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BloodTeaHOUSE

作者:
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社会生活

「んごーってさ、この姿じゃ普通の人間の前には出られなくない?」

ぷにぷにとんごーのほっぺたをつつきながらきいてみる。
肌は青いし、サイズはぬいぐるみだし、何故かよく伸びるし‥‥‥

「堂々としてたら意外と誰も気がつかへんもんやで」

いやそれだけはないと思う。こんなのが街を歩いていたら、見なかったふりしたり、
オモチャだと思ったりすることはあっても、同じ人間だとは絶対に思わないもん。

「その証拠にこの前自動車免許とったで」

をいっ日本政府!戸籍管理はどうなってるんだ?!
って、んごーが日本に来たのって大正だっけ、戦後のドサクサで取得したのかな?
ありえそうだけど、こんな見た目のやつに戸籍なんかやるなよ、と言いたい!

「…日本の戸籍、持ってるんだね。びっくりしたよ」
「戸籍がないと店の経営に不便やからな。
 電気もガスも水道も、住民票がなかったら引かれへんやん」

意外と現実な返答だ。でもここって、裏に井戸あるし、店内の明かりはランプだし、
暖炉があるってことは薪も使うよね?どこに使ってるのかな?

あ、おフロだ!
火傷したときは水だったけど、お風呂場は明るかったし、水もジャーって出てた。
あとは‥‥まだ入ったことのない厨房で使ってるのかな?

「役所に行って何も突っ込まれないことの方がビックリなんだけど…」
「きっと外国の血が入ってるとかくらいでスルーされてんねんわ」
「外国じゃなくて、人外でしょ。どう見ても!」

「仕入先のおっちゃんとかも普通に接してくれてんで」
「だんだんどこをどう突っ込んでいいのかわからなくなってきたんだけど…」

何故ほぼ人間と変わらない姿の店員が居るにもかかわらず、
絶対人類には見えないんごーが、店にとって重要な人間と関わってるの?
どうしても説明がつかないんですけど……オーナーだから?オーナーだからなの?!

「大丈夫だぞ、花澄。今までもなんとなくでやってこれたんだから、
 これからもなんとなくうまくいくよ!」

笑いながらケ・セラ・セラなこと言ってるけど、大丈夫なの?このお店。
お店で一番やる気のある店員さんである裏子でも、この調子だ。

「じゃあ、んごーは人間のいるところに出ても大丈夫なんだ?」
「まぁな、なんせワイの趣味はギャンブルと珍品収集やしな!」
「チンピンシューシュー?」

なんだろう?聞いたことない言葉だ。

「せや。この世のありとあらゆる珍しいものを集めるんがワイの趣味の一つや。
 店でも売ってるで!」

そういえば、このお店の一角だけゴチャゴチャとたくさん物が積んである。

「もしかして、あそこのガラクタのこと?」
「ガラクタちゃうわっ!れっきとした商品や」

どれもこれも、とても価値のある物には見えないんだけど……

「え~…この壷、どこが珍しいの?100均とかで売ってそうなんだけど」
「それはなぁ、できてから1億と2千万年経ったらもっと恋しくなる壺やで!!」

…それは何世記何エリオンなの?
売った人もどうしてそんなわかりやすいウソをついたのだろう?

「こっちもすばらしいで!中の見えへんクリアファイルや!!

クリアちゃうやん…おっと、関西弁が伝染りそうになった。
普通の厚紙のファイルだね。うん。文房具屋さんに売ってそうだよ。

「そんでコッチが二人羽織用のお箸と茶碗や!!!」

どう見てもプラスチックの普通のお箸と茶碗にしか見えない‥‥‥
どこかの誰かが言っていたように、どうせウソをつくならなるべく大げさなウソを
ついたほうが人は騙されるっていうのが正しいってことなんだろうか?

「花澄、いろいろ言いたいことがあるのはわかるけど、諦めろ」
「花澄ちゃん、言葉にしても届かないってことは生きてれば必ず経験することさ」

いつもんごーをどこまで伸びるかトラックにくくりつけて試そうとしたり、
輪切りにしてにしてゴム製品にできないかと考えたりしてる二人からの言葉は、
とっても残念な方向に重みを感じさせてくれた。

ふと、突然に飛白がくしゃくしゃと頭を撫でてくれるのを真似してみたくなったので、
カウンターの背の高い椅子の足置きに乗って、手を伸ばしてみた。

背伸びしたらやっと手が届いて、嬉しくなってくしゃくしゃと飛白の頭を撫でたら、
思ったとおり、すごく柔らかい。東洋人とは髪の質が全然違う。

「背伸びしてまですることかい?」

と、苦笑されてしまった。むぅ~。
裏子のも撫でてみる。くしゃくしゃ~ あ、なんだか馴染みのある感触だ。
裏子は中国生まれだからか、髪の質は日本人とそんなに変わらないよね。

「ん?えらいえらいか?」

うん!裏子は偉いぞ!探せばもうちょっとマシな仕事がありそうなのに、
ここで店員さんを続けてくれてるなんて、すごくえらい!

「それにしても、頭に毛が一本もないねー」

ついでにんごーの頭をつるつる撫でる。飛白や裏子と比べるまでもなく、
んごーの頭はつるつるだ。1本も毛がない。どこにも毛が生えていない。

「は、」
「は?」
「ハゲやないで!ワイはハゲちゃうんやからな!びぇ~~~~~ん」

大泣きされてしまった……
まさか大声で泣き出すとは思ってなかったので、わたわたしてると、

「気になるんだったらヅラでもかぶれば?」

と、追い打ちをかける裏子に

「既にいくつか所持してるよね」

と暴露する飛白。
カウンターから転がり落ちてジタバタと泣きながら暴れる(悶える?)
んごーのことが、今日はあんまり可哀想だと思えないのは、
珍品の話を聞いたせいじゃないかなと思ってしまった。





 
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