『外伝:赤』崩壊した世界で大剣豪とイチャコラしながら旅をする
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殲滅-むくい-
前書き
どうもこんにちは、クソ作者です。
書き終わって思いましたがこれ書いたやつ人の心ねぇなと思いました。
書いたやつ誰だよと思いましたが、私でした。
それではそんなクソ作者が人の心がねぇなと感じた話となります。どうぞ。
いつも通りの朝を迎えた、はずだった。
「ふぁ…」
夜が明け、空が白み始めてきた頃。
欠伸をしながらそろそろ見張りも交代だなぁと呑気に考えていた見張り番が、あるものを目にした。
「あれは…おい、見ろ!」
「…?子供じゃないか!!」
相方にそう伝え、2人は走る。
そこにいたのはヨタヨタと今にも倒れそうなくらい不安定に歩く子供達。
数はおよそ十数人。
子供は皆痩せ細り、目にも生気が全く感じられなかった。
「おいボク!大丈夫か!?」
先頭に立っていた少年の肩を掴み、見張り番は声を大きくして声をかける。
「……。」
返事は無い。
だがこちらをしっかりと見ているあたり、意識はまだあるはずだ。
「この子達を早く医務室へ…!」
「で、でも怪しくないか?こんな危険だらけの場所に、しかもこんな大人数で…!」
「そんなことどうでもいいだろ!?死にそうなんだぞ!?」
この辺り一帯はモンスターで溢れている。
レジスタンス達が周囲の巣を殲滅こそしているが、やはりまだ完璧には片付けきれていない。
しかしそれが逆に守りにも繋がっている。
強いモンスター達が彷徨いているからこそ、葛城財団は中々ここに隊を組んで進行できないでいる。
一般人を装って侵入した者こそいるが、それは心を読める柏原によって見破られる。
ここに安全に来られるのは、レジスタンスのメンバーしか知り得ない秘密の洞窟を知る者のみだ。
そんな中やってきた子供達というのは怪しさしか感じないものの、今にも死にそうな為とりあえず救助が優先だと大して疑いもせず彼らは受け入れた。
それが、財団侵入を許すキッカケになるとも知らずに…。
「侵入できた子供の数はおよそ15…まぁ残った方か。」
それを遠くから見ている者がいる。
周囲には何台ものトラック。何十人もの実働部隊。
己の横にはサーヴァントを待機させ、自分は椅子に腰掛け優雅にモーニングティーを嗜んでいた。
「丹下も大したものだ。まさかガキにゾンビ兵の霊基を強引に埋め込ませるなんてな…。」
あの子供達、実はもっといた。
各地から集めていた子供。
それらにさっき言ったようにゾンビ兵の霊基を強引に埋め込ませ爆弾として送る。
子供達にはあの建物へと迎えと命令した。
途中、モンスターに食われた者もいるが、その際自爆し、モンスターと共に散った。
こちらの被害は一切なくモンスターを倒せる。子供という見た目のおかげでレジスタンスに怪しまれることも無く簡単に侵入し、甚大なダメージも与えられる。
非人道的なことを除けば完璧な兵器だ。
そうして数分後、爆発音が響く。
目的を果たして子供達は一斉に爆発したんだろう。
地面が震え、遠いここからでもその威力はとんでもないものだと理解出来た。
「作戦開始。全車両はレジスタンス本拠地を包囲した後ゾンビ兵を解放。物量で圧倒しなさい。」
「はっ!!」
それを合図に指示を出し、待機していた隊員達は皆トラックに乗り込む。
多くのゾンビ兵を搭載したそのトラックに。
「あそこには名だたるセイバーのサーヴァントが多くいると聞く。」
この作戦を任された男、置鮎も立ち上がり、専用の車両に乗り込んだ。
「果たしてお前に勝てる産廃がいるかどうか見ものだな?セイバー。」
