IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第476話】
前書き
後少しで十巻ですな
皆様、BOOK・OFFで買う準備は出来てますかな
タッグマッチトーナメント前日の夜。
今日も簪とは訓練出来ず、ぶっつけ本番でやるしかないと思うのだがやはり一抹の不安を拭いきれなかった。
――というのも、簪との訓練での連携もあるのだが、前回のキャノンボール・ファストの乱入や文化祭でのテロリスト侵入等、明らかにイベントを狙っての妨害が多発してるからだ。
一応親父は居るものの、学園上層部の楽観視に不安しか覚えない。
幾らISを三十機あるとはいえ、ハンガーを潰されたらIS着用も困難だし、他にも色々と弊害が出る気がする。
――払拭出来ない不安を感じていると、不意にドアをノックする音が室内に木霊した。
椅子から立ち上がり、ドアを開けるとそこには――。
「ちゃお、ヒルトくん」
楯無さんだ――だが、表情はいつもの楯無さんではなく、眉根を下げて何だか申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
「こんばんは、楯無さん」
そう返事をすると、楯無さんは表情そのままの状態で――。
「入っていい、かな?」
「勿論です」
断る理由もない俺は、部屋へと楯無さんを招き入れる。
「ありがと。 じゃあ、お邪魔しまーす」
そう言って室内へと入る楯無さん、ドアを閉めて部屋に戻るとベッドに腰掛けて此方を見ながら――。
「……ヒルトくん、ごめんね? ……噂、聞いちゃったの」
「あ……」
成る程、通りで申し訳なさそうな表情をしていたわけだと納得する俺。
それと同時に、若干気まずい雰囲気が室内に流れたのだが、楯無さんは――。
「簪ちゃん……昔からヒーローに憧れてたから、ね。 ……助けてもらった織斑君に、理想のヒーロー像を見出だしちゃったのかも」
足を小さくパタパタさせ、困ったような笑顔を向けてきた。
「ヒーロー……か」
小さく呟く俺、無条件で助けてくれるであろう一夏の言葉が簪には心地好かったのかもしれない、それも自分の機体の件が吹き飛ぶ程に。
……だが、いつまでも偶像のヒーローに助けを求めるわけにもいかない、一夏なら尚更だ、現状の一夏だとどうにもならない。
無論俺とてそうだ、ヒーロー何て柄じゃないし、親父も言ってたが英雄と馬鹿は紙一重と。
現実はヒーローの様に甘くない、都合良く誰かが助けてくれるなんて事はまずない。
俺が難しい顔をしていたからか、楯無さんは口調を柔らかくして俺に言った。
「ふふ、この話はここまでにしましょう? それよりもそれよりも、ヒルトくんヒルトくん」
何かお願いしたいような眼差しを向けてくる楯無さんに、嫌な予感が過る。
「せっかくだし、マッサージお願い~」
「嫌です」
速攻で拒否する俺に、ムスッとした表情で俺を見てきた楯無さん、口を尖らせて――。
「ぶーぶー! ヒルトくんのけちーッ!」
当然の抗議と言わんばかりに唇を尖らせていた、正直最近皆とエロイ事し過ぎて楯無さんにまで手を出しそうになる。
流石にそれは不味いので俺自身が自重しなければいけないのだが、楯無さんはそんな俺にお構い無しで――。
「ヒルトくーん! マッサージしてくれないとお姉さん泣いちゃうからッ!」
言いながらだだっ子よろしく、ベッドに寝転がるやじたばた手足を動かした、チラチラと見え隠れする楯無さんの下着が嫌でも視界に入ってくる。
「っ……わ、わかりましたからっ!」
「ふふ、お姉さんの大勝利だねー。 ヒルトくん、よろしくーっ」
そう言ってうつ伏せになる楯無さん、まるで子供の様な駄々のこねかただったが――。
「じ、じゃあ……」
一応タオルを掛けようとするのだが楯無さんは――。
「タオル、暑いからいらなーい」
そう言ってぽいっと投げ捨てた。
……この人に貞操観念は無いのだろうか?
