ダンジョンに異世界人が行くのは間違ってますか?
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第九話。異世界の大英雄。
「それにしてもおたくがフレイヤのオーズね。なかなか強そうやな。あのアレンを取り押さえてたし。何者なんや?」
「と言いますと?」
フレイヤのおかげで何とか乱闘にならずにすんだ。今は取り敢えず食事をとっているのだが、フレイヤとロキのファミリア達に囲まれて食べてある。フレイヤの眷属達については殺気立てている。主に俺に向けてだが…。
「お前さんどこの眷属ってわけちゃうやろ?なのに普通の人間がアレンの小僧を取り押さえられるはずがあらへんのや」
「神様は皆んな俺が何者だと言いますけど人間ですよ」
「しかも異世界の」
はいフレイヤ様は余計なことを言わないでください。それを聞いてロキが頭のおかしい人だと見つめてくるじゃないですか。
「そんなアホな話あるかいな。なんか証拠でもあるん?」
「そんな事言われましても…眷属になれば早いですが」
「じゃあ私の」
「嫌です。すみません。この中に更新薬(ステイタス•スニッチ)持ってる方います?」
速攻で断る俺に不機嫌にまた頬を膨らませるフレイヤ。それを見て腹を抱えて爆笑しているロキ。今までフレイヤがフラれる所なんて見た事ないんだろう。
更新薬は神がいなくてもステイタスを更新できる魔法の薬だ。過去にラインベルト商会で言われて何度か買ったことある。値段もそれなりにするから多くは買えないしレアだから手に入れれることも少ない。
「私が持ってるわよ」
そう言ってフレイヤが取り出して渡して来た。何で持ってるの?こんな高価な物普段から持ち歩いてるの?もしたまたま持ってたとしたら怖いですけど。
「いくらです?」
「いいわよこのくらい。大した金額じゃないし」
「コレを元に無理やりな勧誘は?」
「しないわよ」
半信半疑になりながらもフレイヤから薬を受け取る。
「どうするつもりや?」
「飲んでステイタスを表示させます。知ってます?恩恵を持ってない一般人でもステイタスを表示させることができるんですよ」
「ほんまかいな!?」
「えぇ、今度試しにそこらへんの一般に飲ませてみたらいいですよ。流石に眷属の証である紋様は出て来ませんけどステイタスの数字やスキルなどは表示されます。まあ、スキルと魔法は持っていた場合ですけどね」
「確かに一般に試したことはないと言いか、そう言う発想に辿り着かへんわ」
「異世界人ならでの考えですね。この世界の常識なんて知りませんでしたし。試しに飲んでみたら飲ましたら出て来たんです。すみませんが上半身脱がさせてもらいますね」
そして、俺が服を脱ぐと周りがざわついた。
「随分と若いのに傷だらけやな。それにその大きなエグい傷跡は普通死ぬんじゃない?」
そう俺の体は傷だらけだ。まるで歴戦の戦士のような傷跡だ。別に元の世界に来たわけじゃない。この世界に来たらできていた傷で、ゲームに入る前に山ほどキャラクター設定をした。
その中に傷だらけの歴戦の猛者と書いたのだが、コレが原因だと思われる。最初ヒルデ達も見た時も驚いていたな。
「まあ、元の世界でいろいろとありまして…ゴク」
薬を飲むと俺の腹部にステイタスが表示される。神の字で書かれているので周りの連中は読めない。そして、ロキとフレイヤはまじまじと見る。
まあ、ほとんど文字化けして数字とかはカンスト数字超えたせいかほとんど見えないけどな。まともに見えるのはスキルや魔法だけだ。それを見た2人の神は静かになった。
「ちょいコレ、ホンマに言ってるのか?」
「えぇ、本当ですよ」
「ロキ。なんて書いてあるんです?」
いつまでも黙り込む2人の神に痺れを切らして、ロキファミリアの団長フィン・ディムナが聞いた。
「…基本ステイタスは文字化けして見えへんけど、スキルに異世界の大英雄って書いてある」
その話を聞いて周りの人は「おぉー」と驚きの声を上げる。実際の効果はわからんがスキルの名前だけなら凄そうだと言う。皆んな異世界の言葉より大英雄の言葉の方が気になるそうだ。
「もう良いですよね」
体の文字が消えると俺は服を着る。こんな意味もなくずっと裸にいるのも変な話だしな。お昼を食べた事だし。そろそらお暇させてもらおうかな。
「さて、食べ終わりましたし。私達は帰らせてもらいますね」
「待ってちょうだい。貴方の話を聞きたいわ!いったいあっちで何が…!?」
彼女は今のフレイヤは明らか的に興奮を抑えきれなくなっていた。好奇心にかりだされて帰ろうとする俺を引き止めようとする。
そんな俺は彼女に大英雄としての片鱗見せる。するとフレイヤは突然と硬直してその場に膝を崩して倒れ込む。そして、俺を見上げて涙を流した。その姿に眷属達は慌てる。
「望む物は見れたか?」
