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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第258話】

 何とか皆を宥めて(俺のせいだけど)再度食事を進める俺達。


「……シャルロット、食べるか?」

「あっ、そういえばさっきお願いしてたね。 本当にいいの、ラウラ?」


 申し訳なさそうに言うシャル。

 ラウラのシュニッツェルの量が少ない為、申し訳なく思ったのだろう。

 だが、ラウラはそんな事も気にせずに――。


「構わないぞ。 私とシャルロットの仲ではないか。 遠慮するな」

「ラウラ……。 えへへ、ありがとう♪ 一度ドイツのシュニッツェル、食べてみたかったんだ♪」


 満面の笑顔で応えるシャルに、満足そうに頷くラウラ。

 切り分けたシュニッツェル一口分をシャルは口に入れて頬張ると、頬に手を当てて――。


「ん~! 美味しいね、シュニッツェル♪ ……ドイツのお肉料理って、どれも美味しくていいよね♪」


 幸せそうな表情のまま、味わうように噛み締めるシャル。


「ま、まあな。 他にもじゃがいも料理もおすすめだぞ、シャルロット」

「へぇー。 なら今度頼んでみようかな♪」


 自国の事を褒められた嬉しさからか、表情が緩み、頬に少し赤みが差すラウラ。

 二人の料理談義を聞きつつ、豚骨ラーメンを完食すると炒飯に手をつける俺。

 そんな俺を他所に、女子一同は料理談義に花が咲き始める。



「あー、ドイツって何気に美味しいお菓子多いわよね? バウムクーヘンとかさ。 中国にはあんまりそういったお菓子がないから羨ましいって言えば羨ましいかも」


 早速話にのったのは鈴音で、中国に美味しいお菓子がない事を嘆いている。

 ……中国って言えば、料理かチャイナドレスしか良いところ無いがな、俺には。

 そういえば……誕生日にあれだけムーブメントって言ったから誰か一人ぐらいはチャイナドレス購入してないかな。

 そんな淡い期待を抱きつつ、山盛り炒飯をがつがつと食べていく。


「ふむ、ならば今度部隊の者に言ってフランクフルタークランツを送ってもらうとしよう」


 聞き慣れない食べ物に、目を白黒させてる俺に美冬が――。


「フランクフルタークランツはね、確か胡桃を混ぜたカラメルで覆われたバターケーキなんだよ。 形も独特で、リング状の王冠って感じかな?」

「ふぅん……。 ……甘そうだが胸焼けしそうだな」


 ポテトサラダに箸をつけ、がつがつと胃袋に納めていく俺を美冬は笑顔で見ながら水を一口飲んでいた。


「ドイツのお菓子だと……わたくしはあれが好きですわね、ベルリーナー・プファンクーヘン」


 次に参戦したのはセシリアで、また謎の単語が出てきて疑問符を浮かべていたらシャルがきょとんとしながら聞き返し始める。


「えっ。 ベルリーナー・プファンクーヘンって、ジャム入りの揚げパンだよね? しかもバニラの衣が乗ってるからカロリー凄いと思うけど……セシリアはあれが好きなの?」


 聞くだけで胸焼けを起こしそうな内容のパンだな……。

 やっぱり俺は、お菓子というかスイーツはイチゴパフェとかそんなのでいいや。

 勝手にそう結論つけてると、セシリアは真剣な表情で――。


「わ、わたくしはちゃんとカロリー計算をしますので大丈夫なのですわ! ……そう、ベルリーナーを食べる時はその日その他に何も口にしない覚悟で……」


 ……余程高カロリーなのだろうか?

 成人男性の一日の平均が確か二千カロリーで、女性は千六百ぐらい……だったかな?

