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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第475話】

 
前書き
遅くなった

I'm sorry 

 
 大会まで残り二日、専用機持ち達や整備担当の生徒達はまるで戦場に居るかのような忙しさに追われていた。

 ただ例外なのは織斑一夏&篠ノ之箒組、二人の機体は篠ノ之束製という事もあって下手に弄れなかった――一応白式に関してはエネルギー効率が少しだけ向上したとかそんな噂が流れていた。

 噂といえば、更識簪の行動も女子生徒の間で噂になっている、悪評みたいに尾びれがつき、彼女の株価が少しずつ下がって来ているのだが、そんな彼女はそういった事には気付かず、パートナーのヒルトを放っておいて織斑一夏の元へと足しげく通っていた。

 無論、篠ノ之箒からすれば面白くないのでいつものように辛辣に対応するのだが、その都度一夏が彼女を庇うため、フラストレーションが溜まりっぱなしだった。

 一方、噂を聞いた未来は一度更識簪と話をしてみようと思い、行動を起こした。


「んー、更識さんの部屋って何処かな……」


 通路に続くドアの数々、ルームナンバーを見てもわからず、若干途方に暮れていると前方のドアが開くのが見えた。

 中から出てきたのは黒髪の似合う女子生徒、服装は寝間着様に着替えたジャージ姿だった、薄着でうろうろするよりは遥かに良いかもと未来は思う。


「あ、ちょっと良いかな?」

「へ? ――一組の飯山未来さん?」

「うん。 んと……ちょっと更識簪さんの部屋を探してるんだけど……」


 そう告げる未来――と、目の前の女子は若干不機嫌そうな表情を浮かべた。


「……彼女に何か用なの?」

「うん。 ……噂の件、でね」

「……そっか。 ……えっとぉ、今私が出てきた二つ隣が彼女の部屋だよ」


 そう言って指差す方へと視線を向けた未来は、そのドアを確認すると小さく頷いた。


「……パートナーほったらかして織斑君の所に行くなんて、クラス代表なのに責任感無いのかなぁ。 ……ヒルト君がせっかく……」

「え?」

「う、ううん、何でもない。 じゃあ、私これから友達と約束あるからっ」


 言ってから脱兎の如く駆け抜けていく女子生徒――だが、未来は既に彼女の事よりも簪の部屋に意識が向いていた。

 ドアの前に立ち、ノックをする。

 コンコンっと通路に響き渡り、暫く待つがルームメイトすら出てこなかった。

 部屋には居ないのかな?

 そんな考えが過り、一旦未来はその場を後にする。

 一通りくまなく探す未来、寮の食堂や自販機コーナー、屋上と探し、寮の調理室はまだ見てなかったと気付き、足取りを早めて向かうと目的の人物である彼女がガスオーブンの前に椅子で座っていた。


「更識さん、ここに居たんだ?」

「え? ……!?」


 簪の目が驚きによって見開かれる、彼女が振り向いた先に居たのは飯山未来、接点など全然無く、ただただ驚きに支配されていた。


「少し良いかな?」

「…………」


 返事がないものの、待っていても埒があかず、未来は隣へ移動すると近くの椅子を取り寄せ、それに腰掛けた。

 目の前のガスオーブンを眺めつつ、未来は口を開く。


「ねぇ、何でヒルトと一緒に訓練しないの?」

「…………」


 簪は黙ったまま伏し目がちのまま顔を下げる。


「んー、噂は聞いてるんだけどさ。 ……今は大会中何だし、ヒルトと少しでも一緒に訓練した方が良いんじゃないかな? そのあとなら、織斑君の所に言っても誰も文句言わないと――あ、篠ノ之さんが怒っちゃうかな? ふふっ」


 怒る篠ノ之箒を思い出したのか苦笑がこぼれ出る未来――と。


「……ヒル、トは……私にとって、ヒーロー……じゃ、なぃ、から……」

「え? ……ヒーローじゃないって?」


 未来は首を傾げる、唐突なヒーロー発言の意味が理解できなかったからだ。

 其処から簪は事の敬意を未来に言った、不思議と簪自身、彼女に打ち明けて理解してほしかったのかもしれない。

 全ての説明を終える頃には、ガスオーブンは止まっていて微かに甘い匂いが調理室に漂っていた。


「ヒルトは優しくない、かぁ……」

「ぅ、ん……」

「……優しさって、何だろうね?」

「え? ……ぇっ、と……」


 未来の口から出た言葉に、どう答えたらいいかわからない簪。


「人によって優しさの感じ方って違うじゃない? ヒルトは更識さんにとって厳しい言い方したかもしれないけど、でもそれだって貴女の事を思って厳しく言ったと思わない?」

「…………」


 黙ったままの簪、未来はそんな彼女を見つめながら言葉を続けた。


「今は分からないかもしれない、でも……貴女にもいつかわかると思う。 ……せめてさ、機体完成のお礼はした方が良いんじゃないかな? 少なくとも、ヒルトが居なかったら貴女の機体、こんなに早くは完成してなかったかもしれないし」

