳を歪めた。昔日、情操教育の一環として習ったある部分を思い出したのだ。欲求不満の解消としての、自慰行為を。誰かを想って情を燃やしそれを行う事もあるというのは彼女とて知ってはいるが、未だその手の体験を行っていないアリッサにとっては未知の領域であり、ゆえに知りたいと思うよりも及び腰となって嫌悪が沸いてしまうのだ。

(は、早く立ち去らねば・・・こんな汚らわしい行為、聞いてられーーー)
『あっ・・・ああ・・・やばい・・・』
(・・・・・・ケイタク、殿?)

 立去ろうとした足が、ぴたりと止まる。耳を澄ませて聞いてみるに、矢張りそれは慧卓の声であった。人様の厠にて慧卓が自慰をしている。それだけでも驚愕に値する事実であるというのに、扉越しに聞こえる彼の言葉にアリッサは再度驚く。

『・・・はぁ・・・アリッサさんっ・・・』
(・・・け、ケイタク殿が・・・私を想って・・・?)

 思わず燭台を持つ手がぶれて、明かりと影が揺らめいた。思わぬ形で出でた事実に、胸が高鳴って顔が熱くなっていく。寝台を共にする人物が、眠りに就く前に己を想って欲望を慰めている。胸に沸いていた拒否感というのが薄れて、代わりに好奇心にも似た興奮が沸き立つ。人の性欲の対象としてなる事が無かった、少なくともその自覚が無かった彼女にとっては正に予想だにしない出来事である。それも自慰を行っている人物が、先程まで心の中心に居た人物であるというのなら、尚更であった。
 アリッサは思わず頬に手を当てて自慰の声を聞いてしまう。分別のつかぬ行動を彼がしているという認識があるのにも関わらず、冷や水を掛けるような勇気が出て来なかった。鳴りを収めていた胸の熱が再びこみ上げて、掌に熱いものを感じる。

『あっ・・・出そうっ・・・うっ・・・』
「っ!」

 呻き声と共に水音が治まり、静寂が立ち込める。情事が終わったようである。暫くすれば彼が出てくるかもしれない。アリッサは行きと同じようにゆっくりとその場を後にする。階段に登る際も、厠をちらちらと見遣りながら。
 厠の内にてしゅっしゅっと、何かを拭く音が鳴った。続いて聞こえたのは深い溜息である。

「はぁ・・・本当、最低だな、俺」

 慧卓は暗闇の内にて己自身を見詰める。扱いた最中に漏れ出した液体が亀頭にこびり付き、ぬめぬめとして粘着質な触感を指に与える。厠にて用意されていた、本来なら秘所を拭く役割を持つ使い捨ての葉っぱに向けて慧卓は射精をしたのだが、一物は屹立したままである。自慰の後の虚脱感というのも俄かであり、まだまだやり足りないという不満が鬱積していた。

(落ち着け・・・もう一回抜いちゃったんだ。これ以上勃ってどうするよ?明日から賢人様と交渉に入るんだぜ。少しは理性を保てっての・・・)

 建前を浮かべて一物を抑えようとするも、左手に残ったふくよかな感触は一向に消えず、それどころかあらぬ夢想を彼に迫り、性欲を発露させるのだ。あの女体的な柔らかみと突起や、馨しき髪の匂い、潤んだ翠の瞳。考えれば考えるほどに身体に流れる血の通いが、より熱いものとなってしまうのだ。
 しかしこうして自慰に耽り続けるのも仕様の無い事である。明日からの政務に備え、何とかして眠気を取り戻さなければならないのだ。

(にしても・・・さっき足音が聞こえたけど・・・警備か誰かか?バレてないよな?)
「・・・はぁ。もうちょい居るか」

 息が整うまで、慧卓は暫しの間厠に篭っていた。時間にして、大体十分くらいである。陰茎の勃起も感覚的ではあるが、俄かに治まったようにも感じて、慧卓は漸く部屋へと戻っていく。
 部屋の扉をゆっくりと開けて、身を滑り込ませる。雨露の勢いは依然として強いままであり、窓にぼつぼつという響きを奏でているようだ。既に深夜を過ぎている事であろう、さっさと寝なければならない。見るに、アリッサとて既に寝入っているようであるから尚更である。そう思いながら慧卓は布団を捲り、視線を枕元へと移そうとした瞬間、息をはっと呑んだ。

「・・・ん・・・」

 小さな寝息を零したアリッサの寝顔は、雷の光に照らされずとも分かるほど、実に端麗で且つ無防備なものである。初雪の如く透き通った頬は赤くなっており、首筋には一滴の汗が伝っていた。慧卓は思わず欲に駆られて、彼女に被さっていた布団を膝元まで捲り取る。そして彼女の寝巻き姿をまじまじと見詰めて、股間の肉槍が再び硬直してしまった。

(・・・勃つのも、しかたないんだ・・・)

 己にそう言い訳して、彼は尚彼女を見遣る。上下に分かれた白のネグリジェは、ほとんど身体の起伏やラインが透けて見えるほどの薄地のものだと慧卓は初めて気付き、そして何故か些か彼女の寝巻きが乱れているのを見詰めて、興奮に男根を滾らせる。上着は片方の下乳が微かに見えるほどに捲れ、引き締まった腹筋といじらしい臍が曝け出されている。もう少し、もう少しだけ服を捲れば寝汗を帯びた乳房が全て露出してしまう格好であり、しかし肝心な所が見えていないというのがまた興奮を募らせた。下半身に至っては寧ろ扇情的であり、膝が見える程に寝巻きが下ろされて、純白の可憐な薄布が見えてしまっている。腰に回った片方の紐が少しだけずらされており、肢と腰部の間の細い皺が見えている。よくよく見れば女体のクレパスを隠す部分が濡れているような感じもするが、おそらくは気のせいだろう。

