IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第263話】
五限目には間に合わず、俺と一夏は六限目からの参加となったのだが……。
よくよく考えたら、よく五限目内で終われたなと思う。
……もしかすると、知らず知らずの内にISの恩恵を受けているのかもしれない。
主に身体能力向上辺りで。
この辺りは専門ではないし、考えても頭が痛いので時間がある時に教師陣か母さんに聞いてみようと思う。
それはそうと、汗をかきすぎて若干体育会系になったかもと思ったりするのだが……汗臭く無いだろうか。
「……美冬、今の俺、汗臭く無いか?」
「へ……? ……ううん、特に汗臭く無いよ?」
隣にいた美冬に聞くと、顔を近付けて臭いのチェックするのだが……妹とはいえ、そんな事をさせた俺の浅はかさを思わず呪う。
だが、美冬自身は全く気にする様子も無く、嫌な顔すらせずにチェックしてくれた。
「……悪いな美冬。 兄とはいえ嫌な事させて」
「……? お、お兄ちゃんだから気にしないよ? ……そ、それに……嫌いじゃないから、お兄ちゃんの事……」
若干視線を逸らし、頬を紅潮させる美冬。
優しく頭を撫でると、そろそろ六限目が始まるので整列した。
一夏は、走った疲れからか休み時間をぐてーっと横になって休んでいたのだが、その間に篠ノ之から鍛え方が足りないぞ等と小言を言われてたな。
セシリア達とは休み時間の最初の方で話しはしたが、身体を休ませないとという全員一致の見解で美冬が俺の傍にいて水分補給等のサポートを行ってくれた。
六限目の内容は、午前と同じ専用機持ちとの模擬実戦らしいのだが――と、織斑先生と山田先生がやって来たので、雑談に花を咲かせていた女子一同は口を閉じ、整列した。
――まあ、グラウンド一周したくないって事だろう。
「全員揃っているか? ……山田先生、一応点呼をお願いします」
「わかりました。 では――」
織斑先生の指示で、山田先生は二クラス分の先生の点呼を行う。
居ないと、さっきの俺や一夏みたいに走らされる可能性もあるため、大体は休み時間終わる前にはグラウンドに集合している。
「――織斑先生。 点呼終わりました。 全員居ます」
「ふむ。 ――ではこれより、六限目の授業を始める。 内容は五限目に言った通り、午前に引き続いて専用機持ち達の模擬実戦を諸君に見てもらいたい」
見ることによって得られる事もあるからだろう。
本当なら、各人事にIS使用してのペアになって模擬戦を行いたいだろうが、生憎とIS学園にある機体が三〇機程の為、数が全く足りないし、上級生もアリーナ等でIS授業を行ってる為、最大で借りれても一学年八機。
残った機体は、放課後の特訓用や、緊急時に教師が素早く乗れる様にしなければいけない。
……絶対数が少ないのがISの欠点だよな。
……まあ、それに限らず、ISには様々な弱点も露呈してるが。
主にエネルギー問題とか、エネルギー切れたら終わりだからな。
――と、そんな考察を他所に、織斑先生が模擬実戦を行う二人を指名した。
「織斑、オルコット。 午後はまずお前達二人の模擬実戦だ。 前へ出ろ」
「わかりました」
「了解です。 ……いよいよですわね」
セシリアにとっては二学期初の模擬実戦。
相手は一夏だが、雪羅でエネルギー兵器を無効化する為、セシリアにとっての相性は最悪と言えるだろう。
前へ出た二人は、その身にISを纏い、ほぼ同時に空に躍り出る。
その間、また埋設されたバリアー発生器を起動させ、生徒の身の安全を確保すると空中投影ディスプレイに二人の姿が映し出された。
一夏は雪片を構え、セシリアはスターライトmkⅢを両手で構えていた。
今更ながら、セシリアの武器は基本アリーナ戦に不向きの武装だ。
二メートルもの長大なライフルは取り回しが難しく、セシリア自身ビットの操作を行う時は足を止めないといけない。
セシリア自身、勿論この欠点を理解しているのだが流石に動きながらのビットへ命令を送ると、動きが単調になってしまう。
それでも、創意工夫しながら色々考えてる辺りは、セシリアも努力の人だろう。
――と、シグナル一つ目が点灯すると、背後にいた鈴音から声をかけられる。
「……ヒルト。 あんたはどっちが勝つと思う?」
「……実力的に言えばセシリアだが、いかんせん一夏の新しい能力相手には分が悪いだろうな。 ……せめて、セシリアが接近戦ある程度こなせるのなら解らないが……」
「……そっか。 ……セシリア、プライド高いからね。 負けたらどうなるか……」
そんな鈴音の言葉と共に、シグナル二つ目が点灯。
少し空気がピリピリと張り詰めるのを感じつつ、セシリアの様子を見ると珍しく表情が強張っていた。
「……シャル。 もしセシリアが負けたら今日は俺の訓練見なくて良いから皆を連れて甘いものでも食べてこい」
「……うん。 ……ヒルトって、セシリアの事良く見てるね? ……セシリアが優位なのかな……」
「……馬鹿言うな。 今はそんなこと関係無いだろ? 仮にセシリアが負けたとしたら男の俺がどうこう言うよりは、女の子同士の方が気が楽だろ?」
「ご、ごめん。 ……うん、わかったよ。 もしセシリアが負けたら、皆と甘いもの食べてくるね? ……ごめんね、ヒルト?」
申し訳なさそうに謝るシャルに、俺は――。
「いや、俺も口が悪かったからな。 ……恋愛感情とは関係無く、今回は仲間としての気遣いだ。 ……まだ、俺は答えを出せないからな」
そう静かに呟くと同時に、シグナル三つ目が点灯――一夏対セシリアの模擬実戦が開始した……。
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