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『外伝:赤』崩壊した世界で大剣豪とイチャコラしながら旅をする

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同志-ともにあゆむもの-

 
前書き
どうもこんにちは。クソ作者です。
だーいぶ昔の話になりますがACにてとうとう武蔵ちゃんが実装されましたね。
近いうちになんかそんなおまけエピソードみたいなの書くと思います。
それでは本編どうぞ 

 
「剣というのはただ勢いに任せて振ればいいものじゃない。止めるところはきちんと止めろ。」
「「「はい!!!」」」

まだ日が登り始めた早朝。男達は訓練場で一列に並び木刀の素振りをしていた。
指導しているのは大和。
剣に熟知しているため彼らに剣の指導をしてくれないだろうかと賢狼に頼まれ、快く引き受けたのだ。

そんなことしなくてもここにはガウェインやフェルグス、ラーマにディルムッド、鈴鹿御前や柳生宗矩、さらにシャルルマーニュという古今東西あらゆるセイバーが揃っているのだから彼らサーヴァントに教えてもらうのがいいのでは無いかと思うが、大和は人間だからいいのだと言われ、引き受けた。

「で、お前は。」

彼らの素振りを周りをぐるぐる歩きながら指導する大和。
そうして1番端で必死に木刀を振る少年に、彼はしゃがみ込んで話しかけた。

「確か鈴鹿御前のマスターだったか。ここで何をしている?」
「つよくなるためにきました!やぁ!!」

大人達が素振りする中、その中に混じって幼い子供がいた。
彼の名は確か田村 将。
幼いながらもマスターである少年だ。

「…早起きなんだな。子供達はまだ寝ているだろう?」
「はやおき、とくいだから。」

と、彼は誇らしげに木刀を振る。

「将!」

と、そんな時彼を呼ぶ声が。
彼のサーヴァントである鈴鹿御前だ。

「どこにもいないと思ってたらここにいたの!?」
「うん。」
「もう…ほら、皆の邪魔になっちゃうから帰るよ。」
「……。」

手をつなごうとして差し伸べる鈴鹿御前。
しかし将は首を横に振り、拒否した。

「なんで?どうしたの?」
「つよくなりたいから。」
「将は子供でしょ?何かあったら私が守ってあげるし、まだこれから強くなればいいよ。」
「ううん…いまつよくなりたい。」

と、ここにいたいとわがままを言い出す彼。
鈴鹿御前は帰るよと言うも、将は言っても聞かない。

聞き分けのいい子だとは聞いていたが…と大和は思ったが。

「おねえちゃんに、たよってばかりじゃだめだから。」

そう言った彼の言葉に、少し眉を上げた。

「将…だったか。」

彼の視線に合わせ、大和はしゃがむ。

「なぁに?」
「強くなりたいのか?」
「うん。」

大和の問いに、将は迷うことなく頷いた。

「何の為にだ?」
「おねえちゃんのため。」
「…そうか。」

将の答えにうなずき、大和は立ち上がるとどこかへ歩いていく。
すると少ししてから、あるものを持って帰ってきた。

「大人用の木刀はいささか重過ぎるだろう。これを使うといい。」

大人達が使っているものとは半分程の長さしかない、短い木刀であった。

「いいの?」
「ああ、かまわない。邪魔にもなっていないから存分に振るうといい。」
「うん。ありがとう…!」


不安そうな顔をしていたが、そう言われてパァっと笑顔が咲く。
大和もまた満足げに頷き、木刀を振るうレジスタンス達の周りを再び歩き始めた。

「ほく、がんばるね。」
「…そっか。」

迷惑はかけていない。
大和は鈴鹿御前にそう言った。
本人がそうしたいのならと、鈴鹿御前もこれ以上何も言わず、少し離れた所に座って一生懸命木刀を振る己のマスターを見守ることにした。



「みんなー!ご飯できたよー!!」

それからブーディカの声で一同は食堂へと集まる。
先の訓練で腹を空かせたレジスタンス達、傷付いた人達を看護する医療チーム。そして寝ぼけ眼をこすりながら子供達が続々と集まってきた。

レジスタンス、『セイバーオブセイヴァーズ』の総人数は子供や非戦闘員も含めると300は超える。

ここの食糧事情を支えてきたのはガウェインことバーゲストだが、つい最近やってきたブーディカも加わることで料理にも幅が広がり、忙しかったバーゲストにも余裕が生まれるようになった。

