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BloodTeaHOUSE

作者:
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ファーストキス

 
前書き
恒例のイベントネタバレがやってきました。
こちらを読む前に是非本体で遊んでください!お願いします((。´・ω・)。´_ _))ペコリ









   

 
今夜は綺麗な三日月が笑ってるみたいに見える。
冬のほうが空気が澄んでいるのはお店の近くも一緒で、チェシャ猫の笑顔みたいな月を
飛白がベンチに座って眺めてた。上着、着てないけど寒くないのかな?

「こんばんは。今日は月が笑ってるみたいだね」
「やぁ、いらっしゃい。僕も機嫌の良さそうな月に誘われてね」

2人で黙って月を見上げる。
ゆっくり動く月をただじっと見てるだけで、なんとなく楽しいから不思議。

「………………隣、座らないかい?」

差し出された手をギュッとにぎる。やっぱり、すごく冷えちゃってる‥‥‥
ベンチに座っても手を離したくなくって、繋いだままでいると、クスッと笑う飛白。

「僕の手は冷たいだろう?香澄ちゃんの手が冷えるよ」
「いいの。飛白の手、あたためたいから」

冷たいのも、半分こにすればずっと心があったかいもん。
そう思ってきゅっと手をにぎる。

「え‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥そうか‥‥嬉しいよ。ありがとう‥‥‥」

飛白の嬉しそうな声がうれしくて、心がきゅっとなる。ついでに体温も上がる。
マフラーにちょっと顔をうずめてみたりして、赤い顔を隠す。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥君には‥‥いつも、もらってばかりだな‥‥‥‥」
「?」

えっと、飛白にあげたもの‥‥発表会の曲、だけだよね? 首を傾ける私に、笑う飛白。

「君は気が付いてないだけで、僕は君に、本当にたくさんもらってるんだ。
 ちょっとした優しさだとか、ちいさな喜びだとか、
 目に見えないけどキラキラした綺麗でうれしいものを、ね」
「そ、そんなの‥‥」

お互い様だと思う‥‥‥マフラーの中でもごもごと言う。
飛白のうれしい顔を見ると、うれしくなるし、やさしい顔もたのしい顔もてれた顔も
一緒にいられること全部、ちいさいけど大切な宝物だよ‥‥

「………以前の…僕なら……それをもらっても…気付きもしなかっただろう……
 でも、僕は変わりつつあるんだ……君の、おかげだよ。 ……香澄ちゃん」

その言葉だけでうれしくって、ちょっと泣いちゃそうなくらい胸がいっぱいになる。
しぱしぱと泣かないようにまばたきを何度も繰り返して我慢する。泣くと裏子が怒るし‥‥

「‥‥‥しかし、もらいっぱなし、というのも‥‥情けない話だな。
 次までに何か考えておくから、少しだけ待っていてくれたまえ」

意外な話の展開に思わず涙が引っ込んじゃった。‥‥飛白、からの‥‥プレゼント‥‥‥?
‥‥こんなに十分なのに?  でも、もしも 何か もらえるなら‥‥‥

「ぃ、今‥‥もらえるもの、が…いぃ‥‥‥」

ガンバっておねだりしてみる。ほしいものが、1つある‥‥
言うのは‥‥その、かなり‥‥すごく‥‥勇気が‥‥いるんだけど‥‥

「今?」

こくこくと必死でうなずく。すでに頭が沸騰しそうなほど緊張してるんだけど‥‥‥

「生憎だけど、今はこの身1つしか持ち合わせてないよ」
「………き…きす…して…ほ…し……」

ぜったい今旧式のロボットがオーバーヒートしたみたいに耳から湯気とか出てるよね‥‥?
地球の温度が上がったのも、南極の氷が溶けるのも、今だったら私のせいだと思う‥‥

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

む、無言‥‥!? い、今からでも、走って逃げるべきかな‥‥‥?
もう恥ずかしくて、今飛白がどんな顔してるのか見ることもできないし、に、逃げちゃう?

「‥‥‥そんなものがお返しになるのかい?」

やっと返ってきた返事に、目と口をぎゅっとつむって何度もうなずく。
今 目とか口とか開いたらタマシイとか抜けちゃいそうだから、もう必死でうなずく。

「物欲のない子だね、君は‥‥‥
 それならお安い御用だけど。ただし、キスだけで終われる保証はないよ?」

その言葉にどきっとする。 え、あ、ぅ‥‥‥
でもすでにもう動けないくらい体がガチガチになっちゃってるし、その、信じてるし‥‥

「かまわないなら、そのまま目を閉じていてくれ‥‥」

私の顎を飛白の大きな手が捕らえて、顔が上を向く。ぜったい私の顔 真っ赤だよね‥‥

「………いいこだ。かわいいよ。……っ………ん………っ」

ずっと外に居たせいか、私が顔を熱くしてたせいか、飛白の唇はひやりと冷たかったけど、
初めてのキスはやさしくて、夢みてるくらい気持ちよかった。

「さ、目を開けておひめさま」
「…………………」
「くすっ、そんな顔して、かわいいなぁ。ますます君に夢中になりそうだよ」
「~~~~~~~~っ!」

大人の余裕なのか、飛白のいたずらっぽいからかいに目眩がしそうなほど恥ずかしくなる。
でもそれ以上にうれしくて、もう逃げようとは思わないんだけど‥‥

「恥ずかしいのかい?……君は本当に可愛いよ
 こんな君が見れるんだから、勇気を出した甲斐があったよ」

‥‥‥‥‥‥‥‥‥ぇ? 勇気‥‥? 飛白が?
首を傾けて見つめると、さっと目をそらす飛白。 顔が赤く染まってるのが私にもわかる。

「……意外だったかい?  さすがに僕だって緊張するさ、相手が君なんだからね。
 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥おかしいかい?」

一生懸命ぶんぶん首を振る。それって都合よく解釈しちゃっていい、かな? いい、よね?
その、特別だって‥‥思っていい、よね? だったら、すごく、うれしい‥‥‥

「おっと!」

思わずぽすんと、そのまま飛白の胸に飛び込んじゃった。
うれしいけど恥ずかしいから、お互い顔が見えないようにするにはそれしか思いつかなくて
顔を見られないようにぎゅっとしがみつく。

「やれやれ、君のこういうところに、僕は勝てないみたいだね。君の勝ちだよ」

やさしく頭を撫でる手つきが、うれしくて、くすぐったい。

「君がいたから…あたたかい日常に触れられるようになれた。
 人を信じられるようになった。‥‥‥ありがとう、香澄‥‥ちゃん」

くっついてるところがあったかいから、もう冬だけど、1人で凍えなくてもいいよ、飛白。












 
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