「……。」
隣にいるランスロットはただ黙って頷くのみ。
勝てるものなどいない。
そう信じて疑わないマスターの期待に、応えるのみだ。
⚫
「…!!」
何かを感じとり、目を覚ます。
辺りを見回すが何も無い。
が、その直後に爆発。
居住区全体がビリビリと揺れるほどの衝撃。
なるほど、第六感でも働いたのかと思ったがそういう場合でも無さそうだ。
「京都の時もこんな感じだった…!!」
隣にいる武蔵は既に起き上がり刀を手に取っている。
俺も素早く跳ね起きると立てかけていた武器をかつぎ、彼女と共にドアを蹴り開け爆発のした方へと走り出す。
余程の爆発だ。
居住区内はパニックになっており、住人達はなんだなんだと次々に部屋から出てくる。
至る所から驚いて泣き出した子供たちの声、ここは大丈夫なんだよな?絶対安全なんだよな?と何度も確認する不安な老人たちの声。
まずい、どうにも嫌な予感がする。
「大和さん!!」
そうして走っていると、クリスとガウェインに合流。
彼らは丁度仕事を終え、就寝しようとしていた頃だったらしい。
「クリス。これはどういうことだ?」
「分からない!でもこれは実験の類でも戦闘訓練のものでもない!!」
明け方。
まだ多くの者達が眠りについている時間。
起きているのは少人数の見張り番だけでありサーヴァント達が何騎か同行しているくらいだ。
爆発を起こすほどの騒ぎがあった。
ということはまず想定されるのは
「…敵襲か!!」
敵が来た。
周囲には未だモンスターが彷徨いており、外敵の侵入は余程の強者でない限り難しい。
この前教えられた秘密の抜け道を使うにしても、あれは教えられなければ絶対に分からない場所にある。
以上のことから考えにくいが確率はゼロではない。やはり敵はここに襲撃しにきたのだ。
そしてそれを証明するかのごとく、
「なっ…!!」
居住区の入口には溢れんばかりの人だかり、
あれは…レジスタンスでは無い。
最早服と呼べぬぼろ布をまとい、まばらに剃られた頭と歪んで個人の判別も不可能になった顔
性処理用として使い潰され、挙句の果てには特攻兵器として改造させられた葛城財団の非道な兵器…!
「てき…てき…!」
「てきだああああああああぁぁぁ!!!!!!!」
紛うことなきゾンビ兵だ。
「アレは…ゾンビ兵!?どうしてこんなところに!?」
「分からない。だがここに葛城財団がやって来たことだけは確かみたいだな…!!」
動揺を隠せない武蔵。だがそう言いながらも俺と同時に刀を抜いた。
「クリス!奴らには絶対触れるな!!触れられたら最後だ!!」
「えっあ、わっ!?」
クリスは実物のゾンビ兵を見るのは初めてだ。
絶対に触れぬよう警告すると、彼の短い悲鳴。
何事かと思えば既にガウェインが彼を肩に担ぎ上げてた。
「経験者からのアドバイスは説得力が増しますわね。ですがご安心を。あのような下賎な輩にマスターは指一本触れさせません。」
「…ならいいか。」
そうしてゾンビ兵はこちらに向かって真っ直ぐ駆けてくる。
俺と武蔵はすれ違いざまに切り裂き、ガウェインはブラックドックを使役して噛み殺していく。
ここから先は通せない。
俺達の後ろには戦うすべを持たない非戦闘員、さらには子供や老人がいるからだ。
しかし、
「相変わらずだケド…なんて数の暴力…!!」
ゾンビ兵は次から次へと殺到してくる。
ガウェインの言う通りまさに数の暴力だ。
このまま押し切られるのも時間の問題…
そう思った時、
「うああああああああ!!!!!」
「しまった!!」
ブラックドックに噛み付かれたゾンビ兵がなんと、自らの腕を引きちぎりそのまま走り出したのだ。
