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崩壊した世界で刑部姫とこの先生きのこるにはどうしたらいいですか?

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幕間
  幕間:神代 正義 1

 
前書き
どうもみなさんこんにちは、
クソ作者です。
今回の幕間は人間同盟の教祖、正義くんのお話となります。
彼がまーちゃんと決裂し、その後どう言った経緯があり、そしてどのようにして人間同盟なるものを築き上げたか、
絆と友情を何より大事にし、そして運命に振り回され続けある意味この作品で1番不憫な男の物語となります。
それでは本編、どうぞ。 

 
「さっき川があっただろう!みんなそこまで走るんだ!!」

折り紙で出来たコウモリに襲われながら、1人の少年はそう言って走り出す。


彼の名前は神代 正義(かみしろ まさよし)
クラスをまとめるリーダー的存在で、彼の周りにはいつも人がいた。
言ってしまえば陽キャ中の陽キャ。主人公のような男である。

そんな彼は今、突如として崩壊した世界へクラスメイト達と一緒に投げ出された。

先生はいない。学校にいた大人はみな死んだ。
見たこともない化け物が闊歩する阿鼻叫喚の地獄絵図の中、彼らは救助が来ないことを確信すると学校に籠ることを止め、外へ飛び出した。

それが、このザマだ。
彼曰く、仲のいいクラスメイトに話しかけたのだが帰ってきた答えは拒絶。
そしてこのコウモリだ。
折り紙で出来ているものの殺傷能力は本物以上。
こうして逃げている内に、何人もの仲間が血を流して力尽きてしまっていた。

振り向けば死体。さっきまで仲良く話していたクラスメイトが物言わぬ死体となって転がる。
コウモリが追いかけてきているか確認するため振り向いたが、そんな光景を目の当たりにして彼は振り向くことをやめ、一心不乱に逃げ続けた。

「見えた…!」

そうして走り続けると、川が見えた。
奴らはコウモリ、しかも紙で出来ている。
一瞬でそこまで見抜き、彼は水の中へ潜ってしまえば追って来れないだろうと推測した。

その予想はもちろん当っている。リーダーとして正しい判断だっただろう。

「飛び込め!!」

彼を皮切りにクラスメイト達は次々に飛び込む。
最初は戸惑っていた泳げないクラスメイトも、正義の飛び込む姿を見ると意を決して飛び込んだ。

そうして息が続く限り潜り続け、次第にコウモリの甲高い鳴き声が遠くなる。

「……っは!!」

息も限界に近づき、水面から勢いよく顔を出して当たりを見渡すと、そこにはもう何もいなかった。
生き延びれたのだ。

「みんな!よく頑張った!!」

そう言って川から上がり逃げ延びた仲間達を励ます。
周りに常に気を使い、的確な指示を出して正しい結果へ導き優しい言葉をかけて激励する。
それが彼をリーダーたらしめるものだった。
クラスの中心人物である彼はいつも頼られた。
彼がいればなんでも解決する。彼に従えば全部上手くいく。

しかしそれは、今までの世界での話である。

「うわぁ!!なんだこいつ!!」

突然、川から男子生徒の叫び声が。
がむしゃらにもがいてバシャバシャと音を立てている。
潜った時はあまり深くは感じなかったが溺れているのか?
そう思った直後、

「!!」

男子生徒の周囲が赤く染った。

「いやぁ!なにこいつ!!」
「たすけて!!何かが足に巻きつ…」

そこから複数人の仲間が突然川の中へ引きずり込まれる。
時折見える不気味な色の触手。
クラスメイト達は蛸だと声を上げるがその正体は海魔。
安全だと思われていた川は、彼らの住処だったのだ。

「たすけて…たす……け」

そんな住処に立て続けにニンゲンが飛び込んできたのでたまったものではない。
海魔達は縄張りにやってきた侵入者をとらえ、あわよくば捕食する。
血まみれになり、触手に巻き付かれ沈みゆく仲間を見、まだ無事なクラスメイト達は大急ぎで川から上がった。