「…………」


 小さく頷く彼女を見て、未来は椅子から立ち上がるとスカートの裾を正した。

 それと同時にオーブンが止まる音が鳴り響く。


「それ、ヒルトにも作ってあげてね?」

「ぅ、ぅん……」

「約束、だからね?」

「………………」


 念を推して伝える未来に力強く頷いた簪、上手く伝えられた自信はない未来だったが、少しは彼女に伝わったかと思うとほっと胸を撫で下ろした。

 そのまま彼女に手を振り、調理室を後にする――広まった噂は消すことは出来ない、でもここから真摯な対応すれば彼女も改めて皆に認められるはず。

 瞼を閉じて小さく頷くと未来は通路の窓から夜空を眺めた。

 わりと都会の方なのに満天の星空が美しく、思わずうっとりしそうになっていると――。


「ん? 未来?」

「え? ヒルト?」


 声を掛けられ、振り向いた先にはヒルトが居た。

 手を上げて呼び掛ける彼を見て心臓が跳ね上がる、自然と鼓動が高鳴り、頬に熱を帯びるのを感じた。


「ど、どうしたの?」


 狼狽を隠しきれず、未来は軽く前髪をかきあげる。


「ん、もうすぐ大会だなって思うと少し寝れなくてな」

「そ、そうなんだ」


 もっと気の利いた言葉をかけたい、そう思っていてもまだ何処か素直になれない自分が少しだけ居た。

 だがヒルトは特別気にする事なく未来の隣へとやって来る。

 それにドキドキしつつ、夜空を見上げながらチラッと横目で何度かヒルトの顔を見た未来。

 改めて見たヒルトの顔は、いつの間にか自分が知っていた幼い頃のヒルトとは少し違った印象を受ける、自分と同じ時を重ねていても、いつの間にか自分より大人びた雰囲気を醸し出す彼に心臓の鼓動が更に高鳴った。


「未来、どうした? さっきから俺の顔ばかり見てる気がするが」


 その言葉に更にドキッと胸が高鳴った、正直このまま鼓動が速まれば死んじゃうのじゃないかと思うぐらいに。


「べ、別に見てないもん」

「そうか?」

「そ、そうよ」


 最近は少し素直になれたかと思ったのだが、こんなときに限って素直になれない自分が居た。

 この間、ヒルトに押し倒された時の事が不意に脳裏に過る、もしあのまま美冬ちゃんが来なかったら……ヒルトと――そう思うと全身の熱が一気に急上昇した。

 それを忘れるために、未来はかぶりを振って払拭すると話題を変えることにした。


「そ、そういえば、更識さんとはどうなの?」

「え? ……連携訓練が出来てない状態だな。 ……まあ、俺がカバーすれば多分大丈夫な気もするがな、これが」

「そ、そうなんだ。 ――た、多分だけどさ、更識さん、ヒルトに何か感謝の印みたいなものを渡すかも?」


 疑問符をつけながらそう告げる未来、ヒルトは不思議そうな表情を見せたがいつもの笑顔に戻ると。


「そっか、渡すものがあって来たなら少しは話も出来るし、大会に向けての軽い作戦でも話せそうだしな」

「う、うん」


 そんな返事をしつつ、腕時計で時間を確認するとそろそろ就寝時間が迫ってるのに気付いた。


「ひ、ヒルト、私そろそろ寝るね?」

「ん? ……そっか、じゃあ未来、また明日な?」

「うん。 お、おやすみ、ヒルトっ」


 それだけを告げると未来は駆け足でヒルトの元を去っていく、高鳴る胸の鼓動が少しずつ収まるのを感じた未来だが、それと同時にもう少し喋りたかったなという寂しさも出てくる。

 とはいえ、それも眠りにつくまで、明日になればまたヒルトと話も出来るし、運が良ければ二人っきりにもなれるかもしれない。

 未来はそう思うと表情を少し綻ばせ、部屋に戻っていった。 
 

 
後書き
十巻試し読みを読んでみた

結果、あの文章力で出せるなら大抵の人は出版可能かと

それはさておき、何だか書いてる内に変になってる気がしたものの、更新遅れぎみなのでアップしてみた

 
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