「・・・んん・・・」
(・・・す、少しなら、いいよな。寝てるから・・・ちょっとは・・・)

 慧卓は喉の奥に生唾を押し込み、寝台に乗っかってアリッサに近付く。接近すればするほどに理解できる、彼女の凛々しさと妖艶さ。被虐的な性質を持つ者なら、平伏したいと無自覚に思えるほどの凛然とした唇。そこからは穏やかな寝息だけが毀れているが、どこか恥らうような色気も篭められているのが妙に倒錯的で、そそるものがあった。狸寝入りをしているというのも考えられるが、普段の彼女を知っているだけに、此処まで羞恥を触発される格好を彼女がするとは思えないものであった。
 唇と美顔を見詰めたいと思う気持ちもあったが、慧卓が手を伸ばしたのは彼女の腰部であった。同姓であれば嫉妬も禁じ得ないすらっとした腰に指先が触れる。吸い付くような瑞々しい感触に驚くも、指はそれを堪能している。臍を掠めるように掌を蠢かす。麗しき肌を犯すような感じがして、慧卓の内に興奮が込み上げる。そしてその手を徐々に徐々にと、一瞬一瞬に伝う肌の温もりを覚えながら上へ這わせ、右手の中指が彼女の乳房を突いた。慧卓の中で思わず、感動が生まれる。

(うわ・・・柔らかい・・・)

 爪先が埋まるかと錯覚してしまう包容力。ほんの僅かに触れただけで形を変える繊細さ。このまま触り続けたいという気持ちもあったが、一応慧卓は声を掛けた。

「アリッサさん、起きてる?」

 帰ってくるのは寝息だけ。それならばと慧卓は指を顕となった乳房の半球に這わせた。一点の染みも無い肉肌の丸みは蠢く指を歓迎しているかのように形を変え、そっと押してやるだけで指先を包んでくれる。充分にそれを堪能した後に、慧卓はちろっと俄かに上を見遣り、指を向かわせる。寝巻きに覆われた胸の頂点にある小さな突起らしきものを、慧卓は指先で摘んでみた。

「・・・んあ・・・」
「!!」

 艶やかな息に心臓が止まりかける。しかし再び安定した寝息が続けられるのを聞き、慧卓は再び淫らな欲のままに手を這わせた。薄絹の触り心地もいいが、それ以上に胸の柔らかさは素晴らしいものであった。初々しき心の慧卓は、好奇心にも似た欲求のままに彼女の寝巻きに指を掛けて、ぐっと胸に緊張を抱えて、その布を上へたくし上げた。

「・・・ぅわぁ・・・」

 美しき丘であった。過度な大きさなど要らぬ天然の稜線。雷鳴に照らされるのは、傾国の美の如き丘である。犯しがたき聖上の美麗さを兼ね備えた、稜線の頂点にある桜。そっと上に手を置けば 丁度掌に納まってしまう。掌の真ん中に小さき出っ張りが当たり、こりこりと潰れるようだ。慧卓は罪を犯したようなふわりとした感覚に陥る。誰も彼もが注目する美麗な騎士を、彼女の意識の無い内に弄ぶというのは、心を掻き立てて仕方の無い状況であったのだ。
 一つ罪を犯してしまえば、後は済崩(なしくず)しであった。慧卓は両方の手で以って、夢中になって彼女の胸を犯す。寝入った彼女を起こさぬよう注意を払わねばならぬのに、手付きは焦らされる獣の如く、僅かに乱暴さが混じっていた。極上の柔らかさと感触のよさを誇るそれを慧卓はまじまじと見詰め、円を描くように捏ねる。心成しか彼女の寝顔に紅が差しているようにも見えて、それが何とも可憐に見えてしまう。

(・・・さ、最低過ぎる・・・俺。寝込みを襲うなんて・・・。でも・・・)
「我慢なんてっ・・・」

 慧卓は更なる禁忌を侵略する。胸を揉むだけに足りず、乳首まで弄りだそうとしたのだ。顔に緊張を浮かべてその突起を見詰め、指先で摘む。思ったよりも硬さが無く、かといって柔らかいものでもなかった。何と無しに悪戯っ気が触発された慧卓は、爪先で彼女の乳首を押し込んで、ぴんと弾いた。

「あんっ・・・」
「っっ駄目だ・・・」

 理性を吹き飛ばすような可憐な喘ぎ声に、慧卓は我慢の堰を切らす。己の下半身を覆う邪魔な布を脱ぎ捨てて、滾りに滾った一物を露出させた。先走りを零すその先端を、欲情のままに彼女の太腿に押し付けた。一瞬、彼女の身体がびくりと震えるが慧卓は気付く余裕も無く、ただただ感動に浸るだけである。

(気持ちよ過ぎる・・・手とは、比較にならないっ・・・!)
「っ・・・ぁぁっ・・・はぁ・・・」

 言葉の通りであった。厠にて行った自慰を比べるのが悪魔的な発想と思えるほど、彼女の太腿は上品に、そして淫らに彼を歓迎してくれる。慧卓は名残惜しさを抱えながらも彼女の胸から手を離し、片手を寝台に突く。そして己の一物をもう片方の手で押さえ、ぐりぐりと彼女の太腿に擦り合わせた。性急に過ぎた亀頭のぬめりが引き締まった肉肌に塗り付けられ、カリや裏筋が刺激される。筋肉の張りが素晴らしくて腰がかくついてしまい、恍惚の表情を浮かべてしまうほどの、至高の法悦ともいえるものであった。
 果たして自分のようなものがこの悦楽を受けていいのかどうか、このえにもいわれぬ悦楽を自分だけで独占していいのか、思わず疑問が慧卓の脳裏で浮かんでしまう。しかしそれは矢のように直ぐに過ぎ去る愚問であった。アリッサに親しく、そして彼女に近しき立場であるからこれを得る機会があったのであり、他者の可能性など微塵も認められない。加えて他者であれば、彼女は既に抵抗を物ともせぬ陵辱の憂き目とあっていたであろう。彼女の太腿と双丘のみに侵略の手が向かうのは、自慰のみに留めようという己の意思あってこその所業である。
 倫理的にも適合せず、社会的にも逸脱した答えで慧卓は己を納得させた。常人の常識を無視する事で得られる快感は一入であり、慧卓の亀頭の割れ目からは先走りの汁が溢れ、彼女の肌を穢していた。
 ふと、慧卓は自慰の傍らに彼女の股間部分を隠す布に目をやった。暗き室内でほんのりと浮かぶ純白の布。