「おねがい!!たすけ…っ」
「うわあああ触んな!!」

川の中に潜む海魔に足を掴まれた女子生徒が逃げゆく仲間の制服の裾を掴むも、蹴飛ばされ見捨てられる。
この極限状態の中、自分の命より可愛いものは無い。

それは彼だって、例外では無い。

「正義ぃ!!たすけてくれぇ!!」
「……!!」

男子生徒が自分に向けて手を伸ばす。
しかし、自分に何ができようか?
ここで助けに川へ入ったとしても自分が新たな餌食になるだけ。
己の正義感から反射的に踏み出そうとした正義だったが、そう思い踏みとどまってしまった。

「まさ…よし…ぃ」

そうしていると、足元から声が。
良かった、無事に生き残れた人がいた。
そう思ったのもつかの間、何せ川から上がってきた人物は

「俺の足…どっかいっちゃった…なぁ、正義じゃなくてもいい、誰か助けてくれ、起こしてくれよ…なぁ…。」

下半身が食いちぎられ、どう見ても助からない状態だったから。

「う、うわあああああああああああ!!!!!」

あまりにも現実離れしたその惨状に、正義は悲鳴を上げ、手を伸ばす仲間だった者の頭を蹴飛ばして川へ返却し、一目散に逃げる。

あてはない。ともかくここから逃げたかった。
川へ飛び込めといったのは自分だ。そういった責任からも逃げたかった。

彼はただひたすら、走り続けた。





「……」

それから、どこかも分からない場所。
あの光景は脳裏に焼き付いており、思い出すだけで吐き気が込み上げる。
というよりも今ここで、正義は胃の中の物を全て吐き出してしまった。
そして、

「僕の…僕のせいだ…僕が川に飛び込なんて言ったから…!!」

自分を責め続けていた。
そんな時だ

「正義くんは、悪くないよ。」
「…?」

優しい声。
振り返ってみればそこにいたのはクラスメイトの女子。
何かといつも自分のそばにいてくれた3人の女子達だ。

「悪く…ない?」
「そう。あの状況で正義くんは適切な判断を下した。そうじゃない?みんな。」

女子のひとりがそう呼びかける。
いつの間にか周りには生き残りのクラスメイト達がおり、皆うんうんと頷いている。

「みんな…。」

涙が出た。
あんな結末になったのにも関わらず、自分にはこんなにもついてきてくれる人がいる。

「ごめん…泣いている場合じゃないね。」

なら、リーダーとして頼られている自分がいつまでも泣いていては示しがつかない。
彼は涙を拭い立ち上がると

「みんな!いつものやろう!」

そう言った。

「おう、いつものな!」
「やっぱあれやんないとしまんないよね〜」
「こういうときこそ、あれだよな!!」

クラスメイト達が肩を組み、輪になる。
円陣だ。
正義のクラスメイト達は何かの行事の際、こうやって気合を入れ、クラスの心をひとつにする為必ずを円陣を組んでいた。
合唱コンクールの時も、体育祭の時も、文化祭の時も、
こうやっていつも円陣を組んだ。
だから、こういうときもいつも通り

「絶対みんなで生き残るぞ!!」
「「「おう!!」」」
「ワンフォーオール!!」
「「「オールフォーワン!!」」」
「ワカコー魂見せるぞ!!」
「「「オー……ファイッ!!」」」

いつもの掛け声で、いつものようにみんなの心をひとつにする。
ワンフォーオール、オールフォーワン。それは正義の好きな言葉。
ワカコーとは自分たちの通う若宮高校の通称だ。