「このままではまずい!!」
俺達を素通りし、ゾンビ兵は駆けていく。
追撃しなければならない。
だが、俺も武蔵もガウェインも、次々と襲い来る新手で精一杯だ。
あろうことかブラックドックも、奴らに取り押さえられ身動きを取れないでいる。
そんなときだ、
「れんさま!!れんさまれんさまれんさまあああああ!!!わたしはやれます!!まだできます!!ですからどうかまたわたしを…」
喜びの声を上げながら走っていくゾンビ兵。
しかしそれは急に止まる。
「あ……え?」
ゾンビ兵は自らの視線を下に向けると、そこには真っ黒で細くとがった棘のようなものが地面から伸びていた。
それが真っ直ぐ、自分の胸に突き刺さっている。
直後、体内から棘が炸裂しゾンビ兵は爆発。
爆風に目を細めると、奥から2つの影が歩いてくるのが見えた。
1人は女性、もう1人は子供ほどの身長。
気配から察知するに、あの二人だ。
「…堂本か。恩に着る。」
「礼はいいよ。ともかくここは僕とブーディカに任せて。」
そう言うと堂本は、真っ黒な壁を作り出して迫り来るゾンビ兵達を完全にシャットアウト。
向こう側からはドンドンとその壁を激しく叩く音や意味にならない叫び声が聞こえる。
どういった能力でこの黒い物質を生み出しているのかは知らないが、とにかく助かった。
「状況は?分かることだけでいいよ。」
ガウェインの肩から降りながら、クリスがブーディカに現状の説明を求めた。
「私もよく分からない…けど、財団がやってきたみたい。爆発した場所は恐らく児童施設。食料庫も滅茶苦茶。医療品もどうなってるか分からない。」
手短に話されたが酷い状況なのは飲み込めた。
ならやるべきことは
「…クリス。」
「うん。俺はまだ生きている人達を助けに行く。」
「ああ、救助は任せた。俺は武蔵と奴らを斬りに行く。」
互いに自分達のやるべきことを理解し、俺達は互いに頷いた後それぞれ反対側の窓を飛び越えて外に出る。
外は…やはりというべきか。
「なによ、これ…。」
ある程度覚悟はしていたが、武蔵が唖然とするのも分かる。
のどかで平和だったこのレジスタンス本拠地は、地獄と化した。
抗戦するレジスタンスの者達。だが、ゾンビ兵相手ではまるで勝てない。
あいつらは腐ってもサーヴァントだ。
人間一人では太刀打ちできない上、奴らは複数で襲いかかってくる。
「くそ!離れろ!!いい加減に…」
そして、自爆して周囲に深刻なダメージを残す。
ぼうっとしてはいられない。
「!!」
何も言わずとも、俺と武蔵は走り出す。
武蔵は右、俺は左の方向へと駆け、こちらに気付いたゾンビ兵や財団の実働部隊を片っ端から斬り捨てていく。
「あいつは…!やはりいたか!!竜胆大和だ!!」
奴らが俺達の存在に気付く。
ゾンビ兵も実働部隊も皆俺と武蔵に視線を集中させ、目の色を変えて襲いかかって来る。
「人気者は辛いな。」
「ええ、でもかえってこっちの方がいいかも!!」
武蔵の言う通りだ。
ほとんどの奴らは俺たちを見かければ襲いかかってくる。
俺達が暴れれば暴れるほど、奴らは集まってくる。
つまり、他の者達が襲われる可能性が減ってくれる。
「さぁ来い!!宮本武蔵はここにいるぞ!!褒美に目が眩んだ死にたがりだけかかって来い!!」
武蔵は暴れる。
甘味に群がるアリの如く寄ってくる奴らを斬り捨て、ゾンビ兵も難なく倒していく。
「…。」
俺も無理なく倒していくが、今回の実働部隊はやたら無茶なことはしない。
根性だのなんだのと言いながら叫ばない辺り、どうやら彼らは山本の部隊では無い。
そして、ここにはセイバーのサーヴァントが複数いるということは知られているだろう。
