BloodTeaHOUSE
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吸血鬼でも武器を使う
裏子は、しょっちゅう包丁とかクナイをどこからともなく取り出して振り回してる。
店内で振り回してるだけなら、逮捕されたりしないだろうけど、時々ヒヤッとする。
飛白はどこで手に入れたのか銃を持ってる。2人とも立派な銃刀法違反だ。
「その拳銃ってなんて名前なの?」
「マテバだよ。6Unica、カスタムパーツが豊富なのが面白いね」
そう言って見せてもらう銃には、いつもはついてない部品が銃身の下についてる。
なんだろうこれ?丸っこくて細長い‥‥下に付いてるんだから覗くわけじゃないよね?
「これ、いつもはついてないよね?」
「これかい?これはレーザーポインタだよ」
ポインタをつけると、赤い光が真っ直ぐ点になって壁に当たって光る。
「狙いやすくするためのもの?」
「普通はそういうふうに使うね」
「?」
狙うために使わないんだったら何に使うのかな?
「レーザーポインタの光は指向性があるから、こうやってオーナーの目潰しに使える」
「眩しいからやめーや!目がチカチカするっ!」
「それが面白いんじゃないか」
「おもちゃで遊んでるみたいだね・・・」
今日の飲み物、季節のフルーツのミックスジュースを飲みながらちょっと苦笑する。
とろりとしたジュースに砕かれた氷が混ざっててとっても美味しい。
「オモチャみたいなものだよ。力で抑えつけるだけなら必要ないものだしね」
「ふーん。ねえ、それ触ってみてもいい?」
「いいよ。ただし、引き金には触らないようにね」
「はーい」
おっかなびっくり両手で銃を受け取る。ズッシリなんてものじゃない。すごく重い!
危うくびっくりして落っことすところだった。
「重っ!こんなのよく片手で持てるね」
飛白はいつも片手で撃ってるから、こんなに重いと思わなかった。
2Lのペットボトルよりはるかに重い。倍くらいあるんじゃない?
「改造した分重くなってるけど、弾も重いからね」
そういってシリンダーからチャラチャラと弾を抜いて銃を渡してくれた。
持ってみると、さっきより随分軽い。半分以下?くらいかも………
それでも充分重い。私じゃ絶対扱えなさそう‥‥
「弾入ってないんだから、引き金引いてみてもいい?」
「やめておいたほうがいいよ」
「どして?」
「その細い腕じゃ手を痛めるだろうしね」
むぅ~ってなって、引き金を引いてみる。すごく硬い。
「うううううう――っ!」
両手で力いっぱい引いてもビクともしない。
引き金を引くどころか、力入れすぎて手の方がすっごく痛い。両手をぷらぷら振ってると、
「おいっ!香澄に触らせるようなものじゃないだろ!怪我したらどうするんだ!」
奥から出てきた裏子に怒られてしまった。
裏子は私が飛白と仲良くするとよく怒る。普段から飛白にからかわれてよく怒ってるから
ずいぶん慣れたけど、最初は少し怖かった。
でも、私を心配して怒ってるんだから、ちゃんと反省しないといけないのかも。
「弾は入ってないから大丈夫だよ」
なんて言いながらカチンカチンと指一本で楽々と引き金を引く。
その度に撃鉄が軽々と動く。握力(?)がすごく強いんだ。
「引き金引くだけで撃鉄が動くんだね」
「オートマチックリボルバーはそういう機構だからね」
転がってる弾をつまみ上げてみる。見た目どおりズシッと重い。
こんなの当たったら体が吹き飛びそう……
ひのふのみの・・・全部で6個、両手で掬うように持ち上げたら銃と同じくらい重い。
「危ないから触るなって!」
珍しいからじっと見てたら、裏子に取り上げられてしまった。
だって、本物の拳銃の弾なんて、そうそう見られるものじゃないんだもん・・・・
「弾だけだったらどこにも飛ばないから危なくないよ~」
「コイツのものだってだけで十分危険だ!”変態”が感染ったらどうするんだっ!!」
ビシッと飛白を指さしてそう言い切る。裏子は飛白に対してやたら手厳しいなぁ・・・
やっぱり、普段からかわれてばっかりいるからかな?