「よぅし!!行くぞみんな!!」

崩壊した世界がなんだ。
化け物がなんだ。
普通の高校生とは違うワカコー魂見せつけてやる。
そうして気を引き締め、彼らは未知の荒野に希望を見出すべく、前進した。






結論から言おう。

現実は甘くは無い。
高校生だけでなんとかなるような、漫画のような世界じゃない。

まず、正義は良くも悪くもお人好しであった。


「この人達が安全な場所まで連れてってくれるそうだ。大丈夫、彼らは優しい人達だよ。」

久し振りに大人と出会い、話していくうちに意気投合。
複数人の大人達は彼ら高校生を大変だったねと励まし。まずは自分達のアジトへ行こうと誘う。

しかし、

「いやーッ!!!やめてぇ!!
「へへ…久し振りの女……しかも現役女子高生と来た!」
「あーやっべ、JKの締まり最っ高だわ…。」

彼らは善人を装った悪人であった。
男子生徒たちはみな縛られ、女子生徒は彼らの性のはけ口となり使われる。

「話が違うじゃないですか!!どういうつもりなんですか!!」
「ハァ?助けてやるって言うんならそれなりの見返り求めてトーゼンだろ。前金だよ前金。」

拘束され、その様を嫌でも見せつけられる正義達。
こんな世の中だ。
見ず知らずの誰かを助けられる程の余裕のある人なんて、そういない。
しかし正義は疑うことを知らなかった。
人を悪く思うのは良くない。
彼を善人にしてくれた親の躾が、ここで仇になってしまった。

「やめろ……やめろおおおおおおーッ!!」

しかしここで、正義が立ち上がる。
男子生徒一同は手は後ろで縛られていたが、運良く正義だけが緩かった。
少し力を入れれば縄は解け、叫びながら正義はかけ出す。

「何だこのガキ!!」

仲間に乱暴をする男にタックルをかまし、続けて付近にいるもう1人の大人に殴り掛かる。
正義は空手を経験しているが、こうして人を殴るのははじめてだった。
空手とは人を傷つけるためのものでは無い。
幼少期より父親に何度も言われていた教えを、彼は仲間の為に破ったのだ。

「ちくしょうが!調子に乗るんじゃねぇ!!」

そうすると、別の大人が銃を取り出し正義に狙いを定めた。
初めて見る本物の銃。
おもちゃではない。当たれば死ぬ。
しかしそんな死を突きつけられていても正義の中では恐怖よりも怒りが勝った。

「ッ!!」

一か八か、彼は足元にあった石を拾い上げるとそれを奴目掛け投げる。
どこかに当たって怯んでくれ。そう願って今出せる力の全てを込めて投げ付けた。
すると運のいい事に石は銃に命中。
発砲はされたものの、打つ直前に狙いを大きくずらされた弾丸は正義に当たることはなく全く別の場所へと飛んでいった。

「や、やべっ……!」
「はぁぁぁぁぁっ!!!」

拳を握りしめ、やつの顔面に叩き込む。
鼻が曲がり、血がどばどば流れ、大人達はまさか高校生一人にやられるなんて思わなかったのだろう、

「くそ!!逃げるぞ!!」

驚き、奴らは退散して行った。

「……。」

そんな逃げる大人達の背中を見て、正義はただ黙って立ち尽くす。
初めて人に裏切られた。初めて人を殴った。そして、初めて死に直面した。

興奮が治まると、銃口を突きつけられたことが怖くなった。
しかしなんとかみんなを救うことが出来た。
そうして振り返り、まずはしばられた仲間を解放せねばと思った正義だが……

「……え?」

そこに映ったのは、腹部から血を流し、倒れる女子生徒。

何故?どうして?
男達は乱暴こそしたものの、流血にまでなるようなことはしていない。
なのに何故?
答えは簡単だった。

「弾丸が……?」

女子生徒の腹部を貫いたのは弾丸だった。
しかし、大人は撃ちこそしたもののそれは正義に向けての一発のみ。
一体何故か、それは

「跳弾だよ…弾丸が跳ねて命中したんだ…!」

1人の男子生徒がそう言った。
石を当てられ狙いを大きく外れた弾丸はあさっての方向へ。
そこまではよかった。
その弾丸は壁に当たり、跳ね返って運悪くそこにいた女子生徒に命中してしまったのだ。