「繊細な味付けに関してはあなたの方に分があります。やはり大味なものばかりですと飽きてしまいますので。」
「そんなことないってバーゲストさん。ホントにお料理上手で感心しっぱなしなんだから。」
「いえ…私などあなたには遠く及びませんわ。」

厨房からの互いに謙遜し合うそんな会話を聞きつつ、大和も訓練の指導を終えて朝食を頂く。

「で、今朝はどうだった?」

そうして、隣に座ってきたのは同じように訓練を終えてきた武蔵だ。

「筋はいい。皆しっかりしている。」
「へぇ…。」
「そういうお前はどうだったんだ?」

しかし、武蔵の訓練は大和のものとは違う。
それはただ単にこのレジスタンスに所属するサーヴァントと手合わせもとい真剣勝負1歩手前の訓練。
前述したようにここには古今東西ありとあらゆるセイバーのサーヴァントが集まっている。

互いの剣の腕を磨くには、もってこいの場所なのだ。

「今のカッコよかった!参考にしたいからもう1回やってくれないか!?ってリーダーさんがせがんできてしょうがなくてねー。皆もやれやれって感じで…。」

カッコ良さを優先し、団長のサーヴァントとしての威厳の欠片もない彼のことを呆れながら話し、それから色んなサーヴァントと手合わせしたりして為になったと話す彼女。

実際、本人もとても楽しかったらしい。

「こっちは昔の俺みたいなやつがいたよ。」
「昔の大和くん?」
「サーヴァントを守りたいから、強くなりたい。年端もいかなさそうな子供のマスターがそう言っていた。」
「子供のマスターって…あの子しかいないよね。」

そう言ってパンをかじり、遠くを見つめる武蔵。
視線の先には遠くのテーブルでサーヴァントと仲良くしている、その強くなりたい少年を見ていた。

鈴鹿御前と仲睦まじくしている彼。
今では笑顔が絶えず、元気いっぱいと言った感じだがやはり昔に何かあったらしい。

「でもあんな幼い子がマスターなんて、なんか不思議じゃない?」
「ワケありだ。鈴鹿御前は兄の形見…だそうだ。」
「形見…?」
「あぁ。」

実は鈴鹿御前のマスター、田村 将は正式なマスターではない。
本来のマスターは彼の兄だった。
あるとき不慮の事故で兄は致命傷を負い、死ぬ間際に鈴鹿御前に令呪を行使し、弟を立派になるまで守ってやるように命令した。
それから紆余曲折あり、彼の大切だったものとして、将は兄から鈴鹿御前を受け継いだ。
世界崩壊時に両親や親戚一同を亡くし、トドメに唯一の肉親であった兄すら亡くした。
子供であれば立ち直れなくなるほどのショッキングな出来事だ。
しかし彼は今もこうして、笑顔を振りまいている。

「ずっと強い子だ。俺なんかよりもな。」
「そう?私はここまでしぶとく生き抜いた大和くんが強いと思うけど?」
「俺が生き残れたのはお前がそばにいてくれたおかげだろう。俺自身は強くない。」
「…サラッとそういうこと言う?」







「おはようクリス。少しは懐いたか?」
「まぁ…なんとか。」

レジスタンス達がまだ朝食にがっつく中、大和一足先に朝食を終えてオロバスがいるところを訪れる。
そこにいたのはクリスと呼ばれた背の低い青年。
あどけなさの残る中性的な彼はオロバスの身体をブラッシングしている最中だった。

「やっと体に触れるのを許してくれた感じ…かな。」
「とはいえ、このレジスタンスの中で気に入られているのはクリスくらいじゃないだろうか?」
「そうかなぁ…。」

オロバスの世話をしている青年の名は結 晶(むすび あきら)

名前と苗字をくっつけると『結晶』となり、そこからとって『クリス』というあだ名で皆から親しまれているレジスタンスの医師兼オロバスのお世話役だ。
そして彼も、こう見えてマスターである。

「最初は蹴飛ばされたりなんだったりでホント大変だったけど…。」
「時間が何とかするさ。そのうちオロバスだってお前やガウェインに背中を許してくれる時が来るかもしれない。」
「時間、ね……何十年後になるのやら。」