だとするとここに来た部隊の名前は…。
「来てるんだな…あいつが。」
もう何度目か分からない。武蔵よりも強いと豪語するあのマスター。置鮎がここにいる。
しかし、ここに来ているのは置鮎部隊だけではなかった。
「…ッ!!」
ダダ漏れの殺気を感じ取り、振り向きざまに刀を振るう。
チュインという音と共に火花が散った。
「うわ惜っしー。」
「さすがに一筋縄ではいかないでしょ。撃てたら今まで死んだヤツらの苦労はなんなんだよって話的な?」
少し遠くの距離から銃を構える長髪の男。
周りには三人ほどの計四人組。
なるほど、不意打ちを狙って撃ってきたらしい。
銃をかまえているのは1人のみで、隣にいる隊員は何故かカメラを手に持っていた。
着崩されているものの、彼らのそれは紛うことなき財団の実働部隊のものだ。
「ねぇおっさん、竜胆大和ってやつ?」
「そうだが?」
4人組のうちの1人、黒いマスクをつけた男が軽々しくそう話しかける。
武蔵が「おじさん…大和くんが…?」と呟いてるが気にすることじゃない。
「お前達もサーヴァントのハーレムを夢見て俺を殺しに来たのか?」
「いや他の奴らと同じ扱いとかキモすぎだろおっさん。」
礼儀知らずな返事が返ってくる。
どうやら彼らは俺たち目当てでは無いらしいが
「勝手に殺すと山本部隊にキレられんだよね。俺達はただバズりてぇ動画撮りたい的な?」
「…?」
そういってカメラを持った1番背の小さい男が俺に視線を合わせる。
「おっさん、何か言うてーな。財団皆殺しやヒャッハー!とかさ。」
「……。」
「無視はアカンわ。自分それかっこいいと思うとるんちゃいます?」
この4人組、長髪の男以外は若く見える。
一般常識を学べて来れなかったであろう彼らに流石にイラッとする。
そうして奴らとの距離を一気に縮めるため跳ぼうとし、足に力を込めたその時。
「だーかーら、俺達アンタには興味ねぇんだって。さっき発砲は挨拶がわり的なヤツ。」
と、長髪の男が銃を下ろして呆れながらそう答える。
「ただひとつ聞きたくてさ。ここにガウェイン?バーゲスト?なんかそんな名前のサーヴァント連れたやついるだろ?」
「……。」
何故、そんなことを聞く?
「聞いてどうする?」
「お?その言い方知ってる系だね?…まぁなんつうか?〝奪い返しに来た〟系な?。」
「奪い返す…?」
奪うのではなく、奪い返すとは何か?
そうしていると後ろにいた1人が長髪の隣に立つ。
派手なオレンジ色の髪に耳にはえげつない程のピアスをした男。
しかし彼は頭をだらりと垂らし何も話さない。
いや、話している。
口をほんの僅かばかり開け、何かを延々と呟いている
すると庇うようにして長髪の男はそいつと肩を組みながら言った。
「こいつさぁ、マスターだったんだよ。ガウェインの。ところがどっこい親友だと思ってた奴から取られちゃってさ。なんつうの?NTR系的な?んで俺たち友達だからこいつの為に協力してサーヴァント奪い返しに来たわけ。分かる?」
「……。」
武蔵と顔を合わせる。
首を横に振る武蔵。俺も同意見だ。
こいつらの話は信じ難い。
クリスのような善性に満ち、自分よりも他人を優先する自己犠牲が服を着て歩いているような彼がサーヴァントを奪うことなど先ず考えられない。
「証拠はあるのか?」
一応聞いてみるが、どうやら詭弁ではないようだ。
長髪の男がそいつの手首を持って俺達に手の甲を見せつける。
そこには令呪…正確には令呪が掠れた跡が残っていた。
「おっさん、これで信じれる?俺達友情で動いてんの。その他大勢のちんこでしか考えらんねぇ猿とはちげーの。」
「……。」
「何?無視的な?」
これは、エゴになるかもしれない。
