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BloodTeaHOUSE

作者:
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占い

「こんばんはー」「おっす」「いらっしゃい」「まいど~」
いつもように挨拶しながらお店に入ってくると、カウンターの端に見慣れない箱がある。
なんだろうと寄っていって眺めてみる。紙製‥‥じゃないよね。
施された模様は精緻でいて大胆な構図。幾何学模様……ともちょっと違うかな?
触っちゃまずいよね。木製の箱?なんて、しげしげと眺めてると、

「それが気になるのかい?」
「うん、綺麗な箱だけど何が入ってるの?」
「ウィジャ盤だよ」

そういって箱を開けて中身を見せてもらう。タロットカードに似たそれは、
中心にA~Zと1~9が彫り込まれている。それと一枚の丸い穴の空いた板。

「触ってみてもいい?」
「お好きにどうぞ」

そっと板切れを手に取り、丸い穴をのぞいても、向こう側が見えるだけ。なんだろうこれ?
大きな板に手を乗せて、指を滑らせる。太陽と月の模様、読めないような知らない言葉が
板を縁どるようにびっしりと書いてある。と、指を止めて気がつく
太陽の隣に”Yes”月の隣に”No”と彫り込まれてる。これ、もしかして……

「こっくりさんのための板?」
「正解に近いね。西洋のこっくりさん、テーブルターニングのためのものだよ」
「えっと、これ使ったら、ホンモノの幽霊が来るの?」

だってなんだかすごく本格的っぽいし、遊びで紙に書いてやるのとは全然違いそう。
もし使っちゃって、幽霊が帰ってくれなくなっちゃったら、怖いよね。

「呼び出すのは幽霊じゃなくて、精霊だよ」
「精霊って木とか水とか風にいる精霊?」

それならなんとなく怖くないかも。でも、精霊って呼びかけて答えてくてるものなの?
なんて首をかしげなから、板をなぞる。

「もしかして、疑ってる?」
「そ、そういうんじゃな、けど!どうして精霊が答えてくれのか、不思議で…」

うぅ~、くすくす笑われちゃってるよ~ぅ… だって精霊とかはまだ見たことないし……
どんなのか想像もできないんだもん!むぅ~!一人でちょっとむっとしながら、
ウィジャ盤を触ってると、

「あれ?」

1ヶ所だけ、妙に指が引っかかるところがある。
指が引っかかるというか、吸い寄せられてる? 思わずじっとそこを見てしまう。
ABCの1段目の端っこ、ちょうど月のマークの真下”K”の文字、だよね?

「嬢ちゃん、想い人でもおるんか?」
「えっ!」

思わずドキッとして、手を離して んごーの方を見る。

「ウィジャ盤ゆうたら、女の子は恋占いしたなるんやろ?」
「そ、そればっかり占うわけじゃないんじゃない?」

あ~びっくりした~‥‥でも、そういえばコックリさんでも”あの子は誰が好きですか?”
って質問は定番かもしれない。ちょっと興味あるけど、結果が悪いとやだな‥‥

「なんだなんだ~、恋占いか?」
「や、別にそういうんじゃなく、」

慌てて精霊がどうやってくるのかに興味があるって言おうとしたんだけど

「そう言うなよ~いい出会いがあるかもしれないぞ~?」
「占いとか結果が怖いから‥‥じゃなくて!仕組みが気になるから見てただけで‥‥」
「悪い結果は気にしなきゃいいんだよ!大丈夫、みんなでやれば怖くないって!」

もーっ!裏子ってば自分は純情で恋なんかしてことないっ!て感じなのに、
どーして私の相手のことになるとこうも積極的になるのかなぁ~‥‥

「ちょっとだけだよ?いい?ちょっとだけだからね!?」
「わかったってば」
「やれやれ、僕も付き合うのかい?」
「ま、こういうのんはみんなでやるもんやろ」

結局みんなでやることになってしまったから、
なんだか乗せられてしまったのが悔しいので裏子の事をたくさん聞いてやることにした。
お店のランプを全部消して、窓を開けてテーブルに4人で向かう。

真っ暗になるかと思ったけど、今夜は月の明りが明るいから、目を凝らせばウィジャ版がちゃんと見える。

「目が慣れてきたら、ランプなしでも結構ちゃんと見えるんだね」
「アタシらはもともと夜目が利くからなぁ」

そうだった。裏子たちの本来の活動時間は夜なのだ。
日中も平気で活動してるから、ついそういうことを忘れてしまう。

「で、これ。どうやるんだ?」
「……裏子、知らないでやろうって言い出したの?」
「まあまあ、ここに持ち主がおるんやから知ってるやろ?」
「もー‥‥」
「しばらく静かにしてるとテーブルが揺れ出すんだ、それが始まりの合図だよ」

静かに‥‥裏子、静かにできる?なんか途中で飽きたーっ!とか言いそう‥‥

「静かにだな!おっしわかったぞ!」

全然静かじゃない返事をしてる裏子に、若干の不安を抱きながらもみんなで黙る。
窓から入ってくる森の風が意味ありげでドキドキするなぁ。

カタ カタカタカタ

「!」

う、動いたよね?今。 お互いの顔を見回して、確認する。

「始まったようだね。質問は誰からする?」
「わ、わたしからするよっ」

裏子のために(?)考えておいた質問をして、早く驚かせたいのだ。

「なんだよ香澄、結局なんだかんだ言って楽しそうじゃん」
「ふっふっふ。こういう時は楽しまないと損じゃない」
「ほな嬢ちゃんからぐるっと順番に質問していこか」
「いくよーっ。‥‥裏子の運命の人は近くにいますか?」
「なっ!」