(・・・濡れてる、のかな?)

 好奇心に駆られるまま、慧卓は一物を持っていた手をするすると其処へ伸ばしていく。ショーツのラインを肌を掠るようになぞっていき、恥骨に向けてすすと指を這わせた。そして人差し指が、濡れているかが察知できる突起部分に触れようとした瞬間、がしっと彼の手首が掴まれた。

「っっ!?!?あ、アリッサさん・・・!!」
「・・・」

 慧卓が絶望にも似た表情を浮かべた。何を思ってか分からぬが、アリッサは酷く顔を赤らめて、瞳に透明な滴を溜めていた。乱れた格好を隠そうともせず気恥ずかしげに右手を胸元に寄せて、節目がちに慧卓の方を睨んでいる。正確に言えば、彼の顔を睨んでおらず、彼の屹立した陰部にこそ視線を注いでいた。
 少し考えればその仕草に何らかの疑問が浮く筈なのだが、慧卓はただただ焦燥に駆られ、急激に罪悪感のような感情を顔に顕していた。

「ご、ごめんなさい・・・謝って済むような事じゃないのは分かってるけど・・・でもアリッサさんが綺麗過ぎて、我慢出来なくなって・・・!」
「・・・」

 言い訳にもならぬ言葉でしか、彼は口に出せない。混乱を来して上手い謝罪すら頭に浮かばず、口元を何度も噛み締めてしまうのだ。嫌な汗が彼の背筋に浮かび、打ち首すら生温く思えるほどの彼女の罵倒が想像されてしまった。
 だがアリッサは彼の心配を他所に、一向に視線をずらさない。そしてあろう事か、彼の手首を離すとすすとその美しき指を、薄い精液に濡れた彼の陰茎に這わせたのだ。

「あ、アリッサさん・・・!?」
「・・・本当だ。本に書いてあったのと同じ・・・」

 珠玉のように麗しき指先が、彼女にとって得体の知れぬ汚らわしき肉槍とその汁を指で確かめている。慧卓の心臓がばくばくと律動して、想像だにせぬ興奮を彼に課させた。アリッサは確かめるように何度か男根を揉むと、付着した精子を指の腹で擦り、離して卑猥な糸を作っていた。指の間に落ちるそれを見詰め、熱に浮ついた声で言う。

「熱くて、硬い。それに・・・ぬめぬめしてる」
「それは、その・・・精液、です」
「・・・誰を想っていたんだ?」
「アリッサさん以外、居ませんよ・・・」

 素直なまでの声に隠し切れぬ情熱が混じる。アリッサの濡れた瞳が彼をぼぉっと見詰めた。当惑するように口元を開き、数秒の間、瞬きもせずに見詰め合う。上気した頬が色めかしく、ただそこに居るだけで絶世の美画になるようだ。
 やがてアリッサは視線を落とし、両手を体躯の横に落としす。自然と彼女の美しき体躯が露となり、慧卓は不安を孕んだ期待の目を向けた。

「・・・もう少し、続けても、いい、ぞ」
「!!!い、いいんですか!?」
「・・・う、うん」
「わ、分かりました。では、御言葉に甘えて・・・」

 背徳の罪を問われぬ事に歓喜した慧卓は、再び己の陰部をアリッサの太腿に当てて這わせる。視線を感じるためか先程よりもゆったりとした動きであるが、それでも淫猥な行為である事に変わりなく、アリッサは彼の先端から毀れる透明な液体を眺めていた。

(わぁ・・・本当に、何か出てる・・・)

 肌に当てられた亀頭の感触、そして塗りつけられる汁の熱っぽさ。まるで病原菌か何かのように亀頭が摩る部分から熱が伝播し、膝から腰部にかけて奇妙な事に、アリッサは火照っていくのを感じた。慧卓の行為を受け止めてしまったためか太腿に意識が集中してしまい、肢体の間にむず痒いような思いが溜まっていく。
 荒げた息を出しながら、慧卓は邪な考えを口走った。

「あ、アリッサさん・・・」
「な、なんだ・・・」
「・・・その、手でやってもらってもいいですか?」
「えっ!?」

 アリッサは半ば虚ろとなりかけた彼の瞳を見遣り、そして彼の一物を見詰める。一見華奢にも見えるが、何れは女体を突き刺す赤く膨れ上がったそれを。

(私を想って、ああなったんだよな・・・)

 アリッサはそっと上半身を起こす。肩までの茶髪は汗によって細い束となり、額や首筋にくっついていた。彼女はおずおずとした様子で手を差し伸べると、しとどに濡れてしまった彼の陰茎、その先端に指先を乗せた。