「まあ、普通の女の子が喜んで触るようなもんやないわな」
んごーまでぇ~…だって拳銃って、かっこいいんだもん。
危ないのはわかるけど、ちょっとくらいいいじゃない~・・・
私がむってしてる横で、飛白は手馴れた手つきでシリンダーに弾を込め直している。
「珍しいのはわかるけど、香澄ちゃんには必要ないからね」
くしゃっと頭を撫でられて言い聞かせられてしまうと、聞き分けない顔できなくて
「うん…」と頷いた。持ち主が言うんじゃしょうがないよね・・・
そんな話をしてたらドアが開いたので、お客様かな?と思って振り向いたら、
目!目がいっぱい!!目のお化け!!
「おっす、百目木。いつものやつでいいか?」
「ギチギチ…」
目がいっぱいの、枯れ木みたいなお客様に驚きすぎて固まっていると、
「香澄ちゃん、見すぎだよ」ハッ
飛白にたしなめられて我に帰った。
ガサガサと音をってて移動するドウメキは気になるけど、
姿勢を元に戻して、一応言い訳してみる。
「い、いろんなお客さんが来るのね~」エヘヘ~
「まぁ、彼は人間から見ると、とても不思議に見えるというのは理解できるけど。
お得意さんだし、いい人だよ。なんせ裏子ちゃんの闇鍋を頼む貴重なお客さんだからね」
や、闇鍋!?名前からして危険な感じしかしないんだけど!!
闇の中で作るから闇鍋なの? そ、それとも出来上がった料理そのものが闇なの!?
「おまたせー♪裏子特製の闇鍋でーす」
「ギチ…ギチギチ……ギチ…」
トレイの上には青い湯気の立つ鍋。それを裏子が運んでいく。すごく、体に悪そうです…
っていうか、目はいっぱいあるけど口はどこ!?どうやって食べるの?
食べてるところをジロジロ見るわけにはいかないけど、ものすごく気になる……
「へぇー!そうなんだぁー。それは大変だったねー!」
「ギチギチギチ……ギチギチ…ギチ……」
「うんうん、わかるわかる!そういう時困るよなー!」
後ろのテーブルを気にしてたら裏子と百目木が楽しそうに(?)
談笑しているのが聞こえてきた。
「あの~、百目木と裏子って意思疎通できてるの?」
おずおずと飛白に聞いてみる。
会話してるように見えるけど、適当に相槌打ってるようにも見える。
「ああ、あれね。慣れれば、言ってることが分かるようになるよ」
こともなげに飛白にそう言われた。
私には「ギチギチ」と何かが軋むような音にしか聞こえないんだけど‥‥
「ホントに!?なんて話してるの?」
「ホントだよ。最近子供に百目木が見つかっちゃって、大泣きされたって話をしてるんだ」
「え~うそだぁ~」
確かに突然出会ったらびっくりして腰が抜けるか、泣いちゃいそうな見た目だけど‥‥
ああいうのが人目につくようなところに出現するなんて、想像できないよ。
「ホンマやで、追いかけるわけにもいかへんで、エライ難儀したっちゅうてるんや」
「裏子ちゃんが戻ってきたら、聞いてみるといいよ」
んごーが説明に加わってきた。うーん…2人がいうならそうなのかなぁ・・・
でも、どう聞いてもなにかの言語には聞こえないんだよねぇ‥‥私が人間だからかな?
「他にも、日本語じゃない人たちがお客さんにいたりする?」
「んー、たまにおるけど、たいがいは外国語程度や」
「え?んごーは外国語、話せるの?」
こんなベタな関西弁しゃべってるのに? んごーは国産のあやかしじゃないの??