あははっ驚いてる驚いてる~。まさか自分のこと聞かれるとは思わなかったでしょ?
暗くてもわかるくらい裏子は真っ赤になってる。
ほんと自分のことになると、裏子はこういう話がダメなんだから~。

「ほー、それは興味深い質問やなー」
「そ、そんな相手いるわけっ、な、ないだろ!」
「まぁまぁ、ウィジャ盤に聞いてみようよ」

4人の手を乗せた穴の空いた板切れ”プランシェット”がゆっくり動き出す。
”N”、”E”、”A”、”R”、”A”、”N”、”D”、”F”、”A”、”R”

「えっと、Near and far 、かな?」
「近くて遠い未来ってことらしいね」
「ちゅうことはまだ現れてへんねんな?」
「ほ、ほらみろっ!いないっていっただろっ」
「でもちゃんと現れるんだね~、運命のひ・と♪」
「うっうるさーい!次に行くぞ!次の質問だ!」

コックリさんの経験なら、私のほうが豊富だもんね。
こういう、どんな質問が盛り上がるかは、裏子よりもよく知ってるのだ。

「ほな、ワイからの質問いくで‥‥その人物はお客さんですかー?」
「あはははっ、さっすがんごー、わかってるぅ!」
「な、なんだよ!アタシばっかり!」

私とんごーがハイタッチしてる横で、顔から火でも吹き出しそうな裏子が怒鳴ってる。
そうそう、ここでギャンブルの話をしないあたりはさすが千年以上生きてるだけあるよね。

プランシェットが動き出して、”Yes” のところで止まった。

「わぉ~、裏子やったね!これから新しい常連さんができたら気をつけておかなきゃ!!」
「ほっほ~ぉ?これは楽しみやなぁ~」
「うるさいうるさいうるさ~い!」
「残念、裏子ちゃんの運命の相手は僕だと思っていたのにな」
「そんな訳無いだろ!次、次はアタシだからなっ!」
「運命の人がどんな人か聞いてみるの?」
「聞かないよっ!えーっと‥‥か、香澄の運命の相手はいますか!?どうだ!」
「もうっ!わたしのことはいいから裏子のこと聞きたいのに~」

そう言いながらもドキドキする。だって、いないとか言われたら‥‥
プランシェットがするすると動いて、1ヶ所で止まる。”K”
私の指がひっかかったところだ。なんだろさっきから‥‥

「Kって、英語でなにか特別な意味があるの?」
「歌の名前にそんなのあったよな」
「あ、それ知ってる。黒猫の歌だよね」
「”night”に1文字足して”knight”になるって歌だったね」
「そんなん違ごて、これ、”イニシャル”ちゃうんか?」
「そっか!イニシャルがKのやつがお前の運命の相手なんだな!」
「‥‥」
「心当たりでもあるんか嬢ちゃん、顔真っ赤やで?」
「なら僕もKだからチャンスはあるわけだ」
「お前な訳無いだろ!」
「次、飛白だよねっ!?し、質問してみたらっ?」

なんとかこの話題から逃れたくて、飛白に話題を振ってみる。
飛白が終わればまた私の番だもんっ、裏子の事、質問すればいいよね!

「じゃあ‥‥香澄ちゃんはその運命の相手と幸せになれますか?」
「っ!」
「運命の相手なんだから、そりゃ幸せになれるだろ?」
「いやいやそれはわからんで?悲恋かもしれんやん」
「マリー・アントワネット王妃とフェルゼン伯爵のようにね」

すごーく愛し合ったけど、王妃とは身分違いで許されない恋だったとかだよね。
運命の相手だからって、幸せになれないこともあるのかぁ。もし、そうだったらやだな‥‥
プランシェットがするする動いていく。”No”にはいかないで!って思いながら見つめる。
”G”、”E”、”T”、”O”、”V”、”E”、”R”、”L”、”I”、”V”、”E”、”A”、”N”、”D”、
”D”、”E”、”A”、”T”、”H”、”Yes”

あちこちさんざんウロウロしたプランシェットが最後に”Yes”で止まった。
これは‥‥‥なんて解釈すればいいのかな?

「えーっと、最後にYesにきたけど、その前のはアドバイスか?」
「Get over live and death、だね」
「直訳すると、”生と死を乗り越えなさい”。だよね?」
「なんや障害があるんかなぁ、それも生死に関わるような」
「乗り越えた先の答えが ”Yes” なら、いいことなんじゃないか?」
「生まれ変わらないとダメだってことかも知れないよ?」
「またそうやって‥‥お前はヤなこと言うなよっ!」
「まぁまぁ、次行ってみよーや!」

なんだかちょっと複座な結果だけど、裏子のこともっと占おうかなっ!

「えーっと、わたしだよね。じゃ~あ‥‥」
「もうアタシのことはいいからなっ!」
「えぇ~!じゃ、んごーのことにしよっか!‥‥んごーの次のギャンブルは勝てますか?」

プランシェットが素早く”No”に移動したあと、”stop gamble” と指し示す。
あは、占いでやめなさいって出てる。

「なんでやね~~~~~ん!」

んごーの悲痛な叫びが響く中、みんなで「やっぱりねー」なんて笑っちゃった。






 
 

 
後書き
みなさん、ウィジャ盤で検索した時のがっかり感がわかるだろうか。
どれもこれも遊戯王。くっそくっそ!
テーブルターニングのウィキに載ってるウィジャ盤が可愛いので見てみてください。

あと、途中で余計なこと言い出す奴が出てきたせいで、
ちょっと頭を抱えたところが、この話にはあります。
絶対言いそうなセリフだけに、削ることもできなくて、かなり悩みました。

「そんなわけで、飛白、お前は後で職員室に来なさ~いっ!」銀魂3Z風味に 
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