「っっっぁぁ・・・アリッサさん・・・!」

 少し泣きが入った声にアリッサは驚いて、慧卓を見返した。

「ど、どうした?」
「い、いえ・・・ちょっと、感動しただけです・・・。アリッサさんにしてもらえるなんて・・・嬉しくって」
「・・・そ、そうか・・・」

 小さく雷が鳴って部屋が照らされた。羞恥に赤らんだ彼女の表情に慧卓は見蕩れ、男根に感じる刺激に目をぴくりとさせた。繊細な女性の指先が亀頭を撫でて、丁度尿や精子が出される場所に爪が当たってしまうと、ぴくりと陰茎が跳ねてしまった。

「・・・可愛いな、こいつ」

 赤く腫れたその部分を指の腹で弄び、ほんの僅かに尿が混じった透明な精液が彼女の爪や肌に付着する。円を描くように撫でられた時が慧卓が最も感じてしまった時であり、背筋が震えてしまうほどであった。乱暴さ交じりの自慰など、最早やってられないと思うほどの快感。じっくりと丁寧に解される事により、肉槍の熱はどんどのと溜まっていく。
 つんとした臭いがアリッサの鼻を掠めた。性欲に滾る雄のものだと理解するのに幾秒も掛からず、更なる羞恥が彼女を襲った。気になる男に興奮してもらえるというのは、今この状況においては、彼女にとって胸の鼓動が早くなる材料に過ぎない。慧卓の淫らさが伝染したのか、アリッサの指は亀頭から降りていき、竿の部分を掴んでしまった。

「ぅぁ・・・」
「・・・やっぱり、硬いな・・・。なんでこうなってるんだ?」
「アリッサさん・・・」
「ん、なんだ?」

 陶然とした面持ちでアリッサは屹立した竿を指で確かめる。蓄熱した肉の柱は硬く、まるで遊び慣れぬ稚児の如く初々しく、彼女は肉竿の肌や血管に指を這わせる。だがその行為は慧卓にとって生殺しにも近かった。先までの自慰によって射精感がこみ上げていただけあって、その気持ちは非常に強いものである。だからであろう、このような言葉が出てしまうのは。

「あ、アリッサさん・・・それを掴んでくれます?」
「あ、ああ・・・もうやっているぞ」
「じゃ、じゃぁですね・・・上下に摩るように、指を動かしてくれますか?」
「っ・・・こう、か?」

 ゆっくりと、見る者を惑わす指先が上下に蠢いた。親指が裏筋を撫でるように動き、カリの下辺りで降っていく。欲情の液体に潤いを帯びた彼女の指が慧卓の男根を摩り、皮を引き摺る。赤黒き陰部の頭、その口がぴくぴくと反応する様をアリッサは惚けた様に見詰める。
 互いに寝台に座り込む格好であり、アリッサがやや前屈みとなって肉槍を見下ろしている。品の良い彼女の乳房に汗が伝い、桜の頂点が尖っているのに慧卓は気付いた。ますますに興奮が走り、快感を求めようとする。

「アリッサさん、もっと・・・強くできますっ?」
「・・・気持ち良いのだな?」
「はっ、はい・・・!アリッサさん・・・気持ち良いです」
「ふふ・・・こんな時も素直なのだな・・・」

 心を惹き付けるような、淫らさとは無縁の綺麗な微笑を浮かべ、しかしその指は肉槍の屹立の一助となっていた。徐々に慧卓の息が切羽詰っていく。慧卓が快感に震えて射精に近付いているのを、アリッサは理解した。今まで浮かべた事もないような、憂いと懸命さ相混じった顔付きで慧卓はアリッサを見返す。
 彼女は彼の窮を察すると、手付きを僅かであるがより速いものとさせた。液体がくちゅくちゅと響くのが耳を打ち、どことなしにアリッサも身体の熱を上げていく。彼女は気付いているのだろうか、己の秘所が無意識に反応してしまい、僅かに愛液を垂らして下着を穢している事を。
 
「も、もう無理・・・出るっ!」
「えっ!?」

 アリッサが驚いて目を見開くと同時に、彼女の手中にて一物が膨れ、そしてその先端から勢いよく精子を吐き出していく。熱帯びた白い滴が彼女の肢体に落ち、臍の周りに付着し、そしてシーツを汚した。
 美女を穢す法悦に慧卓は酔い痴れる。アリッサは肢体に落ちた熱い塊を指で掬った。

「・・・なんだこれは・・・。これが、精子か・・・」

 先程まで指で感じていたものよりも遥かに粘々としていて、熱く、そして青臭い。鼻元へ近づけるにつれてその青臭さはより強いものとなっていく。アリッサはその液体をまじまじと見詰めながら、口元へ運んだ。潤んだ唇が指ごと精子を加え、舌の上に流す。慧卓は呆気に呆気に取られたまま彼女の痴態を眺めていた。服が完全に乱れた美麗な女性が、男が吐き出した精液を口へ運ぶ様を。
 アリッサはまるで、葡萄酒を飲むのと同じ要領で口の中で精子を確かめてから、喉を鳴らした。そして、心燻るような声色で言う。

「・・・変な味」
「っっ!!アリッサさんっ!!!」
「っ!?」

 慧卓はアリッサの手首を掴み寝台へ押し倒す。我慢がならなかったのだ。熱に浮かされたような甘いその表情は、男として耐えられるものではなかった。
 未だ若さによって滾る陰茎をアリッサの秘所へと押し付ける。亀頭に残った精子が下着を濡らし、彼女の陰部を押しやった。びくりと震える彼女に気付かず、慧卓は下着をずらそうとする。 

「も、もう・・・俺っ!」
「ま、待って・・・お願いっ・・・それ以上しないでっ・・・!」
 
 慧卓は焦れたように顔を向けて、身体の動きを止めた。アリッサは怯え竦んだ表情をして見返していたのだ。

「・・・ケイタク殿・・・怖い・・・」
「・・・・・・すみません。本当に、ごめんなさい・・・」

 陰茎を離しながら慧卓は言う。気まずき雰囲気が漂う中、アリッサは諭すように言った。

「・・・け、ケイタク殿には、コーデリア様がいるのだろう?だから・・・王都に帰るまで操を立てた方がいいと思う・・・。私としても、あの人を裏切ってしまうだけだ。だから、やめておいた方がいい」
「・・・そう、ですよね・・・」
「で、でも・・・」

