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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第482話】

 
前書き
場面はヒルトが割って入る→楯無&未来の流れ 

 
 直感が示すその先、俺は迷うこと無くここだと感じた。

 ちょうどここは、俺と簪が待機する予定のピットの側だった。

 俺は直ぐ様ピットの壁をギガント・マグナムの一撃で破砕した。

 崩れる壁の向こう側、既にISを身に纏っていた簪と、それに相対するように居る黒いISが居た。

 ピット内に飛びいるや、直ぐ様ロックオンされ、警告音が鳴り響く。

 黒いISは、左手を正面――俺の方へと翳した。

 砲口に光が点り始める――それが敵の攻撃であるのは明白であり、俺は直ぐ様攻撃を開始した。


「ギガントォッ! マグナームッッッ!!」


 巨大な拳を突きだす、轟音が響き渡り、放つと真っ直ぐ突き進んでいく。

 それと同時に襲撃者は左手から超高密度圧縮熱線を放つのだが――粒子撹乱膜を放出し、突き進むギガント・マグナムには無効化され、巨大な拳は襲撃者に直撃、もろにダメージを受けた。


「簪、無事か!?」

「う、うん、大丈……夫!」


 力強く頷く簪、そして言葉を続けた。


「ひ、ヒルト、くん、ご、ごめ――」


 簪の申し訳なさそうな表情を見て、俺は直ぐ言葉を挟んだ。


「簪、俺は何も気にしてはいない。 ……だけど、時間がある時にのほほんさんや他の皆に、な」


 今、俺が言える精一杯の言葉だった、俺自身既に訓練出来なかった事とかは既に頭の中から消えていて、今は学園全体を混乱に陥れている襲撃者の対処が急務だと思う。


「う、うん……! 今は……こいつを!」


 簪は戦闘に加わろうと手にした薙刀を構えるが――。


「簪、こんな狭い中で戦うにはその得物は不得手だ。 一旦外に出るしかない」

「で、でも……」


 吹き飛ばされ、倒れていた襲撃者はゆっくりと立ち上がる。

 巨大なブレードが鈍い輝きを放っていた。


「一夏、ちゃんと着いてきてるよな?」


 確認はせず、声をかけると一夏はその身に白式を纏っていた――緊急展開したのだろう。


「あぁ、ちゃんと居るぜ?」

「オーケー、なら俺がまず奴を押さえる、だから二人は先に外に出るんだ」


 そう俺が指示を出すと、一夏は頷く――だが、直ぐに口を開いた。


「ヒルト、今なら三対一だ、このまま仕留めれば――」

「……今も言ったが、狭い中で複数機で戦っても効率が悪い。 だから先ずは二人がこのピットからアリーナへと出るんだ」


 そう告げ、片方のギガント・マグナム粒子化、また再度装備すると俺は襲撃者と戦闘に入った。

 大きく振るうその剣を避け、的確に拳による連打を浴びせていると簪が言った。


「ヒルト、くん! アリーナのシールドがロックされて……!」

「わかってる! だから先に一夏と簪の二人が出るんだ! 一夏には零落白夜がある、アリーナのシールドはそれで問題ない筈だ!」


 そう、一夏の零落白夜でアリーナシールドを切り裂き、其処から外へと出れば閉鎖空間で戦うよりは有利に戦える。

 そして、目の前の襲撃者を抑えられるのは俺だけという現状もあった。

 襲撃者が振るったブレードの一撃を腕をクロスさせてガード、重い衝撃に全身がミシミシと軋んだ。


「チィッ……!?」


 何処かおかしい……まるで人体に直接ダメージを受けてる感覚がある。

 縦に横にと振るうブレードの一撃一撃が、ピットの壁や床を破砕していく、その小さな破片が頬に当たると、その衝撃に俺は表情を歪めた。

 絶対防御が機能してない――痛みで頬がじんじんと痛み始める、アドレナリンが分泌され、痛みを抑えようとしているのがわかる。


「……っ!」


 もし仮に絶対防御が発動してない状況なら、事態は全員不味いことになる。

 俺や未来、美冬や美春はほぼフルスキン及びハーフスキンタイプなのだが、他の皆は肌を露出したメジャーなスキンタイプだ、生身へのダメージが直接やってくる。

 奥歯を噛みしめ、気合いを入れ直す俺――一方、一夏は零落白夜でアリーナシールドを切り裂き脱出、続いて簪も外へと離脱した。

 それに続き、俺は後方へと瞬時加速、一気に間合いを突き放す――筈だった。


『――――――』

「何ッ!?」


 俺の瞬時加速に合わせた瞬時加速――狭いピット内での高速バトルは危険でしかない、強引に離脱をしようとした矢先、背中に強い衝撃を受けた。


「ぐあ……ッ!?」


 背中に諸に巨大なブレードの一撃、装甲の堅牢さに助けられたもののその衝撃は凄まじく、機体をピットの外、アリーナへと弾き飛ばされ、内臓器官に強い衝撃を受けた。


「ヒルト! 大丈夫かッ!?」

「ヒルト、くん……!?」


 離脱とは違い、敵に吹き飛ばされて出てきた俺。

 その直後、爆発音が鳴り響いた。

 時間は少し遡り、既に襲撃者と交戦していたのは更識楯無と飯山未来だ。


「そこッ!!」


 左腕に備わった勾玉型のチャクラムを放つ――そこからエネルギー刃が形成され、襲撃者を強襲するのだがその一撃はブレードを盾にして弾かれてしまった。


「もらったわ!!」


 盾にして防ぎ、隙が出来た襲撃者に対して楯無はランスに水を纏わせ、それが螺旋状に回転し始める。

 蒼流旋による一点突破による突撃、その一撃が襲撃者の背後から左腕に突き刺さった。


「このまま……腕を! 未来ちゃん!」

「任せてくださいッ! 九式・禍乃白矛――いっけぇぇぇッ!!」


 天照の周囲に浮かんでいた第三世代兵装が一斉に襲撃者の機体に突き刺さる、装甲の隙間を的確に狙った一撃一撃が、確実に襲撃者にダメージを負わせていた。

 一方の楯無も、瞬時加速を使い、襲撃者をアリーナのシールドへと叩きつけようとした。


「これもおまけよ! くらいなさい!!」


 そのまま楯無はランスに備わった四門のガトリングで射撃を開始、薬莢が排出され、襲撃者はシールドビットを使って防ごうとするのだが、その前に襲撃者はアリーナのシールドに叩きつけられた。