ここに来たばかりの頃、まず何よりもしなければならなかったことは足を負傷したオロバスの治療だった。
しかしオロバスは警戒心がとても強い。
見た覚えのない顔ばかりのここに連れてこられ、誰か近付こうものなら蹴飛ばしにかかった。
そんな中、意地でも怪我を治そうとしたのがこの男、クリスだ。

「お前の治療だって受け入れてくれただろう?」
「あの時はバーゲストが無理矢理押さえつけてくれたからなんとか治療出来ただけだし…。」

このレジスタンスにて医療を任されている彼。
さらにはマスターであり仕えているサーヴァントは俺達がお世話になったあのガウェインだ。

「ただまぁ…怪我をしているのなら何としてでも治さないとさ。人間だろうが馬だろうが関係ないよ。」
「献身的だな。」
「違うよ。医者として当たり前のことしてるだけ。って言っても、医大に落ちまくってる浪人なんだけどね。」
「そうか…。」

少し前に、彼から聞いた。
世界崩壊前は医者を目指す為に勉学に励んでいたこと。
しかし成果は中々実らず、何度も大学受験に落ちていたこと。
だから医師免許なんて当然持ってないし知識も専門的なものは持ち合わせていない。
けれど、

「お前はここで医者として頼られている。それでもう立派な〝医者〟なのではないか?」
「…それは、どうなんだろう。」

大和はそう言う。
薬の管理と怪我人の面倒と治療を任され、こうして現に多くの者の怪我を治している。
大和を診てくれていたのだって彼だ。
それを医者以外の言葉でなんと言うべきか?

「俺は…いや、今の俺じゃ分かんないや。」
「今じゃなくていいさ。答えは後からいくらでも見つかる。」

そう言ってオロバスを撫でてからクリスに別れを告げ、その場から去っていった。





レジスタンスにはサーヴァントを持つマスターはそんなに多くは無い。
大多数を占めるのはサーヴァントを持たぬ普通の人間であり、彼らも打倒葛城財団を掲げ尽力している。

「お疲れ様です!!竜胆の兄貴!!」
「あぁ。」

病院を再利用した居住区に戻るとそこには明らかに堅気のものではない男達が大和を出迎えてくれた。
強面の彼らはもちろん、元極道のメンバーである。

「そういった堅苦しい挨拶はしなくていいと言ったが。」
「いえそういうわけにもいきません。何せ俺達は竜胆の兄貴に救われたようなモンですから。」

そういえばそんなことがあったなと大和は思い出す。
ここに来たばかりの頃、この極道連中は新入りの自分に対してあまりいい顔はしていなかった。
ある日、彼らがこの付近に巣を作り始めていたラミアの討伐に向かった際、意気揚々と向かったはいいものの予想以上に多かったラミアに囲まれ絶体絶命のピンチに陥ってしまう。

そんな時に助けたのが大和だ。
彼らは恩義を大切にし、仁義に生きている者達。
命を助けて貰ったからには態度を改めねばならないと大和に深く頭を下げ、こうして現在の関係となった。

「……。」

また別の場所に目をやる。

子供達の世話を任されている元保育士の女性。
荷物の運搬をこなす元宅配業者の若手達。
元消防隊や警察官、役所の役員といった公務員やサラリーマン達は討伐隊や立派に見張りをこなす警備隊など、
ここには様々な人間がいる。

元々やっていた職業や性別、個性などは全員バラバラではあるものの、彼らには一つだけ共通点がある。
それは、

「竜胆の兄貴!今度その置鮎とかいうやつに会った時は、俺達にも知らせてください!!」
「頭と兄貴達の仇だ。俺達でその首取らねぇと報われねぇってもんですよ。」

「子供たちを守りたかったよ。でもね、同期が命の保証と引き換えに子供達を財団に売ったんだよ。え?その同期は今どこかって?因果応報っていうのかな?その場で即撃ち殺されてた。」

「困ってる人達のために物資を届けたかった。」
「あいつらさえ…葛城財団さえ邪魔しなければ死なずに済んだ命が何百とあったんだ。」
「許せねぇ…あいつらマジで許せねぇよ大和さん…!!」

「葛城財団が許せない。」
「葛城財団が良い団体であるとは思えない。」
「葛城財団によって幸せを根こそぎ奪われた者達がいる。」
「葛城財団をさえいなければ、不幸にならなかった人がいる。」