「ワイか?ワイはヨーロッパやったら、だいたいなんでも話せるで。
あとはグロォンギィリタン語」
「は?ぐ、グローン?」
「グロォンギィリタン語。ワイが妖怪まとめとった国での公用語や」
「ああ、僕が潰した国か。あの時は悪いことしたね」
「あの時は実に楽しかった」とすごくいい笑顔で飛白は笑う。
「全然悪いと思ってへん顔で謝ってもらいたないわ!」
「んごーって妖怪の国から来たの?」
どこにあるんだろう?異次元とかかな? あやかしの国の言葉‥‥ちょっと興味あるかも。
どんなのかな?グローンギーリタン語っていうんだから、グローンギーリタン国の言葉?
「ただの国民とちゃうで!元は数千の妖怪束ねてた妖怪の王様や!」
キラーンと目を光らせて言うけど、そんなぬいぐるみサイズで言われても信じらんないよ。
んごーの身長は35cmらしい。頭のほうが大きいし、黙ってたらオモチャに見える。
「またまた~。今はもうない国だからって話作らなくっても」アハハ
妖怪の国があったとしても絶対一般市民だよね。しかも弱よわのいじめられっ子。
笑いながら、何言ってるのよ~というと、
「ウソちゃうで!ウソやないからな!!」
涙ながらにんごーは真実だと訴えてくる。んだけど、
そうやってすぐにベソかくから、さらに強く見えないんだよね。
「ハイハイ。飛白は外国語話せる?」
ベソかいてるんごーをスルーして聞いてみる。
金髪だし青い目だし吸血鬼だから外国語いっぱい話せそうだよね。
「僕は母国語の英語とフランス語とイタリア語だよ。移り住んで話していた程度だけどね」
「やっぱり外国生まれだったんだ。アメリカ生まれ?」
「イギリスだよ」
「えっと、英語ってクイーンとかコックニーとか色々あるんだったような……」
イギリスとアメリカじゃ発音が違うとか、
文法もちょっと変わるって英語の先生が言ってたっけ。
「コックニーは下町言葉だね」
「そうなんだー。飛白はどっち話すの?」
「お?何の話だ?」
「どんな外国語を話せるかって話だよ」
あれ?躱された?実は田舎の訛りがあって恥ずかしいとか?
うーん、飛白に限ってそれはなさそうだよねー。いろいろ器用だし。
むしろ両方話せる上にアメリカ英語も使えるとか、そういうこと言いそうなんだけどなぁ。
「アタシは広東と北京と上海と、英語がちょっとだな」
「ほとんど中国語やん!」
「何言ってるんだよ。広東と北京じゃ発音も文法も違うんだぞ!」
おんなじ国なのにすごいな中国。国が広いからかな?でも不便そう……
親戚に会いに行ったら言語の壁にぶつかる、なんてスケールが大きいよね。
「テスト前に英語教えてほしいなー。3人とも話せるなら誰か教えてもらえるかな?」
別に英語の成績は悪くないけど、同じ言葉が話せるようになるって楽しいかも。
授業の分くらいしか勉強してないから、しゃべれるようになってみたいな。
「んー、アタシはもうほとんど忘れちゃってるしなぁ。飛白なら教えられるだろ?」
そっか、中国じゃそれなりに英語って使うけど、
旅行に行ったら発音がすごいめちゃくちゃだったって英語の先生が言ってたっけ。
「イギリス英語なら教えられるけど、学校で習うのはアメリカ英語だろう?」
「あー、うん。でも、どう違うのかちょっと興味あるな」
「まぁ、機会があれば、ね」
うん、テストの点数上がらなくても、知りたいな。
あ、裏子に百目木のこと聞くの忘れてた。2人がホントのこと言ってたか聞かなきゃ!