 アリッサは空いた手で慧卓の頬を撫で、一抹の期待を孕んだ目をして言う。

「此処に居る間だけでいいから・・・最後の一線を越えないなら・・・しても、いいぞ?」
「此処とは?」
「エルフ領内なら。・・・時と場所と状況を考えてくれれば、いつでも、いい」
「・・・い、一線って?」
「・・・い、言わせるのか?」
「・・・」
「・・・中に、入れないなら」

 幾秒かの沈黙。ごくりと唾を飲み込む音が、雨が打ちつけるのと被さって、やけに大きく聞こえた。やがて慧卓は一度身を離すと、静かに告げる。 

「全部、脱ぎましょうか」
「・・・うん」

 隗より始めよといわんばかりに、慧卓は汗だくとなった上着を脱ぎ捨てて全裸となる。引き締まった肉体を再度見遣りつつも、アリッサは先ず、肌蹴た上の寝巻きを脱いだ。女性の美を残しつつも鍛え抜かれた端麗な裸体が露になり、アリッサは恥ずかしげに視線を逸らす。
 そして膝まで降ろされていた下の寝巻きを取り払い、見事な美脚を披露する。後に残るは性器を隠す、下着のみ。紐に手を掛けようとするもアリッサは動かず、それを脱がす勇気が沸けずに居た。慧卓は痺れを切らし、彼女の下着の紐を指で引っ掛ける。そして勢いのままにそれを引き降ろした。

「あ・・・」

 呆然とした彼女の声が上がり、彼女は生まれたままの姿を曝け出す。冷ややかな空気が腰部を攫った。彼女の肢体は、美の女神に祝福を受けたかのような黄金の比率によって構成されていた。すらりと伸びた脚は日々の鍛錬の御蔭で引き締まり、それがゆえに一種の美を完成させている。膝の形も、足先のきめ細かさも素晴らしい。肩の大きさを気にしているのか両腕を体躯に寄せて肘を抱えているが、それは慧卓にとっては許容範囲というよりも、寧ろ直球の妖艶さであった。御淑やかな胸も合わせてみれば、尚その艶やかさが映えるというもの。
 何よりも慧卓が注目したのが彼女の腰部から、臀部にかけての媚態である。流れるような腰付きは締りがよく、臀部がより強調されるような天然の造りである。美しき腰部に精子が伝っていくのが見えて、慧卓は本能の熱が一段を高まるの感じた。そして肢体の真ん中には、髪と同色の薄い茶の茂みがあった。慧卓が彼女の脚を開かせると、愛液に突起と肌を濡らした、彼女の淡い桃色の恥部が見えた。騎士としての凛々しさとは打って変わった可憐さに見蕩れていると、彼女の足がもじもじと動いて直ぐに秘所を隠す。

「その、あまり見ないで・・・」
「なんでです?凄く綺麗なのに」
「・・・でも、コーデリア様の方が、絶対・・・」

 更に言わんとした彼女のささやかな抵抗は、再び脚を開けさせられた事により封殺された。生真面目なまでに凛然と肢体を見詰められて、アリッサは火を噴くような思いで顔を背けた。沈黙した口元が横一文字に引き締められているが、それが彼女なりの恥じらい方であると直ぐに悟る。

「・・・」
「・・・綺麗です。自信を持った方がいいですって」
「・・・そう、なのか?」
「ええ。本当に、凄く綺麗だ・・・」

 慧卓の手がアリッサの脚部を撫でる。絹の如き柔らかさを持った肌は、指のなぞりに直ぐ反応して歪む。指が段々と上へ駆け上り、茶に染まった薄い花園を撫でる。そしてその茂みが隠す肉ヒダをなぞる。
 アリッサは身体を小さく震わせて言う。

「あっ・・・やだ、汚い・・・」

 か細い声にそそられたのか、慧卓の指は陰部を丁寧になぞっていく。女体があるべき膣とは元来そうなのであろう、純真さが窺える淡い桃色の小陰唇とふっくらとした大陰唇。愛液に滲む口元には指を入れず、先ずはその部分を慧卓はなぞってみた。アリッサは敏感に腰に震えを来し、指先がクリトリスに触れた時には明らかな悦びの息を漏らした。

「んあ・・・やぁっ・・・あん・・・」

 今まで聞いた事が無いようなか弱く可憐な息であり、欲を誘う色気が篭っていた。慧卓は左手で彼女の腿を押さえながら、優しく初々しき場所を弄っていく。淫核が自らの亀頭と同じく敏感なものであると直感で分かっているのか、それを隠す包皮をめくると、淫核を中心に指を這わせる。分泌された液を交えた愛撫はどこまでも丁寧であり、ゆっくりと彼女に快楽を与えていた。
 段々と息が荒くなるアリッサ。瞳には涙を浮かべて、普段の凛々しさを赤らんだ頬の中に潜ませていた。生まれて初めて感じる、他人による手淫によって、少しずつ理性が桃色に染まってきているようだ。ならばと慧卓は上体を垂れて、彼女の恥部に頭を埋めようとする。何をするか瞬間的に悟った彼女は顔を可憐に歪ませて、慧卓の頭を離そうとした。

「やだぁっ、駄目っ・・・」
「何が駄目なんです?」
「だからぁっ・・・舐めるの、や・・・ああっ!んああっ!」

 抵抗虚しく、舌が剥かれた突起を舐めた。昂ぶった声は豪雨の響きの前に掻き消される。目端から滴を零す彼女は視線を下げて、女陰を舌でもってまさぐる慧卓を見ようとし、そして再び身体を走る刺激に喘ぎを漏らした。

