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BloodTeaHOUSE

作者:
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苦手

「ううううう~~~~っ‥‥‥」

お店に来てからずっと、カウンターにもたれて、ふにゃんとダレている。
明日は体育の実技テストがあるのだ。

50m走とか、反復横跳びとか、前屈とか、握力測定とか、懸垂とか、腕立て伏せとか、
まあ、一通りいろいろしなくちゃいけない。
体育は嫌いじゃないんだけどなぁ‥‥‥ユウウツだ。

「どうしたんだ?元気ないぞー」
「うん…明日、体育の実技テストがあるの」
「? 楽しそうじゃん、体育なんだろ?」

裏子は体動かすの得意そうだもんねぇ。ウラヤマシイ‥‥
顔を上げてジト目で裏子を見る。

「そりゃ、あれだけ動ければ楽しいんだろうけどさ」
「嬢ちゃんは体動かすの嫌いなんか?」

そう聞かれて、ゆるゆると首を振る。体育は嫌いじゃない。
でも、嫌いじゃないのと得意っていうのはイコールじゃないの。

「体育は嫌いじゃないんだけど、運動は苦手なの‥‥」
「苦手ってどのくらい苦手なんだ?」
「体育の先生に、練習してどうにかなる域を、超えてるって言われるくらい‥‥」

1年生の体力測定の結果が出たときに相談したら、ほんとにそう言われてしまったのだ。
私が真剣に、運動部に入ろうかと相談してるのに、ひどいと思う‥‥

「それはある意味、才能かもしれないよ」
「だったとしても嬉しくないよ~」

ぶーっと口をとがらせ、ふてくされる。
飛白みたいに運動神経どころか、基礎の身体能力が高い人にはきっとわからないのだ。
あ~ぁ、明日こそ握力測定で2桁達成できるかなぁ‥‥‥

「誰かてひとつくらい欠点があったほうが人間味があってええで」
「そうだぞー!あんまり気にするなよ。」
「誰かさんと違って、人に迷惑かけないんだからいいじゃないか」
「誰かさんって誰のことだよ!」

「嬢ちゃんは人の味覚を破壊しようとしたり、美的感覚を狂わせようとしたりせんもんな」
「人の曲を作曲しなおして、僕の音感を侵略しようともしないしね」
「ムッキ―――――――――っ!!」

確かに裏子の歌にはすごい才能を感じる時がある。
歌詞を聞いたら、かろうじて何の歌かわかるくらいだから、
曲はもはや別物と言っていいのかもしれない。鼻歌だとまず原曲がわかんないしね。
うん、あれは才能といっていいのかも。

「ほかに何か苦手なこととか出来ないことってないの?」
「苦手か‥‥‥ワイは帳簿付けるんが苦手やな~」
「帳簿って、売上げがいくらだったとか、何を仕入れたとか記録するだけなんでしょ?」
「それを計算するのが苦手なんや‥‥‥」
「細かい計算がたくさん続くと、途中で計算間違えたら、
 どこで間違ったか分かんなくなって困るよね~ってあれ?ここってPCないの?」

パソコンだったら帳簿計算用のソフトとか入れれば、計算さんなんか楽々なのに‥‥‥
電気が来てないのかな?そんなことないよね?

「PCか‥‥‥あるにはあるんやが、な」
「帳簿用のソフト入れて、PCにやらせればいいじゃない?」
「誰かさんがどうやったのか、見事に破壊してくれたんだよね」
「なんだよ!ちょっと画面を印刷しようとしただけだろ!」
「それでまさか画面を切り取るなんて誰も考えへんわっ!!」

う、裏子は機械音痴‥‥いや、むしろデストロイヤーだよね。
なんだか体育が苦手なのくらい、些細なことに思えてきたよ‥‥‥

「飛白は?なにか欠点とかないの?玉に傷?っていうの」
「そんなもの、僕にはないよ」

「コイツは”変態”が欠点だっ!」
「僕を誘っているのかい?」
「そんなわけあるかっ!シネ!」

ギャーギャーと騒がしくなってしまった周りをよそに、考える。
”人信じられない” 飛白の言ってたことだけど、
いつか、いつか‥‥ 人を信じられるようになればいいな。







 
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