「……」

冷や汗を垂れ流す正義。
殺したのは大人か?
違う。
殺したのは
石を当て、銃の狙いをずらし、跳弾させた、

「僕だ……僕のせいだ……!!」

まごうことなき、自分だと。





それから大人達がいた拠点をそのまま使い、生徒達はそこで夜を過ごす。
幸い奥の倉庫には大人達がこれまでに略奪したであろう備蓄があり、食べ物は全員に行き届き空腹に悩まされることはなかった。

久しぶりのリラックスした時間で、仲間達は楽しく談笑していた。
いや、さっきまでの悲劇を忘れようとしているため、わざとこうしているのかもしれない。

しかし、

「……。」

盛り上がっている土を見つめ、座り込んでそこから動かない正義。
ここに埋まっているのは跳弾により息絶えた女子生徒だ。
割り箸の刺さった粗末な墓の前で、正義はずっと悩んでいる。

しかし、

「なーにしてんのさっ!」

そんな彼を仲間が放っておくわけなかった。
項垂れる彼の肩を叩いたのは、1人の女子生徒。
いつも自分の近くにいてくれた、よく知る取り巻きであった。

「何って…この子の弔いを…」
「そんな辛気臭いことしてても、天国のあの子は嬉しくないって!ねぇみんな!!」

振り返るとそこには自分の仲間達が。
皆口々に「正義は悪くない。」「あの状況でやれるだけの事をした。」「あの子は運が悪かった、仕方がない」と正義をフォローしてくれた。

「それによ、俺達のリーダーがそんなしょげてちゃ、俺達だって悲しくなるぜ!」
「みんな…うん、ごめん。」
「謝らなくていいって!!ほら!元気出すためにアレやろ!アレ!」
「うん……そうだね。」

そうして墓を中心にして、仲間達は円陣を組む。

「みんな……絶対に、絶対に生き残るぞ!!」
「「「ワカコー魂舐めんじゃねー!オーッ!ファイ!!」」」

死んだ子の為にも、自分達は絶対に生き残る。
そう誓い、固い絆で結ばれたクラスメイト達は眠るのであった。





数日後……

「いやだぁ!!死にたくないぃ!!」

いい所を見せようとしたクラスのお調子者が死んだ。
きっかけは些細なものだった。

「気っ持ち悪ぃなギョロ目野郎…俺がぶっ飛ばしてやっからツラ貸せよ、あぁん?」

何やら小難しいことをつぶやく怪しい男に出会い、女子達の不安を取り除くために彼は喧嘩を売りに行った。

やせ細ったその腕から見て、喧嘩は弱いだろうと挑んだが、彼が挑んだのは人間ではなかったのだ。

「ご、ごぼぼっ!だず……げで…っ」

サーヴァント。
彼が喧嘩を売ったのはキャスター、『ジル・ド・レ』
供物に捧げるとかなんとか言われ、クラスメイトは瞬く間に召喚した海魔に囲まれ今こうして締め上げられていた。

ボキボキと骨の折れる音、吐血し、うがいでもしているかのような声で必死に助けを求める仲間。
次第に怪魔達が群がり、やがて静かになった。
恐ろしさのあまりクラスメイトたちは逃げ出す。




「どうか僕達をここで働かせてください。」


数日後、訪れたのは農業を営む男の家だった。
彼はサーヴァントと共に2人でここに住み、脱サラしてのんびりと野菜を育てているのだという。
人の良い彼は正義達を働き手とする代わりに住居の提供を快諾してくれた。
しかしその際、言われたことがある。

