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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第483話】

 
前書き
前半の少しは原作、そしてイルミナーティと続いてヒルトの戦いの流れ 

 
 第三アリーナフィールドの、俺達が居る反対側のゲートから爆発が見えた。


「おねえ、ちゃん……?」


 何かを感じ取ったのか簪がそう呟く、だが向こう側に居るのは篠ノ之の筈だ――そう思っていると、俺達三人の間を熱線が駆け抜けていった。

 その熱さに思わず顔を庇う俺達、そして零落白夜で切り裂いた穴からは先程の襲撃者が飛び出してきた。


「ちっ、シールドが閉じる前に出てきたか……。 一夏、悪いが向こう側の爆発、調べて来てくれないか? 此方は俺と簪が抑える」

「あぁ! ……ヒルト、簪、無理するなよ!!」


 言ってから一夏は離脱、反対側のゲートの確認の為中へと入っていった。

 その直後、空中から飛来してきた複数の物体がアリーナシールドを貫通、激しい地響きと砂煙を巻き上げて地表へと降り立った。


「ひ、ヒルトくん……あれ……!?」

「くっ……増援か……!」


 立ち込める砂煙の向こう側、紅蓮の様に燃え上がる紅い機体が立っていた。

 その両隣には、襲撃者と同型のIS二機が随伴していた。

 機体が落下する少し前、高度二万メートル地点では続々と飛来してくる増援を片付けるため、カーマインとイルミナーティのボス二人で善戦していた。

 既に何十機も破壊している二人、カーマインは明らかにコア数が合わないと感じていたがそれを口にする余裕は無く、連戦もあってかエネルギーが枯渇する直前にまで迫っていた。


「カーマイン、大丈夫か?」

「あぎゃ……まだ俺様は戦えるぜ、ボス……!」


 ハイパーセンサーに映し出される新たな複数の機影、強がりでも何でもなくカーマイン自身はまだ戦えた。

 だがそれでも、エネルギー問題だけはどうにもならない。


「成る程。 だがエネルギーは枯渇しそうだな」

「あぎゃぎゃ、それはボスだって同じだろ?」


 カーマインの問いに、首を横に振る仮面の男、その間も襲い掛かる無人機を手に持つ白亜の光刃を帯びた大剣で破壊、回収できるコアは全て回収していた。


「あいにくと、俺の機体は特別製――というよりかは、俺の《単一仕様》が特別でな、これが」

「あぎゃ……?」


 特別製という言葉に、カーマインは疑問を感じた――基本的に単一仕様は全てが特別で、同じ能力を発現出来るかはわからない代物だ。


「……まあ見ていろ、俺と【トゥルース】の単一仕様をな、これが!!」


 叫ぶ仮面の男――漆黒の機体の各種装甲が開き始める――まるで展開装甲の様に。

 そして、光刃を帯びた大剣はその光刃が収束、元の片刃の大剣へと姿が戻っていた。


「【絢爛舞踏】、発動!!」

「……あぎゃ!?」


 仮面の男が叫ぶ単一仕様の名――それは紅椿の単一仕様であり、それを他の者が発現するのは不可能というのが世界各国の総意だった。

 だからこそ、各国が篠ノ之箒――否、紅椿を欲して彼女にアプローチを心掛けているのだ。

 カーマインは今起きてる事に目を疑う、接触せずに自身の機体【ユーバーファレン・フリューゲル】のエネルギーが一気に回復していくからだ。


「これでまだ戦えるだろう、カーマイン?」

「あ、あぁ……あぎゃぎゃ」


 仮面の男は笑うと、再度交戦を開始した、発動した絢爛舞踏の効果がまだ続いてるのか、まるで夜空を駆ける白銀の流星の様に駆け抜け、次々とやって来る無人機を撃墜していく。

 そんな矢先、新たな機影三機が此方を無視してIS学園へとまるで激突する勢いで降下していくのだった。

 様々な事が起こりすぎて、その追撃すら間に合わなかったカーマイン――仮面の男は無人機を撃破しながらも小さく呟いた。


「……篠ノ之束、そこまでして有坂ヒルトを殺したいのか……。 自身にとって、イレギュラーになる存在を……。 ……だが、そうは簡単に事が進むわけないさ、これがな……」


 仮面の奥の真っ赤な瞳が、眼下にあるIS学園へと降下していく機体を見つめていた。


「……そして、お前にとってのイレギュラーはもう一人居る……この俺、――――――――がなッ!!」


 場所は戻り第三アリーナ。

 新たな増援の登場に、一夏を向こう側の状況把握の為に行かせたのは失敗だった。

 新たに増えた三機に、出てきた一機を合わせて合計四機の襲撃者――しかもその内一機は明らかに違い、両腕には巨大な可変ブレードを、背部には巨大なブースターを背負っている一点突破型の機体に見えた。

