BloodTeaHOUSE
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魔女の集会
今日はお店で魔女たちが集会してるんだけど、みんな深くフードをかぶってるし
マントだから顔がよくわかんないというか、男か女かもわかんないんだけど、
裏子は忙しそうに働いてる。
「あれぇ?飛白やないの!アンタまだここで働いてたんや~」
「やあ、ビー。久しぶりだね」
バイオリンのお稽古を終えてお店に飛白と戻ると、
フードを外して声をかけてきた人(魔女?)は赤毛の綺麗なお姉さんだった。
「ほんに久しぶりやわ~。店にぜんぜん来ぉへんよぉになったしなぁ」
「僕に会えなくて、寂しかったのかい?」
「わざわざ聞かんでもわかるやろ。相変わらずイケズやわぁ~」
スリスリと飛白に擦り寄るお姉さんは、ボイーンとしてキュッとしてバイーンで
すごくダイナマイトだ。思わず自分の平坦な胸のあたりを見下ろしてしまう‥‥む。
「んごー、あのお姉さんは飛白のお知り合い?」
「あぁ、飛白にネツ上げて前によう来てたお客はんや」
なんとなく声をひそめて聞いてしまう。
熱を上げてたってことは、その、好きってこと、なんだよね?
で、でも、その、つ、付き合ったりとかは、してないんだよ‥‥ね?
ちらっと2人を見ると、いかにも大人って感じのお姉さんは飛白と並んでいても遜色なくて
お似合い、って言葉が浮かぶ。むぅ。
「集会の方はいいのかい?」
「かまへんのんよ、集まったゆうても、いっつも情報交換くらいしかせぇへんのやし、
飛白がいてるんやったら、うちはこっちで飲んでるんが楽しぃんやもん」
「いけないヒトだね」
猫なで声のお姉さんに、笑いかける飛白はどこか最初に出会った時を思い出させる。
あぁそうだ、あの時もああいう人を惑わすような笑顔だったっけ。
「まだ裏子がこの店に来てへんかったし、あの頃は店の売り上げも悪くてなぁ
姉さんは売上に貢献してくれる上客やったからよう覚えとるわ」
「じゃあ、二人でお店やってたんだ。なんだか意外」
んごーと飛白だけのお店って、どんな感じなのか想像できない。
なんだかツッコミ不在の漫才みたいだよね。
「飛白は面白半分で店員になりよったから、まともに働いとらへんかったし、
客足は遠のくしで、あの頃はこの店がこの先どうなることかと気が気やなかったんやで」
「あのお姉さんも来なくなっちゃったの?」
「客が減って困ってた時に、ある日突然、飛白が店に飽きたとか言い出してな、
あいつはもともと暇つぶしに店に来てたみたいなもんやったけど、
棺桶で寝るとか言い残して本格的に来んようになったからは姉さんもパっタリやな」
「‥‥そんなんでよくお店潰れなかったね」
んごーは見てる限りだと働いてるようにはあんまり見えない。
時々お店のはしっこに置いてるガラクタ(珍品?)をだまして(?)売りつけるくらいで、
お客様に出すものは基本的に裏子が作ってる(それもどうかと思うけど)
飛白は器用だからこうやってお姉さんの相手をしてても、
ちゃんと私にはハチミツ入りのホットミルクを出してくれる。
んごー1人でどうやってお店してたんだろう? ・・・想像できない。
「もう店たたもうかちゅうことを考え出した頃に裏子が店員になることになって、
なんでか飛白も戻ってきたから、なんとかやってこれたっちゅうわけや」
「そういうのって縁っていうんだっけ?よかったね、ちゃんと働く店員さんが来て」
えにし、ナニカとナニカが繋がるためにある不思議な糸みたいなもの。
私も多分それがあったからここにいられるんじゃないかな。
「ちゃんと働く……嬢ちゃんは心広いな!」
いや、その間はナニよ。よく働いてるじゃないの、今日なんか特に。
「そこで心の広さが出てくるのはなんでだよ!」
ほらやっぱり裏子が怒った。
「まったくだよ」
「お前は仕事してないだろ!」
裏子は飛白にサボるな!とか仕事しろ!とかよく言うけど、
そんなにしてないのかな?割といろいろ作ってくれたりしてると思うんだけどな。
「嬢ちゃんのオーダーくらいしかまともな仕事してへんからな」
「ほかのお客さんの相手もしてるじゃない。ホラ」
魔女のお姉さんにちゃんとお酒出してるし。まぁ、飛白もお酒飲んでるみたいだけど……
えっと、お客様とのお付き合い、だよね?