〝静謐ちゃんには、絶対に触れちゃいけない〟と。




「毎日毎日畑仕事、マジだるくね?」
「あーわかる。気持ちわりー虫とかマジ無理だし。」

そうして畑仕事を任され、空き家をいくつか好きにしていいと言われたがやはり日が経つとこうしてサボる者も現れる。

「おーいちゃんとやれよ陰キャ。じゃねーと怒られんのあたし達だから!」

女子生徒何人かはあまり強く出られない男子生徒をパシリにし、自分達は談笑していた。
しかし、

「……。」
「あ、何見てんの?キモイんですけど?」

ここの主のサーヴァントはそれを許さない。

「マスターは、働く見返りに住居を提供するって言った。」
「何?チクんの?キッモ。」
「今あなた達のしていることは、よくない。」

ここの持ち主から〝静謐ちゃん〟と呼ばれている彼女はこの状況を良くないと思い、彼女らを注意した
しかし、

「るっせーな調子に乗ってんじゃねーぞザコ!!」

返答はビンタだった。

「……!」
「何?やる?あたし実はキックボクシングやってんだよね。それでもやる?」

ひっぱたかれた〝静謐ちゃん〟は慌てている。
女子生徒達はそれを叩かれてビビっているものだと思っていた、
しかしそうではない。
彼女は、自らの身体に〝触れてしまった〟ということに慌てているのだ。

「駄目……!」
「あ?何が駄…」

次の瞬間、ビンタをかました女子生徒はその場に倒れ込んだ。

「ちょっ!どうしたの!?」
「うで…てが、てがいたい…!!」
「手が痛いって…な、何これ!?」

仲間が倒れた女子生徒の手に目をやると、なんと赤黒く変色し腫れ上がっていたのだ。

「何しやがったてんめぇ!!」
「!!」

そうして激情に駆られた仲間が〝静謐ちゃん〟の胸ぐらに掴みかかる。
そうなったならば、時すでに遅し。

「あゆみに何しやがった!!」
「違う…駄目!このままじゃあなたも…!」
「知ったこっちゃねぇんだよアバズレ!!男誘うようなカッコしやがって!!クサレビッチなんだろ!?あぁ!?」

キレ散らかした女子生徒は離す事などしない。
そうして殴りかかろうと手を振りあげた際…

「ごふっ!?」

一目で助からないと分かる量の血を吐き、絶命した。



そうして、〝静謐のハサン〟の毒にやられ女子生徒2人が毒殺。
その場にクラスメイト達と畑の主が集まり、状況の説明をするように言われる。
これは事故に近いのだが…生き残った1人の女子生徒は、

「ひどいの…!助けてよ正義くん!!」

正義に泣きつき、ありもしないことを話し始めた。

「ど、どうしたんだ!?」
「あいつ…私達が頑張ってるのにもっと働けって…!疲れてるのに動けないって言ってるのに、あいつ…あゆみとじゅりを……!」

静謐のハサンを指さし、あくまで自分達は悪くないように話した。
そこで目撃者であるパシリの男子生徒達がザワつく。
アレは自業自得ではないか?
そう言うと女子生徒は泣きじゃくり、

「じゃあ私が嘘ついてるっていうの!?あゆみとじゅりが死んで!お前らは何も思わないって言うの!?お前ら絶対許さない!!」

異を唱える男子生徒達を黙らせた。

そうして、

「でもお前は……何もしてないんだな?」

マスターの問いに静謐のハサンはただ頷く。
だがしかし、

「おかしいのよあいつ!!ああやって人を簡単に殺せるやつを普通に隣に置いてる!!正義くん!あいつやばいよ!!もうここから逃げよう!!このままじゃ、私達全員あいつに殺されるよ!!」
「……。」

マスターは、静謐のハサンはそんな事をする子なんかじゃないと言っている。
しかし、仲間の女子生徒は暴力を振るわれたと言っている。
頭がおかしいかもしれないマスター。
長い時間を共に過した女子生徒。