 しかも、新たに現れた三機は真っ先に俺を捕捉してくる。


「……簪、悪いがそっちの一機、任せてもいいか? ……どうやら、あの三機は俺を先ず倒したいように見える」

「ヒルト、くん……」


 不安を感じたのか、簪の表情に陰りが見える、そんな簪に俺は笑顔を作ると。


「そんな顔するな、簪。 そっち、手伝ってやれないけど……皆で造り上げた打鉄・弐式の力、信じていこうぜ?」

「……うん。 ……ヒルト、くん……直ぐ、駆け付けるから!」


 力強い言葉を俺に掛け、簪は襲撃者と交戦に入った。


「……さて、三対一か……」

『――――――』


 物言わぬ襲撃者――紅い機体が正面に手を翳すと、随伴している二機が飛び出す様に左右から襲い掛かる。


 巨大なブレードによる交差攻撃、それを後方にステップして避けてから間合いを詰めつつ、展開した北落師門による回転連撃を叩き込む。

 硬い装甲に阻まれる刃、それでも切りつけ、そのまま二機の合間を抜け出て、瞬時加速で紅い機体へと肉薄した。

 その直後、紅い機体からミスト状に噴出された水を機体全身を濡らす。

 一体何だ――そんな考えが過るも、俺は横に一閃――しかし、左腕の可変ブレードから三枚刃が展開され、俺の一撃を絡めとるように受け止めた。

 直ぐ様それを手放し、新たにミョルニルを呼び出して叩き付ける一撃――しかし。


「何……ッ! 止められた!?」


 随伴していた二機の機体、そのシールドビットが力場を生成し、まるでAICによって阻まれたかの様に静止した。

 考えが追い付かないまま、さっきの二機が背後から迫る――ミョルニルを一度粒子化、更に北落師門も粒子化後直ぐ粒子展開、紅い機体の両腕の三枚刃による連撃をスウェイして避け、避けきれない時は北落師門で防いでいた。

