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BloodTeaHOUSE

作者:
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ようやくの決着

 
前書き
イベントネタバレが含まれております。ようやく決着編でございます。
こちらを読む前に是非本体で遊んでください!お願いします((。´・ω・)。´_ _))ペコリ









   

 
「…飛白…、………ぁの……血………」
飛白に小さい声で声をかける。


             ◇            ◇

飛白がもう私から血は貰わないといった日、私は途中で気を失っちゃったらしくて、
目を覚ますとお店の2階で、前にも泊めてもらった部屋に居た。

ぼんやりと薄明るい部屋を見回すと、一晩中傍に付いててくれたのか、
飛白はベッドの脇の椅子に座って、私の手を握っていた。
気を失ってから何があったのか、私の手を思いつめたような顔で、見つめてる。

「か、すり‥‥」

寝起きのかすれた声で名前を呼ぶと、はじかれたように顔を上げた。
やっぱり少し飛白の顔色が悪い気がする‥‥体調、悪いのかな‥‥?大丈夫‥‥?
裏子たちはどうしたの? あれこれ聞こうと、もそもそと体を起こす。

「…君が嫌なら、誰の血もいらない。だからもう2度と、あんな我慢はしないでくれ…っ」

いきなり私を、きつく抱きしめた飛白はすごく苦しそうな声で言う。
気を失っちゃったのがそんなに心配かけたのかな‥‥?
飛白の急な態度の変化に戸惑って、血はいらないなんて言い出したことが心配になる。

「…で、も……血液は…必要、なんじゃ……」

吸血鬼が活動するには、”人間の生き血”が必要なんだと、裏子も飛白も言っていた。
飛白が活動できなくなるのは、会えなくなっちゃうのはやだよ‥‥

「君は…ずるい……僕が…君に…強く、言えないのを…分かってて…それを…言うんだ?」
「……ごめんなさぃ………」
「そうやって謝りながらも……僕に…吸血を強要するつもり、なんだろ………」
「………ごめん…なさ…い…」
「……君が…譲らない…なら………手加減はしないよ……?」
「…うん」
「……バカだよ……君は…こんなことのために…………」
「…うん」
「………僕も…馬鹿…だ……君の…僕を縛る気持ちが……嬉しい…だ…なんて………」
「かす、り……」

             ◇            ◇

あれから13日、辛い思いさせるんじゃないかと思うと、どうしても言い出せなくて、
つい先延ばしにしてしまったけど、他の誰の血も飲まないって飛白は言った。
だから、あまり先延ばしにするわけにはいかないよね……必要なことなんだし……

なんとか今日こそは、と勇気を振り絞って血液の提供を申し出た。
断られたらと思うと怖くて、視線が下がる。

「僕に…血を?……いいのかい?手加減はしないと言ったはずだよ」

その言葉に少し安堵しながら頷く。この役目を誰かに譲りたくないから……
飛白はカウンターから出てきて、私の髪をそっと払う。
今まではカウンター越しだったから、それだけでどきっとする。

服の首元を緩めて首筋をさらし、手は肩じゃなくて背中を抱きしめる。
その優しい仕草の1つ1つが、私をどきどきさせる。

「……君なら…この痛みさえも受け入れてくれるだろう……?」

そう耳元で囁いて牙を突き立てる。痛いけど、やっぱり嫌じゃない。
距離が近いせいで、いつもより飛白の変化がすぐにわかる。
抱きしめる手に力がこもり、熱を上げていく身体を近くに感じるだけで、
胸がいっぱいになる。

よほど血に飢えていたのか、いつもより長い吸血のせいで徐々に思考が霞んでいく。
それでも流れる血を舐め取られると、身体は反応して甘えた声が出てしまう。

「…ん……香澄……君の血で…僕は満たされ……ふ……だが…欲望が次々と溢れて……」

濡れた音と甘い囁きに霞んだ思考がかき乱されて、飛白だけで心がいっぱいになる。

「………君に支配され……、……君を支配したい……ん………」
「……か…す り……」
「……ちゅっ……僕が…吸血鬼 だから…ではない………僕は―――…………」

かくんと膝から力が抜けた。たぶん少し貧血を起こしたんだろう。

「…っ、香澄ちゃ!」
「……だ、いじょぶ………へい、き…」

とはいえ自分じゃ立ってられないから、飛白に縋りつく形になってしまう。
かなりみっともなくて、情けないな‥‥
そう思ってたらふわりと抱き上げられ、ソファに寝かされた。

「……すまない。…君の血に…夢中になりすぎた……」

膝枕されてるのがちょっと照れくさいけど、夢中になってくれたのが嬉しかった。
私の血を美味しく産んでくれた、天国のお母さん。感謝します‥‥
嬉しくってすりすりと擦り寄ると、なぜか慌てたように飛白があたふたする。

「っ、…香澄ちゃ、その…そういうことは……っ」
「?」

見上げると、焦る顔の飛白と目が合う。‥‥顔が赤いよ、飛白。どうしたの?
何の気なしにその赤い頬に手を伸ばす。
あ、すごく熱いね。ぺたぺたと頬を触ってると、やんわりと手を握られる。

「っ……僕も、男だから……今…そういうこと、されるのは……っ」

そう言われてようやく気がついた。
膝枕で擦り寄ってるんだから、その位置は腰になるわけで‥‥うわわわっ!
くらりとする頭を我慢して、慌てて膝の真ん中まで戻る。

「ぁう‥‥」
「大丈夫かい?」

急に動いたせいで、頭がくらくらして目が回る。
宥めるように優しく撫でてくれる手に、目をつむってため息を漏らす。
あたたかい飛白の手が気持ちいい‥‥

「……僕の…付けた…印……絹のような…髪……君をこのまま…僕、だけ…の………」

ぴたり と手が止まる。見上げると、顔そらす飛白。
そのまま頭から手を離しちゃった。‥‥気持ちよかったんだけどな。

「……君の血に…当てられてる みたいだ……すまない…」
「飛白‥‥?」
「いや、デタラメを言った わけじゃ……その、今は…忘れてくれると…助かる……」
「ん…」

相当気恥ずかしかったらしくって、耳が赤くなってる。
ふだんは色々過激なこと言うくせに、いがいとテレ屋だよね‥‥ふふっ

たまには、こうやって膝枕してもらえるんなら貧血もいいかも。‥‥たまには、だけどね。













 
 

 
後書き
香澄ちゃんは気を失ってからの記憶がありません。だから飛白が気を変えた理由が
いまいちわかってないのです。ちょっと紆余曲折いたしましたが、ようやく決客しました。
書いてる方としても、いつまで引きずるつもりやねん!と思っていたので、一安心です。

アレンジにお付き合い頂きましてありがとうございます。
 
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