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BloodTeaHOUSE

作者:
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君を信じたい

 
前書き
恒例のイベントネタバレがやってきました。
こちらを読む前に是非本体で遊んでください!お願いします((。´・ω・)。´_ _))ペコリ









   

 
夏休みも終わり、元どおりの期間にお店に通うようになったある日、
お店の前でばったりと飛白に出くわした。

「あ、こんばんは。飛白」
「ようこそBlood Tea HOUSEへ」

なんて、キザなお辞儀をする飛白。ちぇっ、私もなにか気の利いたこと言えばよかったな。

「いつも来てくれて嬉しいよ。君は本当にこの店が好きなんだね」

お店は好きだけど、好きなのはお店だけじゃないのに。
もしかして、もしかしてだけど、前に言ったこと、なかったことにされてるのかな‥‥?

「お、お店も好きだけど、飛白に会いに来るの、楽しみ、だから……」
「え……………………… あぁ、すまない。………少し、意外で、驚いてしまった」

「わ、わたしの気持ちは、前にちゃんと……わ、忘れちゃった?」

もうそれだけ言うだけで、顔から湯気が出そうになる。
忘れられてたりしたらどうしよう‥‥‥たぶん、絶対泣いちゃうよね。

「いや、覚えてはいるよ……………… だが、前にも言ったろう?」

きゅっと口をつぐむ。わかってる、受け入れられない想いなんか迷惑だよね。
前もすごい拒絶された。キツいこと言われるのかと体が硬くなる。

「僕がどういった人間なのか、そして、君の好意は一歩通行で終わるとも。
 僕には、心がないのも同然なのだからね」

飛白が自嘲気味に吐く言葉。人を、誰も、信じられない……
一夜を共にするなら誰でもいい。そう言ってたよね。でもね、でも!

「飛白に…心がないなんて、思えない、よ……」

私の知ってる飛白はほんの一部分だけ。それでも、心がないなんて思えない。
嘘だけで出来てるなんて思えない。花火で火傷したとき、心配してくれた。
オムライスが好きで、おいしいって言うと、いつもより嬉しそうだった。
チョコの匂いが苦手。バイオリンを弾くときの顔。ぜんぶ嘘なんかじゃい。

「…………………………はぁ。
 なぜ、僕自身のことを他人の君が断言できるんだい?
 そのほうが都合がいいからかい?自分の都合で僕を捻じ曲げて見るのはよしたまえよ」

呆れたような声に、心が軋んで痛い。それでも、首を縦には振れない。

「……ほら、ご覧の通りだ。僕は君の考えてるような人間ではないだろう?
 君の、描く理想とは程遠いはずだ」

顔を背け、そう言うけど、人をからかってばかりだけど、エッチなことばっかり言うけど、
誰も信じられない人だけど、夜の相手取っ替え引っ替えしてるけど、それでも………

「わ、わたしは、理想の王子様なんか、求めて、な、い……飛白が、いい…」

見た目に騙されてるんじゃないって、頑張って伝える。
も、もちろんすごくかっこいいし、美形だけど、そこだけが好きなんじゃないんだもん!

「まさか…… それは、本気で言ってるのかい?」

飛白の声に困惑の色が滲む。きっと困らせちゃってるよね。でも、諦められない。
1度で伝わらないなら、何度だってこの気持ちを伝えよう。

「戯れでこんなこと言えないよ。本当に、そう想ってる……嘘じゃ、ない」

そう、何度だって、何回だって、痛くっても、伝えたい。 伝わるまで、ちゃんと。

「…………バカな!…… 僕が君に言ったことを、本当に理解した上で言っているのかい?
 それとも、僕が何を言ったか、忘れてしまったとでもいうのかい?
 なんならもう一度最初から説明が必要なのかな?」

「ほら、君は今すぐ、さっきの言葉を撤回するべきだ」

胸が痛いけど、顔は熱いけど、飛白をまっすぐ見つめて言う。

「飛白が、好き」

精一杯まっすぐな言葉で伝える。青い瞳を見つめて、届きますようにと、祈りをこめて。

「…………… 本心なのかい? ………それが、君の。…本当に?
 それが本心だと、その言葉が真実だと、君は証明できるっていうのかい?」

少し驚いた顔をしたあと、そんなことは出来はしないだろうとばかりに
ツケツケとした口調で詰問される。 でも、ここで怯んだりしない!