一方の視点からしか見ることしかしない、独善的なものかもしれない。
「武蔵…。」
「どうするの?って聞くまでも無さそうだけど。」
下ろしていた刃を握り直す。
切っ先を向け、俺は言い放った。
「斬るぞ。斬ってみれば、どちらが正しいか分かるからな。」
「オッケー!!」
跳ぶ。
次の瞬間、俺達のいた場所に銃弾が当たった。
「なんだこいつ…早!?」
「血の気の多い奴らやで。まぁその方が動画的にオイシイしな。オッケー!出番やでミッツ!!」
斬り掛かる俺達。
しかし仲間のうちの一人、カメラマンがミッツと呼ばれたオレンジ髪の男の首筋に何かを突き立てる。
「あ、が…あ、ああ…!!」
「俺達友達やろ?守ってくれや。お前だけが頼りなんや。ごっつええとこ、見せたれ。」
説得するカメラマン。
するとオレンジ髪はブルブルと震えたかと思うといきなり
「……キタキタキタキタキタキタァァァァァァア!!!!!」
満面の笑みを浮かべ、ぐりんと顔を上げた。
次の瞬間、ありえないことが起こる。
斬り掛かる俺と武蔵、だが…
「…!?」
オレンジ髪の男…ミッツは前に躍り出たかと思えば、
右手で俺の刀を、左腕で武蔵の二刀を防いだのだ。
金属のような音を響かせ、まともに受けたその腕には傷一つついておらず、血も1滴すら滴っていない。
まさかこいつも…
「守る…守る守る守る守る守る守る守る守る守る守るぅ!!!!俺達友達!!友情!!友情!!!友情ォォォォー!!!!イイイイイイイイイイイヤッフウウウウウウウ!!!!!!!!」
「…!!」
うるさいやつめ。
迷うことなく反対の手で散弾銃を抜き、やつの顔面にゼロ距離で発砲。
流石に仰け反り、俺と武蔵はバックステップで距離をとる。
「ハァァァァァーーーーー……へへっ、へへへ…。」
「だいぶキマッているように見えるが…正気か?」
猫背で腕をだらんと垂らし、焦点の定まらない目はニヤニヤと笑っている。
ついさっきまで何も喋らなかったこの男は、どう考えても薬か何かで豹変させられている。
それに、こいつもまた山本と同じように実験させられたのだろう。
「ミッツはさぁ…弱い自分を変えたくて、俺達を守りたくてサーヴァントよりえらい強うなる実験を受けたんや。」
「成功率バチくそ低いって言われたのに俺達のために受けたんだぜ?結果としては無事成功。しかし情緒不安定的な感じになった。
けど俺達のことは友達だとシッカリ認識している。
泣けてくるよなぁ?友情、感じちゃうよなぁ?」
「……。」
先程のクリスの話もそうだがイマイチこいつらは信憑性がない。
なのでもう話には耳を傾けず、俺と武蔵は再び斬りかかる。
「ヒョオゥッ!!」
奴が飛び上がり、かかと落としを繰り出す。
刀を鞘におさめ、咄嗟にそれを受け止める。
重い一撃。確かにこれは人間が出せる破壊力では無い。
しかし、
「とったッ!!」
後ろがお留守だ。
いつの間にか奴の背後へと回り込んだ武蔵は情け容赦なくうなじを切りつける。
手応えは硬い。だが鮮血は吹き出た。
「ぎょわあああ!!!!めちゃめちゃいってェェーーーーー!!!!!」
大袈裟に痛がる奴。
だが直後にんまり笑い、、
「いってぇなアバズレ!!死ね!!」
腰のホルスターから素早く銃を抜き、早撃ちで3発撃ち込む。
しかし銃程度武蔵には通用しない。
だが、
「アイキャンフラーイ!!びょーーーーん!!!!」
俺の鞘を蹴り、武蔵へ急接近。
反対側の手にはナイフが握られており、弾丸を防いで隙ができた武蔵に斬りかかった。
「ヒャオ!!!!」
「ッ!!」
懐に飛び込んだやつの一撃をギリギリかわす。
しかし攻撃は届いていたらしく、腹部が浅く切り裂かれた。