「だめ、だめ・・・ああっ、いやだぁ・・・っ!!」

 何事につけても、初めての体験は敏感に反応してしまう。陰唇を突かれて、淫核を擦られる。あまつさえ誰にも、恥垢と取る時を除いて自分以外に誰にも許した事が無い絶対の領域に、慧卓は舌を突き刺して蠢かす。無言のままに只管犬のように舐める。隠しようの無い淫猥な息がアリッサの肌を震わせ、性行為というものを実感させる。男と女が如何にして愛し合い、交わるのか。本の知識ではなく、身体による経験によって彼女は急速に実感させられていた。
 喘ぎを何度も零すうちに彼女の胸の奥から、ばくばくとした律動のようなものが込み上げてきた。心臓の音とは違った、霞がかった動きである。それは肌の奮えと調律するように身体を支配していき、アリッサは崖から突き落とされるかのような浮遊感の中に、陰部から駆け巡る悦楽を感じ取った。

「きちゃうっ、無理ぃっ!ああっ!何か、来ちゃうっ!!だめっ、ああっ、あああっ!!!」

 声が一気に上擦るのと同時に身体がぴんと硬直し、痙攣するように震えを来す。愛液が零れ落ちて、彼の舌に塩っけのある不思議な味わいを齎した。だらしなく開けられたアリッサの口元から漏れる息は、色付くものだとしら桃色に染まっている事だろう。惚けたような翠の瞳は天上を見詰めており、身体に汗の滴を浮かせていた。
 一分か、或いは二分かで彼女は息を整えて慧卓を見返す。それを待っていたかのように慧卓はアリッサに覆い被さり、一物を彼女の下の口に合わせた。

「お、おい・・・」
「・・・入れはしませんけど、擦るのなら・・・」
「・・・う、うん。絶対に、入れないでくれよ?」

 念を押すように告げると、慧卓は小さく頷く。アリッサの顔を挟むように腕を置き、体制を安定させる。そして膣口にグロテスクな赤黒い亀頭を当てると、言葉通りに中には入れず、しかしぐりっと女芯を擦るように肌を掠めた。精子とはまた違った熱さを、そしてきかん棒の硬さを感じてアリッサは、ほぉっと息を零す。

「っっ・・・あぁぁ・・・熱いぃ・・・」

 薄暗き室内に零された彼女の息が、間近にある慧卓の唇に掛かる。陶然として瞑られている彼女の瞳が愛しくなり、慧卓はそっと唇を目端に落として涙を吸う。アリッサが薄く瞳を開いて見遣ってくると、その恍惚としたいじらしさに、慧卓は無性にキスを落としたくなる願望に取り付かれた。目端、頬骨と接吻を落とすが、唇に視線を向けた際にはアリッサが顔を俄かに背けてしまった。

「・・・だめ、ですか?」
「・・・・・・・・・ん」

 懇願するような声に抗しきれず、アリッサは顔を元に戻す。瞼は閉ざされず、確りと慧卓を見詰めていた。翠の眼が聖水の如き清らかな湿りを帯びているのを見詰めていると、慧卓は心が囚われたような感覚に陥る。脳裏に想い人を想起してしまうが、禁忌を犯す魅惑の前には思考の波へと消え去っていく。

「・・・ん」

 二つの影が自然と重なった。緩い風に煽られて雨が窓を打ち付けなくなった。遥か遠くの大地に落ちた稲光によって、二人の唇が交わっているのが淡く照らされた。複雑な思いを抱えたままの瞳はぶれず、相手を見詰める。軽く柔らか味を感じる程度のものであり、時が止まったかのような感覚に陥る。
 一度、互いを啄ばんでから、唇がついと離れていく。

「・・・しちゃいましたね」
「・・・ええ」
「・・・」
「んむ・・・あむっ・・・」

 再び唇が落とされる。今度は啄ばむようなものであり、表面的にはより大きな愛情を感じさせた。だがそれは明らかに慧卓にとっては、コーデリアに対する裏切りの行為でもあった。だが親愛を感じるアリッサに対する行為でもあり、それは罪悪感を凌駕して、背徳的な興奮を齎す。
 慧卓は腰をゆっくりと揺すって、陰部同士を擦り合わせる。丁度胸元に彼女の乳首が擦れており、僅かながらも興奮の触発に役立ってくれる。体重は余り掛けられていないためアリッサは特段の負担を感じる事無く、恥部から走る性の波に身を委ねていく。

「いっっっ、はぁっ・・・す、すごい・・・」
「っぁ・・・な、何が、ですか?」
「これ・・・さっきのとはぁ・・・んああっ、比べ物にぃ・・・んむっ、ちゅるっ、んんっ!」

 彼女の手が慧卓の肩と後頭部に回され、接吻が一気に深くなってしまう。唇越しに歯が当たったりはせず、自然な成行きで舌が絡みだしたのだ。一度濡れてしまっては二度、三度と濡れてしまうのも気にならなくなってしまうのだろうか。二人しておずおずと舌先を伸ばしあい、唾液の交わいをさせる。腰の躍動と連動するかのように口吻は段々と遠慮を失っていく。驚いた事にキスに対する積極さは、アリッサの方が上であった。啄ばむような交わりが深くなるにつれて淫らな水音が奏でられるが、それが興奮材料となってか彼女は更に接吻をせがむ。
 倒錯するような色めいた感情のまま二人は瞳を閉じて、額と髪を擦り合わせるくらいに顔を近づけていた。ふと目を開けてしまえば、淫欲を感じて潤んだ相手の瞳が視界の中心を埋めてしまう。

