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BloodTeaHOUSE

作者:
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これは変

「こんばんわ、お客人」
「こんばんわ、ジェイク。そろそろ名前を覚えて欲しいんだけど?」
「それは失礼いたしました。しかしわたくしは扉。
 どのような方でもお客人とお呼びさせていただいておりますのでどうかご容赦ください」
「そっか」
もう何回目になるかわからない同じやりとりをしてしまうのは、
お客人と呼ばれることに慣れないせいだ。
お金を払っていないわたしは、お客と呼ばれるのに抵抗を感じてしまう。
卒爾(そつじ)ながら、お客人。随分と当店をお気に召されているようですね」
「うん、最初はどうなるかと思ったけど、このお店は大好きよ」
にっこり笑ってジェイクに答える。
最初に毒紅茶飲まされたときはびっくりどころじゃなかったけど、今はすごく楽しい。
「なるほど…………なにやらわたくしは勘違いしていたようですな」
「勘違い?」
「いえ、どうぞお忘れください」
「そんなこと言われても忘れられないよ~!
 気になって眠れなくなっちゃったらどうしたらいいの~!?」
そう言ってジェイクに詰め寄ろうとしたら扉が開いた。
「おや、ジェイクと話し込んでいたのかい?珍しいね」
「あ、飛白…」
「邪魔したようなら退散するよ」
「ううんっ!もういいの」
そう言ってお店に入った。何を勘違いしたのか、気になったけどまた聞けばいいや。