「一応あれでも飛白はバーテンダーなんだぞ?」
「お酒を出してくれる人でしょ?」
「間違ってないんやけどちょっとちゃうで」
「ちがうの?」
「あれだけ酒が揃ってるのに、基本的にアイツは同じ酒しか出さないからな」
「作りたいものしか作らへんしな」
まぁ、気まぐれでメニュー決めるっていうのは飛白らしいと思うんだけど。
おいしいんだからいいんじゃないのかな?
「僕のおすすめは気に入らないかい?」
「いややわぁ、飛白の出すもん うちが気に入らへんわけないやないの」
「そだよね。飛白が出してくれてるのって、なんでもすごく美味しいもん」
「それは光栄だね」
そう笑う飛白に笑い返す。ロシアンルーレットみたいな裏子の料理よりも安心だし、
見た目もおいしそうだし実際食べたら何でもすっごくおいしいもんね。
「ん~もぅ!うちの相手はそないに退屈なん~?」
「もちろん君も魅力的だよ」
「ほんまぁ?うちん話ちゃんと聞いてくれてんのぉ~?」
「もちろんさ、ちゃんと聞いてるよ」
お姉さんは、お酒の相手してぇなぁと、飛白の腕を引っ張る。
ちょっとでもほかの人に飛白の気がそれるのが、気に入らないみたい。
お、お仕事だし、しょうがない、よね……
「あのお姉さんは、ホントに飛白がお気に入りなんだね」
「ああいう客やない時は、力づくで黙らせとるしな」
わ、そんなこともあるんだ。
「そんなことないよね、オーナー」
「ギャ――――っ!!ナイナイ!ナイで!!」
がしっと頭を掴まれて、んごーは泣きながら否定する。
なるほど、んごーへの対応がそうじゃないお客様への対応なんだね。
どれくらい力を入れてるのかな?…んごー、ぺちゃんこだけど。
「んもぅ~、そんなん相手にしてんと うちのこと構てぇなぁ~」
「これは失礼れました」
そう言って自分のグラスを取り上げる。そういう仕草は大人の男の人だなぁって思う。
お酒のグラスが似合うのはなんだかすごく大人っぽい。
でももし、んごーが飲むならあぐらかいて、一升瓶片手に持ってて、
おツマミなんかも適当に買ってきたもので、なんかおじさんぽいかも。ふふっ。
裏子だったらどうかな?小さくて足の長いグラスが似合うかも、指でつついたりしてて。
でも、前に見た酔っ払った裏子は私にのしかかりながら、「うるさい!お前も飲めー!」
ってずっと言ってたよね。思い出したらおかしくなって笑ってしまった。
「?何か面白いことでもあったのか」
「えっとね。そういえば前にみんなでお酒飲んだ時、飛白だけはあんまり
酔っ払ってなかったし、もし酔っ払ったらどうなるのかな?って考えてたの」
「酔っ払ったら泣き上戸だったり、とか?」
「うん、いろいろ考えてたら面白くなっちゃって、ふふっ」
「そうやなーどれが一番おもろいやろか」
「脱ぎぐせとか?」
「なんか普通だよなー」
「笑い上戸は?」
「それはんごーだろ」
「ちゅうかあいつはいつも誰かからかって楽しそうやしな」
「んー、じゃあ説教グセとかは?」
「…何を説教するんや?」
「説教ならアタシがしたいよ!」
「ろれつが回らなくなったり?」
「それはちょっと面白いかもしれんで」
「ウザイだけだろー?」
「寝ちゃったり?」
「そういえばアイツが寝てるところは見たことないなー」
「ワイも見たことないな」
「甘えてきたりは?」
「「キモ!」」
2人して、声揃えなくても。…そんなに変かな?
そうでもないと思うんだけど‥‥‥
でも、誰彼かまわず甘える飛白は、‥‥考エタクナイ。
むぅ~っ、どうか飛白がほかの誰かの前で酔っ払ったりしませんように!
いろいろ想像するのは、楽しかったけど、飛白とはあんまりしゃべれなかったな。
お店が繁盛するのはいいことだけど、ちょっと複雑‥‥。
後書き
オリジナルキャラ”ビー”の登場です。
名前のとおり、ミツバチみたいなグラマラスなお姉さんキャラ。
ちょっとしたこだわりですが、んごーは大阪弁、ビーは京都弁と違いがあるんです。
ローカルな話だからわかりにくいでしょうが、関西弁といっても、
大阪、神戸、滋賀、京都、奈良それぞれ違うんですよね。
そして、大阪の人はなぜか京都人にライバル意識を持ってると感じます。
人情に厚い大阪人、本音を隠す京都人と、なぜかよく言われます。
京都人は人間関係に角を立てるのが嫌で、遠まわしな言い方をするだけなのです。
だからモノの言い方はとても柔らかいのに、言ってることがキツく感じるのでしょうね。
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