「ねえ裏子、さっきお客さんと何かお話してたでしょ?」
「そうそう、なんか子供に姿見られたらしくてさ。
その子供が泣いて逃げちゃって、アイツ 追いかけようかどうしようか悩んだんだって
だから見た目で判断するのはよくないよなーって話ししてたんだ」
さっき聞いた内容とだいたい同じだった‥‥見た目で判断ってのは―――…
闇鍋の、理科の実験でも見たことないような毒々しい青い湯気‥‥裏子の料理のことかな?
「ね?」「な!」
二人にそう言われて複雑な気分になる。正しかったみたいだけど、納得がいかない!
「むぅ~ わたしだけわかんなかった…みんなズルイ」
「慣れれば香澄もわかるようになるって!」
わかるようになりたいような、慣れたくないような、女の子の心は複雑なのだ。
「そういや休憩室にMP3プレイヤー置いてあったけど、あれ誰のんや?」
ふと、んごーが思い出したように聞く。
MP3プレイヤー、音楽とか聴く装置だけど、使ったことないなぁ‥‥‥
家にはレコードの方が多いから、聴くとしたらそっちだし。便利そうだけどね。
「えっへん!あれは裏子サマがゲームセンターでゲットしたのだ!どう?スゴイだろ?」
んごーの言葉に、ドヤッとばかりにすごく自慢げに裏子は胸を張る。
「えー!ほんと?あれってすごく難しいんでしょ?よく取れたねー」
思わず身を乗り出して感嘆の声を上げる。
UFOキャッチャーは私も何度かやったことあるけど、成功したことない。
しかもMP3プレイヤーってのがすごい。たぶん1回300円の高いやつだよね。
「ふっふっふ。もっと褒めていいぞ!なんせゲットするのに5万もかかったんだからな!」
「‥‥‥‥‥え?」
5万円?5万円って言った? 一回100円とか300円とかだよね?
300円だとしても167回も挑戦したの?? あ、千円入れたら6回できるから…300回!?
……それ…もしかして、買ったほうが安かったんじゃないの?
「裏子ちゃん。アレ、元値2万円だよ」
飛白が少し呆れたように言う。んごーもやれやれといった様子だ。
裏子はかわいいのに、なにかと残念だな。 料理とか。料理とか。料理とか。
「よーし、今日はんごーを使って何か料理するか!」
「ワイは食材やない!」
「んごーのドクダミ包み焼きとかどうだ?」
「話聞けや!」
…んごーを料理に使って食べられるんだろうか。おなか壊しそう。
「どうせ食べるなら、香澄ちゃんと裏子ちゃんが食べたいな」
「変態発言禁止!」
「僕を独占したいのかい?残念だなぁ、どちらか1人なんて選べないね」
「そおいうことを言ってるんじゃないっ!死ネ!‥‥イヤ、コロス!」
あ~また始まっちゃったよ‥‥
裏子はいったい何十本持ってるんだってくらいクナイを投げてくるし、ちょっと怖い。
飛白は基本的に銃を裏子には撃たないんだけど、(んごーには時々撃ってる)
あれは脅迫用だからみたい。
「ワイの店壊すな―――――――――っ!!」
んごーの悲痛な叫びが今日も店内に響く。それに慣れつつある私もなかなか凄いよね。
後書き
飛白の持ってる銃、本家では「マテバ2006M」ですが、
弾薬交換時の挙動の好みから「マテバ6Unica」に変更しています。
カスタム内容は、銃身8インチ(約20cm).454カスール弾使用、重量5kg強、全長28cm弱
マテバは2005年に会社がなくなったので製造はもうされていません。
裏子の包丁は肉切り包丁で、2本使いです。
さりげなくゴーストのドウメキが出演してるの忘れてました。
配布先はこちら http://tricross.sitemix.jp/
嫌ゴの類なので導入はよくご検討の上でお願いします。いや、私は好きなんですが。
なんとなく、ドウメキの目玉って裏子が食材にしてそうだし
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