そんなことがあった何日か後の授業中に、ノートの切れ端の手紙が回ってきた。
送り主はゆいちゃんだ。

―――――かすみちゃんへ―――――
 相談したい欲しいことがあるので
お昼休みに屋上前の踊り場まで来てね

             ゆいより

相談したいことってなんだろう? きっと、手紙じゃ書けないくらい重要なことなんだよね。
そう考えて、急いで返事を出した。

――――ゆいちゃんへ――――
相談てどんなこと?
なにか困ってるの?
何か力になれるなら協力するよ。

          かすみより

お昼休みを知らせるチャイムが鳴ると、
急いでお弁当を食べて(我が校では教室以外でお弁当食べるの禁止なのだ)
屋上前の踊り場に行ったらゆいちゃんはお弁当を抱えて待ってた。
「お弁当こっちに持ってきちゃったの?」
びっくりしてそう聞いたら、
「うん、ちょっと食欲なくて……」
ぽそぽそと話すゆいちゃんは、なんだかほんとに元気がなさそうだ。
「とりあえず座ろ?ね?」
そういって屋上への扉を背に2人で並んで座る。
食欲がなくなるほど深刻な悩みなのかな?話して楽になるんだったら聞くけど、
私なんかに何かできるのかな?
「あのね」
ゆいちゃんはゆっくり話し始めた。
「うん」
私はなるべく急かさないように相槌を打つ。
「鈴木くんのこと、どー思う?」
「?」
鈴木くん、私とゆいちゃんと幼稚園から一緒の男子。
小学校の時に2回だけクラスが一緒だったけど、今年保健委員で一緒の委員会になるまで、
中学では全然接点がなかった。えーと、サッカー部だっけ?
「幼稚園一緒だった鈴木くん?」
「うん」
「保健委員会で一緒にプリント運んだことがあったなぁ」
あっちは男子で運動部にも入ってるくせに、半分ずつで運んだんだよね。
「それで?」
「それで?ってきかれてもそれだけだよ」
「どんなこと話したとか……」
「えーっと、そう、半分づつで運んでたんだけど、重くてさ」
「うん」
「鈴木くんってサッカー部だっけ?」
「バスケ部だよ」
「あ、そだっけ?」
「うん」
「運動部なんだから力あるんでしょ!女子に持たせるっておかしくない?って言った」
「それで?」
「係りは2人なんだからって言って、私の分手伝ってくれなくてさ」
「うん」
「途中で手が滑ってプリントばらまいちゃったのに、さっさと行っちゃったんだよ!」
ひどいよねーなんて思い出して文句を言ってみる。
「ほかには?」
「ほか?」
「うん」
「小学校の3年と4年の時同じクラスだった」
あの時はゆいちゃんも同じクラスだったし、知ってるよね?
「……」
「ゆいちゃん?」
「…」
「えっと…」
「鈴木くん、よくうちのクラスに来てるよね」
「そうだっけ?」
だれか仲いい子いるのかな?そんなによく来てた?
「うん。かすみちゃんのことよく見てる」
「えっうそっ!わたしなんかした!?」
ぜんぜん関わりないのにどしてっ!?
「……かすみちゃん、最近すごくかわいくなったし」
「?」
「……」
あー…いくら私がニブイといっても、さすがに分かった。
「…鈴木くんのこと好き、なの?」
「!」
やっぱり。 ゆいちゃんは真っ赤になってうつむいてる。
「そっかぁ~。好きなんだぁ」
鈴木くんをねぇ………どこがいいんだろ?
「だ、だれにも言わないでねっ」
「言わないよぉ。で、どこがいいの?」
赤い顔でそんなこと言うゆいちゃんはすごくかわいい。
こんな可愛いゆいちゃんに好かれるなんて鈴木くんはしあわせ者だなぁ~。
「か、かすみちゃんは?」
「は?」
「かすみちゃんは…鈴木くん…好きじゃないの…?」
「? 好きじゃないよ?」
首をかしげる。好きかどうか以前の問題だと思うし、どしてその発想になるかわかんない。
「ほんと?」
「うん。そもそもよく知らないし。……ゆいちゃんはどうして好きになったの?」
「あたし、体操部でしょ」
「うん」
ゆいちゃん体すごく柔らかくて羨ましいもん。運動得意っていいよねぇ。
「体育館でね、練習が一緒になることがあるの」
「あー、バスケ部ならそういうこともあるよね」
「うん、それで部活中にボールが飛んできてね」
「うん」
「すごーく一生懸命走ってきてくれて、ボールに当たりそうだったの庇ってくれたんだ」
「へぇー」
私がプリントばらまいたときはさっさと1人で行っちゃったクセにねぇ~。
「それから気になって…」
「いつのこと?」
「去年の9月、球技大会のあとくらい」
ゆいちゃんと別のクラスだった時かぁ・・・
「去年はね、昼休みは鈴木くんクラスにずっといたんだ」
「うん」
「それがさ、最近よくうちのクラスに来てるの」
「それさ、わたしじゃなくてゆいちゃん見に来てるんじゃないの?」
「ち、ちがう。だって、あたしが見ても目とか合わないしっ!」
「でもわたしは見られてないよ?」
「かすみちゃんって視線にドンカンだもん」
「うっ」
「あたしが用事あって見てても気がつかないじゃん」
「うー・・・でも助けてくれたんでしょ?わたしなんかおいて行かれたよ?」
それも鈴木くんの話が出るまで忘れてたんだけど・・・・
「じゃあさ」
「うん」
「かすみちゃん、好きな人っている?」
「す、すきな、ひ、と?」
どもっちゃったけど、ススキな人じゃない。植物だよねそれじゃ。
「うん」
「男の人、だ、よね」
「うん」
「えっと、その…どんな感じで?」
「何してるかなって気になったり、胸のところがギュウッてなったり」
顔がどんどん赤くなっていくのが自分でもわかる。湯気が出そうにかおが熱い。
「いっしょにいたいとか、仲良くなりたいとか思ったり」
ゆいちゃんの話を聞いてるだけで、脳ミソがぐるぐるしてきた。
「かすみちゃん?」
「ぁ、ぇっと、そ、の…」
ドキドキしてバクバクして呼吸がうまくできないで、口をはわはわさせる。
「かすみちゃん、顔赤いよ?」
「…」
かくかく頷く。赤くなってるのはわかってる。もうかおから火が出そうだし。
「好きな人だれ?」
目をギュッとつむって両手でほっぺたをおさえて体を小さくして
「好きって……胸のところがきゅってなるの?」
小さい声でがんばってしつもんしてみる。
「うん、ほかの人が同じことしても、ちがって見えるよ」
「さわったら…ドキってしたりする?」
「うん、鈴木くんに廊下とかでぶつかったらすごくドキドキする」
「…………よ、く……わかん、な、い……けど、」
とぎれとぎれになんとか話す。
「けど?」
「か、かんち…がい…かも…だって、そ、んなこと、か、かん、がえ…たことな、くて…」
「好きかなって考えたことなかったの?」
「う、ん……」
こくんとうなずく。
「かすみちゃんって初恋はいつ?」
「は、はつこい?」
思わず顔を上げる。マンガみたいな言葉に目をぱちくりさせる。
「もしかしてまだ?」
ゆいちゃんはちょっとびっくりしたように言う。
「ゆいちゃんは?」
「あたし?小学3年生の時だよ」
「はやっ!」
びっくりして大っきな声が出た。
「かすみちゃん、しーっ!」
「ご、ごめん…」
声をひそめてあやまった。ナイショの相談なのに見つかったらダメだよね。
「その、ゆいちゃんの、はつこい、どうなったの?」
「その人、引っ越してどこかに行っちゃった」
「引越し先とかは?」
「わかんない。…あたしさ、バレエ習ってるでしょ?」
「うん。発表会見にいったよね」
「そのバレエ教室の人だったんだけど、いつも合うわけじゃなかったの」
「教室に行ってもいたりいなかったりしてたってこと?」
「うん。だから、一週間くらい引っ越したの知らなくって…あきらめるしかないって感じ」
「その人のこと好きって思ったのはどして?」
「えっとね最初は年上でバレエ上手だなぁーって思って、よく教えてもらってりしてたの」
「うんうん」
「しばらくはやさしーお兄さんって思ってたんだけどね」
「うん」
「あるときにバレエで支えてもらいながら体倒すポーズをやってもらったの」
「あ、背中が痛そうなやつだね」
「そそ。それで、体倒したあと起き上がるんだけど、その時ふって目が合ったの」
「え?それまで目が合ったことなかったの?」
「それまでも目が合ったことは何回もあったんだけど、そのときだけ急にドキってしたの」
「へーそれまではなんともなかったのに?」
「うん。やさしーお兄さんって感じでいつもニコニコしてたんだけど、
 あのときはすごく真剣な顔してたからかなぁ…」
「ドキってしてからは?」
「ドキってしてから、きゅうに練習みてもらうのキンチョーするようになって、
 気軽に話しかけられなくなっちゃって、なんかいつも見てるだけになっちゃった…」
「じゃあさ、ドキってしないほうが楽しかったんじゃないの?」
「そんなことないよ!楽しかったもん。
 仲良くとかはできなくなっちゃったけど、その分カッコいいとこ、いっぱい見つけたし」
「うーん……ゆいちゃんが言うみたいなのが好きってことなの?」
「それは…わかんない。あたしと違ってどんどん仲良くなろうとする人もいるし…」
「そうなの?」
「あいちゃんとかそーみたいだよ。あいちゃんは元から男子と仲いいからかもだけど」
「へー、そうなんだー」
「で、で?」
「え、なに?」
「だからぁ~!かすみちゃんはどーなの?」
そうきかれて、また顔がかぁーって熱くなる。
「よ、よく…わ、かんない…けど…
 …楽しい、のに、ときどき……胸の…このへんが、きゅって、な…る人…は、いる…」
どきどきして、しどろもどろに答えると、
「それが好きなんじゃないの?」
「えっと…その人、は。いっしょ、に、いたら、う、うれし、いし。す、好き。だけど……
 ゆゆ、ゆいちゃんの言うような…好き、か…は……わ、わかんない…のっ!」
どうにかこうにか自分が思ってることを言う。
「どんなふうに好きなの?」
「どんなふうにって……」
とりあえずお店のことから考えてみようかな?