「アリッサさんっ、キス、好きなんですか?」
「うんっ・・・じゅるっ、ちゅっっ!好きぃっ、これ好きぃっ・・・!」
「そっかっ・・・なら、もっとしないと」

 慧卓は彼女の口を塞いで舌を突き入れる。歯茎の裏まで陵辱するかのような舌の動きは、初心者らしく性急であったために唇を傷つけてしまうような乱暴さが滲んでいた。だがアリッサはそれを歓迎するように夢中で舌を合わせようと努力し、口を伝って溢れる唾液を無意識に飲み込んでいた。口端から涎の滴が毀れているが、二人は夢中となって口づけを交わすために、それに気付けないで居た。  
 その間にも寝台は軽く音を立てて揺れている。硬くなった陰茎が女性の秘所に擦られて、慧卓に手淫並みの悦楽を与える。そう、手淫並みである。慧卓にとって困った事に、アリッサがキスに熱中する余り身体を固定しようと手を回してくるため、腰の動きが制限されてしまうのだ。本来なら腰を上下に摩ってしまいたいのだが、そうしてしまえばほんのちょっとした誤りで、肉槍が膣口に侵入するやもしれないし、そうなった場合、膣内射精という名の暴発が起こらないとも限らなかった。
 名残惜しさを感じつつ、慧卓は唾液塗れの口元を離し、残念げに眉を垂れさせたアリッサを見下ろした。

「っ・・・アリッサさん、俺の上に乗ってくれます?」
「ん・・・んあっ・・・上だな、分かった」

 一度身体を離して、慧卓は寝台に仰向けに寝転がる。アリッサが息を乱しながら彼の上へと這い上がり、慎重に秘所を陰茎の上へと乗っける。柔らかい肉ヒダが陰茎によって歪み、彼女の性感帯が興奮するかのように愛液をそれに塗りつけた。
 アリッサは慧卓の胸に手を置き、おずおずとした様子で腰を振る。小さく身動ぎするだけで火照った部分に淫らな気が沸き起こり、それが快楽となってアリッサは小さく悲鳴を漏らす。

「ふあ・・・これ、さっきよりいいかも・・・」
「そう?どんな感じに?」
「んんっ・・・自由に、動けてぇ・・・」

 そう言って彼女は再び嬌声を漏らす。突起が潰されるのが気に入ったのか腰を揺り動かして、肉槍の先端部分でクリトリスに当てるようにする。赤黒い亀頭が、一手間違えれば膣内へと入ってしまうと思うくらい、危うげに女体に乗り潰されていた。
 アリッサは上気した息を漏らしながら、慧卓の方へとしな垂れる。先程と上下逆転した立場であり、彼の顔を挟むように手を突いていた。慧卓の眼前に流麗に垂れる小ぶりな胸が現れた。女性らしい円やかな弾力を持つそれを、慧卓は顔を寄せて舌を這わせ、唇で吸っていく。 

「やぁ・・・胸、そんなに吸っちゃぁっ・・・!」

 抵抗交じりの可憐な声とは反対に、彼女はもっとしてといわんばかりに胸を押し付けていく。鼻面から顎にかけて女体の神秘ともいうべき所が覆い被さり、腰の躍動も伴ってより一層の快感を与える。肉ヒダと同じような、純真な桜色をした乳首を慧卓は甘噛みし、大胆に吸う。アリッサの身体全体が急速に男というものを知っていき、淫靡な汗を肌に浮かべていく。

「ケイタクっ・・・ケイタクぅっ・・・!!」

 敬称を付ける余裕など消え失せた。アリッサは両胸を弄る慧卓に向かって、自分の顔を寄せた。淫靡に火照る彼女の顔は、恋に浮かされる少女の如き淡い表情を浮かべている。揺れ動く快感の波に耐え、絶頂へと導かれて理性に霞がかかる。喘ぎ声と汗に混じり、彼女の唇から突飛に、思いもよらぬ言葉が走った。

「ケイタクっ・・・す、きぃっ・・・!」
「!!!!!・・・アリッサっ!!」

 それが本音であるかどうかなど、些末な問題であった。歓喜にも、感動にも似た思いを抱いて慧卓はアリッサは強く抱き締めようとし、アリッサは己の腰を強かにグラインドさせようとする。二人の肉体が一気に距離を縮めて、その秘所は互いの淫らな口に自らの口を合わせてしまう。しかし腰の動きはそれだけで殺しきれる程の弱い勢いではなかった。

「あっ・・・」

 呆気に取られたような息を吐くアリッサ。禁忌であると諭しておいたに関わらず、慧卓の滾る肉槍の先端が、肉壷へと鎌首を突っ込んだのである。そして残余の勢いによって、肉槍は一気に奥深くまで突き刺された。アリッサの両眼が見開かれ、涙と、秘匿の出来ぬ心よりの悦楽の声を漏らした。

「あああああああっっっ!!!!」

 獣と聞き紛うかと思う嬌声と共に、慧卓の陰茎が、その穴が雌の欲望に満ち満ちた場所だと悟った。性なる絶頂へと導かれた彼女の淫らな肉が痙攣するかのように陰茎を締め付けて、慧卓は抗する声も出せず、暴発してしまった。生物の本能を無条件で充足させる、どろどろとした白い雄の欲望が、膣内を無遠慮に侵略した。互いを抱き締め合っていた二人の膂力は陰部にまで及び、受精しようと、受精させようと本能的に腰を震わせていた。亀頭の先から迸る白い液体が肉ヒダの洞窟を駆け抜け、母体の中心へと導かれる。熱い一滴が子宮の口を叩いた時、アリッサは涎を零して快感に震えた。
 幾度も慧卓の腰が痙攣し、その度に尿道を通って精子が放出される。年齢とは裏腹に子供のままでいたアリッサの性器に、大人であるから理解出来る至高の法悦が与えられた。剣を振るい、敬愛する王女より賞賛を頂いた以上の喜びであり、漸く射精の治まった慧卓の男根を慈しむように締め付けていた。慧卓は涙で瞳を潤ませる。女どころか慰めすら我慢していた童貞にとって、余りに急激過ぎる快楽によって陰茎は早漏気味となってしまい、また三度の射精程度では治まらないのも事実であった。