 背後から強襲する二本のブレードによる一撃――背後に回った大型シールドがその一撃を防いだ――筈だった。

 だが、ハイパーセンサーに映し出されたのは一撃で破壊された大型シールドの無惨な姿だった。


「……!? 一撃だとッ!? 馬鹿な……大型シールドにも確かに分子結合殻が――ぐぁっ!?」


 一瞬気を取られた隙をつかれ、正面の紅い機体の刃が装甲を削り、黒い破片が宙を舞った。

 おかしい、分子結合殻がこんな簡単に突破される筈はない、現にさっきの離脱時に受けたブレードの一撃に対しても無傷だった。

 そう思っていた矢先、雅からの緊急連絡が入る。


『主君! 装甲表面の分子結合殻が剥がれているぞ!』

『何!?』

『さっきの紅い機体が出したミスト状の液体に原因があるようだ! 更にパワーも落ちてきている!』


 雅からの連絡、俺の頭の中で全ての情報を捌ききる事は出来なかった。

 その間も三枚刃が前面装甲を無惨に切り刻んでいく、なすがままにされない為にも空中へと緊急離脱を開始した。

 直ぐ様追撃の為のシールドビットが俺を追い上げる――パワーが落ちてるという話は本当らしく、思ったように機体が上昇出来なかった。

 追い上げたシールドビットによる間断無い連打による一撃が、肩、脚部、背中の装甲へと加えられ、破片が撒き散らされる。

 与えられる衝撃に、全身に痛みが駆け抜け、ミシミシと骨が軋む音が聞こえた。

 シールドビットの攻撃が止まる――それは、紅い機体が此方に追い付いた証拠だ。

 右手に構えられた長大なパイルバンカー――名称《ジャガーノート》が此方に向けられ、一気に血の気が引くのを感じた。

 その刹那、強い衝撃に襲われる、激しい衝撃によって一気に装甲が破損、ダメージレベルがCにまで引き上げられてしまった。

 盾を失った事による機動力と防御力の低下、分子結合殻の剥離による更なる防御力の低下、そして、破損による機体自身の性能低下が著しかった。

 ジャガーノートの衝撃で散った装甲の破片で額に切り傷が出来、血が流れ出る。


「くっ……!?」


 逃げるという選択肢が過る――だが、今逃げたら簪が四機のISに囲まれる結果になる、それだけは選べない選択肢だった。

 ジャガーノートによる一撃がもう一発――それは腹部装甲を砕けさせ、内臓器官に激しいダメージを与えてくる。

 歯を食い縛る――そして、三撃目、咄嗟にPICを切って空中を落下、それで難を逃れた俺はそのまま墜落するように落ちていく。

 ずきずきと痛みが走るのを我慢し、地表に居た一機に狙いを絞る。

 それを察知したのか、展開されていたシールドビットによる打撃が俺を襲う――一撃が生身の左腕に直撃、嫌な音が耳に届く――だが、痛がってる場合じゃなかった。

 落下スピードが最高速に乗ったその瞬間、俺は対艦刀カリバーンを呼び出し、その質量と加速を乗せた一撃を襲撃者へと叩き付ける。

 両断された機体、俺は墜落寸前の所を雅がPICの再起動、急停止と離脱をオートで起動させ難を逃れた。


『……主君、機体ダメージレベル、既にEを越えている……』


 雅の沈んだ声がそう告げ、ステータスが開かれた、各種装甲の破損率は八〇を超え、スラスターは殆どが機能停止、PICもさっきの緊急起動で不具合が発生と現状は最悪と言っても過言ではなかった。


「……ッ、ヒルトくん……!」


 薙刀とブレードのつばぜり合いをしながら簪が俺の名を叫んだ、額から流れ出る血を拭い、折れた左腕はだらしなくブラブラと揺れ、痛みに耐えながら俺は立ち上がる。

 死が見え始めたこの状況、心が死の恐怖に負けぬよう俺自身に発破をかける。

 確りしろ――と。

 そんなとき、雅から申し訳なさそうな声で俺に語りかけてきた。


『……主君、すまない。 ……私ではやはり、君の力になれなかったようだ……』

『……雅』

『すまない、主君……もっと、与えられた身体が他の子みたいな専用機だったら……』

『……馬鹿、そんなこと気にするな。 機体性能何かどうとでもなる、だからこそのカスタム化じゃないか。 ……機体はぼろぼろでも、雅……俺に力を貸してくれよ!』

『主君……』


 そう呟き、聞こえなくなった雅の声、正面に対峙する紅い機体と黒い機体、それに対するは既に機体のダメージレベルがEの俺。

 状況は絶望的だ、だが……まだ心を折られた訳じゃない。

 カリバーンを手放す――既にアシストパワーの補助を受けられない俺には過ぎたる武器だ。

 改めて北落師門を呼び出す、黒い刀身が鈍く輝きを放つ。

 それが合図になったのか、もう一機の黒い機体――襲撃者単体が俺に襲い掛かってきた。

 数少ない好機――二機同時に来られたらアウトだったが、一機なら。

 刹那、襲撃者のブレードが俺の身体を貫く。


「……ッ! ヒルト、くんッ!?」


 腹部がブレードによって貫通、それを見た簪は信じられないといった表情で頭を何度も振った――だが。


「……簪、まだ俺は死んでないぜ、これがなァッ!!」

「え――――」


 そんな俺の叫びと共に、俺の体は散り、桜の花びらを周囲一帯を包む。


『――――!?!?!?』

「勝利を確信するには、まだ早かったな……!」


 襲撃者の機体を貫く黒い刀身、グッと突き刺すと力なく膝から崩れ落ち、襲撃者は倒れた――単一仕様、桜花幻影を発動した。


「……ッ、ぐぅっ……、ぅぁ……」


 折れた左腕も使った一撃は、俺の体力を激しく消耗させ、俺は膝をつき、右手で身体を支えるのが精一杯だった。


「……く……ぅ」

『……主君』


 雅の声に、頭を上げる――紅い機体が、ゆっくりと、此方に向かって歩いてきていた。

 ここまでか――そんな俺の思いを察したのか、雅はいつもの優しい口調で語り始めた。


『……主君と初めて出会ったのは、今年の二月の事だったな』

『雅……?』

『そして、君の専用機になって一月と半分。 ……私は、量産機だが幸せ者だな、主君という主を得たのだ』


 雅の語りに、一抹の不安が過る――。


『……主君――いや、ヒルト。 君が私の主で良かった。 ……主君は絶対死なせない、この私が守る!』

『何を言ってるんだ……雅――』


 目の前に迫り、右腕の可変ブレードを振るう紅い機体、その直後ハイパーセンサーに表示された【搭乗者強制射出】の文字、そして打鉄から強制排除され、空を舞う俺。

 ――主君、さよならは言わないぞ……死ぬな――。

 耳にそんな雅の声が聞こえ、自由のきかない空中で必死になって雅を探す。

 そんな俺の視界に映ったのは、俺の機体――雅が両断され、沈みゆくその姿だった。 
 

 
後書き
仮面の男の単一仕様が超チート( ´艸`)

まあ俺がそう書いてるからねー

そして無惨に破壊され、両断された雅の運命は……続く( ´艸`)

 
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