あのお店に行くとうれしいことや楽しいことががいっぱいある。
んごーのくだらない話はたのしい。存在自体もおもしろい。
裏子のドッキリ料理はみていてあきない。食べるのはえ遠慮したいけど。
裏子をからかう飛白とそれに本気で怒る裏子は、ちょっと危険だけどおもしろい。
んごーをいじる飛白と裏子は、んごーには悪いけどおもしろい。
飛白はキザでエッチだけど、言ってる言葉ほど無茶なことはしないよね。
飛白のやわらかそうな金髪とか、青い目とかキレイだなって思う。
飛白はバイオリンが上手で、すごくステキな音で弾く。
飛白が出してくれるものはどれもおいしくて、しあわせな気分になる。
私がおいしいって言うと、少しだけ優しい顔する飛白がうれしい。
ときどき頭を撫でてくれる飛白の大きい手が好きで、うれしい。
飛白に血を吸われるとき、肩に手を置かれるとすごくドキドキする。
ホントのホントにたまにだけど、やさしい顔で笑うの見たら胸のあたりがきゅっとなる。
顔とか触られるとどうしていいのかわかんなくなるくらいドキドキしてし、ま……う。

そこまで考えて、もうこれ以上は無理っていうくらい、顔に血が集まる。
「か、かすみちゃん?」
ゆいちゃんが心配そうに顔をのぞき込んでくる。
「…、………、…、……」
なにか言わなきゃって思うけど、言葉が出てこない。
「だいじょうぶ?保健室いく?」
なんとか首を振って行かないって伝える。
「そう?でも、首まで真っ赤だよ?」
そういって、ゆいちゃんは私のひたいに手を当てる。
「わっ!かすみちゃん、ネツ!ネツ出てる!保健室行こ!」
そういいながら、ゆいちゃんは保健室まで私をひっぱっていった。

保健室で熱計ったら7度8分もあって、保健の先生にベッドに寝るよう言われてしまった。
ベッドに潜り込んだけど、ドキドキして寝られるわけがない。
目をつむったら、いろんな飛白の顔が浮かんできて、余計にドキドキしてしまう。
5時間目が終わっても、まだ7度5分までしか下がってなくて結局学校を早退した。

家に帰って着替えると、ベッドに潜り込んでひたすらうるさい心臓と格闘し続けた。
結局深夜までじたばたして、疲れきって眠ることになった。
そんなわけで、私の初恋は発熱とともに自覚することになったのだ。

その日、ペンダントをプレゼントされてからはじめてお店に行かなかった。









 
 

 
後書き
恋ではなくて変になってしまった‥‥というなんとも情けない結果に。
流れに任せてるとこうなるということです。

7/13現在:このあとがきの時点で、この話の折り返し地点に来ました。
色々あって、香澄ちゃんはどうやら心因性の涙腺決壊とか体調不良を起こしやすい子だと
だんだんわかってきました。つか設定が生えてきました。

そのせいで、飛白はひどい目にあったりしますが、どうか許してください。

と、今のうちに謝っておきます。あとで怒られるのは怖いのでw 
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