「あ、アリッサさんっ・・・俺っ!!」
「も、もうやだぁっ・・・だめぇっ、これっ・・・気持ちいいよぉっ・・・」
「出しますね・・・まだっ、出しますよっ!!」

 言うや否や慧卓はアリッサの臀部を掴み、彼女の腰を無理矢理に上下に振らせた。絶頂の熱が冷め遣らぬ彼女の性感帯は、再び小波となって到来する性の刺激に耐え切れず、びくびくと肌を震わせてしまう。透明な愛液と白い精液が膣内で混ぜ返させられ、雄の性急なる猛攻に晒されて激しい音を響かせていた。肉質的な肌が打ち合う音、体液が弾ける音。聴覚までもが淫らに狂うかのようであり、陰茎の抜き差しは衰えを知らず乱暴に行われていた。
 想像だにつかぬ快感が走る。アリッサの脳はまるで溶解するかのように桃色に染まっており、美しき容貌と体躯から汗を噴出させていた。慧卓はアリッサを掴んだまま横倒しとなる。寝台の阻みが消えて、二人は今度こそひしと抱き合う事が出来た。髪をひらひらと踊らせ、慧卓の肩に口元を這わせて絶叫する。

「いいいぃぃっ!あっ・・・あんっ、ああっ、あああっ!!気持ちいぃっ、いぐっ、いっちゃっ・・・あああああ!!」
「アリッサっ・・・アリッサっ・・・!!」

 慧卓は夢中となって腰を振りたくり、アリッサの臀部を乱暴に揺する。陰部と陰部が激しく接吻を交し合い、シーツを体液で酷く濡らしていく。慧卓は堪えきれぬとばかりに呻きを漏らして動きを止めると、再び射精の快楽に身を浸した。先よりかは薄めであろうが勢いは同等であるそれを、アリッサは恍惚の表情をしながら甘受する。紅が頬に差して、その上を涙が伝う。喜びによって漏れたものか無意識のそれかは知らなかったが、兎も角として、アリッサは子宮の奥まで滲んできた精子の熱と量によって蹂躙されたのであった。
 未だ強いままの風雨が窓を叩く。ごろごろと鳴った稲光に照らされて、室内の二人が艶やかに口付けを交わすのが見えた。

「んんっ・・・んあっ・・・んむっ、ちゅる・・・」

 すべすべとして引き締まった女性の背中に手を回して、慧卓はアリッサと舌を絡める。陶然として薄目で相手を見遣りながら、力無く接吻を交わすのだ。幾度となく接吻をした後、萎えた陰茎を膣内から引き摺り出す。様々な体液に濡れたそれが引き抜かれると、白い液体がどろどろとしながら溢れてシーツに零れ落ちた。
 身体を包む満足感と、倦怠感に身を委ねながらアリッサは呟いた。

「出しちゃったな・・・膣内に」
「・・・はい」
「・・・子供、出来ちゃうかな」
「・・・分からないです」
「そう、だよな・・・。ごめん、ケイタク。コーデリア様を裏切るような事を無理強いさせて」
「・・・俺も同罪です。最後は自分から、腰を振ってましたから」
「・・・ケイタク、仕方ない事だったんだ。事の原因は私にあるんだ。だって最初から、私が誘ったようなものだからな」
「最初から?」
「・・・ケイタクが戻る前に・・・自慰をしてたんだ。厠での声を聞いちゃって・・・我慢できなくなって」
「じ、じゃぁ、厠で聞いた足音って・・・貴女の?」
「・・・うん」

 汗ばんだ彼の顔が再び呆気に取られたように固まる。アリッサは気恥ずかしげに眉を顰めた。

「・・・ケイタク。幻滅したか?私がこんなに、いやらしい女だと知って」
「い、いいえ。寧ろ、その、意外な一面も見れた感じがして嬉しいような・・・」
「はっきり言えっ!恥ずかしいだろ・・・」
「嬉しいですよっ。アリッサさんの別の表情も見れて。・・・ほんとっ、我慢できなかったんです」
「・・・そっか・・・。ケイタク」
「はい?」
「・・・キスをする時のケイタクの瞳、好きだぞ」
「・・・」
「また、キスをしてくれるよな?二人っきりの時だけに」

 慧卓は何も言わず、彼女の唇をそっと奪った。安堵のような微笑を浮かべてアリッサは口付けの甘さを堪能する。唇を離すとアリッサは声を出して小さく笑い、慧卓の頭を引き寄せて額を合わせる。愛しそうに彼の髪を撫でながら、彼女はゆっくりと眠りへと就こうとする。
 幾分も経たぬ内に健やかな寝息を立て始めた彼女を見詰めながら、慧卓は後ろめたい気持ちをコーデリアに抱く。愛を誓っておきながら、半年も経たぬ内に不貞を働いてしまった。自らの思いはこの程度のものだったかという気持ちが、アリッサのあの媚態を前にしては仕方無かったという邪な気持ちと、あろう事か拮抗してしまう。決断を貫き通せぬ未熟さを痛感しながら、慧卓は現実から逃れるために、夢の世界へ逃げようとしていく。
 雨は未だ強いままであり、もしかするとこれは唯の通り雨ではないかもしれない。館が雨漏りするほど古びたものでないようにと祈りつつ、慧卓は夢路へと導かれていった。
 
 
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