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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第486話】

 
前書き
約1ヶ月ほどお待たせした( ´艸`)

でわでわ、どうぞー(b^ー゜) 

 
「っ……!」


 何度も切り結び、攻防を繰り広げる漆黒の機体と鷹月しずねだが、パワー差によって徐々に押され始めていた。

 腕には既に切っ先で切れた切り傷が出来ていて、赤い血が腕を伝い、打鉄の装甲を伝って地表に落ちていく。

 更に切り結ぶのだが一瞬の隙をつかれ、近接ブレードが弾き飛ばされた――しずねの表情が青ざめる、得物を失い、盾で防御しようにも既に振り下ろされた切っ先が映っていたからだ。

 ギュッと瞼を閉じるしずね――そして、心の中でヒルトに助けを求めた。


「――やらせるかよッ!!」

「――――!?!?!?」


 鈍い金属音が轟き、漆黒の機体は巨大な拳によって吹き飛ばされ、長大な剣も根本から折れた。


「しずね、無事か?」

「ヒルト、君……」


 ヒルトの顔を見たしずねは安堵の表情を浮かべた。


「ん、見たところ大丈夫そうだな」

「う、うん。 ……ヒルト君の方が、怪我してる……」

「俺か?」


 そう言ってヒルトは腕を見る、そしてそのまま腕を掲げるとニッと笑顔で――。


「このぐらい問題ないさ、これがな」


 そう告げるヒルトだったが、激痛が全身を駆け抜けていた。

 だが、しずねを安心させる為に時には強がりを見せる必要もあったのだ。


「さて、後は俺に任せてくれ」

「だ、ダメだよ! わ、私も――」

「それこそダメだ、嫁入り前なのにこれ以上切り傷をつけさせる訳にはいかないさ。 ……しずねだけじゃない、他のみんなにもな」


 そうヒルトが告げると自然と心臓の鼓動が高まり、頬に熱を帯びるのを感じてしまったしずね。

 ヒルトはそれに気付かずにそのまま漆黒の機体と交戦に入った。


「ヒルト君……無茶しないでね……」


 そんなしずねの祈り、ヒルトに届いたかは定かではない。


 折れた腕を無理矢理掲げた為、激痛が全身を襲っていた。


『搭乗者のバイタルの低下を確認、速やかに戦闘行為を中断し、治療を――』

「してる時間はないんだな、これが!」


 ギガント・マグナムの拳を漆黒の機体へと叩き込む、何度も何度も打ち込み、止めの一撃と謂わんばかりにコア部分を貫く。

 ぐらりと体勢を崩し、漆黒の機体は地表へと落ちていく――そしてギガント・マグナムの手のひらにはISのコアが握られていた。


「……さっきの二機は破壊したからな、可能な限りはコア回収しないと……。 っぅ……!」


 折れた腕の痛みが全身を駆け抜ける、無理して攻撃を行った為か痛みが更に悪化していた。


「……痛がってる場合じゃない、まだ……居るんだ……襲撃者は!」


 ハイパーセンサーに捉えた紅い機体と黒い機体、未来は黒い機体相手に善戦しているものの理央や玲、セラの三人を相手にしている紅い機体は徐々に三人を追い込んでいた。


「チィッ! しゃらくせぇんだよォッ!! 落ちなッ!!」


 両手に構えたアサルトライフルによる一斉射撃、空薬莢が空を舞って排出されていく。


『――――――』


 そのライフルの一斉射を、空を踊るように避ける紅い機体――人が乗っていてはあの動きは出来ないのは誰の目にも明白だった。


「……もらった!」


 先回りをしていたセラは、そのまま強襲、頭上からの袈裟斬りで斬りにかかった。

 しかし、紅い機体のモノアイがギラッと輝きを放つと優々とその一撃を左腕の三枚刃で受け止めた。


「っ……、まだよ……!」


 受け止められた近接ブレード、だがセラはすかさずインストールされていた近接ダガーを左手に構えて相手の首元を狙って横に振るった、だがその一撃は既に読まれていて、頭部を仰け反らせ、刃を避けて見せた紅い機体。