それだけじゃない。
「必殺死ね死ねラーッシュ!!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!!!」
我武者羅とも言えるナイフの切り付け。
何度も何度も、執拗に切りつけまくる。
武蔵はそれを全て捌き切り、無効化する。
「…!」
俺もそれをただ見ている訳じゃない。
鞘のメイスを振り上げ、奴の横腹へと叩き込む。
「ぐへぇ」
ゴキンという音とめり込む感触。
明らかに骨は折れた奴は吹き飛ばされ、木々をへし折りながら地面へと落下した。
「…。」
「…。」
地面へ着地。
だが俺も武蔵も気を抜いていない。
倒せていない。
奴の殺気は、まだ消えていない。
「あーあ…こりゃアバラバキバキバッキンガム宮殿だよ。どうしてくれんだテメェら。え?」
土煙の中、そうぼやきながら奴が現れる。
道端にぺっと血の混じった唾を吐き捨て、彼はにんまりと笑いながらこちらへ歩いてくる。
「殺しちゃうよーん?本気の本気で、てめぇら仲良く晒し首アーンド八つ裂きの刑だよーん?」
両手に持っていた銃とナイフを捨て、丸腰になる奴。
しかし次の瞬間
「その前に串刺し刑だァ!!ヒャオウ!!」
地面を踏み抜く。
そうすると辺りからは棘が突き出た。
真っ赤な棘。それらは次々と地面から生え俺たちの方へやってくる。
それらをかわし、追ってくる棘から逃げるようにして駆ける。
「俺は串刺し公!てめぇはセンザンコウ!よって今夜はバーベキュー!!てめぇら丸焼きパーリナイ!!イェア!!!」
うるさい。
牽制として散弾銃を放つが、奴は前方に棘を生やして防ぐ。
さらには生えた棘を両手に取り、走り出した。
「チャンバラしようぜ!!!俺小次郎な!!」
武蔵に襲いかかる。
飛びかかってきた奴を武蔵は蹴飛ばし、呆気なく迎撃。
吹っ飛んだやつ目掛け走り出し、追撃をかける。
「ゥワオ!!超速い!?新幹線のサーヴァントか!?」
「いい加減やかましい!!」
体勢を立て直して奴は武蔵を迎え撃つ。
だが、
「…アレ?」
武蔵の方が速い。
即座に振り下ろされた二本の刀は、やつの腕を難なく両断する。
「武器が…ない?腕も、ない!?」
「その首もね…!!」
腕がなくなったことを理解する直前、奴は何が起きたのか分からない顔のまま、その首を切断される。
空飛ぶ奴の首。吹き出る鮮血。
ぼとっと地面に落ちると、首と腕を失った奴の身体は膝をつき、倒れた。
「……。」
もの言わなくなった奴の遺体を、無表情で眺める武蔵。
それから興味が無くなったのか、残りの3人へと冷たい視線を向けた。
「どうするの?頼みの綱である友達は私が斬ったけど。」
次に斬られるのは自分達。
だが三人はバカにしたような笑みを浮かべながらこちらを見下ろしている。
その余裕はどこから来ているのか、それはすぐに分かった。
「おいおい…人殺しは死刑だぞ?分かってんのか?」
「…?」
背後からの声、
咄嗟に振り向くとそこには
「でも良かったな。俺が生きてて。お前ら死刑は免れた。タフな俺に感謝しろよ。」
首だけになっても話し続ける奴の姿が
「!?」
武蔵も俺も驚く。
首を斬られても生きているなんて、サーヴァントでも聞いたことがないからだ。
どういったタネがあるかは知らない。
ただ、
「ヒャオゥ!!」
殺し損ねた。
奴は首の力だけで飛び跳ねると、胴体の方へと着地。
すぐそこには斬り飛ばした両腕も這って戻ってきている。
まず腕がくっつき、そして手を伸ばして首を手に取る。
「パイルダーオン!ガッチャーン!!」
まるで玩具のように、斬られたはずの部位が完全にくっつき、何事もなかったように立ち上がる。