「楯無さん! 離脱してください! まだ敵は生きてますッ!」
「ふふっ……未来ちゃん、まだ生きてるなら……このまま機能停止させなきゃ、ね!!」


 螺旋状に回転する一撃に四門のガトリングによる射撃で、機体周囲から火花が絶え間なく散っていた。

 その間にも、シールドビットの直接打撃が楯無を襲う、未来もそのシールドビットに対応する様に迎撃するのだが、射撃が楯無に当たる可能性の方が高かった。

 未来は思った、楯無は焦っているのだと――学園に起きた危機に、対応する代表候補生達の安否、学園最強故に、早く襲撃者を片付けて、皆の元に駆け付けたいのだと。


「『ミステリアス・レイディ』の最大火力、受けてみなさい……!」


 その言葉に、未来は一度だけ見せてくれた《ミストルティンの槍》という技を思い出す。

 爆発規模は最小に設定されていたとはいえ、アリーナ地表を大きく抉りとるその技の威力は絶大だ――だが、それと同時に未来は弱点も見抜いてしまった。

 一つは防御力の低下、ミステリアス・レイディの防御力の要でもあるアクア・ナノマシンを攻撃の全てに回すため、装甲の強度が著しく低下してしまう。

 二つ目は発動の長さ、俗に大技と呼ばれる分類に匹敵するミストルティンの槍は、相手の動きを止めてからではないと意図を見抜かれ、簡単に避けられる、或いは反撃にあうかのどちらかだ。

 未来は直ぐ様叫ぶ、大技で仕留めきれなければ不利になるのは此方の方であり、敵の増援が無いなんて事もないからだ。


「楯無さんッ! 冷静になってくださいッ!! 今、その技を繰り出すよりも確実に行きましょう! 焦る気持ちはわかります、ですが……皆なら大丈夫です! だって……各国の代表を担う候補生ですよッ!」

「未来ちゃん……」


 未来の言葉を聞き、ミストルティンの槍の発動を中止、ランスに集まりつつあったアクア・ナノマシンの入った水は一部攻撃用に残し、それ以外は装甲表面へと戻っていった。

 楯無自身、学園最強の生徒会長という想いが強すぎた結果、冷静な行動が下せなかったのだと気付く。

 あのまま発動していれば、確かに目前の襲撃者は倒せたかもしれない。

 ――だけど、少なくともミストルティンの槍を使えば自身も戦闘不能になる可能性を考慮していなかった。

 未来の言葉で、楯無は戦い方を変える――突き刺したランスを抜きつつ離脱、だが四門のガトリングによる射撃は続けたままだ。

 未来は直ぐ様接近戦を試みる、右腕のブレードの刃が飛び出し、太陽の明かりに照らされて輝きを放つ。

 襲撃者はシールドビットを展開してエネルギーシールドを形成させ、ガトリングによる射撃を防ぐ――だが、動きを止められた状態だ、左右に動こうにも四門のガトリングによる砲火は牽制も込められてるため、身動き出来ない。
 射撃の雨が止む――それと同時に白亜の機体が襲撃者の目の前に現れた――瞬時加速で一気に未来が間合いを詰めたからだ。

 右腕のブレードを振るうのと同時に、周囲に展開されたままの九式・禍乃白矛による間断のないオールレンジ攻撃により、襲撃者は一気に破壊される寸前にまで追い込まれた。


「未来ちゃん! 後は任せて!」

「はいッ!」


 素早くクイックブーストで横へと避ける、その直後無数の水の礫が襲撃者を襲う。

 そして、楯無は左手に構えた蛇腹剣を大きく振るうと、それがしなやかな鞭の様にしなり、襲撃者の首を撥ね飛ばす。

 まずは一機沈黙――冷静さを取り戻した楯無とそれをサポートした未来の勝利だった、その直後、反対側のピットが盛大に爆発、中から紅い機体と襲撃者が飛び出してきた。


「くっ……こいつ!」


 紅椿を駆る篠ノ之箒が単独で交戦していた事実に、未来は背中に冷たいものを感じた。

 爆発の衝撃に、篠ノ之箒の身体は無数の火傷と破片による切り傷で見るからに痛々しい姿を晒していた。


「篠ノ之さんッ! 今援護するよ」

「寄るな! こいつは私一人で……!」


 未来の援護を拒絶し、一人再度交戦に入った篠ノ之、近接戦闘技術は剣道の心得もあってか善戦していた、だが……。


「くっ……このッ!」


 一撃一撃がエネルギーシールドに阻まれ届かず、逆に篠ノ之が追い込まれ始める。


「箒ちゃん、強がらないで! 援護するから……!」


 楯無は見ていられず、生徒を守る責任もあってか割って入り援護する――刹那、シールドビットが複数大爆発を起こし篠ノ之箒が爆発に呑まれた。

 そこは、ヒルト達の居る第三アリーナの反対側のゲート方面だった。 
 

 
後書き
そろそろ更新が停滞するかも 
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