 セラの表情が変わる、一撃を避けた紅い機体の右腕のブレードが迫っていたからだ。

 直ぐ様シールドでガードするも、パワー差によって機体事アリーナ外壁へと弾き飛ばされてしまった。


「セラっ! ……お前ぇっ!!」


 理央が直ぐ様牽制の射撃を行いつつ接近戦を試みる、牽制射撃に動じる事はなく、紅い機体はまるで遊んでいるかのように避け、理央の背部に強烈なハンマースローによる一撃をお見舞いした。


「ガハッ!? ゲボッゲボッ……!」


 地面に突っ伏し、痛みに表情を歪ませた理央。

 そして、突っ伏した理央の頭部を踏みにじる紅い機体――その姿を見た俺の中で、何かが弾けとんだ。

 加速し、一気に間合いを詰める――!


「その足を……――――退けろォォォッ!!」

『!?!?!?』


 加速力を加えたギガント・マグナムの一撃に、紅い機体は吹き飛ぶ、咄嗟のガードすら間に合わせないイザナギの加速力、まるで俺の想いに応えた様に思えた。


「ひ、ヒルト……わ、わりぃ……助けに来たってのに……」


 力なく見上げる理央に、俺は首を振って答えた。


「いや、理央……助かったよ、ありがとうな。 後は俺に任せてくれ」

「ま、任せたぜ……?」


 そう言って意識を失った理央、バイタルは安定しているので命に別状はなかった。


「玲、理央を頼む。 セラは――」

「セラなら大丈夫だ、しずねが救出したからな」


 そう言って理央を担ぐ玲、セラも既にその場には居なく、しずねと共に離脱した様だった。


「なら大丈夫だな。 ……玲、ありがとな……」

「……無事に帰ってこいよ、お前が死んだら悲しむ奴は大勢いるんだからな……」


 そう言って玲もアリーナから離脱する、吹き飛ばされた紅い機体は瓦礫をはね除け、真っ直ぐと俺を見据えていた。

 三枚刃が展開されると同時に背部ブースターが大きく可変展開し、真っ赤な粒子を放出させた、まるで怒り狂う獣の様なその姿にゾッと鳥肌がたち、額から汗が滴り落ちる。

 更に展開された三枚刃からは青白い粒子の刃が新たに形成され、その異様差を引き立たせていた。

 痛みすら忘れる程の威圧感――一瞬の間を置き、紅い機体は俺に強襲を仕掛けてくる。


「……速いッ!?」


 加速力がさっきよりも上がっていて、一気に間合いを詰めてきた紅い機体は射程距離に俺を捉えた瞬間、直ぐ様両腕のブレードによる連撃を繰り出す。

 それに応対するように俺もギガント・マグナムの拳で防御、青白い粒子の刃がギガント・マグナムの表面を傷付けるも何とか堪えきる。

 ――しかし、機体は無事でも俺の身体ダメージは深刻だった。

 そんな俺の状況を見た簪が、姉である楯無の身体を抱きながら叫ぶ。


「やっぱり………やっぱり、無理なんだ……! 勝て……なぃん……だ……」


 目に涙を浮かべ、傷付いていくヒルトや未来、既に倒れている一夏や箒、楯無、救援に来た他の子達がやられていくのを見て絶望の声を漏らした。

 そんな簪の声を聞き、弱々しく目を開け、楯無は彼女の頬を撫でる。


「……無理じゃ……ないわ、簪……ちゃん」


 言ってから笑みを浮かべる楯無、そんな楯無の言葉にかぶりを振りながら――。


「無理だよ! ……皆、ボロボロになってる……! ヒーロー何かいない……わかってても、私、は……ヒーローに助けを求めちゃう……! でも! 現実は残酷なんだよ! この場を救ってくれるヒーロー何か、いないんだよ!!」


 矛盾した簪の言葉、一度はヒーローは居ないとは思ってもやはり奥底ではこの窮地を助けてくれるヒーローがやって来てくれるかもしれないという甘い考えに、簪は自身に嫌悪した。