「ふっふっふ…中々やるなお前ら。俺の首をはねたのはお前達で29人目だ…!!」
「……。」
「そこは『いや多っ!?』とか突っ込むんだよ!!クソハゲ!!」
「……。」
「…もーいい、萎えたわ。」
そう言うとやつはそっぽを向き、どこかへ行こうとする。
「ミッツ!!どこ行くんだよ!!」
それは仲間達にとっても予想外らしく、彼を呼び止める。
すると彼は満面の笑みを浮かべて振り向き。
「〝匂うんだよ〟分かんね?」
「匂うって…何がだよ?」
すんすんとわざとらしく鼻を鳴らして匂いを嗅ぐ仕草をしている。
そして鼻をつまみながら奴は答えた。
「くっせぇくっせぇ裏切り者の匂いがよォ〜?俺というマスターを裏切って、高学歴マスターに寝返った裏切り者の匂いが…!!」
「…!!」
「それと、親友であるはずの俺から最愛のサーヴァントを寝取りやがったクソチビメガネのクリスくんの匂いだァ?近くにいるなぁ?どうせ怪我人でも看護して偽善の自己満足に浸ってんだろ?えぇ?」
クリス。
やつはそう言った。
跳び上がる奴を追うべく俺も駆けようとするが…
「ま、時間稼ぎはできた感じやし、ワイらもミッツの後追おか。」
「だな。ここのリーダーと置鮎の奴の決着もついてんだろ。このレジスタンスも陥落寸前的な?」
「はは、キモっ。」
奴らの会話が耳に入り、足が止まる。
「陥落寸前…?」
「あー聞こえちゃった?このレジスタンスももうおしまい的な感じ!」
リーダー的存在であろう長い髪の男がそう答える。
「置鮎さんのセイバーが今戦ってんだよ。ま、瞬殺だろうけどさ。」
「…!!」
嫌な予感がした。
あのミッツと呼ばれた頭のおかしい人間辞めている奴を追うべきか
いや、それとも…!
「愚策かもしれないけど、二手に別れましょ。」
「…!」
逃げゆくヤツらを後目に、武蔵がそう提案する。
何が起こるかわからない今この状況、
互いの背中をカバーするためにも武蔵と離れるのは良くないだろう。
だが…
「大和くんはあいつらを追って。ほっといたら、なにか大変なことになる気がする。」
「俺もだ。しかし武蔵は…」
「私があいつのランスロットに負けたとこ、見たことあります?」
俺はあいつを追い、武蔵は因縁の相手である置鮎のランスロットを止めに行くと提案した
しかし1人で行くのは危険だし、それに置鮎はランスロットが勝つ為ならば平気でズルをする男だ。
だが武蔵は誇らしげな顔でそう言い、胸を張った。
「確かに、ないな。」
そうとしか言えない。
「なら平気。私も大和くんがあんな信念もない輩に負けるなんて思ってない。だから…」
互いを信じましょう。
最後まで言わず、そこまで言うと武蔵はただ頷く。
そうして俺はあの人の形を保った化け物を追いに、武蔵はシャルルマーニュの元へと駆けた。
後書き
かいせつ
⚫謎の4人組
大和くん武蔵ちゃんの前に現れた4人組。
何者なのかというと実は財団所属の動画投稿者。
若者達に葛城財団の活動内容を知ってもらう為に結成されたグループである。
一応実働部隊ではあるがその人数は4人とかなりの少人数。
なお、動画の内容はかなり過激であり、サーヴァントを失ったマスター同士を戦い合わせたり自殺に追い込ませたり、サーヴァントに喧嘩を売るような内容だったりと倫理もクソもないものばかりである。
当然と言えば当然だが、彼らの動画は動画投稿サイトやSNSで大炎上している。
しかし、特定の層からの支持はそれなりに得ておりある程度のファンも獲得しているのも確かだ。
ちなみにこの作品、外伝『赤』ではもう出ないよ。
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