正義が信じるのは、

「あなたは信用出来ない。今日限りで僕達はここを出ていきます。短い間でしたがありがとうございました。」

無論、後者であった。



それからまた旅を続ける仲間達だが、死はいつも隣にあった。


オタクのような男を見かけたが気持ち悪かったので、女子生徒達が袋叩きにして有り金全て奪ったらその後すぐに焼き殺された。

弱そうな魔女を見つけ、従わせようとした数人が豚にされ、二度と人間に戻れなくなった。

友好的な船乗りに巡り会えたと思ったら、何人かが奴隷として売りさばかれた。

乗り越えれば褒美をやると言ったサーヴァントに理不尽な試練を課せられ、何人かが死んだ。

FGOを知る生徒が特定のサーヴァントを弱いとバカにした結果、血の雨と共に数人を巻き込み帰らぬ人となった。

冷酷に殺された。
息をするように殺された。
怒りを買って殺された。
理不尽に殺された。

そうして、


「そんな……」

最初は約40人以上いた仲間達は、
正義を含め3人となっていた。

「どうして……どうして!!」
「だ、大丈夫だよ!正義くんは悪くないって!」

正義の取り巻きの女子二人は必死に彼を慰める。
実際、彼は悪くない。
しかし責任を感じやすい正義は自分の問題だと深く考え過ぎてしまっていた。

「僕のせいだ!!僕が悪いんだ!!僕が…僕があのサーヴァントという化け物に気をつけろともっと注意していれば!!」

頭を抱え、そう叫ぶ正義。
しかし、

「待て……サーヴァント?」

急に落ち着くと彼は、考えを巡らせた。

「サーヴァント……そうか、サーヴァント…!」

振り返ってみれば、仲間たちが死ぬのはいつもサーヴァントによるものだった。
なら、悪いのはサーヴァントではないか?
そう、サーヴァントは悪いやつだ。
マスターと呼び慕い人間には従ってはいるものの、それはあくまで表面上の話。
自分は、その化け物の正体を見抜いてしまった。

「悪魔だ……あいつらは……この世にやってきた悪魔なんだ!!」

悪魔。
理不尽に人を殺し、さらに人間と主従関係という契約を結ぶ。
思えば、一誠くんがおかしくなったのもあの刑部姫という悪魔が傍に現れてからだ。
そして自分たちを襲ったあの大人達、
あれもおそらく悪魔に支配されてしまったからなのだろう。
そう考えれば、納得も言った。

「正義くん……?」

心配そうにそう呟く彼を見守る生き残り二人、
確かに突然悪魔だなんだと叫ばれれば心配にもなる。
だが、

「そうだよ。正義くんの言う通りだよ!あいつら悪魔だよ!!バケモンだよ!!」

正義に対してイエスマンである取り巻き2人は、彼の考えにすぐに賛同した。
それだけじゃない。
こんな意味不明な世界になり、ドラゴンやゴブリンやらファンタジーなモンスターが溢れているんだ。
だったら、悪魔の1人や2人いても何ら不思議では無い。
そういったこともあり、正義の考えに疑問を抱く者はいなかった。

「そうだ…だから僕は、許さない。みんなを殺した悪魔を……力が無くて何も守れなかった僕自身を……!!」

そうして肩を組む正義。
そしてここに宣言される。

「仲間を集めよう。僕たちと同じように、悪魔に虐げられた人達を集めるんだ。」



「そうして作るんだ。悪魔に支配されたこの世界を奪還するための組織。人間の、人間による、人間の為の組織を。」



「名前は今決めた。今日から僕達は若宮高校2年C組なんかじゃない。
僕達は……








『人間同盟』だ……!! 
 

 
後書き
正義が悪い→×
正義は悪くない→△
正義の周りの人間が悪い→〇
そんな周りの人間を仲間だなんだといって大切にしてしまった正義が悪い→◎

なんと言いますか運のない人間と言いますか、こう言ったことがあり正義はサーヴァントを迫害する宗教団体、『人間同盟』を設立したわけです。

あとタイトルに1と書いてある通り続き物です。2も書きますので次回もお楽しみに。 
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