皆誰も彼もが、葛城財団によって大切なものを奪われたということだ。
これは勿論、このレジスタンスのリーダーにも言えることだ。
財団によって妹を玩具にされ、夫を無残に殺され、自分のような被害者を生み出したくないと結成されたこのレジスタンス。
同じような志を持つものが集まり、ここまで巨大になった。

そうして近いうち、このレジスタンスは大規模な作戦を実施するつもりだ。




「財団本部の発見、および殲滅ですか。」
「そうとも。」

場所は変わり団長室。
そこでは地図を広げ作戦内容を柏原に説明するリーダー、シャロンの姿があった。

「これからは財団の侵入を逆に受け入れてやる。捕虜にして尋問し、奴らの本拠地を吐かせる為にな。その為なら非人道的なことをしても構わん。」
「ほう…。」

多くを語らずとも柏原には彼女の心境は分かっている。
彼女は心を鬼にして、本気で財団を倒すつもりだ。
自分のような被害者をこれ以上出さないために、誰かのサーヴァントが奪われないために。

「その為にエインヘリアルからも多少の増援を頼みたい。出来るか?」
「ええ、ただすこし時間をください。数日かかりますがあなたのオーダーにそった選りすぐりのメンバーを呼んでみせますとも。」
「助かる。」

そう言ってシャロンはデスクにある写真立てを手に取る。
妹と夫が映った、唯一の私物だ。

「…ようやくだ。ようやく、仇を取ることができる。」

自身が不在の中、妹を守ろうとして殺された夫。
その財団に慰みものにされ、使い潰された妹。
財団への恨みなど一瞬たりとも忘れたことなど無い。
しかしこれでやっと仇討ちができると思うと少しだけ口元が綻んだ。

「喜ぶのはまだ早いです。これからスタートラインに立つところではありませんか。」
「む…そうであったな。」

柏原にそう言われ、いけないと思いメガネを押し上げ緩みかけた口元をキッと結び直す。

「これから反撃開始ってワケだな。充分カッコいいぜマスター!」

隣にいたシャルルマーニュもやる気だ。
やるしかない。やらねばならない。

「そなたのカッコいい活躍にも期待しているぞ。シャル。」
「おう!任せとけ!」

そういってマスターに親指を立てる。

「オレやマスターだけじゃない。レジスタンスの士気も滅茶苦茶上がってる。あの二人のお陰もあってか個人個人の練度も昔とはまるで比べ物にならないくらいだ!」
「なるほど…感謝せねばなるまいな。あの二人には。」

彼らの言う〝あの二人〟とは勿論大和と武蔵の事である。

実際その2人も、彼らと協力し打倒葛城財団を目指すのも悪くないと考えていた。


だが、その大きな目標は儚くも散っていくことになる。

あまたの命と共に…。




「なによ…これ…。」

数日後。
そこには変わり果てた光景を見てそう言葉を漏らした武蔵の姿があった。

自分達がいたのはレジスタンスの本拠地。
敵の侵入なんてほぼ有り得なかった、数少ない平和で落ち着いていた場所。

憩いの場であった噴水は破壊され、居住区など施設、物資や武器などをしまっておく倉庫はとうに破壊されている。

至る所にはクレーターのような爆発痕。
そして今も尚響く、無慈悲な爆発音。

「れんさま!!れんさまああああああああ!!!!」
「くそっ!離れろこいつ!!いい加減に…」

数の暴力で押し寄せるゾンビ兵達によって、一人また一人と死んでいく仲間達。

「ガキは殺せ。女は捕まえとけ。後でおもちゃにすっからな。」

無慈悲に殺される子供達。
衣服を破かれ、道具のように扱われ犯される女性達。


「さて、ここの頭領はシャルルマーニュだったか…。さぁ出て来いシャルルマーニュ。それとも私の最強のセイバーに勝てぬと怖気付いて逃げたか?」

平和だったレジスタンスの本拠地は今こうして、
葛城財団の手によって蹂躙され尽くされようとしていた。


 
 

 
後書き
役者は揃った、さぁこれからレジスタンスの反撃だ!
俺たちの戦いはこれからだぜ!!
財団なんかに絶対負けたりしないぜ!!
次回もお楽しみに!!!! 
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