 だが、簪の言葉を否定するのではなく、楯無は――。


「そう、かしら……? ……本当に、ヒーローは……いない?」


 大粒の涙が落ち、楯無の頬を濡らす。

 楯無の言葉に、簪は目を見開き、頭上で戦いを繰り広げているヒルトの姿が映り込む。

 機体は新型で傷は無いものの、その身体ダメージは他の人間が見ても明らかな程深刻なダメージを受けていた。

 その姿に、子供の頃に見たヒーロー番組が脳裏に過ったその時。


「…………いない、さ……」

「え……?」


 小さな否定の声に振り向く簪、向いた先には倒れていた一夏の姿が映り込んだ。


「……完全無欠の……ヒーローなんて、いない……」


 そう言いつつ立ち上がろうとする一夏だが、ダメージが大きいのか立ち上がれなかった、だが言葉は止まることがなかった。


「完全無欠のヒーロー何て奴等は……泣きもしなけりゃ、笑いもしないからな……」


 その言葉に、簪が最近見た特撮ヒーロー物の番組を思い出す――と、そこで頭上から轟く様な声がアリーナに響き渡った。


「それは違うぞ、一夏!! 完全無欠のヒーローは居ないが……泣きも笑いもしないヒーロー何て、居ないんだッ!」


 頭上から轟く声の主はヒルトだった、戦闘を続け、防戦一方の状態だが更に言葉を続ける。


「ヒーローが泣かないのは! 泣いたからといって事態が解決するわけでもなく! 大切な人が帰ってくる訳でもないって事を知ってるからだ!」


 防戦一方のヒルト――だが、ここから反撃に出る。

 紅い機体の肩や腹部にギガント・マグナムの一撃を叩き込み、相手の剣撃はその場での高速スウェイで避けきった、日頃から行っていた瞬間視の特訓が身を結んだ結果だ。


「そして……! 笑顔は……全ての戦いが終結するまで、とってあるんだ!」

「……!?」


 ヒルトの言葉に、さっき思い出したヒーロー番組を思い出した。

 完全無欠で、泣きもしないし笑いもしない孤高のヒーローだったが、全ての戦いを終え、もう戦う必要が無いと感じ取った彼は最後に笑顔を見せて番組を締め括る――。

 痛みで動き回るのも苦痛の筈なのに、皆に応える為に戦うヒルトの姿が、簪には一筋の光を照すヒーローに見えた。

 だが光は幻ではなく、ヒルトの機体、イザナギがまるで主に応える様に発光を始めた。


「俺はヒーロー何かじゃない、ちっぽけな人間だ。 今でも……恐怖で逃げ出したいって気持ちがある! だけど! ここで逃げたらッ! 助けに来てくれた理央や玲、セラ、しずねに顔向けが出来ないッ!! 俺の身代わりになった雅に対しても申し開きが出来なくなるッ!!」


 まるで痛みを感じてないかのような怒濤の攻撃――否、ヒルトの負っていた傷が徐々に、徐々にだが癒されていった。

 堪らず上空へ上昇する紅い機体だが、未来はそれを見据えていたのか急上昇を妨害するようにライフルによる斉射を行った。


「そう簡単に逃がさないよ! ――はぁあッ!」


 妨害を行いつつ、未来は襲撃者に一撃を浴びせた。

 そんな未来の機体、天照もまるでイザナギに呼応するように光を放っていた。


「オラァァアッ!!」

『!?!?!?』


 頭上をとったヒルトのハンマースローによる一撃――奇しくもさっき理央に与えた一撃のお返しと謂わんばかりの強烈な衝撃、地面へと叩き付けられてその衝撃で砂ぼこりが舞う。

 すかさず追撃に出るヒルト、右のギガント・マグナムを解除し、地表に突き刺さった状態の北落師門を掴むと直ぐ様『強制使用許諾』システムを使い、北落師門を横一閃に振るった。

 その瞬間、イザナギの周囲を包むように目映い閃光が包む。


『フォーマットとフィッティングがかんりょうなのですよぉ、マスター♪(^o^)/』


 精錬されたデザインと共に光の中から【一次移行】を終えたヒルトの姿が現れた。 
 

 
後書き
次の更新はいつになるか――後でしょう!(ぇ

早め早めの更新でいきたいっすが、お疲れなのでお待ちを 
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