……今さら過ぎると改めて思いつつ、俺はベッドの横から楯無さんの足をマッサージし始めた。
何度か刺激すると、足の筋肉が固くなってるのに気付き、念入りに指圧をした。
「……っ。 ん……ッ!」
「楯無さん、大分歩いたんじゃないかな? 筋肉が固くなってる」
「あ、歩きまわった訳じゃないんだけど、ちょっと未来ちゃんに付き合って、ね……んんッ!」
刺激する度に喘ぎ声をあげる楯無さん、本職のマッサージ師に揉ませれば足の疲れも一気に取れるだろうと思いつつ、腿へと指圧していく。
甘美な喘ぎ声ではなく、明らかに悶絶してるような声をあげる楯無さんに、いたずらをしたくなりまた足の方へと指圧をしていく――そして、足裏を指で擽ってみた。
「……!? こ、こら――アハハッ! や、やめ……ひゃんっ!」
「あ、やっぱり楯無さんも足裏弱いんですね」
「よ、弱いんだからやめ――あ、アハハッ!!」」
足をじたばたさせて逃れようとする楯無さん、とりあえずいたずらを止めると荒く呼吸を整えていた。
「はあーっ、はあーっ! ……今度、覚えておきなさいよ……」
「いやいや、日頃擽られてる仕返しっすよ」
僅かに涙目な楯無さんは睨み付けてきたが、気にせずに腰のマッサージを開始すると抗議の眼差しは無くなり、大人しくなった。
「……ヒルトくん」
「何です? 仕返し考えてるなら今は俺が主導権握ってるから――」
「違うわよ、仕返しはまた今度。 ……ヒルトくん、お姉さんの杞憂かもしれないけど、ね……」
真面目な声と共に振り向く楯無さん。
「危なくなったら、絶対に逃げなさい。 ……君、仲間を助ける為に命すら投げ出しかねないんだから」
いきなりの楯無さんの言葉にきょとんとするも、思い返せば思い当たる節がある。
銀の福音の時や先日の一夏襲撃事件等――と、脳裏に突如として鮮明に銃口がフラッシュバックされた。
不意に思い出したその記憶に、一瞬視界の色が白黒になって映り、無意識化で身体の震えすら起きていた。
何度も何度も、まるでリバイバル映画の様に銃口が映し出されているかの様な錯覚さえ起きていた――だが、それも突如、何か柔らかな感覚で現実へと戻された。
気付くと俺は楯無さんに抱き締められ、まるで子供をあやすような優しい手つきで俺の背中を撫でていた。
「ヒルトくん、落ち着いた?」
「え、え……と……」
「うふふ、人の体温って安心するでしょ?」
そう言って微笑む彼女に、少しドキドキし始めていた。
「あ、ヒルトくんの心臓の鼓動、速くなってきた。 もしかして、お姉さんに惚れちゃったかな? なーんてね」
そう言っておどけて見せ、俺が落ち着いたと思ったのか側を離れる楯無さん。
「大丈夫よ、ヒルトくん。 仮に何か起きたとしても、お姉さんが守るから――ね?」
軽くウインクし、腕を頭上高く伸ばして身体を伸ばしていた。
「さて、と。 そろそろお姉さんは退散しようかなぁー。 明日は大会だし、ね」
「あ、そうですね……」
そんな返事しか出来なかった俺だが、楯無さんは笑顔で応えてくれた。
玄関のドアへと向かう彼女を見送るため、俺も彼女を追うとドアを開け、半身が出たその時、楯無さんが――。
「そういえば、ちゃんと聞いてなかったけど……どう? 簪ちゃんの機体、なんとかなった?」
不意に聞いてきた彼女の言葉に、俺は小さく頷きつつ――。
「あ、はい。 手伝ってくれた皆のお陰で」
そう、皆のお陰で簪の機体はある程度完成した――が、腕部装甲だけは材料不足の為、装着されていない。
気にはなるのだが、もう大会は明日の為、どうしようもない。
「うふふ、そっかぁ。 あ、そういえば……私の機体データ、役に立ったでしょう?」
「ん?」
機体データ……そういえば、前にそんな物をもらってた気がする。
だが、俺自身そのデータを使う気は全くなかった。
「……えと、使ってないです」
「え?」
まさか使ってないとは思っていなかったのか、目をぱちくりさせていた。
「……んと、基本的にデータは打鉄やリヴァイヴ、村雲とかのデータで何とかなりましたし、それに……。 楯無さんの機体データ使えば、簪にとってショックな結果になりそうですしね」
事実、簪は姉である楯無さんに対して劣等感を抱いてるのは間違いない筈、そんな中で機体データを使えば色んな意味で彼女が崩れるかもしれない――そう思うと俺は使う気になれなかった。
現に使わなくても完成したのだ、問題はないだろう。
「……そっかぁ。 ヒルトくん、ありがとうね? ……簪ちゃんの為って思っちゃうと、どうしても手を差し伸べたくなっちゃうのよね、私。 前に君に怒られたばかりなのにね」
眉根を下げて困ったような笑顔を再度向けてきた楯無さんに、俺は――。
「楯無さんが妹想いってのはよくわかりますよ。 ……そういう所、嫌いじゃないです」
「……うん、君にそう言ってもらえると……少し嬉しい、かな」
さっきとは違う笑顔を見せてきた楯無さん、軽く欠伸が出そうになったのか口元を手で覆い――。
「ヒルトくん、そろそろ戻るわね? おやすみなさい」
「おやすみなさい、楯無さん」
手を振って見送ると、俺は軽く喉が渇きを訴えてきたので自販機コーナーへと向かうのだが、その道中――曲がった先に落ちていたカップケーキを発見した。
「……何でこんなところに? 誰かの落とし物……か?」
そう呟きつつ、それを拾うと床が僅かに濡れているのに気付いた。
多少疑問に思うも、俺は落とし物としてそれを巡回中の山田先生に手渡した。
いよいよ明日、大会本番だ――不安はまだあるが、やるからには全力を出さないといけない。
そう思いつつ、俺は自販機コーナーへと再度向かった。
後書き
さて、いよいよゴーレムⅢ戦どす
疲れがヤバいが、かいちゃう( ´艸`)
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