「できる。……何をすればいい? 信じてくれるなら、なんだってする…」

どんなことを言われてもいいように覚悟する。どんなことだって、
なんだってするよ。なんなら悪魔に魂を売ってもいい。そう思って飛白を見つめる。

「…………、……、…、………すまない。
 慣れないことを言われて…少し混乱しているみたいだ………」

少し困ったふうな顔。そんなに困らせるようなこと……だったのかもしれない。
どうしよう……嫌われちゃったら。もう来るなって言われちゃったら、どうしよう……

「…バカだな、僕は。 冷静になろうとすればするほど、そうではいられなくなる……」

ごめんなさい… 困らせちゃったんだよね……… しょぼんと俯いてしまう。
張っていた虚勢もしぼんでぺしゃんこになってしまった。

「……………僕は………、人からの好意に、慣れていない……
 いや…… 本当は、否定して、拒絶して、ただ、自分が安心していたいだけなんだ」

飛白が静かに語りだす。 偽りの世界に身を置くことの、意味を。理由を。

「僕は、裏切られるのが……………………怖い。
 たまらなく怖いから………先に、何もかも壊してしまうんだ…」

私には想像もつかない、切なる思い。身を切るような言葉。
ただ黙って見上げて聞くことしかできなかった。

「ハハハ、可笑しいだろう? 200年も生きておいて、
 そんな子供じみたことを、考えているだなんて」

乾いた笑い声が哀しい。想像すら許されない悲しみが哀しい。

「わ、たしも、怖かった。飛白に、拒絶、された、ら、って…」

短い私の生の中で、1番に怖かったこと。飛白がこっちを見なくなること……
嫌われるよりもずっと怖い………無関心になられること。

「………………そう、か……君は、僕に、拒絶されることを恐れながらも、
 僕に、向き合ってくれたんだね………………そう……か……………」

ちゃんと、伝えられただろうか。私の気持ち。伝わっただろうか。

「僕は………信じてきた人たちに、何度も裏切られた……
 人の好意は、信用できない。……いつからかそう決めつけて諦めてしまった。
 ………本当は、ただ、自分が踏み出す勇気が持てなかっただけなんだ。
 そんな自分を、隠してしまいたかった。………それだけなんだ」

それは、飛白がまだ人間だった頃の、話……? それとも………
きっと、私じゃ聞いちゃいけないことなんだよね。

「そんな風に、自分を偽り続けてきた僕だけど …………君を……
 君を、僕は………信じたい。 そう、思うんだ。心から」

え………? 今…… 飛、白…? ウソ……
真っ白になった頭を全力で機能回復して、言われた言葉を反芻する。

「信じて欲し、い。 わたしも、飛白を、信じる」

それ以上、うまく言葉にならなかった。だから、じっと目を見る。

「……僕は………努力しよう。…自分を変えるために。
 君が、僕に、向き合ってくれたように、僕も、自分自身と向き合い受け入れられるように
 過去と、向き合き合うことを、覚悟しよう。

 …………………………君を、信じるために。
 君に、向き合えるように……………………………」

飛白の顔を見てると、胸があったかくてきゅうっとなって、いっぱいになる。
笑ってる飛白の、こういう顔、好きだな。たまにしか見られないのが、残念だけど。

「………………長話してすまない。
 だが、君のおかげで僕は今まで踏み出せなかった1歩が踏み出せる。
 ありがとう、香澄ちゃん」

とびきりの優しい笑顔にドキっとする。
だから!そういう不意打ちはずるいと思う‥‥おかげでまた顔が熱くなっちゃって、
赤い顔がおさまるまで、しばらくの間、お店には、入れなかったじゃないの!




 
 

 
後書き
どうか作者様ご容赦ください~m(_ _;)m 
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