俺がそう聞いてもフレイヤは何も答えずにその場に止まったままだ。まるで時が止まり出したかのように。俺はそんな彼女達を置いて立ち去ろうとするが、フレイヤの眷属達が道を塞いだ。
「辞めんかい。ソイツを通しな」
「我らに命令できるのはただ1人フレイヤ様…」
「良いから通さんかい!しばき倒すで!」
ロキの怒号が鳴り響く。普段からふざけている彼女がこんなにも剣幕な表情を浮かべるのは、死亡者は最低でも三万人を超える。大抗争『死の七日間』オラリオ史で最も多くの死者を出した最厄いらいだ。
彼女の表情をみてビビって流石にどけざるおえなかった。俺らはそのまま空いた道を通ってこの場をさった。眷属達は一斉に神達に駆け寄った。
「フレイヤ様!大丈夫ですか!?」
「…オッタム。見たわ」
「見た?何をですか?」
相変わらず心ここに在らずといった感じのフレイヤを心配して話しかける。するとようやく意識を取り戻したのか辿々しく話し始めた。
「彼の魂を、ほんの少しだけだったけど…恐ろしくって綺麗だったわ」
「恐ろしい?あの人間がですか?」
「えぇ、…とても優しい光だけど、たくさん傷ついてて、だけど決して消える事ない強くって大きな光。見た事ないけど、きっとアレが真の英雄の色なのね。もっと、いえもう一度だけで良いから彼の魂を見たいわ…」
「フレイヤ様!」
「安心せい。強すぎる光に目が当てられて眠ってるだけや。少し練れば目覚める。早いとこ家にでも寝かしとけ」
ロキがそう言うとオッタム達はフレイヤを連れてホームにへと戻って行った。もうフレイヤが倒れて大騒ぎほとんどのものが冷静にいられなくなって発狂している。
そんな彼女を見てロキはようやく一息ついた。
「はぁ〜」
「大丈夫か?」
「もうしんどあわ〜。ちょい休ませて」
ロキがそう言うと眷属達は店を出て行った。
「開戦の神殺しって…ウチらの天敵やん。いったいあっちの世界で何があったん?あっちの世界で人類と神々の戦争でもしてたん?」
「待って!」
「お嬢ちゃんは?」
店を出て少し歩くと、後ろから少女が追いかけて来た。おそらくどっちかの眷属の子だろう。将来有望そうな金髪美少女だ。
「貴方は本当に英雄なんですか?」
「どうだろうな。俺が名乗ってるわけじゃなくて、いつの間にか人々から勝手に呼ばれるようになった」
「なら英雄なら私の事を助けてくれますか?」
「何だ何か困ってるのかい?」
「私のお父さんは英雄でした。でもお父さんは私の英雄にはなれなって、お母さんがいるから、いつか私だけの英雄がめぐり逢えるって!」
「…お嬢ちゃん名前は?」
「アイズ。アイズ•ヴァレンシュタイン!」
「そうか、そしたらアイズちゃんだな」
俺はそう言ってまだ小さな女の子にひざまづいて頭を撫でてやる。また10代前半といった所だろう。何でこんな小さな女の子が冒険者をやっているかはわからんが、身なりも綺麗だし大事には育てられているらしいな。
「アイズちゃん。お父さんが言ってたのは英雄なんかじゃない。英雄なんかより凄い奴だ」
「どう言う事ですか?」
「ふっ、お父さんが言ってた事はアイズを心から愛してくれる好きな人だよ」
「私を愛してる好きな人?」
「そう、人は好きな人のためなら英雄にだって、それ以上の人間になれるだよ」
「凄い!英雄以上に!?」
「そう、アイズちゃんは可愛いからなきっと沢山の人に思いを寄せれるかもね」
「そしたら皆んなが英雄以上になれるんですか?」
「いや、残念ながらそうではない。良く思い返してごらん。お父さんは何もお母さんを一方的に助けてたわけじゃないだろ?時にはお母さんもお父さんを助けて支えていただろ?」
「…うん」
「それはお互いがお互いに愛して好きだったから、お互いがそれぞれ英雄みたいに助け合っていたからだよ」
「お互いが愛して好き…」
「そう。だからいつかアイズが心から好きだと思える人が現れたらその人がアイズにとっての英雄だし。その人もアイズが英雄になる」
「…どうやったら好きな人はできるの?」
「コレばかりは運命と言う時間しかわからないからな。きっと大人になれば現れるかもしれないね」
「それじゃあどうやったら早く大人になれる?」
「何だ早く大人になりたいのか?」
「うん。そしたら好きな人が現れるんでしょ?」
「ハハは、残念ながら時間が経たないと大人にはなれないな」
「そんな〜…」
「ふふ、不安か?」
「うん…」
「ならお前の好きな人が現れるまで、このおせっかいな大英雄がお前を守ってやろう」
「本当!?」
「あぁ、約束だ」
「何?」
「ゆびきりげんまんだ。俺の世界での誓いの印かな?小指で俺の小指を握ってこう言うんだ。ゆびきりげんまん嘘ついたらハリセンボン飲ます。指切ったて」
「わかった!行くよ!」
そして、俺とアイズはゆびきりげんまんをした。
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