 カツカレー等は凡そ八〇〇カロリー程だが、それを上回るのだろうか……。

 ……まあ、俺は一日のカロリーはもう凄い量だから卒倒するだろうが、実際それぐらい動き回ってるし、食べても太らないから気にしてないが。

 ……と、ここで篠ノ之が。


「ジャム入り揚げパンか、確かにうまそうだ」


 静かに呟く様に言っていたが、何気に【うまそうだ】だというのは男みたいな言い方だなと思う。

 ――指摘すれば一悶着あるのは明白なので、何も言わない。

 食事の時まで言い合いたいとは思わないから――。

 ……しかし、前に篠ノ之は俺を【他の男と同じ】と言ってたが……何か余程の事をされたのだろうか?

 ……まあ考えても埒はあかない上に、篠ノ之に聞いても貴様には関係ないって言われるだろうからどうしようもないが。


「セシリア、揚げパンが好きなら今度ゴマ団子を作ってあげよっか?」


 そう身を乗りだし、セシリアに向かって満面の笑顔で言う鈴音。

 既にある程度食べ終えたからか食べた料理の皿を重ねて纏めていた。


「え? 鈴さん、それはどういったものですの?」


 ゴマ団子というセシリアにとっては聞き慣れないお菓子を、素直に聞き返す辺りは興味を持ったのだろうか?


「ふふん。 中国のお菓子よ? あんこを餅でくるんでからゴマでコーティング。 その後に、揚げるって訳ね」


 腰に手を当て、右手人差し指を立てながら説明する鈴音はセシリアが興味を持ってくれたのが嬉しいのだろうか、表情が緩んでいた。


「お、美味しそうですわね! ああ、でも……カロリーが……」


 最初は頬に手を当て、味を想像するセシリアだがカロリーの事が頭に過ったのか、テーブルに突っ伏しそうになっていた。


「ま、食べたくなったら言ってよ」


 にっこり笑顔で八重歯を見せる鈴音に、顔を上げて見上げるセシリアは――。


「鈴さん……思っていたより好い人ですわね……」


 改めて感心したのか、胸の前で両手を重ね、キラキラした眼差しで見つめるセシリア。


「ふふん、それほどでも……って、思っていたよりって何よ! 思っていたよりって!」


 最初は好い人って言われて喜んだものの、【思っていたより】というのに引っ掛かり、少し怒った素振りを見せる鈴音。

 そんな微笑ましい光景の中、シュニッツェルを食べ終えたラウラが――。


「私は日本の菓子が好きだな。 あれこそ風流というのだろう?」


 前に聞いたが、ラウラは皆と一緒に行った抹茶カフェで食べた水菓子が気に入ったとかで、よく一人、またはセシリアや鈴音、シャルや美冬、未来を誘って食べに行ってるとか嬉しそうに語っていたな。

 それと、それをドイツの仲間に言ったら羨ましがられたらしく、同時に生八つ橋を送ってほしいと要求されて早速注文してみたとか。

 ……昔はわだかまりがあったって言ってたが、今ではそんな事は水に流したのか、気にせずに色々相談をしてる辺りはラウラは大きく変わっただろう。

 ――俺のお陰だってラウラは言ったが……『変わったのはラウラ自身だ、俺はちょっとしたきっかけを与えただけ』……そう俺が返したのは記憶に新しい。

 ……少しくさい台詞だなと、今更ながら思う。

 鈴音の奢りのトルファン風若鶏の唐揚げを箸で掴み、食べていくと水菓子に反応した篠ノ之が――。


「春は砂糖菓子、夏は水菓子とくれば秋は饅頭だな」


 静かにいい放つと、ウンウンと頷く篠ノ之――それを見たラウラは、残りの冬が気になったらしく。


「ふむ。 ならば冬は何がオススメなのだ、篠ノ之?」

「ふっ……。 無論煎餅だ」


 炬燵に入りながらの煎餅って訳ね。

 まあ俺は蜜柑の方が好きだが……お菓子じゃないが。

 ――と、それまでのお菓子談義が中断する一夏の悩みが一夏自身の口で唐突に――。


「はぁ……。 それにしても何でパワーアップしたのに今日の美冬との模擬戦で負けるんだ……」


 そんなため息と共に吐かれた言葉――。

 まあ言わずもがな、原因は明白なのだがな、これが。 
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